●リプレイ本文
●という事で〜
──パリからスタート
パリ船着き場→ノルマン江戸村行の定期馬車を探してみるが、それらしい馬車はどこにも見当たらない。
と、思いきや、商人ギルドの方角からやってきた馬車が一行の手前に到着すると、御者が静かに話し掛ける。
「俺っち江戸村に戻るけれど、一緒に乗る?」
ちなみに何が起こったかというと、開村祭以降、江戸村の村長である信濃屋さんのご厚意により、ノルマン江戸村関連の依頼については、馬車での送迎が付く事になった。
もっとも朝一番でパリまで仕入れに行く馬車や、パリから戻ってくる馬車に対しての便乗が認められただけ。
なお、ここに至るまで、冒険者一行は年末年始に必要な物資の調達、宣伝公告など様々な事を行ない、依頼をより盛り上げる方向に走り出した。
──ノルマン江戸村・のるまん神社
「遠路はるばるご苦労様です」
頭を深々と下げ、一行に丁寧な挨拶をするのはこの『のるまん神社』の巫女である『徳河葵』嬢。
「今回はギルドの依頼でやってまいりました。よろしくお願いします」
ニルナ・ヒュッケバイン(ea0907)を筆頭に、冒険者ギルドより派遣されてきた精鋭乙女達6名が同時に頭を下げる。
「それでは早速、着替えて戴きます。荷物は社務所に置いて、まずは簡単な礼儀作法から始めましょう」
おっと、いきなり難題突入。
「今回の依頼は神社業務ですよね? 礼儀作法は必要なのですか?」
取り敢えず覚悟はしていたものの、オイフェミア・シルバーブルーメ(ea2816)は静かにそう問い掛ける。
「はい。たとえ臨時とはいえ、皆さんはこののるまん神社の巫女なのです。神に仕えるものとして、ここを訪れる大勢の方たちの手本となるべく、ここでの礼儀作法を始めとして、様々な振る舞いを身につけて頂きます。勝負は今夜、大晦日の夜。二年参りと呼ばれるお参りが今宵から明日の早朝にかけておこなわれます。その後、朝からは参拝客に対して振るわれるお酒、各種グッズ販売等、三が日が終るまでは休む暇も有りませんので、体調は万端にしてください・・・・」
えーーっと。
ただの手伝いレベルではないと。
まあ、皆さん頑張って下さいね。私はゆっくりと記録を務めさせて頂きますから。
──ガシッ
グリュンヒルダ・ウィンダム(ea3677)とカタリナ・ブルームハルト(ea5817)の二人が記録係の私の両腕を掴む。
「記録係さんは私達の行動を全て記録するのですよね?」
「まさか、一人だけ普段着のまま行動とか、途中何度も休憩なんていうことはしないよね?」
──ポリポリ
ああ、どうやら私も着替えて徹夜で記録を続行するはめになりそうです。
ギルドマスターさん、この件については別途報酬の上乗せをお願いします。
提供は『暁の記録係・アンブラ・リュミエール(彼氏募集中)』でした
「ほれほれ、とっとと着替える!!」
はーーい。
●ということで〜礼儀作法講習〜
──社務所
綺麗に巫女装束に着替えた乙女たち6名+1。
シクシクと無いている記録係をよそに、講習は始まった。
「では、一番大切なのは『思いやる気持ち』です。自分達が厳粛なる神につかえていること、そしてその神の加護を皆さんに分け与える為の、人と神との渡し役であるということを自覚しておいてください」
いきなり堅い話から始まるものの、一行は冒険者としてはかなりの経験を積んできた。
この程度の説明は当然と思いつつ、礼儀作法講習会を静かに受ける。
「すいません、この挨拶の角度はこれでいいのですか?」
講習会の途中、デルテ・フェザーク(ea3412)が葵嬢に問い掛ける。
「お参りの角度ですね。まず、神社の正面で直立姿勢。次に背中を地面と水平になるぐらいに深々と腰を折り頭を下げます。これを2回行なってください」
ふむふむ。
全員が綺麗に整列し、葵嬢の指示に従って腰を折る。
「次に両手を胸の高さで合わせ、右手は指先一つ分だけずらして2度、パンパンと叩きます」
はい、一斉に!!
