染料を捜してきてください
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■ショートシナリオ
担当:久条巧
対応レベル:1〜3lv
難易度:難しい
成功報酬:0 G 78 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:07月13日〜07月18日
リプレイ公開日:2004年07月16日
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●オープニング
──事件の冒頭
「‥‥なかなか良い色がでないのよねぇ‥‥」
冒険者ギルドカウンターでは、一人のギルド員に向かって、貴婦人が一人、そう呟いていた。
依頼人はパリ郊外の染物屋。
パーティーの為に新しくドレスを新調したいと、お得意様の貴族から注文を受けたのはよかったが。
いざ、ドレスを仕上げてみると、この色はダメ、あの色はこのドレスの形に合わないいなどどクレームが走りまわったのである。
知っている限りの様々な色を調合してみたが、そのどれもが御気に召されなかったらしく、染物屋の女主人であるこの貴婦人は頭を悩ませていたらしい。
「注文のドレスを仕立てるために、なんとかいい色の出る染料がほしいのよ。御願い、このギルドには色々なエキスパートが集まっているんでしょ? 何処かから、いい色の出る染料を捜してきて欲しいのよ‥‥」
その貴婦人の言葉を静かに依頼書に写しながら、詳細を貴婦人に問い合わせるギルド員。
「なにか、これといったものは無いんですか? 見当の付いている植物とか鉱石とか‥‥」
この時代の染め物は、大抵植物系、動物系、鉱物系の天然染料に別れている。
「‥‥鉱物系は野暮ったくてダメね。動物系は、小安貝から『貝紫』は手に入っているから、それ以外の良い色を捜してきて欲しいところね。あ、そうそう」
ポン、と手を叩きながら、貴婦人が何を思い出したようだ。
「植物系染料が今、ちょうど切らしているから、それが手に入ればいいわ。じゃあ‥‥」
そのまま注文を書き取ると、ギルド員はそれを掲示板に張付けた。
「染料捜しですかぁ‥‥その道のエキスパートさんが集まってきそうですわね」
ギルド員はそう呟きながら。、掲示板に依頼書を張付けた。
●リプレイ本文
●大森林〜そこは人が入るところでは‥‥〜
──森の中心部にて
依頼を受けた冒険者一同は、まず街道ぞいに目的地の森へと向かった。
そして目的の森にたどり着くと早速街道を離れ、昼なお暗い森の中に入っていく。
やがて森のほぼ中央と思われる位置にたどり着くと、ようやく一行は荷物を置きひと息ついた。
「大体この辺ですね。ここらでベースキャンプを設置しましょう。ヴォルディ、荷物を御願いします。あと周囲の情況と安全性の確認もよろしく御願いしますね」
それはナスターシャ・エミーリエヴィチ(ea2649)。
務めて冷静にヴォルディにそう告げる。
「ハァハァハァハァ‥‥判ったっつーのっ」
それはヴォルディ・ダークハウンド(ea1906)。
そのまま周囲の情況を確認し、その位置が安全であると判断。
そして荷物を開けて確認。
簡易テントなど入っている様子もないため、とりあえず発泡酒で喉を潤す。
「ぷっはぁぁぁ。まったく‥‥毎回毎回いいように使いやがって。オレは荷物持ちじゃねーっての」
そう文句を垂れるヴォルディの元に、天宵藍(ea4099)とジィ・ジ(ea3484)が近寄っていく。
「まあまあ。か弱い女性にこんな重い荷物を持たせるのはちょっと考えものでしょう。そういう力仕事は、わたくしたち男性陣の仕事ですよ」
「ジィさんのいうとおりだな。ほれ!!」
ジィの言葉に天(ティエン)が続く。
そして荷物の中からロープと毛布を取り出すと、近くの樹に縛り付けて簡易テントを作りはじめる。
「それで、必要な苔の量って‥‥まさかこれ?」
