アサシンガール〜シルバーホーク暗躍〜

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:6〜10lv

難易度:やや難

成功報酬:4 G 96 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:01月12日〜01月27日

リプレイ公開日:2005年01月17日

●オープニング

──事件の冒頭
 どんよりと曇った空。
 ポツポツと雨が振り始める。
 まるで、何処かで誰かが泣いているように・・・・。

「あの少女達が失踪したのですか?」
 受付嬢は驚いた口調でそう告げる。
 彼女の目の前には、サン・ドニ修道院の院長であるシスター・アンジェラスが立っていた。
「ええ。つい先日まではいつものように元気に振る舞っていたのですが、昨晩から少し様子が違って居まして・・・・そして朝起きたら、3人とも、ベッドから抜け出してどこかに行ってしまったようなのです・・・・」

 では、具体的にシスターからの説明を交えて話を続けよう。
 皆さん御存知のアサシンガール達。
 サン・ドニ修道院には『アンリエット』『アンジェ』『フロレンス』の3人の少女達が住んで居ました。
 最初のうちは笑顔を見せなかった少女達ですが、ここ最近は笑顔を絶やさない優しい少女に戻っていたのです。
 ですが先日、懺悔に来ていた母娘の姿を見てから様子が変わりました。
 母娘の懺悔の後、少女達からは笑顔が消え、昔の冷徹な表情をじっと見せていたのです。
 他のシスター達の言葉には耳を傾けていますが、頭の中は別のことで一杯のようでした。
 ただ、独り言のようにボソリと呟いた言葉が彼女達の言葉を聞いた最後だったのです。
 翌朝、少女達の姿はありませんでした。


──と言うことで
「依頼内容はあの子達を無事に探してきて欲しいのです。何があったのか判りませんが・・・・私には、嫌な予感がするのです・・・・」
 シスター・アンジェラスの依頼はそれだけであった。
 修道院のわずかの蓄えを報酬として置いていくと、シスターは静かに立ちさって行く。
「シスター、最後に聞いた言葉を出来れば教えて欲しいのです・・・・」
「『ターゲットはプロフェッサーと仲間たち』・・・・ただそれだけです」

●今回の参加者

 ea0294 ヴィグ・カノス(30歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea1702 ランディ・マクファーレン(28歳・♂・ナイト・人間・フランク王国)
 ea1819 シン・ウィンドフェザー(40歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea2389 ロックハート・トキワ(27歳・♂・レンジャー・人間・フランク王国)
 ea3641 アハメス・パミ(45歳・♀・ファイター・人間・エジプト)
 ea4473 コトセット・メヌーマ(34歳・♂・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)

●リプレイ本文

●ということで〜出発前準備〜
──冒険者酒場『マスカレード』
 カーンカーン。
 店内からは景気良い音が響いてくる。
 年も明け、ここマスカレードはこの度改装工事が始まった。
 テーブル席は工事の為総て撤去されたが、物好きな冒険者の為にカウンターでは営業が行われていた。
「・・・・取り敢えず、早馬で卿らに身辺警護の強化やジョーンズ教授達に喪注意を促す事は可能ね・・・・」
 カウンターでは、アハメス・パミ(ea3641)が情報屋のミストルティンから話を聞いている。
「そうですか。助かります」
 安堵の表情を見せるアハメスに、ミストルティンはやれやれといった口調で話を続けた。
「問題は、皆がばらばらに居るということよ。プロスト卿は領地にいるから問題はないわ。シャーリィ女史も、石版の関係とか、まあ、ぶっちゃけ色々な事があって、領地からは動けないのですけれど・・・・」
 そう呟きながら、さらに隣のほうをちらりと見る。
──ズズズズズス
 ハーブティーを飲み干すミハイル・ジョーンズ教授その人が、そこに座っているのだから堪らない。
「で、どうして教授はここに居るのですか?」
 そう問い掛けるアハメスに、ミハイルはあっけらからんとした口調で話を始めた。
「残してあった資料を取りにきてのう。年末からこっちに戻っておったのじゃ。自宅は冒険者街の奥じゃて、何かあっても大丈夫じゃと思ったのでな・・・・薬師のラビィの所にも近いしのう」
 いまいち狙われているという自覚の乏しい教授。
「まあ、取り敢えず状況はご説明した通りです。プロフェッサー、ミハイル教授、そしてシャーリィ女史も命を狙われている可能性が有ります。護衛を円滑に行う為に、一旦プロスト領へと戻って頂きます」
 そのアハメスの言葉に、ミハイルは傍らに置いてあった帽子を被ると、ゆっくりと肯く。
「あと・・・・これは噂でしかないのだけれど・・・・アサシンガール達には十分気を付けた方がいいわよ。シルバーホークの組織がどういう者かは判らないけれど、私達情報屋の間でも、アサシンガールについての様々な噂が流れているから・・・・」
「参考までに、どんな噂が流れているのか教えて頂けると助かります」
 アハメスは丁寧にそう問い掛ける。
「・・・・一番極端な噂がねぇ・・・・あの子達、魔法実験により作られた生命体っていう噂があるのよ。それも、古代魔法王国の失われし技術でね・・・・それじゃあ頑張ってね」
 意味深な言葉を残し、ミストルティンは金貨の詰まった袋を受け取ると、そのまま席を立つ。
「さて、こちらも準備が出来ました。私の家までは馬車を使いましょう」
 仮面のマスターこと、アルフレッド・プロストが清掃して姿を表わす。
「よろしくお願いします。今回は貴方の身辺も守る必要がありますので」
 そしてアハメスは、ミハイル教授とアルフレッドを連れて一路プロスト領へと向かった。


