ピーチボーイズ救出作戦

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:7〜11lv

難易度:やや難

成功報酬:2 G 76 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:03月16日〜03月21日

リプレイ公開日:2005年03月24日

●オープニング

──事件の冒頭
 それはとある日の昼。
 いつもの冒険者ギルドでは、船乗りのおぢさん達が集ってワイワイと話をしていた。
「・・・・つまり、子供達を探してきて欲しいということなんですか?」
「ああ。何処に向かったか見当も付かない。行方不明となったのは、うちの息子を含めて、子供は全部で4人なんだ・・・・」
「昨日の夜からいきなりいなくなっちまって・・・・一晩あちこち探したんだけれど、どうにも見えねえんだ!!」
「またドラゴンが現われて襲われたりしたら大変だから・・・・頼むから急いで探してほしいんだ。俺達も色々と心当りは探してみるけれど、どうしても人手が足りなくて・・・・」
 心配そうな大人達が集って、そう受付の青年に説明している。

「昨日からですか・・・・何か心当りとか、子供達が何処で何をしていたかとか、そういう情報は無いのですか?」
 その受付の問い掛けに、一人のお父さんがポン、と手を叩いた。
「ああ、そう言えば、昨日は昼ちょっと前に子供達が集って何か話していたな・・・・流れの吟遊詩人らしいねーちゃんが、旅の物語をしていたっけ・・・・確か、ピーチボーイズだか・・・・」
「ああ、そんな奴いたなぁ・・・・手伝いもしねえで、そこの話をじっときいていたっけ・・・・」
「えーっと、確か『ヘルメス』とか言う名前だったか? うちの坊主は夕方まで仕事の手伝いをしていたから、その時にそんな名前の女の人がジャパンの物語をしてくれたって言っていたし・・・・」
 色々と情報が飛び交う中、受付の青年は一つの依頼書を作成した。
「では、行方不明の子供達の捜索という事でよろしいのですね?」
 そう告げると、受け付けは書類を一通り纏めると、ギルドマスターの承認を受けて掲示板に張付けた。

●今回の参加者

 ea0901 御蔵 忠司(30歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea0926 紅 天華(20歳・♀・僧侶・エルフ・華仙教大国)
 ea2350 シクル・ザーン(23歳・♂・神聖騎士・ジャイアント・イギリス王国)
 ea3519 レーヴェ・フェァリーレン(30歳・♂・ナイト・人間・フランク王国)
 ea3738 円 巴(39歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea4744 以心 伝助(34歳・♂・忍者・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●情報収集〜ああ、桃太郎なのね〜
──とりあえず港周辺
「つまり、ピーチボーイズっていうのは、ジャパン伝来の物語なんでやんすよ」
 今回の依頼の中に出てきた物語『ピーチボーイズ』について、知らないメンバーが多かった為にそう切り出したのは以心伝助(ea4744)。
 依頼主である親達に会い、一行は港周辺を調査するチームと酒場に向かって吟遊詩人に聞き込みを行うチームに分かれたのである。
「それで、その物語についてちょっと教えて欲しいのだが・・・・」
 これから港町入り口に向かい情報収集をしようと考えていたレーヴェ・フェァリーレン(ea3519)が一行にそう問い掛けていた。
「ピーチボーイ、つまり桃太郎です。私もちょっと詳しい方ではないのですが、お供を伴って『鬼退治』に向かう物語ですね」
 御蔵忠司(ea0901)が丁寧に説明。
「まあ、ジャパンには、そのような英雄譚がいくつも存在する。桃太郎や浦島太郎、しっぺい太郎など。他所から来た物・者に導かれ困難な場所へ行き栄達を得るのが共通点だ。それと使い魔の類が出てくるのもな。これらのものは全て、一つの呪方方に寄って成立する・・・・」
 説明しているのはよいものの、ちょっと外れ始めた円巴(ea3738)。
 そして忠司と伝助は、その話に耳を傾けているが・・・・。
「古くは神聖歴100年、とある大名の家に生まれた長男の物語。家督権を持たないその家の次男の腹黒い策謀により、長男は全ての権利を奪われ、家から追い出されてしまった。その後、長男は街の酒場『桃園』でたむろしている不良集団と意気投合、そこの首領である『犬飼』『猿飛』『雉川』と呼ばれた3人の豪傑と意気投合、義兄弟の契りを交わしたのである」
 おいおい。
「そして猿飛が次男周辺の調査を行ない、彼の背後には鬼のような妻の一族が存在していることを突き止めたのである。そして長男は自らが家督権を持つと宣言し、家紋の『違菱黒桃』を旗に掲げ、一族の住まう島へと復讐の為に向かったのである・・・・」
「あ、あの、巴さん・・・・」
 自分の説明に陶酔している巴に声を掛けてみる忠司だが、すでに手遅れ。
「長男は一族郎党を皆殺しにし、無事に家督権を取返したのである。なお、その後、長男は仲間たちの力で次々と出世し、かなりの地位にまで駆けあがったという・・・・この時の話に出てきた『義兄弟の契り』が後に『桃園の誓い』と呼ばれるようになり、身分を隠して悪を裁く大名の事を桃太郎大みょうわなにをするやめろっ・・・・」
 いい加減に痺れを切らせて、伝助が巴の口を塞ぐ。
「はいはい。もう十分でやんすよ」
「つまり、 今の巴殿の話しから察するに、子供達のクーデターということになるのか?」
 腕を組んで考えるレーヴェ。
 あーー、見事に話が空回りした。
「レーヴェさん、あっしが本当の桃太郎について説明してあげるでやんす」
 そのまま普通の桃太郎について説明を行う伝助。
「・・・・全然違うな・・・・」
 頭を抱えてフラフラと立ちさって行くレーヴェを、巴は笑いながら見送ったそうな。
 あんた、鬼だよ。
 そのうち退治されるよ。

