【ノルマン江戸村】蔵開き!!

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:6〜10lv

難易度:やや易

成功報酬:3 G 72 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:02月14日〜02月24日

リプレイ公開日:2005年02月20日

●オープニング

──事件の冒頭
 いつもの冒険者ギルド。
 いつものようにカウンターでは、薄幸の受付嬢が依頼人からの説明を聞いていた。
「こ、この味はぁぁぁぁぁ。まったりとしていて、それでいてまったり。つまりまったり・・・・美味しいですねぇ」
 手にした酒を一口呑みつつ、薄幸の受付嬢がそう告げる。
「じゃろう? 絞ったばかりの酒じゃよ。それでのう、今回の依頼というのは、この酒を運搬するので、その護衛を頼みたいのじゃよ。知人に頼まれて、3つの村を回らなくてはならないのじゃが、旧街道を通らなくてはならぬから、色々と厄介ごとがあるといかんじゃろ?」
 と説明するのは、ノルマン江戸村から遠路はるばるゃってきた南部老人。
 ご苦労さまです。
「まあ、最近旧街道は物騒ですし、わざわざ通らなくても良いのでは?」
「急がないと、酒の味が落ちる。問題は山賊とモンスター、そしてうちの運び手達でなぁ・・・・」

──それでは、どんな問題か説明しよう。
 山賊、モンスターは説明不要、ここでの問題点は『運び手達』。
 というのも、本国ジャパンでも度々起るのが、『酒の長距離輸送』による品質劣化。
 樽や甕に詰められた酒は、馬の背中や馬車に揺られ、まろやかな味わいがさらに強くなる。
 それは良い。
 問題は、『運び手達によるつまみ呑み』。
 途中途中で酒を呑み、足りない分は水を加えて護魔化す。
 長距離となると、どんどんと酒が薄くなり、現地に到着する頃には水のような酒になっている事もあるという。
 運んできた酒の中で、鯉などの魚が元気に泳いだりする事から『泳ぎ酒』などと呼ぶ輩もいる始末。
 そのような『下らない酒』にならないよう、監視もお願いしたいというのである。

──と言うことで
「では、この依頼書を張付けておきますね」
「うむ。まあ、もう少ししたら、次の仕込みを手伝って貰うかもしれないので、その時もよろしく頼むぞ」
 そう告げて、南部老人は静かにギルドを立ちさって行った。

●今回の参加者

 ea0907 ニルナ・ヒュッケバイン(34歳・♀・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 ea1587 風 烈(31歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea1703 フィル・フラット(30歳・♂・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea3026 サラサ・フローライト(27歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea4206 ケイ・メイト(20歳・♀・クレリック・シフール・イギリス王国)
 ea4919 アリアン・アセト(64歳・♀・クレリック・人間・ノルマン王国)
 ea6561 リョウ・アスカ(32歳・♂・ファイター・人間・イスパニア王国)
 ea6707 聯 柳雅(25歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)

●リプレイ本文

●わんドシ君に蹴りいれよう〜りたーんまっち〜
──ノルマン江戸村
「うにゃぁぁぁぁぁぁぁぁ」
 今回の依頼を受け、迎えの馬車に乗って一路『ノルマン江戸村』にやってきた御一行。
 到着して早速、江戸村名物『わんドシ君』に襲撃を受けるが、その攻撃を素早く上昇して交わすケイ・メイト(ea4206)。
「決着は帰りに付けるにゃ!! それまで待つにゃ!!」
 上空でそうわんドシ君君にそう叫ぶケイだが。
──ヒュルルルルルッ
 何処からともなく飛んでくる一つの包み。
「ケイ!! それを使うのぢゃ!! 改良した『キャットネイルグローブぢゃ!!』」
 下で鍛冶師のトールギス氏がそう叫ぶ。
 そしてそれを受け取ると、ケイは素早く手にはめて・・・・墜落。
──ドシュッ
「ぢーーぢゃん重いにゃ〜」
 身動きのまったく取れないケイ。
──キラーーーン
 そしてそのケイの近くに立つと、上空から見下ろしつつ拳を構えるわんドシ君。
「では、これで2勝0敗だワン!!」
──ドッゴォォォォォン
・・・・・・
・・・・
・・
 のびているケイに合掌