●プロスト領〜事前準備はOK?〜
──森林地域
 古城から見えるのは城下街と清涼なる水の集る湖、そして自然の恵をその地にもたらす大いなる森林。
「・・・・流石に、麻痺毒の精製できそうな植物はこの辺りには生えていないか・・・・」
 そう呟きながら植物の選定を行なっているのはヴィグ・カノス(ea0294)。
 街の人々にこの森の事を訪ね、即効性の高い麻痺毒を作る為に該当しそうな植物を探しに来たのであるが、残念ながらそれらしい植物を見付けることは出来なかった。
「取り合えず、もう少し探してみるか・・・・」
 そのまま暫くは探していたものの、やはりそれらしいものは発見できなかった為ヴィグも古城へと戻ることとなった。

──プロスト領古城
「・・・・シルバーホークが私の命をですか・・・・」
 プロスト領古城、領主執務室にて今回の依頼の一連の話を行なっていたのはランディ・マクファーレン(ea1702)。
 以前に1度だけ、この領主の依頼を受けたことのあるランディが代表として状況を説明した。
「ああ。それと当時の貴方の仲間であるミハイル教授、そしてその助手であるシャーリィ女史もターゲットと思われる節がある。教授達は別の仲間が今迎えに行っているが、別の場所での護衛というのは効率的ではない。この古城にて警護を行うのが妥当だと思うが」
 そのランディの言葉に、プロスト卿も静かに肯く。
「事情が事情ですから。彼が私の命を狙っているとすれば、恐らくは彼の持つ魔剣にその魂を吸わせる為でしょう。より強大な力を得る為に、かつての仲間の命を食らわせる・・・・。奴の考えそうなことです。今回の件、大本の原因は私達にもありますから、警護の件についてはよろしくお願いします」
 丁寧に口調でそう告げるプロスト卿。
 そして其の場にシャーリィ・テンプルとロックハート・トキワ(ea2389)が到着。
 しばしの間は雑談に卿じる一行。
「ったく、古代魔法王国までもう少しだってのにろくな事しねぇなシルバーホークの野郎はよっ!」
 そう呟くシン・ウィンドフェザー(ea1819)に、プロスト卿は苦笑。
「ミハイルの手伝いをしているのは貴方たちですか。今度の依頼も、大掛かりな事になりそうですからねぇ・・・・」
 意味深な口調でそう告げるプロスト卿と、ウンウンと肯くシャーリィ。
「領主様は何か御存知ですか?」
 ロックハートがプロスト卿にそう訪ねるが、シャーリィがプロスト卿に目配せを行なった為、それ以上の話を聞くことは無かった。
──ガチャッ
 やがて扉が開き、ミハイル教授とアルフレッド、そしてアハメスが到着。
「教授、次の依頼場所が決まったって本当か?」
 敢えて問い掛けるシンに、ミハイルは静かに口を開く。
「会って早々なんじゃい、まったく。次の依頼はここの地下に決まっておろう!!」 
 ああ、もうバラしているのですね教授。
「それで、次の依頼はいつ頃になる?」
 ロックハートがそう問い掛けると、ミハイルは腕を組んでしばし思考タイム。
「シャーリィは別の遺跡発掘チームで動くから、今度はワシ一人じゃし・・・・ここの地下の結界の解析を終えぬことには、全ての魔人が目覚めて・・・・うーーーむ。来月じゃな」
 キッパリとそう告げるミハイル。
 そんなこんなで、ミハイル教授とシャーリィは研究室から石碑関係をこの古城の一角に運びこむと、当面の間はここでの解析作業に集中。
 プロスト卿も、執務にも一人だけ冒険者を同行、その他のメンバーは少し離れての護衛となった。
 城内を自由に動けるよう、一行は執事を始め城内警護の自警団員達にも紹介された。
 そしてシフトを組み、常に誰かが護衛に付けるように体勢を整えると、いよいよ護衛が開始された。