──ということで、入り口周辺
 レーヴェはまず、街道に繋がる入り口に向かうと、周辺での聞き込みを開始した。
 子供達が何処かに行ってしまった場合、ここから出て行くのが普通であると読んだのであろう。
「・・・・そうですか・・・・」
 周辺住民に問い掛けたが、この門から外にでた形跡はまったくない。
 当初はこのまま周辺調査に出かける予定であったが、全くといって情報がない以上、レイの『ピーチボーイズ』に習って海に出た可能性を考える。
 そして仲間たちと合流するべく、港方面へと走った。

──という事で港周辺
「なるほどねぇ・・・・思ったよりも難解でやんす

「だが、この町にはもういないと思って構わないだろう?」
 伝助と巴、忠司の3名は行方不明になった子供達の親御さん達の元でさらなる情報収集。
 その結果、幾つかの情報を得ることが出来た模様。

・行方不明になった子供達は皆、冒険者に憧れていた
・家業が家業故、操船技術はそこそこに上手いらしい
・港から2日の場所にある小島の辺りには、昔からオーガ種が住み着いている
・遥か昔には、そのオーガ種はこの港町に度々現われては悪事を働いていたらしい
・子供達が常に持っている『冒険者道具らしきバック』と、売り物である乾物が少し無くなっている。
・今迄探索済みの場所についての詳細な地図を作成、それによる調査報告と推測から、子供達は海に出た可能性が高い
・ヘルメスさんの話した『ピーチボーイズ』は、伝助の知っている物語と一致。
・巴の話によると、『ヘルメス』という起源には最初の錬金術師、神の徒神という意味があるらしい。件の吟遊詩人がそのような名前を語ったことは、なにかの意味があると思われる。
・ヘルメスという名前がパリ・冒険者ギルドの報告書にあったらしいという噂は聞いたことがあるが、あくまでも噂。

「という事で、あっし達は港にきているでやんす・・・・」
 誰に話し掛けている伝助。
 既に家族の一人が船を出してくれることになり、一行は『オーガ種の住まう島』へと向かうこととなった。