レム・ハーティ(ea1652)が、ヴォルディのバックパックの中から出てきた『折り畳まれたラージザック』の上をパタパタと飛び回る。
「ん? ああ。今回の依頼人から預かってきた奴だな。その袋二つ分らしい」
あらかじめ必要なもので借りられるものは借りてこようと、ヴォルディは出発前に依頼人の元を訪ねていた。
そこでこの袋を受けとってきたらしい。
「まあ、二つで済むんならいいんじゃねえか?」
そう簡単に呟くヴォルディ。
「なにも知らない人は気楽でいいわね。ラージザック二つ分の苔を集めるのに、いったいどれぐらいの群生が必要なのか‥‥無知というのは本当に恐いわ‥‥」
そう激しい突っ込みを入れるのはナスターシャ。
ちなみにこの二人、微妙な関係らしい。
「まあまあ二人ともー。取り敢えずベースキャンプは完成したんだし、あとは手筈通り周囲の散策を開始しましょうよー」
リィル・コーレット(ea2807)が二人の間に入りこみ、そう告げた。
そして一同はベースキャンプの完成を待ち、二手に別れて周囲の散策を開始した。
●A班の散策情況〜吸い付かれました〜
ティエン、リィル、ジィの3名は周囲の散策を開始。
「ふぅん‥‥ここから先は小さな沼地が広がっていてと‥‥」
サクサクと進み、周囲の情況を確認するリィル。
余った布地にペンで簡易地図を作りあげ、群生地を発見した場合に書込んでいこうと思ったらしい。
万が一迷わないように、途中の木々に毛布からほぐした糸を縛り付け目印にしている。
ジィは太鼓を叩きながら動物が近寄ってこないように大きな音を立てつつ移動。
「‥‥位置的には、この付近なら群生していてもよさそうですけれどね」
ジィが持ち前の土地感で周囲の探索を開始。
沼地が近く湿気の高い位置である為、このあたりは条件がある程度整っていた。
「この苔は、また別の種類か。これも違うな」
ヒョイヒョイと次々と群生を見つけては、ティエンがそこに生えている苔の種類を調べる。
「ふむふむ。此処のは違うと‥‥こっちのは?」
沼の奥にリィルが群生地を発見したらしい。
そのまま沼地を迂回して群生地に向かう。
──ポトポトッ
と、木の上から何かがポロポロと落ちてくる。
リィルとティエンはヒョイヒョイとうまく躱わしていくが、ジィは頭からそれを被ってしまう。
「なんでしょう?」
その一つをひょいとつまみ上げ、じっと観察するジィ。
──ムォゾムォゾッ
それはヒルである。
ジィの首に一つそれが吸い付いていた。
「‥‥ティエンさん、済みませんが御願いします」
やれやれという表情で、ティエンがジィの首に吸い付いているヒルを取り除く。
──バシュッ
たかがヒルなれど、ティエン手加減無用のオーラショット。
ジィの首の当たりでぐちゃぐちゃにくだけ散るヒル。
「ありがとうございます。もう少し手加減して戴くと助かるのですが‥‥」
「火種もってきていないからな。魔法で吹き飛ばすしかないだろ」
ティエン、相変わらずの毒舌。
そんなこんなで沼地を越えて、たどり着いた群生地。
「んー? ああ、こいつだこいつだ」
ティエンが苔を観察。
どうやら目的の苔であったらしく、早速回収してバックパックに放り込んでいく。
「あれ? 目印つけてあしたみんなで回収するんじゃないの?」
リィルがキョトンとした表情でそう告げる。
「たったこれだけの量の為に、また明日来るのは面倒くさい。持っていけるなら今持っていったほうが効率がいいだろ?」
そのティエンの言葉もごもっとも。
取り敢えず3名はそのままそこらへんの苔を回収。
そして今しばらく周辺を散策していたが、それ以上の収穫はなかった。
●B班の散策情況〜牡丹、散る〜
こちらB班。
移動中にも関らずヴォルデイとナスターシャの二人は口喧嘩を続けている。
最初のうちはレムも止めには行っていたのだが、やがてそれが二人のコミュニケーションだなぁと自覚、そのまま二人のやり取りを楽しんでいた。
「‥‥結構奥まで来ちゃったねぇ」
手書きの地図を見ながら、レムが二人に呟く。
