ふらり冒険〜修行にいこう!!〜

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:5〜9lv

難易度:やや難

成功報酬:5

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:02月11日〜02月26日

リプレイ公開日:2005年02月18日

●オープニング

──事件の冒頭
 喧騒の跡絶えない酒場。
 いつもの冒険者酒場は、あいも変わらず活気に満ちている。
 冒険に出かけていた者たちの祝杯の音。
 冒険に向かう前の景気付けの一杯。
 常連客はウェイトレスをからかい、そのまま楽しい一時を過ごしている。

 だが。
 ある冒険者達は気になる事があった。
 はたして自分達は、ちゃんと依頼をこなせるだけの実力を有しているのだろうか?

 ここ最近、凶悪な魔物たちを討伐する依頼が多くでている。
 ドレスタットのドラゴン。
 南方未開拓地域のオーグラ。
 さらには暗躍する秘密結社。
 アサシンのコードネームを付けられた少女達。
 そして財宝の守護者達。

 それら凶悪な魔物と戦って、果たして無事帰還することができるのだろうか?
 自分達の腕では、到底無理なのでは?
 敵に囚われている少女達を無事に救い出すことができるのか?
 遺跡発掘の依頼にて、その奥に眠る守護者を打ち破る事が出来るのか?

 そう考えた者がいた。
 そして静かに席を立つと、ゆっくりと空を見上げてこう呟いた。
「修行にでるか・・・・」

●今回の参加者

 ea0186 ヴァレス・デュノフガリオ(20歳・♂・レンジャー・エルフ・ロシア王国)
 ea0353 パトリアンナ・ケイジ(51歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea1322 とれすいくす 虎真(28歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea1944 ふぉれすとろーど ななん(29歳・♀・武道家・エルフ・華仙教大国)
 ea2884 クレア・エルスハイマー(23歳・♀・ウィザード・エルフ・フランク王国)
 ea4442 レイ・コルレオーネ(46歳・♂・ウィザード・人間・イギリス王国)

●リプレイ本文

●はるばる来たぜ江戸村〜修行だぁ〜
──宮村剣術道場
「頼もう!!」
 ガラッと扉を開き、威勢のいい声を上げるパトリアンナ・ケイジ(ea0353)。
「こちらに剣豪の宮村殿がいらっしゃると伺って参りました。是非とも修行を付けて戴きたく、推参したところであります!!」
 丁寧にそう告げるとれすいくす虎真(ea1322)。
──バサッ・・・・バサッ
 と、道場の真ん中に広げてある笠を片付けつつ、宮村が瞳を輝かせて二人の元にやってくる。
「修行? 短期間の弟子ね? もう熱烈大歓迎!! それで授業料はねぇ・・・・」
 いきなりお金の話を持ち掛けてくる宮村。
「剣豪とはいっても・・・・金には執着するものなんだねぇ・・・・」
 やれやれという口調でそう告げるパトリアンナ。
「最近は、冒険者訓練所で実戦訓練の講師を務めていたのよ。でも、今月はちょっと飲み代がかさみすぎちゃって・・・・」
 パチパチと携帯用アバカスを弾きつつ、何かを計算する宮村。
「うーん。大体これぐらい貰わないとねぇ・・・・」
「では、これを・・・・」
 アバカスに並ぶ桁を見て、虎真が懐から『シェリーキャンリーゼ』を差しだした。
──ジャラッ
 アバカスに並ぶ石を全て0に戻すと、宮村はシェリーキャンリーゼを懐にしまい込む。
「食事は朝晩、寝床は道場ね。明日から早速特訓を始めるから覚悟して!!」
 ああ。
 お酒で釣るとよいのですね。