●と言うことで蔵元〜う、旨い!!〜
──南部酒造
「おお、待っておったぞ。こちらももうすぐ甕詰めが終るところじゃ」
 蔵の内部には、醸し出された米と酒の香りが漂っている。
 その奥では、大きな樽から甕にお酒を汲み出している南部老人の姿があった。
「冒険者ギルドから来ましたニルナ・ヒュッケバインと申します。今回の護衛任務、引受けさせて頂きました」
 そう挨拶をすると、ニルナ・ヒュッケバイン(ea0907)は他の仲間たちを一人ずつ紹介していく。
「では、そろそろ出発の準備をして貰おうかのう。おーーい親方、こちらが冒険者の皆さんじゃよ。ちょっと挨拶してくれんか?」
 その南部老人の声に、奥のほうで馬車の準備をしていたジャイアントのおぢさんがゆっくりとやってくる。
「あー、これはご苦労様です。今回運搬を行う『ヴェルナール』と申します。こいつらはうちの人夫達。まあ、性格はごっついですが、悪い奴ではないのでよろしく頼みます」
 そのまま挨拶を行うと、冒険者一行も甕の積み込を開始する。
「この荷物と甕は何方のだ? 依頼の酒甕とごっちゃにならないようにしてくれ」
 そう問い掛けるのはサラサ・フローライト(ea3026)。
「ああ、すまんすまん。俺達の食糧と水だ。食い物とかは、酒とまとめておいたほうが管理が簡単だと思ってな・・・・」
 そう告げてから、ヴェルナールは自分達の荷物と酒甕の間に、毛布などを丸めたもので仕切を作る。
「よし、これでぶつかっても割れないだろう?」
「まあ、それなら良いが、できるなら別の馬車に運んでほしいのだ」
「いや、そうなると、馬車での休息を取るときに邪魔になるだろう? 今までもこうだったから、今回もこれで頼むよ」
 パン、と柏手を打って頼み込むヴェルナール。
「・・・・取り敢えずは了解した・・・・」
 そのまま作業は続く。
「こ、これは・・・・」
 詰め込み作業も無事に終了。
 これからの道中になにも起こらないようにと、南部老人は冒険者を始めとする全員に酒を振る舞った。
「あら、これがジャパンのお酒ですか。結構美味しいのですね・・・・」
 アリアン・アセト(ea4919)が嗜み程度に一口飲んで、そう感想を述べる。
「前に酒を仕込んでから早2ヶ月。いや、結構気にしてたんだよな・・・・ああ・・・・仕込んだ当初よりも美味くなっている・・・・」
 銘酒『極楽とんぼ』に舌鼓を打つのは、醸造したフィル・フラット(ea1703)。
「じいさん。よければこのシェリーキャンリーゼと俺が前に仕込んだ酒の交換を是非・・・・」
 そう頼み込むフィルに、南部老人は小さな甕を一つ、ポンと手渡す。
「道中はこれで足りるじゃろう? 持っていきなさい」
 そのまま甕を手に、小躍りするフィル。
「あ・・・・私にも分けてくださいますか?」
 ニルナはパリで待っている恋人に、お土産として持っていきたかったのであろう。
「まあ、まだ有るからのう・・・・恋人とじゃな。ほれ」
 ヒョイと小さな甕を二つ、ニルナに手渡す南部老人。
「あ、これは確認したかったのですが・・・・」
 そう南部老人に話し掛けるのは聯柳雅(ea6707)。
「積み荷である『お酒』を盗み飲みしたりする人が出た場合は、どのように対処すればよいのでしょうか?」
 その柳雅の問いには、其の場に居合わせた人夫達全員がドキッとしている事であろう。
「カーーッカッカッカッ。適当に袋叩きにして、縄でふん縛って馬車にでも放り込んでおいてくれい!!」
 豪快にそう笑い飛ばす南部老人。
「ふぅん・・・・」
 ニィッと笑いつつ、りュウガは近くの壁に向かって拳を添える。
──ドゴッ・・・・ガシャアアアン
 壁の向うで何かが割れる音。
 あらかじめ『脅し』として使ってよいと聞いている古びた甕が、壁のむこうで砕けたのである。
「ご覧のとおり、私の拳に防御は関係ない。この様な目に合いたくなくば要らぬ考えは起こさぬ事だ」
 全員がブルッと震える。
 そして人夫達はぐるりと冒険者一行をじーっと見渡した。
 良く見ると、どの冒険者もパリでは有名な冒険者ばかり。
 ノルマンのあちこちで人夫として雇われていたらしい彼等にも、その名声は届いているようである。
「あ・・・・ああ。大丈夫。酒を盗み飲みして命を落としたなんて事になったら洒落にならないからなぁ・・・・」
 やがて一行は馬車の護衛を始める。
 ノルマン江戸村を後にして、ゆっくりと旧街道へと走り始めた。