「こっちの方は岩肌が多いから、可能性としては十分にあり得るでしょ?」
土地感を頼りに歩いていたのであるが、こちらは結構いい感じになっていた。
「まあ、別のものもあり得るというところか‥‥」
スラリとロングソードを引き抜くと、近くの茂みに向かって構えるヴォルディ。
「何?」
そのナスターシャの問い掛けと同時に、茂みから一匹のイノシシが飛び出した。
だが、既にそれは予測済み。
──スパァァァァン
一撃でイノシシを屠るヴォルディ。
「これで晩飯には苦労しないと」
苔の採取ではなく晩飯の採取を行ってしまったヴォルディ。
「まあいいわ。それよりも、森が開けてきたみたいね」
そのナスターシャの言葉に、リィルがパタパタと飛んでいった。
「あわわわわわわっ。ストップ、ストーーップ」
慌てて戻ってくるリィル。
「どうしたの?」
「道が無くて、ごつごつした崖がある」
ゆっくりとそこに近付いていく3人。
たしかにそこは崖になっていた。
そしてその中腹辺りに、苔の群生がちらほらと見える。
「結構あるな‥‥」
「苔? それとも高さ?」
ヴォルディの言葉に素早く突っ込みをいれるナスターシャ。
「どっちもだ。本格的にやるのなら、明日にでも皆を連れてきたほうがいいな‥‥」
そのヴォルディの言葉に二人とも納得。
そして3人はベースキャンプに戻り情況を説明した。
なお、イノシシは皆さんで美味しく戴いた模様。
イノシシに合掌。
●2日目〜思ったよりも楽だったかな〜
さて、いよいよ二日目である。
「‥‥いい感じですね」
ジイが体に縛り上げたロープの上体を確認。
崖際の木にロープを固定すると、ジィが崖をゆっくりと降りていく。
サポートにはティエンとヴォルディの二人が付き、二人でロープを支えていた。
「なるほど。この当たりの苔は総てそうですか」
「その付近のはウメノキゴケだ。右手のは違う奴だから摘まなくていい」
そのティエンの指示に従い、背中に背負ったバックパックに苔をヒョイヒョイと摘みとっていくジィ。
クライミング技術があるジィならではの技である。
「すごいねー」
「これは違う奴だねー。こっちのはそうだねー」
レムとリィルのシフールチームは飛びながら少しずつ採取。それを崖の上で待機しているナスターシャの元にもっていく。
ナスターシャはそれをさらに選り分け、染料として使用可能なものだけをラージザックに詰めていく。
やがて袋が一杯になると、ナスターシャは皆に声を掛けた。
「これだけあればもう大丈夫ね。使えるものだけ袋に詰めておいたから、あとは手を付けないでおいて」
また来たときのためにも、手を付けずに置いておこうという配慮であろう。
「ふう。年寄りにはきつい仕事ですよ」
そう告げると、ジィは体に巻き付いたロープをほどく。
そして一同はベースキャンプへと戻り、そこで一晩過ごした後、翌日にはパリに向かって帰路についた。
●パリ〜期日に間に合いまして〜
──染物屋
「ああ、これよこれ。本当に助かったわ‥‥」
予定よりも1日早く帰還した冒険者一行。
ギルドには立ち寄らず、苔の詰まったラージザックを真っ直ぐに染物屋までもっていった。
「とりあえずこれで足りる筈だな」
ヴォルディがぶっきらぼうに呟く。
「ええ。助かったわ。あとはギルドに戻って報酬を受け取って頂戴ね。それとこれは、予定より早くもってきてくれたので、ほんのお礼ね」
銅貨が入った小袋をナスターシャに手渡すと、女主人はそのまま作業部屋へと戻っていった。
そして一同はギルドに戻り報告書を提出。
任務終了の報酬を受け取ると、酒場で先程受け取った銅貨を山分けにした。
思ったよりも簡単に採取出来たのは、おそらくはチームワークの賜物であろう。
そう思いながら、ナスターシャは仲間たちの顔を見ながら静かに呟いた。
「良い感じのチームね‥‥」
なお、ナスターシャに御金を借りていたヴォルディが、その場から早く逃げ出したかったということは、あえて語る必要もあるまい。
〜FIN〜