──のるまん神社
「私、オーラしか使えませんがよろしいですか?」
 巫女装束に身を包み、箒を携えた徳河葵嬢がそう一行に告げる。
 クレア・エルスハイマー(ea2884)とヴァレス・デュノフガリオ(ea0186)、そしてレイ・コルレオーネ(ea4442)の3名は、ここのるまん神社にて魔法の特訓をしようとやってきたのである。
「巫女というお仕事をしていらっしゃるので、てっきり魔法が専門かと思っていましたが・・・・」
 クレアがそう問い掛けるが、葵は頭を左右に降る。
「となると、これは参ったな・・・・」
「頼みの綱は貴方でしたのに・・・・」
 ヴァレスとレイが頭を抱える。
「・・・・何かお困リですか? 冒険者の皆さん」
 と、声を掛けてくる男性が一人。
「あ、これはご苦労様です、領主様。本日は御視察ですか?」
 丁寧にそう話し掛ける葵嬢。
「ええ。先程、村長とは話を終えました。暫くはこの辺りでブラブラとしていようかと思っていますが」
 その言葉に、クレアは静かに口を開いた。
「初めてお目にかかります。私はクレア・エルスハイマーと申します。領主様は確か、プロフェッサーという称号を持っていたと伺っていますが・・・・もしよろしければ、私達に魔法に付いてのレクチャーお願いしたいのですが」
 この領主『レナード・プロスト』。
 かつては『プロフェッサー』の異名を持つ程の魔法の達人。現役を退いて現在はこの地方の領主として収まっているものの、魔法使い関係者の中では、けっこう有名。
「お願いします。私はレイ・コルレオーネと申します」
「俺はヴァレスだ。頼む!!」
 その熱心な頼みにイヤとは言えないプロフェッサー。
 かくして、領主自ら魔法のレクチャーを始めることとなった。


●宮村道場〜そして実戦〜
──道場
「はぁはぁ・・・・まだまだぁ!!」
 目の前で木刀を構えている宮村に対して、パティは両手を開き、指を延ばすスタイルで低く腰を落とす。
「相手がどんなに剣の達人でも、初手を見切り、そして掴むことが出来れば『投げ技』を得意とする貴方は勝機を見られるわね。ただ、色々な流派が存在するから、それを体で覚える必要もあるわ」
 トッ・・・・と滑るように間合を詰めるミヤムゥ。
 そしてその初太刀を見切ると、素早くその腕を掴むパティ。
「必殺!! ザ・パトリアンナレボリューション!! 轟(とどろき)っ」
 素早く取った腕を軸に背後に回るパトリアンナ。ミヤムゥの背後から一気に羽交い締めの体勢を取り、そのまま両腕とクビを固める。
 そしてミヤムゥの体を持ち上げるように浮かせ、背骨が折れるかというギリギリまで背後に反り、堅い床にミヤムゥを叩きつける!!
 背の高いパティならではの豪快なる技である。
 この投げだと受け身を取る事ができず、脳天からダイレクトに床に叩き込むことが可能。
 ミヤムゥとの間に生まれた必殺技である。
「フゥフゥ・・・・おおむね合格ね・・・・あと、絶対に気を付けないといけないのはカウンター攻撃。貴方の攻撃を誘ってきてカウンターで仕留めてくる場合もあるから。逆に貴方がカウンターアタックをマスターすれば、オーガに金棒ってところかしら?」
「これで・・・・殴りクレリックに勝てる!!」
 自信を付けたパティだが、ミヤムゥはまだ容赦なし。
「まだよ。あの殴りクレリックさんは、風の噂で『12の神聖体術』というのが伝承されていると聞くわ。なら、貴方には私が『宮村式徒手戦闘術』を伝授してあげる・・・・。と、ちょっと休んでいてね。次は貴方でしょ? まずは素振りから見てあげる」
「ははは・・・・ではお願いします!!」
 静かに構える虎真。
 そして意識を剣先に集中すると、素早く一閃!!
「ふぅん・・・・五行の構えは伝授されたかしら?」
 そのミヤムゥの言葉に、虎真は切っ先を下げる。
 そのまま星眼の構えを取ると、刃先を上下に動かし、じっと意識を集中させる。
「鶺鴒の尾・・・・だけです。私が師範より学んだ一つの構え。北辰流の初にして終。切り付けるのではなく、打突による攻撃・・・・」
 そう心を落ち着けて告げる虎真。
「師範は千葉さんかしら? それとも小千葉さん?」
「小千葉師範です」
 ふぅんと呟くと、ミヤムゥはそのまま素振りを止めるように指示、さらさらとこれからのスケジュールを組むと、それを虎真に手渡した。
「しばらくの間、このスケジュールで鍛えてください。それと、貴方は以後、その刀で『斬る』事を禁止します。打突・・・・『突き』が貴方にとってもっとも向いているから・・・・打突の手数を増やし、一手一手の速度を上げる。踏込みの鍛練、その他色々とね・・・・一日一時間だけ、貴方との組み手もいれましょう。パトリアンナさんも、体力強化については虎真さんと一緒にお願いします」
 それを告げると、ミヤムゥはそのまま二人の修行をじっと見続けていた。