●そして襲撃〜成る程〜
──城内
 しばし時が流れた。
 一向にアサシンガール達の襲撃してくる気配が無かった。
 いつものようにシフトの交代の時間、プロスト卿の執務室の前で護衛待機していたランディとシンの元に、メイド長が静かにやって来る。
「どうしたのですか?」
 そう問い掛けるランディ。
 メイド長の後ろには、二人のちっちゃいメイドが立っている。
「先日よりパーラーメイドとして雇ったものです。領主様にご挨拶をと思い、伺ったのです」
 そう丁寧に挨拶をするメイド長のロッテンハイマーと、その後で頭を下げずにじっと冒険者達を見つめる二人の少女。
 事前にサン・ドニ修道院著から伺ってきたアサシンガール達の外見と、二人の少女の姿が一致した!!

──ガタッ
 それは正に瞬間の行動。
 二人の少女のうち、恐らくはフロレンスと呼ばれている方がスカートの中からナイフを引抜き、すばやく二人から間合を離れる。
 さらにもう一人、こちらはアンリエットであろう。
 すばやく印を組み韻を紡ぐと、何か魔法を完成させる。
「そんな・・・・」
「二人ともよく・・・・」
 言葉はそこで途切れる。
 ランディとシンの周囲の空気が全て消失。
 絶対真空の空間に包まれ、二人は身体を切り刻まれる!!
(逃げるのか・・・・)
 痛みに耐えつつ真空空間から飛び出す二人。
 そして中で護衛を行なっているコトセット・メヌーマ(ea4473)とロックハートに告げると、二人はアサシンガール達を追跡。
「待て!! 今一度闇の世界に戻るのか? 君達を大切にしてくれた修道員達の元に、光差す未来に戻りたいとは思わないのか!!」
 廊下に出てきたコトセットがそう叫ぶ。
 一瞬だけ、アンリエットの動きが鈍ったような気がするのは、気のせいではないだろう。
 プロスト卿を一人で置いておくわけには行かない為、追跡は二人に任せ、コトセットはそのまま自警団員と合流すると護衛を続けることにした。