──パンパン
「そして最後にもう一度だけ、最初と同じ様に頭を下げます。ジャパンではこの挨拶を『二礼ニ拍一礼』と呼んでいます。神社参拝の最低限必要な基本作法ですね。後で入り口にある『手水舎』の使い方もお教えします。時間がありましたら今の挨拶について練習しておいてくださいね。では次に・・・・」
次の指示を行なおうとした葵嬢に、サーラ・カトレア(ea4078)が手を上げる。
「すいません、少し休憩お願いします!!」
「そうですね。では一刻、休憩を取りましょう」
そのまま葵嬢は退室。
一行は其の場座り込む。
「こ、この服装はかなりきついです・・・・」
胸許をぴっちりと締め付けられているサーラが、巫女装束を少しゆるめつつそう告げる。
その光景を一行はどんな感情で見ているのだろう・・・・と、これ以上記録すると、またのるまん亭での二の舞になるので・・・・と。
──その他の施設案内
「ここは何ですか?」
木造屋根付きの小さな舞台。
社務所から参道を挟んでちょうど反対側に位置する場所に建てられている建物を見て、サーラが静かに問い掛ける。
「それは神楽殿と言いまして、神に捧げる舞『神楽舞』を躍る場所です。今の神社にはそれを舞う事の出来る方がいらっしゃらないので、今回は使いませんよ」
その横には、小さな屋根付き掲示板が置かれている。
「葵さん。この掲示板に掛けられている小さな板切れはなんですか? 馬の絵が書かれていたり、何かお願いが書いてあるように思えますけれど」
オイフェミアの問い掛けに、葵嬢がそちらに向かう。
「これは『絵馬掛け所』といいます。絵馬とはこの板ですね。ジャパンでは、神様に馬を奉納する風習が古来ありました。馬はなにかしらの特別な力を持ち、神様に様々な想いを届ける動物として扱われていました。ですが、庶民は馬を奉納することが出来ない為、このような『絵馬に馬の絵と願いや誓い』を記してここに掲げるのですよ」
エキゾチックジャパーンを堪能するオイフェミアには、とっても斬新な事である。
「この小さな神社は?」
本殿の横にひっそりと置かれているちいさな社(やしろ)。
そこの前で、ニルナが葵嬢に問い掛ける。
「末社と申します。ここの本殿に奉っている神様では無く別の神社からおいで戴く神様を奉る為の社ですね。今はまだ、他の神様がいらっしゃっていないのです」
「ふぅん・・・・凄いですねぇ・・・・」
ジーザス教徒であるニルナには、大勢の神様が居るというジャパンの信仰がいまいち理解出来ないようである。
そして社務所に戻り、届けられた大量のグッズを並べると、それぞれが自分の持ち場につき、シフトを組んで準備完了。
●参拝開始〜まだ序の口〜
──社務所横
「いらっしゃいませーー御神酒をどうぞ!!」
一合升に濁り酒を汲み出すと、オイフェミアはそれを参拝客にさしだす。
ちなみに当初はおみくじ販売を行なっていたのであるが、悪いクジを引いた参拝客に『怪しげな壷』を売ろうとしたのが発覚、御神酒のサービスに回されてしまったようである。
「人の運なんて、それこそ運任せなのにねぇ・・・・」
グビッと御神酒を呑みつつ、オイフェミアは顔をほんのりと紅潮させて御神酒サービスを続け。。
なお、最終日までにオイフェミアが飲んだ御神酒の量はと・・・・いや、伏せます伏せますごめんなさい。
──参道案内
「わぁ・・・・似合いますねぇ・・・・」
参拝に来ていたエレアノール・プランタジネットが、参道案内を行なっていたグリュンヒルダの髪にリボンを結びつつそう呟く。
「あのですねぇ・・・・エレアノールさん、人の髪に願掛けするのはどうかと思いますよ?」
そう呟くグリュンヒルダに、エレアノールは一通りの願いを込めると、そのまま参拝客の中に紛れていく・・・・。
「巫女さん、今日は神楽舞はないのですか?」
「神楽殿にご案内しますわ。こちらへどうぞ」
丁寧に接待するグリュンヒルダ。
これは流石である。
──神楽殿
今回の目玉の一つは、臨時の舞師として雇用されたサーラ。
今回の神楽舞奉納は諦めていたのであるが、サーラが踊りの達人という事もあり、葵嬢は彼女に賭けた!! そして勝った!!
──シャンッ・・・・シャンッ・・・・
村の有志による臨時の『雅楽隊』が結成されると、サーラは巫女装束、右手に鈴、左手に扇子を持ち、新しき年に幸多かれと舞を舞う。
天女が舞い降りたかのように、綺麗に、そして美しく舞続けるサーラ。
神社に納められている写本に記されている舞。
それを自分なりの解釈を行ない、短い時間の間にサーラはただ、ひたすら練習を続けていた。
そして本番。
(楽しい・・・・)
舞を続けることニ、サーラは身体が熱くなっていくのが判る。
そして舞の中に引き込まれ、身体が、本能が、サーラを踊らせていた。
まるで、ジャパンの神『天宇受売命(アメノウズメノミコト)』でも降臨したかのように・・・・。
(頑張ってね・・・・)
カレン・シュタットは、先にお参りを済ませた後でサーラのつたない神楽舞をじっと見守りつづけていた。
──社務所
「はい、御朱印ですね。少々お待ちください。葵さん御朱印お願いします!!」
「ありがとうございます!! はい、冒険祈願のお守りですね。こちらは家内安全です。両方買うとお得となっております」
社務所のグッズ販売所は混雑。
デルテとニルナがてんてこまい。
ちなみにお守り、セット販売してもお得にはならない。
この混雑もまだ序の口。
深夜になるとピークに達する。
デルテとニルナ、そして葵嬢は販売担当。
その奥ではカタリナが仮眠を取っている。
深夜からはカタリナが入り、デルテとニルナは休憩。
立て看板の設置が終ったグリュンヒルダと夕方の舞を終えたサーラも深夜まで仮眠を取りに戻ってきた。
そして夜。
デルテとニルナは休憩に入り、カタリナとグリュンヒルダが売り子に配置。
オイフェミアは奥で『酔いを醒ます為の休憩』に入る。
いくら御神酒が旨いとはいえ、ちょっと呑みすぎた模様。
「・・・・ふぅ。流石にこれだけ人が多いと疲れるわ・・・・」
奥に有る休憩室で、ニルナが溜め息を付く。
「うんうん。そうだねぇ。少し休まないと、疲れるからねぇ・・・・」
そう呟きながら、夜黒妖がニルナの後ろに回り、肩を揉む。
「気持ちいい〜。でも、黒妖どうしてここに?」
お守りを買っていた黒妖に、もう少しで休憩に入るからと休憩室に通したのはニルナ。
「お参りに来たんだよ?」
そのまま肩をモミモミ。
「で、もうお参りは済ませたの?」
「これからだよ・・・・」
──ズボッ
す早く右手をニルナの襟元から侵入させる黒妖。
「ち、ちょっと何を!!」
さらに左手は袴の横からスーーッと差し込む。
「その服装、妙にそそるなんだよねぇ〜」
黒妖、それ『おやぢ発言』ですから!!
