●リプレイ本文
●という事で〜簡単なルール解説である〜
──ノルマン江戸村
第一回『ミトン・オン・ファイト』!!
ということで、今回の依頼に参加した冒険者一行は、まずは村の広間にて、村長より簡単な説明を行われたのである。
「第一回ミトン・オン・ファイトに参加して頂き、真に感謝します。今回のこの祭りを見に来てくださった大勢の観光客の方々にも感謝します。大会は皆さんのすぐ隣、肌に触れられる場所で行われますので、緊迫した瞬間をどうぞお愉しみ下さい・・・・」
その後、ルールについての説明がもう一度行われると、午後から開始される大会の前に、まずは出店回りの旅にでましたとさ。
──お好み焼き『コマ屋』
「お好み焼き『コマ屋』って・・・・」
とある露店の前で、小麦粉に様々な具を練りこませて焼いた奇妙な円形の食べ物を食べつつ、ロックハート・トキワ(ea2389)が頭を傾げている。
「おねーちゃん、このコマって何だ?」
そう問い掛けるロックハートに、お好み焼きを焼いているミヤムゥが静かに口を開く。
「うちの剣客さんだよ。この前戦って負けちゃってねぇ・・・・今度、その剣客さんと相棒さん、そして私と三人チームで闘技場に参加する事になったのよぉ」
「そうですか・・・・で、対戦相手は?」
そのロックハートの問い掛けに、ミヤムゥは静かにこう呟いた。
「アサシンガール三人衆だってさ。変な名前だよねぇ〜。どんな人たちかよく知らないけれど、あたしやコマの敵じゃないと思うけれどねぇ〜」
その言葉に、ロックハートはパリを仰いで手を合わせた。
(グッバイ、コマとやら・・・・)
──団子屋『うまかもん亭』
モグモグ・・・・
長椅子に腰掛け、ジャパン伝来の茗(ちゃ)をすすりつつ江戸の味覚を堪能しているのはジェイラン・マルフィー(ea3000)。
「おばちゃん、これうまいじゃん!!」
「当たり前だよ。こう見えてもうちはね、このノルマンで100年以上も頑張って商売してきたんだよっ!!」
そんな冗談をサラリと言って豪快に笑うのも、この村の人たちの人柄なのであろう。
おせっかいで人情家。
「まだ食べるのかい?」
「この団子っていう奴もう1皿追加して欲しいじゃん!!」
滅多なことでも無い限り、ここに訪れることはないと思ったのであろう。ジェイランは帰りにも団子を土産に帰っていくのである。
──酒場のるまん亭
ワナワナワナワナ
シフール便で到着した手紙を見て、震えているのはサフィア・ラトグリフ(ea4600)。
「どどどどどどと、どうしてここに居るのが判ったんだ・・・・謎じゃん」
キャメロット発、サフィア行きの恐怖のシフール便。
持ってきたのは不幸の手紙。
折角江戸村の名物料理を堪能していたのに、一気に飯が不味くなる。
だが、それに従わなかった場合、さらにものすごい『恐怖』が訪れるであろう。
「あのー、ちょっと頼みがあるんだけれど、聞いて欲くれる?」
そうウェイトレスに頼み込むと、サフィアはウェイトレスの娘に『袖の下』を渡し、奥で打ちあわせを開始っ!!
──乾物屋「桑原商店」
「おっさん、なんで乾物屋にかんざしが売っているんだ?」
そう問い掛けているのはリスター・ストーム(ea6536)。
パリで大切な旦那? の帰りを待っている愛妻? 蛮ちゃんの為に、リスターはお土産を捜していた。
と、ちょうど良いかんざしが売っていたので、リスターはそれを手に他のよさげなものを探していたのだが。
売っているのはジャパン伝来の不思議な調味料や乾物。調理人ならよだれのでそうなものかもしれないが、リスターには興味なし。
「あー。ほれ、良くあるじゃろう? 委託販売って奴じゃよ。ほっほっほっ」
そんなオッサンの言葉を聞きつつも、リスターは買い物三昧。
──表小路の一角では
「はい、それじゃあお願いねー」
小脇に抱えた大量の菓子を子供達に配りつつ、カレン・シュタット(ea4426)。
どうやらなにかを企んでいるようであるが、はてさて・・・・。
●という事で正午です〜各自、スタートラインについて下さい!!〜
──スタートライン
いよいよ大会が開始される。
各スタートラインに付いた選手達は、皆、開始の合図であるファイアーボムが打ち鳴らされるのをじっと待っていた。
──ドッゴォォォォン
そして空中で突然大爆発。
それを合図に、全員が目星を付けた相手を 探し出す為に走りだしたのである。
最初に戦闘が発生したのはサフィアとカレン。
開始早々すぐに酒場に飛込み女装したのはよかったものの、わんドシ君を探しているうちにばったりと出会った模様。
「・・・・えーっと」
まさかサフィアが女装してくるとはカレンも思っていなかったものの、衣服は大会用の白いままである。
但し、その背中に背負わされている巨大な『わんドシ君ぬいぐるみ』が妙に邪魔なサフィア。
「仕方ない。これも運命じゃん!!」
いきなりそう叫ぶと、サフィアが攻撃。
「くらえ必殺、『いつもご苦労様ですわクラッシュ!!』」
そ、それは江戸村のノルマン亭に伝わる『メイド流戦闘術』!!