●魔法の鍛練〜魔法使いに大切なことって?〜──江戸村外れ
「魔法使いにとって必要なことですか?」
 それはレイの声。
 講習の最初に出たプロスト卿の言葉。

 魔法使いにとって大切な事とは?
 
 その言葉をゆっくりと噛み締めつつ、3人は静かに何かを考えている。
 だが、その答えは導かれる事は無い。
 絶対的な答えなど、存在しないのだから。
「魔法を使う者の中に答えはあり、その答えは千差万別・・・・というところですか?」
 クレアの答えに、プロストは満足している。
「では、魔法を行使するに当たって必要なことはなんですか?」
 今度の答えもまた、人それぞれ。
「精霊に対する知識?」
「高い魔力か?」
「・・・・様々な術?」 
 そのどれもが正解であるが、プロスト卿はきっぱりとこう告げる。
「魔法に必要なものは、限界までに高められた集中力です。それと、鋼の如く研ぎ澄まされた感覚でしょう。例えば冒険において、魔法使いがどのポジションにいるのかという事を考えてください。依頼によっては、まったくの無能者であったことはありませんか? それとは対象的に、魔法使いが中心を飾る事もあるでしょう」
 みな、今までに受けていた依頼を一つ一つ思い出してみる。
「自分の持っている魔法がどこまで使えるのか。そこから考えてみるのもよいかも知れませんが、何よりも魔法の可能性を高くするものに、『高速詠唱』があります・・・・これは、ただ『高速で魔法を唱えられる』というだけではないのですから・・・・例えば、貴方はどのような魔法を使えますか?」
 プロスト卿は、そうクレアに問い掛ける。
「クリエイトファイアーとバーニングソード、そしてファイアーボムですわ」
「グッド。ではそちらにどうぞ」
 そう告げてクレアをちょっと離れた場所に立たせる。
「4大精霊魔法というものには、力のバランスが有ります。それぞれが何かの上位であり下位である。それを理解し、そして・・・・そこから私達に向かって、ファイアーボムを唱えてください」
 そのプロストの言葉に、クレアは躊躇するが、すぐさま詠唱を開始する。
「では・・・・炎よ!!」
 クレアは詠唱を開始する。
「魔法の発動に紡がれていく言葉には一定の法則があります。それは『おおむね同じ』でありますが、最後の決めの部分においては、自分独自の言葉を使用する事が多いのです。そして魔法特有の輝きと詠唱の前の部分を理解すれば、飛んでくるであろう魔法も理解できるでしょう」
 プロストの言葉が終ると同時に、ファイアーボムがレイ達のいる場所に向かって飛来する。
「そして、目に見えて形を為すものであれば、より上位の魔法で相殺する事も可能!!」
 プロストが素早く高速詠唱を開始する。
 そしてプロスト卿は、その手の中に瞬時にウォーターボムを発生させると、飛来してくるファイアーボムに叩き込む。
──バシュュュュッ
 そして対消滅。
「そ、それは私達にも出来るのか?」
 レイがそう問い掛ける。
「ええ。高速詠唱さえあればね・・・・それと、魔法についてもっと熟知する事も必要でしょう。貴方はどのような魔法を使用しますか?」
 その問いに、レイも静かに返答する。
「バーニングソードと、フレイムエリベイションだ・・・・それで、バーニングードの効果時間を効率よく上げる方法はないだろうか? 例えば・・・・効果が途切れる前にさらに発動させて、時間を延長するとかは?」
「それは不可能ですね。私はバーニングソードをエンチャント系というタイプに区分しています。それは1度発動したら、効果時間が途切れるまでは同じ魔法を受けつけないのです。これも高速詠唱を用い、切れた瞬間に再発動することで効率よくすることができます。それとフレイムエリベイションもですね。貴方はエンチャンター(付与者)というタイプの魔法使いに分類されます」
「つまり・・・・精神に作用する魔法を相手が使うと判断できた場合、高速詠唱で相殺することが可能と言うことですか?」
 レイの問いに、プロストは頭を左右に降る。
「ちょっと違いますねぇ。精神に作用する魔法は『軌跡』を伴いません。一つの対象として『視覚で捉える』ことが出来ないのです。その場合は、相手が発動する瞬間にこちらも自身にフレイムエリベイションを発動させればOK。まあ、色々と実戦してみるのも良いでしょう。得意な魔法を唱えてきてください」
 と、レイは手にした杖にバーニングソードを唱える。
 瞬時に杖が燃え上がり、それをレイはブゥンと構えた。
「行きます!!」
 そして素早く殴りかかるレイ。
「火の上位は水。即ち、水の魔法により、その武具の威力を軽減してしまうと、只の杖になりさがりますけれど・・・・」
 素早く魔法を詠唱すると、プロストはその一撃を腕で受止める。
──ガシィィィッ
 その皮膚は炎にら焼かれることはない!!
「それは・・・・レジスト?」
「ええ。対炎戦においては必要ですからねぇ・・・・こうすれば、炎のダメージは軽減できますし、ダメージは防具で防ぐことが出来ますから致命傷にはなりません。もっとも、命中するまえに『アイスコフィン』によって相手を動けなくかするという方法もありますが・・・・」
 その実戦も組み込んだレクチャーにより、一行はさらに魔法についての関心を高めていく。