──仮設ミハイル研究室
 それは突然の襲撃。
 プロスト卿の元に二人のアサシンガール達が襲いかかったのと同じ時間、ミハイル研究室にも一人の少女が飛込んできた。
「・・・・」
 あらかじめ警備を行なっていたヴィグとロックハート、そしてアハメスは動じることなく武器を構えると、そのままアサシンガール〜アンジェ〜と対峙する。
「一つ訊きたい。今お前達がしている事はお前達が心の底から望んでしている事か? 言っておくが、命令だからだとか生きる為にはこうするしかなかったとか言う答えは無しだ。もし心の底から望んでしている事ではないのなら、さっさと止めておけ。人の生き方は一通りではない。現に、お前達には既に別の生き方が見えているだろう?」
 ヴィグが少女の心にそう叫ぶ。
 だが、眉一つ動かすことなく、じりじりとタイミングを見定めるアンジェ。
「新しいお友達から手紙を預かって参りました。皆、貴女達の帰りをお待ちです。」
 アハメスは優しい口調でそう告げると、懐から取り出した手紙を静かに読み上げる。
 少女達がいなくなったことにより、彼女の身を案じてくれている人たちの想いを、ゆっくりと読み上げるアハメス。
──ポロ・・・・
 表情一つ変えること無かった少女の双眸から、止めどなく涙が溢れる。
「黙れ!! 黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!!」
 床を力一杯蹴り、すばやくアハメスに向かって間合を詰めるアンジェ。
 其の手にかざしたナイフをアハメスに向かって振り上げるが、其の手は中空で止まり、振りおろされる事はなかった。
──ザクッ
 そしてロックハートが静かに近寄ると、アンジェの握っているダガーの葉の部分を握り締める。
「軽く引くだけで、俺の指は全て落ちる・・・・でも、そんなことはしないよな?」
 ニコッと笑みを見せるロックハート。
「・・・・俺は、過去から逃げる事なんて出来ないと思う・・・・だが、過去に縛られてはならない・・・・絶対に・・・・絶対にだ」
「う、うう・・・・うえーーーーーん・・・・うぇーーーーん」
 ダガーを握っていた手を話、其の場にしゃがみこんで泣きじゃくるアンジェ。
 アハメスは、そんなアンジェにそっと近津急いていくと、静かに抱き寄せる。
「後で手紙をゆっくり読んで上げる。パリに帰ろうね・・・・」
 しばらくして、アンジェは泣き疲れたのか眠りに付いた。


●帰路〜アンリエットとフロレンスは〜
──執務室
 残念なことに、アンリエットとフロレンスの二人を追いかけていたランディとシンは二人の足取りを突き止めることは出来なかった。
 どうやら襲撃に失敗したと思った二人は森の奥へと逃走、そのまま消息を絶ってしまったようである。
 少女達を3人とも無事に保護という事は出来なかったものの、アンジェだけは以前の優しいプティ・アンジェに戻った模様。
 そして一行は依頼を終えてパリへと帰還するのだが・・・・。

──ガラガラガラガラ
 アルフレッドの出してくれた馬車に便乗すると、一行はパリへと帰還する。
 その間、ずっとアンジェはそわそわして落ち着かない様子を見せている。
「大丈夫、君が優しい心を取り戻したんだから、今度は俺達が君を守る番だ・・・・」
 コトセットが静かにそう告げると、アンジェはにっこりと微笑んだ。
「しかし・・・・二人はどこに消えたんだろう・・・・」
 シンが窓の外を静かに見渡す。
──シュッ
 と、突然シンの頬の近くを光の矢が飛んでいく。
 それはアンジェの身体に突き刺さると、大量の鮮血が吹き出した。
「アンジェ!! シン、敵は何処だ」
「見えない・・・・駄目だ、どこにも姿を確認することはできない!!」
 慌ててアハメスがアンジェの傷口を確認するが、飛んできたはずの矢がどこにも見当たらない。
「窓を締めて!! 楯を使ってアンジェをカバーして!!」
 自分自身もアンジェに多い被さろうとするアハメスだが、それも効果が無かった。
──ドズトスドスドスドスッ
 天井から降り注がれる大量の光の矢。
 それを全身に受けるアンジェ。
 降り注がれたムーンアローは楯など無かったかのように貫通し、アンジェの身体に突き刺さる。
──グフッ!!
 口から鮮血を吐き、空ろな表情で天井を見上げるアンジェ。
「・・・・せて・・・・もう一度・・・・」
「それ以上喋るな!!」
 ランディが口移しでヒールングポーションを飲ませる。
 だが、それも効果がない。
 やがて、アンジェは静かに息を引き取った。
「むかーし昔の物語。あるところに、アンジェとアンリエットっていう仲のいい姉妹が住んでいました。アンジェは真っ赤なリボンが、アンリエットは青いエプロンの良く似合う女の子でした‥‥」
 修道院で教えてもらった、アンジェのお気に入りの物語。
 それを静かに話しつつ、アハメスはアンジェの髪をそっと撫でる。
──ポトッ・・・・
 アンジェの頬に落ちるのは誰の涙であろう。
 
 そして後日。
 サン・ドニ修道院では、静かにアンジェの葬式が行われた。
 特例としてランディ達男性も、アンジェの最後を見とった者達として葬送に参列、最後の別れを告げていた。

 雨が降りしきる。
 これは、誰の流した涙であろう。

〜Fin