【ノルマン江戸村】ウェポンマイスター?

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:5〜9lv

難易度:普通

成功報酬:4 G 18 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:12月26日〜01月09日

リプレイ公開日:2005年01月05日

●オープニング

──事件の冒頭
 騒々しいカウンター。
 静かに依頼を探す冒険者。
 いつものような日常。
 冒険者ギルドは、年末であるにも関らず、大勢の人で賑わっていた。
 尤も、その殆どの人が年末までに依頼を受け、懐を暖かくして年末年始を迎えようというのであろうが。

「武器を扱う冒険者ですか?」
 既に気分は新年明けましておめでとうの新人受付嬢が、目の前の男性の言葉にそう問い掛けていた。
「うむ。戦いに熟知し、且、武器を取り扱うエキスパートを6名。なんとか都合を付けて欲しい!!」

──それでは解説タイム
 依頼人は『ノルマン江戸村』に引っ越した鍛冶師トールギス氏。
 ジャパンの伝統技術を学ぶ為にノルマン江戸村に引っ越したのはよいが、その技術は門外不出の為に弟子入りすらさせてくれなかったらしい。
 それでも、その鍛冶師とは秘伝の技術以外では意気投合し、よく酒を呑み交わす毎日を送っていた。
 そんなある日。
 いつものように頼まれた武器を仕上げたトールギスだか、彼の仕上げた武器を手にした冒険者が、こんな一言を呟いたのである。
『トールギスさんは、良い武器を仕上げてくれますね。でも、どれも既製の武器ばかり。オリジナルの武器はないのですか?』
 そこで言葉に詰まったトールギス。
 確かに、彼の仕上げた武器はこのノルマンではどこにでもあるようなものばかり。
 新たなる武器を作るにも、年のせいか発想力に欠けるというものである‥‥。

──ということで
「つまり、新しい武器のアイデアを出して欲しいということですね?」
「その通り。アイデアを出してくれれば直にでも弟子と共に作業に入る。それで時間はかかるが、完成品の実験もお願いしたいのじゃよ。江戸村の付近は相変わらず魔物が徘徊しておる。自警団のないあの村では、そんな魔物たちの対処にも困っておるからのう」
 ということで、トールギス氏の依頼を羊皮紙に書き留めると、新人受付嬢はそそくさと掲示板に張付け、とっとと休暇を取って帰っていった‥‥。

 なお、シクシクと泣きながらカウンタ─で仕事をする新人受付嬢の姿を、冒険者達は翌日の昼に見ることになるであろう。
 逃走失敗で捕まり合掌。

●今回の参加者

 ea1661 ゼルス・ウィンディ(24歳・♂・志士・エルフ・フランク王国)
 ea1782 ミリランシェル・ガブリエル(30歳・♀・鎧騎士・人間・ノルマン王国)
 ea3063 ルイス・マリスカル(39歳・♂・ファイター・人間・イスパニア王国)
 ea4169 響 清十郎(40歳・♂・浪人・パラ・ジャパン)
 ea4206 ケイ・メイト(20歳・♀・クレリック・シフール・イギリス王国)
 ea5415 アルビカンス・アーエール(35歳・♂・ウィザード・人間・ノルマン王国)

●リプレイ本文

●やってきました御存知江戸村〜あら、お嬢さん御無沙汰です〜
──ノルマン江戸村
 開村祭以降、ここの村長である信濃屋さんのご厚意により、ノルマン江戸村関連の依頼については、馬車での送迎が付く事になった。
 もっとも朝一番でパリまで仕入れに行く馬車や、パリからこちらに戻ってくる馬車に対しての便乗が認められただけといえばそれでおしまいなのであるが。