●最初の村へ〜オーガの群れと遭遇〜
──激戦必死
「グォォォォォッォッォッォッォッッ」
 森中に響き渡る程の怒声を上げつつ、オーガの群れは馬車目掛けて襲ってくる。
「こいつら・・・・今までのような雑魚じゃない!!」
 そう叫びつつ、風烈(ea1587)が敵オーガの攻撃を躱わしつつ、奥にいる巨大な悪鬼『オーグラ』に向かって走り出す。
──ドシュュュュュッ
「烈!! 無理はするな!!」
 目の前で襲いかかってきたオーガに対してカウンターを叩き込むフィル・フラット(ea1703)。
 そのままオーグラの方に向かいたかったが、あまりにも数が多すぎる。

──ガシィィィッ
「それ以上馬車には 近付けさせないわっ!!」
 ニルナが遅い来るオーガに向かってコアギュレイトを発動。
 次々とオーガ達の動きを束縛し、戦いやすい環境を作っていく。

──ズッバァァァァン
 目の前のオーガに向かって横一閃。
 胴部が深く切り裂かれ、其の場に崩れ落ちるオーガ。
「こっちは後少しです。柳雅、そちらは!!」
 リョウ・アスカ(ea6561)が、血油でヌラリと輝くクレイモアをブゥンと振りぬくと、そう叫ぶ。
 そしてちょうど馬車を挟んで反対側。
──ドッゴォォォォン
 素早く懐に飛込むと、目の前のオーガに右手を添える。
 そのまま気合一閃、爆虎掌が炸裂。
 その威力に後方へと吹きとぶオーガ。
「はぁはぁはぁはぁ。あと少し・・・・あと2体だけだ、こっちはなんとかなる・・・・」
 額から流れる血を拭いつつ、柳雅がそう吐き捨てる。
──キィィィィン
 と、その傷口がほのかに暖かくなる。
「回復にゃあ」
 後方馬車の中から、ケイがリカバーを唱えていた。
──ドシュッ
 アスカやフィル達の間を縫ってオーガは馬車へと近づいていく。
 だが、そのオーガたちに対しては、サラサのムーンアローが炸裂する。
「最近は、この魔法に対して悪いイメージが流れつつある・・・・同じバードとしても良くない傾向だ・・・・」
 相変わらずの無表情でそう呟きつつも、次のターゲットを確認すると、サラサは素早く印を組み韻を紡いだ。
──ドゴォォォッ
 激しい戦いは、やがてオーガ達を退け、ついにオーグラを残すのみとなっていた。
 激しいオーグラの一撃を、真面に受ける烈。
 そのまま後方に吹き飛ばされるが、すぐさま立ち上がり戦闘姿勢を崩すことはない。
「上等だぜ。この程度の攻撃で壊れるほど、俺の身体はやわではない!!」
 そう呟くが、肩口からは大量の出血。
 慌ててケイがリカバーを唱えるが、それでも傷は塞がることはなかった・・・・。
「烈さん後方へ、止血しなくては危険ですから。皆さんはその間、オーグラの注意を引いてくださいね・・・・」
 アリアンはそう告げてから、静かに詠唱を開始する。
 そして退避してきた烈の傷を一瞬で塞ぐ。
 セーラの使徒であるアリアンは、ケイよりもさらに強力な回復魔法を唱えていたのである。
 これも、日頃の生活の賜物であろう。
「アリアンさん、助かるぜ」
「あまり無茶をしすぎないよう、お身体も御自愛ください・・・・」
 その言葉を背に受けて、烈は再びオーグラへと向かっていった・・・・。