 炎は水の力により鎮められる
 水は風を以って抑制される
 風は大地により阻まれる
 そして大地は火に侵食される

 それぞれが上位と下位の関係を持っている事をいまさらながら、思い知ることになった。
「プロスト卿!! 俺はこれを使うための修練を続けてきた!! 魔法の精度をさらに上昇する事は可能なのか?」
 ヴァレスがプロスト卿にそう問い掛ける。
 その手には大量のスクロールが握られていた。
「スクロールですか・・・・これは書き上げた者の魔力に関係しています。初心者が書き上げたものであれば、それは正につたない魔力しか発揮することが出来ません。ですが、より強大な魔力と知識を有するものが書き記したものであれば、大地を激震刺せることも、巨大な山を一瞬にして消滅させてしまうことも可能でしょう・・・・貴方はウィザードではないのですか?」
「ああ。レンジャーだ・・・・レンジャーは自分でスクロールを書き上げることはできないのか?」
 不安そうな表情でそう問い掛けるヴァレス。
「そんな事はありませんよ。貴方も精霊碑文学を学んでいるのであれば、それらの知識を用いて、『スクロールを媒体に精霊に語りかける』事は可能でしょう。もっとも、語りかけるだけであり、彼等の声が聞こえるわけではありません。そしてその複雑とも言える文字配列を少しでも間違えると、精霊は力を貸しません。さらにもう一つ、スクロールの作成には長い時間を必要とします。ただ手にとってサラサラーーッという訳ではありません・・・・試しに、一つ作ってみてくれますか?」
 そのプロストの言葉に、ヴァレスはこころを 落ち着けてスクロールを作り始める。
 バックのンかからペンと空スクロールを用意し、静かに文字の配列を刻みこむ・・・・が。

──1時間後

「では・・・・お借りしますね・・・・」
 プロスト卿はヴァレスの書き上げたスクロールを手に取ると、それをじっと見つめる。
 詠唱も印も必要としないスクロール。
 だが、プロストはそれを発動させる事は出来なかった。
「・・・・文字配列に間違いが。そしてこの文字はまだ力を宿していません。もっと知識を付けて、そして時間を掛けて文字に力を封じ込める気持ちを身に付けてください。レンジャーである貴方には長い道程かも知れませんが、まずは文字に対して熟知する事です。達人の域にまで高めることが出来れば、ひょっとしたら・・・・」
 その言葉に、ヴァレスもまた精霊碑についての知識を深める決意を固める。


 そんなこんなで長かった依頼も無事に終り、一行はパリへと再び馬車に便乗して帰還していった。

〜Fin

●ピンナップ

クレア・エルスハイマー(ea2884


PCシングルピンナップ
Illusted by 澤村瑞美