だが、その拳はカレンに届かない。
突然カレンの正面に一人の少女が割ってはいって来る。
そして一人、また一人と子供達がカレンの回りに集る。
「ご苦労様です。でも、貴方にこの子供達を倒すことができますか?」
にっこりと微笑むカレン。
──だが
シュタッ
突然カレンの背後に男が落ちてくる。
お待たせしました、ノーヴァンリッターの色物男、リスターでございます。
家屋の屋根を走りつつ、カレンを探して移動していた模様。
「お子様に用事はなーーいっ」
そのまま次々と子供の襟首を掴んではポーンポーンとサフィアに向かって投げていく。
「さて・・・・それではそろそろイカせて上げよう。我が桃色体術奥義の1っ!! 『仏壇リバース』っッ」
いきなりカレンの服を掴んで引き剥がすリスター。
「きゃあああぁぁぁぁぁっ」
あらわになった胸を両手で隠し、其の場に崩れ落ちるカレン。
「まいったな〜でも、コレは試合だし…困った困った…ぐへへへへっ・・・・ギルド公認であんな事やこんなことをできるなんて・・・・」
ジュルッとよだれを拭いつつ、リスターがズボンに手をかける・・・・。
──ドシュッ
と、いつのまにやらそのリスターの背後に回りこむと、サフィアが無防備なリスターに一撃を叩き込む。
──キラーーン
「男と言えども容赦はないっ。奥義の2っ!! 菊門クラーッシュ!!」
そのまま襲いかかっていくが、サフィアあっさりとオフシフト。
「・・・・ふう。全く困った奴じゃん・・・・とっとと終らせるじゃん!!」
そのままミトンパンチを叩き込むサフィアだが。
──フッ
まるでオフシフトを使ったかのような神業的ディフェンスで攻撃を躱わすリスター。
「男に興味はないっ!!」
──ドゴッ
いきなりボディーブローを叩き込むリスター。
「ぐはぁっ・・・・」
そのままサフィアは意識を失ってしまう。
「さて・・・・ぐへへへへへっ・・・・」
そのままトドメの連撃を叩き込んだ後、カレンににじり寄っていくリスターだか。
「そこまでだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
そう叫びつつ姿を表わしたのは、御存知『婚約者が怪しげな酒場でウェイトレス兼正義の味方をしていた為、やむなく一人で哀しさを乗り越えてやってきたウィザード』ジェイランである。
「なんだ、後輩か・・・・」
そのまま無視しつつ、リスターは胸許押さえて走って逃げるカレンを追いかけようとする。
──ガシッ
と、突然ジェイランがリスターの肩を掴む。
「甘いな・・・・この俺のっ」
振り返り様に拳を叩き込もうとするリスターだが、目の前にはぐっと拳を力一杯後方に引いたジェイランの姿があった。
「必殺、ノルマンラブラブ烈風拳っ!!」
──スカッ
あら、あっさりと躱わされるし。
「むだむだむだむだむだむだむだむだぁぁぁぁぁぁぁっ」
そう叫びつつ殴りつけるリスター。
やがて、全身を真っ赤に染められたジェイランが其の場に立ち尽くしていた。
「ラブラブ拳は一人で打つものに在らず・・・・まだ未熟だなっ・・・・カレンちゃ〜ん」
そのまま走り去るカレンに向かって急いで駆けていくリスター。
──ガクッ
そして力尽きて其の場に崩れるジェイラン。
「敗北じゃん・・・・」
──一方・本命vs本命
「ここであったが100年目・・・・」
スッと拳を構えて攻撃姿勢を取るロックハートと、同じく拳を構えるヴァレス・デュノフガリオ(ea0186)。
「どっちが『ミハイル教授専属レンジャー』として相応しいか、決着を付けるときが来たな・・・・」
そのヴァレスの言葉ニ、ロックハートは口許に微笑を浮かべる。
「ふっ・・・・そんな称号はくれてやる。俺が欲しいのは只一つ!!」
ロックハートの上段と、ヴァレスの下段が同時に走る!!