「ここがトールギス氏の鍛冶工房か・・・・」
 ドサッと荷物を降ろしつつ、看板をじっと眺めているのはアルビカンス・アーエール(ea5415)。
「まあ、今回はここの村周辺の魔物退治もしないといけないからねぇ・・・・」
 ミリランシェル・ガブリエル(ea1782)もそう告げながら、荷物を其の場に降ろす。
「ごめんください。冒険者ギルドからやってきました者ですが。トールギスさんはご御在宅でしょうか?」
 ゼルス・ウィンディ(ea1661)が丁寧な口調でそう声を掛ける。
──ガララッ
 と、横開きドアが開き、中から作務衣を着込んだ男性が姿を表わす。
「トールギスさんは、今作業中ですので一旦荷物を宿に預けてきてください。あ、私はトールギスさんの弟子の『ゼクス・シュティール』と申します。皆さんの身の回りのお世話を仰せ付かっておりますので、よろしくお願いします」
 その言葉に従い、一行は宿屋へと移動、荷物を置いてから再びトールギス氏の元へと戻っていく。
「おお、これはご苦労様。さっそくだが、適当な所に腰掛けてくれ。今、茗(ちゃ)を入れさせよう。クリエルさん、済まないがお茶を入れてください。ゼクスは羊皮紙を持ってきなさい」
 と、クリエルと呼ばれた女性が皆の元にお茶を持ってくる。
 そしてそれをスッと差し出すと、そのまま席を外す。
(何処かで会ったことがあるような気がしますが・・・・)
 ゼルスが頭を傾ける。
 実際には、ゼルスとクリエルは出会ってはいない。
 ただ、彼女の兄・・・・ディンセルフの打ち出した武器『アイテムスレイヤー』については、ゼルスはよく知っている。
「ふぅん。その辺の数打ち物とは違って、いい武器ね。手にしっかりと馴染む感覚がいいわ」
 ミリーが床に立てかけてあったロングソードを鞘から引き抜くと一振り。
「そのロングソードは、クリエルさんの打ったものですよ。何でも実家が鍛冶師の家だったらしく、祖父や父、そして兄の遺志を受け継いで鍛冶師になったそうです」
 羊皮紙を手に、ゼクスがそう呟く。
「この前までは身体が弱っていてプロスト領の城下街にある鍛冶師の所で基礎を学んできたそうですよ。うちの師匠が彼女の実力を見ぬき、引き抜いてきたそうですから」
 そして一行の方を向き直ると、ゼクスは静かに口を開いた。
「それでは、みなさんのアイデアを承りましょう!! 師匠は急ぎの仕事がまだ終らないので、私がそれを全て書きとめます」
 そして一行はゼクスに武器に付いての説明を行った。


●観光を敢行〜わんドシに蹴りいれよう!!〜
 武器が完成するまでは、一行は只暇を玩ぶ。
 そのため、滅多に来ることのないこの江戸村での観光と相成ったのであるが・・・・。
「ワンワン!!」
 身長1m30ぐらいのブチいぬの着ぐるみ。
 そして股間に『どしどし!!』と刺繍された褌を付けている奇妙な物体が、冒険者の前に姿を表わす。
 このノルマン江戸村の新マスコット、『わんドシ君』である。
「ふにゃー!!」
 わんドシ君に対抗して猫のような叫びを上げているのはケイ・メイト(ea4206)。
「犬にゃー!!」
「わんドシ君でし、ワンワン!!」
「犬は来るにゃー!!」
 そんな二人のやり取りをとおくで眺めているのはルイス・マリスカル(ea3063)とアルビカンスの二人。
「なんだありゃ?」
「ここの村の愛玩動物もどきだそうですよ。もっと江戸村をノルマン全域に知れ渡る程にしたいとかで・・・・」
 そんな世間話のさ中、わんドシ君とケイの異種格闘技の幕は切って落とされた!!


●安全祈願〜ミリーさん、それ教会の儀礼〜
──のるまん神社
 そんなこんなで後日。
 完成した武器を受け取り、トールギス氏から簡単な使い方を説明してもらった一行は、響清十郎(ea4169)の提案で『武器の魂いれ』をして貰う為に『のるまん江戸村』に向かった。
「はい。当神社におきましては、ジャパンでは御存知時の神を奉っております。」
「御存知の神・・・・スサノオですか?」
「いえいえ、そんな大層な神様ではございません。奉ってあるのは菊理媛(くくりひめ)、御神体には『都牟羽(つむは)の太刀』が奉ってあります」
 完成した武器の魂いれにやってきた清十郎の問い掛けに、巫女である徳河葵嬢がそう捕捉。
「都牟羽の太刀!! ちょっと見せて頂けませんか?」
 その清十郎の問いに、巫女は頭を左右に振る。
「残念ですが、駄目です(きっぱり)」
 あら、あっさり。
 まあ、そんなこなんで一行は無事に祝詞を受け、いよいよ件の魔物の集落へ。