「駄目・・・・」
と、ニルナ陥落?
──ガラッ
そのニルナ陥落と同時に、休憩室に入ってきたのはデルテ。
「えーーーーっと・・・・」
──ガラッ
静かに扉を絞めると、デルテはそのまま社務所に移動。
「休憩はどうしたの?」
オイフェミアにそう話し掛けられるデルテ。
「えーーっと、二匹の猫さんに休憩室を取られてしまいました」
真っ赤な顔でそう告げるデルテ。
「ふぅん。まあいいや、デルテも一杯飲む?」
まだ飲んでましたかオイフェミアさん。
●元旦〜やっぱりお約束ですからっ!!〜
──乱闘・挑戦者あり!!
どんがらがっしゃーーーーん
境内の外に連れ出された酔っぱらいを、カタリナがかるーく放り投げる。
「全く。新年だというのに、いきなりこんなことさせないでください」
ちなみに何が起こったのかというと。
へい、きれいなねーちゃん、そんなところに座っていないで俺っち達の酌でもしてくれねぇか? なーに、イヤだって? この俺様を誰だと思っていやがる。 ああん、何だおまえ? この俺のやることに文句があるのか? 『兄きまずいっすよ、酔っぱらいバスターのカタリナっすよ』 なんだそいつは? この俺がこんな胸ペタの女に負けるわけが おいおい、突然腕を掴みやがって何処に連れて行くっていうんだい? まさかおねーちゃんが俺っちに楽しいことを・・・・まあ、胸ペタでも俺っちは別に・・・・うぎゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃゃ。
以上回想シーン終り。
あーー、実に判りやすい。
「カタリナさん、急いで支度をしてください!!」
パンパンと手を叩きつつ戻ってきたカタリナに、サーラがそう叫ぶ。
「何かあったの?」
「裏手の森から、魔物が降りてきたのです。正月料理とかいうものの匂いにつられて・・・・」
ちなみに襲撃してきたのはオークの群れ。
社務所の外では、グリュンヒルダが参拝客に被害が及ばないように誘導している模様。
そしてオークの群れ総勢12匹を相手に、巫女姿の冒険者が出撃!!
それではいってみよっかぁ!!
色っぽく着物の前をはだけたニルナが剣を振るう。
「うう・・・・足腰に力が入らない・・・・」
どうしてかは、あえて聞かない。
もうニルナさんったら激しいんだから。
顔を紅潮させたオイフェミアがグラビティーキヤノンを叩き込む。但し、ご機嫌に酔っ払っている為、魔法の成功率が半減。
「オークが分身の術を使うとは、生意気なぁ・・・・」
オイフェミア、視点定まってませんから!!
デルテもグラビティーキャノンで援護開始。
「ダイレクトサポート入りまーす!!」
そう、そのまま頑張って。二匹の猫のことなんて忘れるのです。
サーラは逃げ遅れた参拝客を誘導。
「皆さん、こちらに避難してください!!」
グリュンヒルダとカタリナは最前列でオークの迎撃に入る。
「この巫女装束欲しいなぁ・・・・(ボソ)」
いや、グリュンヒルダさん、巫女装束は貰えません・・・・残念!!
「・・・・誰が酔っぱらいバスターだぁ!! 僕みたいな純真可憐な乙女を捕まえて!!」
カタリナについてはもう手遅れですから・・・・残念!!
着慣れていない巫女装束での戦闘。
それでも無事に迎撃し、オークの軍勢を撃退すると、再び神社には静かな時間が戻ってきた。
さて、今年一年、冒険者の皆さんにはどのような出来事が待っているでしょう。
皆さんのこれからの安全を、心よりお祈り申し上げます。
〜Fin