──ガシィッ
そして、その間に走ってきたリスターの顔面とボディに直撃。
一気にカレンは脱出。運悪くリスターのみが、二人の攻撃をもろに受けてしまったらしい。
「ぐ・・・・駄目レンジャーズがなんでこんな所で・・・・」
──ガクッ・・・・ドシドシドジトシッ
其の場に崩れていくリスターに、さらに追い撃ちを叩き込む二人。
「誰が駄目レンジャーだっ!!」
「スクロールしか使えなくて悪かったなっ!!」
あー、一部別の恨みも混ざっているようですが。
何はともあれ。南無。
──そして
たったったったったっ。
どうにかリスターを撒くことの出来たカレン。
「助かりました・・・・あとは体勢を整えて・・・・あら?」
と、前方、のるまん神社入り口にて奇妙な生物を発見するカレン。
──ピーヒャララ〜
頭に異様な鉢巻きを締め、両腕は肘から直角に曲げる。
その状態で、なにか一心不乱に踊りを躍っているわんドシ君が其の場にいた。
そしてカレンの方に気がつくと、スッと拳をそのまま構え、右足を膝から折って上に構える。
「マスコットのわんドシ君ですね。このまま負ける訳にはいかないからっ!!」
破れた服の裾と胸許をどうにか繕い、拳をぐるぐると振回してわんドシ君に戦いを挑むカレン。
──プニュッ
と、カウンター気味に拳を叩き込んできたわんドシ君の右パンチが、カレンの胸に接触
「きゃああっ!!」
周囲にも響くような黄色い悲鳴。
その声に動揺して、わんドシ君はいきなりオロオロ。
──ぺしぺしぺし
と、その瞬間、カレンがペシペシとわんドシ君に攻撃。
あら、あっさりと受けるのね。
まあ、お祭りキャラだしねぇ・・・・。
そのままわんドシ君はヨタヨタと倒れる。
「こ・・・・この鉢巻きを・・・・ボクだと思って持っていくワン!!」
──ガクッ
演技臭すぎ。
でも、その鉢巻きをギュッと引き止め、カレンは最後の戦いに踊り出た!!
──そしてこちらはまさに激戦区
お互い一歩も譲らない。
既に身体に付けられたマークは互いに二つ。
レンジャーとしての意地、男としての意地、熱き拳に全てを集め、最後の一撃が叩き込まれるっ!!
「超絶秘技っ『フォレストクラッシュ!!』」
ヴァレスの只のジャブ炸裂。
それを素早く躱わすと、ロックハートも最後の勝負に出た。
「これだけは使いたくなかった・・・・常磐式殺人術・・・・霞百烈弾っ!!」
いや、それも普通のストレート。
だが、それに併せるように、ヴァレスがオフシフトで華麗に回避。
そしてカウンターアタック!!
「このタイミングを待っていたっ!! エルヴン・スマッシュ!!」
それは、とあるエルフの一族にのみ伝わるという裏体術・・・・か?
──ドッゴォォォォン
そのヴァレスの拳が命中する前に、ロックハートの背面から走ってきたカレンが一撃を叩き込む。
「背後から奇襲だと!!」
さらにそのタイミングで、ヴァレスの鉄拳がどんぴしゃり。
「くっ・・・・ここまでか・・・・」
ロックハート撃沈。
そしてついに1対1の攻防となった。
「これが事実上の決勝・・・・相手にとって不足だらけ・・・・」
スッと構えるヴァレスだが。
「では行きます!!」
先程わんドシ君が行なっていたような戦いの儀式を見よう見まねで試してみるカレン。
──ピーヒャララ〜
その光景に圧倒されるヴァレス。
「では行きます!!」
わんドシ君の勇気を少しだけ分けてもらったカレン、渾身の一撃が炸裂!!
(こんなパンチ、オフシフトしなくても・・・・)
そう呟き、軽く身体を捻ろうとする。
──ガシィッ
だが、それすら出来ない。
足元では、ロックハートがヴァレスの両脚をしっかりと抱き込んで離さない。
「ロックハートっ!!」
「カレン、胴体を狙えッ!!」
──ぺこ
ふにゃふにゃパンチ炸裂。
そしてそれがトドメの一撃。
──ドッガーーーーン
「試合終了っっっっっっ!!」
かくして激しい戦いの幕は終了した。
●後夜祭
夜。
互いの健闘を称えあい、そして村の協力もあって無事に成功した事を祝い、盛大なパーティーが催されていた。
「・・・・まあ、これもいい勉強だな。ほれ、これがイギリス名物料理、ハチミツ掛けスコーン。どんどん食べるじゃん!!」
屋台を一つ借りて、自分の料理の腕前を疲労しているサフィア。
「ふぅん・・・・徳河ちゃんっていうんだ。いいねぇ・・・・どう? これから俺様と・・・・グフフフフッ」
のるまん神社の巫女をナンパしているリスターもいるが、すぐに間にわんドシ君が割ってはいる。
「色々とありがとうねー」
カレンは子供達にお礼を言うと、皆でお祭り見物の続きに向かう。
「あ、この髪飾り・・・・いいかもしれないじゃん!!」
婚約者のお土産を物色しているジェイランもまた、楽しい一時を過ごしているようであった。
そして。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ」
「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
川原で激しいバトルの続きをしているヴァレスとロックハート。
「勝負はこれからだっ!!」
「望む所っ!!」
つまりあれですな。
この二人、好敵手と書いて『ライバル』と呼ぶような関係となった模様。
なにはともあれ、優勝したカレン嬢には『ミトン・オブ・ミトン』の称号と、ノルマン江戸村名誉村民権が与えられた。
まあ、名誉村民といっても、特になにもないけれどね。
〜Fin