●そして〜あれだけいったからねぇ〜
──村からキャンプ、そして村へ
 戦いが一段落し、一行は食事をかねての休息にはいる。
 その最中、人夫達が怪しい動きを見せないかどうか、一行の監視の目は厳しく輝いている。
 その視線に耐えられなかったか、はたまた最初に柳雅が見せた脅しが聞いていたか、人夫達は酒をうめしそうにじーっと見ることはあっても、依頼の最中は手を付けることは無かった。
 そして全ての村に酒を運び終え、一行はさらに依頼報酬としてお土産に貰った『小さな甕』を大量に抱えて無事にパリへと帰還した。

──冒険者酒場
 無事に依頼を終えた冒険者達は、楽しかった依頼についての話に花が咲いていた。
「おお、フィルではないか。依頼から戻ってきたのか、ご苦労さん!! これはお土産かな?」
 フィルの知合いのくそぢぢい? ミハイル教授がテーブルに近づいてくると、大切に取っておいた『銘酒・極楽とんぼ』に手を掛ける。
「あ、それは違う!! お土産じゃなくて・・・・ああああぁぁぁぁぁぁぁ」
 グイッとそれを飲み干すミハイル教授。
 それに吊られて、中途半端なレンジャーやら、女装趣味の諜報員やら、次々と酒飲みが集ってきてはテーブルの上に広げられた酒を『勝手に持っていって自分の卓』で酒盛りを開始している始末。
 冒険者というのは、こういうときにこそ連携プレーを得意とするのでしょうかねぇ・・・・。
「うむ。極上の酒じゃのう・・・・と、どうしたのぢゃ皆の衆?」 
 空になった甕を逆さに持って、ミハイル教授がそう問い掛ける。
「あーー。ウェイトレスさん、メニューのこれとこれを追加」
「私はこちらをお願いします」
「ミハイルのぢっちゃん、それは大切なお酒にゃ〜。それに、じっちゃんが叫んだから皆にお酒持っていかれたにゃあ!! 罰としてここはぢっちゃんの奢りにゃあ!!」
 ケイのその言葉に、一行は次々と注文を始める。
 ケイに至っては、わんドシ君に勝てなかったので自棄食いという感じもしている。
「うーーむ。なにやら奢るはめになってしまったわい・・・・トホホホホ」
 いや、じーさん、アンタが悪い。
「教授は確か、ノルマンのあちこちで冒険をしていらっしゃるのですよね? 何処かでギュンター君を見掛けませんでしたか?」
 それはサラサ。
「ギュンター? おお、一時期噂になっておったオーガの子供じゃな。プロスト領の外れの廃村で住んでいる仮面を付けたオーガの子がそうなら、恐らくはそうぢゃろう・・・・」
 そのミハイル教授の言葉に、サラサは飛び付く。
「その村は何処ですか? 今でもあの子は元気にやっているのですか?」
「うーむ。元気かどうかは判らないがのう・・・・。アンデットに襲われた廃村の教会を住処にして、グレイファントム領を行ったり来たりしているようじゃと、プロスト領自警団の奴が報告していたような・・・・」
 その言葉に、サラサは安堵の表情を浮かべる。
「よかった・・・・無事だったのか・・・・」
「おやおや。氷のような仮面を付けてるサラサ姐さんも、ギュンター君のことになるととたんに表情が軟らかくなりますねぇ・・・・」
 そう冷やかすように告げる烈。
「・・・・烈、それ以上話をすると・・・・撃つわよ」
 静かに印を組み韻を紡ぐ準備をするサラサ。
「う、嘘嘘!!」
 そんなドタバタ劇を繰り返しつつ、酒場の夜はゆっくりとふけっていく・・・・。
 なお、ニルナはこの後で、恋人と二人、隠しておいたお酒をゆっくりと飲むことになったらしい。
 ちなみにニルナの飲んだお酒は『清酒・非女装趣味宣言』。
 恋人の飲んだお酒は『銘酒・中途半端レンジャー』
 どちらも良い酒であったが、その名前は恋人との甘い語らいには今ひとつという所であろう。

〜Fin