●ノルマン江戸村鬼退治〜いや、正直いう、強い〜
──魔物の集落
 江戸村より離れること半日。
 深い森の奥に、その集落は存在した。
 簡素な作りの建物に、大量のオークの群れ。
 それを茂みで確認すると、いよいよ冒険者一行のお出ましとなる。
「相手はオークですか・・・・それにしても、数が多いですね」
「こっちは大丈夫にゃ!! いつでもいくにゃ!!」
 ルイスの言葉にケイがそう告げる。
「では、私から」
 ゼルスが懐から拳大の玉を取り出す。
 それをオークの足元に向かって投げ付けると、すばやく高速詠唱開始!!
──ゴゥゥゥゥゥッ
 オークの足元で割れた玉の中から、鋭利な刺の大量に付いた『菱(ひし)』がばらまかれる。
 そこを中心にトルネード発動。
「ウギャギャギヤァァァァ」
 トルネードで巻き上げられるオーク、ついでに巻き上げられる菱。
 全身の剥き出しになった皮膚を菱の刺が傷つけ、さらに落下、彼方此方に菱が突き刺さる。
「・・・・痛そうですけれど、鎧を着られると効果が得られませんか・・・・」
 同行したゼクスがメモを取る。
「あ、若干の改良の余地ありと付け加えてください」
 ゼルスの言葉に肯くゼクス(ああ、ややこしい)。
 そして一行は突撃!!

「まあ、相手をするのは構いませんが・・・・」
 そのまま目の前のオークの両肩をむんずと掴み、そのまま激しくヘッドパットするルイス。
 ちなみにルイスの被っているのは、尖った角の付いているヘルメット『ユニコーンヘルム』である。
──ドシュッ
 オークの眉間を突き刺す角『ユニコーンホーン』。だが、深々と迄はいかない。
 そのままオークを突き放すと、ルイスはすばやく抜刀。
「では実験その2といきますか・・・・」

 さて、そのころ。
──ドガッ・・・・バリバリバリッ
 拳部分が肥大化した『殴り専用ガントレット』でボコスコとオークを殴り倒すのはアルビカンス。
 ついでにライトニングアーマーが掛かっている為、殴られて痛いは感電するはでもう大変。
「この軽さなら十分仕えるラインだし、なによりトールギスの追加部分が嬉しいな」
 感電したオークとは別のオークが棍棒で殴りかかる。
──ガシィィィッ
 だか、その一撃をアルビカンスは『ガントレットに巻き付いている鎖』を伸ばし、それを反対の腕で握り締めて受止めた。
 さらに棍棒を受け流し、鎖についている分銅を相手に絡めるとあら不思議。
──バリパリパリバリ
 又しても感電。
「まあ、命名『ライトニングバスター』とでもしておくか」
 これは使い勝手がよさそうですが、ライトニングが使えないと効果半減。

「にゃーーーーー!!」
 空中からすばやく降下。
──ジャキーン
 両手に付けたモコモコ手袋の指先から伸びている爪で、兎に角引っかきまわしているのはケイ。
 形状は完全に趣味では有るが、普段は収納されている爪が拳を握ると姿を表わすのはナイスアイデア。
 もっとも、クレリックのケイではそれほどダメージはでない。
「なら、これにゃあ!!」
──ぷに
 必殺の『肉球アタック』。
 細部まで猫の手を表現、肉球部分は天然素材で手触りもやわらか。 
 って効くかぁぁぁぁぁぁ!!
──ゴン
 あ、やっぱり殴られた。
「うーー、殴ったにゃ〜」
 そのまま上空へと逃げ延びると、そこで魔法発動。
 コアギュレイトでオークを金縛りにすると、そのまま兎に角引っかきまわした。
 あー、つまり趣味の武器なのね。
「うにゃ〜〜〜〜〜〜〜」

──ドシュュュッ
 一発でオークを瀕死に追込むのは清十郎。
 受け取った刀は日本刀ではないが、清十郎の注文に応じた『連撃の衝撃に耐えるために刀身の幅が広く、切先に近い部分のみが両刃になっている反りのある剣』そのもの。
 ずっしりと来る重みと、示現流ならではの震脚が、さらなる力を武器に与える。
 そのまま重さを利用して、遠心力で次のオークの胴部を切り裂く。
「ここまで使い勝手が・・・・難しいとは・・・・」
 日本刀をベースとしたのでは無い為、『斬る』という感じより『切る』という感じである。
 重さと切れ味、それを使う物のパワーバランスがよくなくては、全く使い物にならない武器である。
 それでも、清十郎にはそれを難無く使いこなせる力が有った。
「改良点はまだありますが、それでもいけます!!」

──ゾゾゾゾゾゾゾリッ
 正直いう。
 非常に非情でえぐい武器を振回しているのはミリーである。
 彼女の提案した武器は『ジャイアントソードと同じぐらいの刀身だが、刃が刀身全体に無数に有り、それは対象を抉れる様になっている、この剣は斬るので無く削り抉る剣』。
 鞘に納めることも出来ず、持ち歩きにも大変邪魔であるが、その効果はなかなか面白い。
「ハアハアハアハア。こ、これは力がいるわね」
 肩で息をしつつそう呟くミリー。
 そして再び襲いかかってくるオークの首元に武器を叩きつける。
──ドガッ!!
 そして命中した瞬間、すばやく武器を引くと・・・・。
──ゾリッ・・・・ゴリゴリゴリゴリゴリっ
 皮膚を削り、肉をえぐる。
 大量の出血、絶叫を上げて逃げるオーク。
 兎に角この武器は痛い。
 そして扱いがなかなか難しい。
「はぁ・・・・はぁ・・・・」
 また別のオークが襲ってきても、その攻撃を武器で受けながし、すばやく反撃。
 力一杯振りかざし、そのままスマッシュ炸裂。
──ドゴッ・・・・ゾリゾリゾリッ
 命中した瞬間、さらに遠心力と力任せに武器を引っ張る。
「ウガウガウガウガァァァァァ」
 そのまま絶叫を上げて、またしてもオーク逃走。

──ドゴッ・・・・ドゴッ・・・・
 と、突然森の奥から足音が響いてくる。
「新手です!! 気を付けて!!」
 ルイスのその叫びに姿をあらわしたのは、巨大な『オーグラ』であった。
「気を付けてください!! 相手は半端じゃなく強いです!!」
「この武器で駄目だと思ったら、直に武器を持ち変えて!!」
 以前オーグラと戦ったことのあるルイスとミリーが仲間にそう告げる。
 もっとも、その言葉で引くような冒険者はそこにはいない。
 新たなる強敵を前に、より一層気を引き締めて立ち向かうのであった・・・・。


●村に帰還〜いや、まじで死ぬ〜
──トールギス鍛冶工房
 全身ボロボロになりつつも、なんとかオーグラを迎撃完了。
 そして逃げ延びたオーク達や新手のオーグラが住み着かないように、オークの集落を焼き払い依頼は完了した。
 戻った一行は、武器についての説明を行ないつつ、それぞれの武器をトールギスに返還。
「使い勝手は兎も角、相手を選ぶという事は理解しました・・・・それに、普通に切るよりも体力の消耗が激しいということもね」
 命名『鮫肌丸』と名告げられたミリーの武器を手に取り、トールギスはミリーの説明を静かに聞いている。
「成る程ねぇ。アイデアは良かったから、今後の改良という所ですね。ありがとうございます」

 次にルイスがユニコーンヘルムを手渡す。
「首が疲れます・・・・」
 ああ、そこだけですか問題点は。
「威力がちょっと。突きという部分でしか効果を発揮しないので、もう少し何かしらの改良が必要でしょう」
 チャードするにもちょっと辛い。
「なるほどねぇ。データは取れましたし、今回は良しということで」

「菱の形を刺だけでなく刃にするなど、色々なバリエーションも考えられますね」
 残った『菱球』をトールギスに戻しつつ、ゼルスがそう告げる。
「効果はどうでした?」
「そこそこに。まあ無いよりはマシ程度ですが、もっとアイデアは膨らんできます」
 刺の先に毒でも塗れば、効果絶大と言うところでしょう。
「ふむふむ、これも改良の余地ありと」

「ほぼ完成といっていいとおもいますよ。ただ、使い勝手を考えると、素人では振回すのは無理ですね」
 清十郎が剣をトールギスに納める。
「欠点はそこだけですか?」
「はい。スマッシュでも武具破壊でも効果は絶大でした。衝撃波(ソニックブーム)も飛びます。ただ、やっぱり使い方を間違うと駄目ですね」
 そのまま捕捉を記していくトールギス。

「欲しいニャ」
「駄目です。はい次」
「ちょっと待つにゃ、説明は最後まで聞くにゃ」
 ケイの訴えに耳を傾けるトールギス。
「この武器は、使い方を覚えるまで時間がかかるにゃ。私がもう暫く使って上げるにゃ・・・・って話を最後まで聞くにゃ!!」
 既に手袋をしまい込むトールギス。
 ケイに合掌。

「欲しい。いくらなら売る?」
 アルビカンスがそう交渉に入る。
 ちなみにアルビカンスの説明で問題点であったのは『重量』。軽量化しているとはいえ、ウィザードが使うにはちょっとバランスの問題が有る。
 それでも、この武器は十分効果を発揮していた。
「試作品は売れませんねぇ・・・・」
 そのまま粘ること1時間。
 それでもトールギスは折れなかった為、アルビカンスも断念。
「まあ、もっと改良を続けて、師範できる物を完成してみせますよ。それまで待っていてください」
 そのトールギスの言葉を胸に、一行はパリへと帰還していく。
 なお、本当に余談ではあるが、帰り際にケイは『わんドシ君』の襲撃を受けた。
 1勝1敗で決着は次回に。


〜Fin