●ヘルメス追跡〜吟遊詩人だからねぇ・・・・〜
──繁華街
 こちらはヘルメス捜索チーム。
 シクル・ザーン(ea2350)はあらかじめ、船乗り達からヘルメスに付いての詳細を聞き出していた。
 そしてその女性が魔法を使った痕跡がないのを確認すると、その外見特徴だけを頼りに紅天華(ea0926)と共に調査を行なっていた。
 港町ドレスタットの繁華街はそこそこにおおきく、二人であちこち走りまわってもなかなか有力な情報は手に入れることが出来ない。
 調査を開始した翌日、この港町ではそこそこに大きい酒場の一角で、竪琴を奏でている女性吟遊詩人を発見した。
「行くか?」
 そうシクルに問い掛ける天華。
「ちょっと待っていてください、下準備を行ないます」
 そう告げてから、シクルは印を組み韻を紡ぐ。
──ブゥゥゥン
 一瞬だけシクルの全身が淡く黒く輝く。
「天華さん、入り口から見て順番に、どの方向に人がどれぐらいいるか教えて頂けますか?」
 そのシクルの言葉に、天華もまたディテクトライフフォース発動。一人ずつ大体の位置を説明。
「つまり中にいるのは15人ですね。それで、吟遊詩人が座っているステージには『彼女以外は誰もいない』のですね?」
 シクルの魔法による反応と、天華の魔法による反応をすりあわせていく。
「ああ。今ちょうど竪琴を床に置いて一休みしている所だ。あいつからは『生命反応』がない・・・・」
 その天華の言葉に、シクルは再び印を組み韻を紡ぐ。
──ブゥゥゥゥン
 今度は自身にレジストマジックを唱えると、天華と共に酒場に入り込む。
 そしてゆっくりとヘルメスらしき女性の元に近づいていくと、そのまま近くのテーブルに座りまずはハーブティーを注文。
 ウェイトレスが丁寧にそれを二人のテーブルに置くと、一口飲んでからシクルがヘルメスに声をかけた。
「吟遊詩人さん、もしよろしければ物語をリクエストしてよろしいですか?」
「ええ、構いませんよ。どんな物語でしょうか?」
 ニコリと微笑みつつ、ヘルメスがそう返答。
「ピーチボーイズなんですが」
 天華のその言葉に、ヘルメスはゆっくりと竪琴を手に取ると、静かにピーチボーイズについて話を始める。
 その物語は、二人が伝助から聞いていたものと全く同じ。
 やがて物語は無事に終り、店内からはまばらではあるが拍手が起こる。
「・・・・ふう、これでいいかしら? でも、どうしてこんな子供の聞くような物語を?」
 そう問い掛けるヘルメスに、シクルは静かに口を開いた。
「実は、とある船乗りの子供達が行方不明になってしまいまして・・・・その手掛りを探していたのですよ」
「それで、貴方から『ピーチボーイズ』という物語を子供達が聞いていたという話を聞いてな。なにか手掛りがあるかどうか考えていたんだ」
 その天華の言葉に、ヘルメスはふぅんという表情を見せる。
「手掛りにはなりましたか?」
「ああ、助かった」
「助かりました・・・・」
 そう呟いているものの、二人の胸中は穏やかではない。
 特にシクルは神聖騎士。
 眼の前に『命あらざる存在』がいる以上は、それを討つのが使命。
 神聖騎士としての叙勲を受けたときに告げられた言葉『悪魔やその崇拝者などの邪教の徒を討つことは、神聖騎士の重大な使命となっています』が、シクルの脳裏を走りまわる。
(タロンよ・・・・これりも私に課せられた使命なのですね・・・・)
 泣きたい気持ちはある。
 だが、今目の前の存在を見過ごすことも、神聖騎士としては出来ない。
 剣の柄に手を掛けるシクル。
 だが、その手を天華が止める。
(此処は人が多すぎる。危険だ)
 そう目で合図をすると、二人はヘルメスが移動するのをじっと待っていた。

──そして
「ああ、いたいた、探しましたよ」
 リュートを背中に担いだ吟遊詩人らしき人物が、ヘルメスの元にやってくる。
「私になにか?」
 そう頭を捻りつつ呟いているヘルメス。
「フリーの吟遊詩人ですよね? でしたら1度『吟遊詩人ギルド』に顔を出してくださいね。どの酒場ではどんな歌や物語が受けるとかあるのですよ。それに、同じ時間帯に同じ場所でバードが歌っていてももったいないでしょう? 皆さんは娯楽を求めているのですから・・・・」
 にこにことそう告げる吟遊詩人。
「でしたら、今伺いますわ。ご案内お願いしてよろしいでしょうか?」
 そのヘルメスの言葉に吟遊詩人は静かに肯くと、そのままヘルメスを連れて外に出て行く。
「危険だな」
「追いかけないと!!」
 天華とシクルの二人が二人の後を付けていく。
 そしてとある曲がり角を曲った直後。
──ドサッ
 と、人の倒れる音がする。
「しまった!!」
 そんないきなり仕掛けてくるとは二人とも思っていなかったのであろう。
 急いで曲がり角を曲ったとき、吟遊詩人は其の場に倒れ、苦しんでいる。
 そしてヘルメスは、その側に静かに立ち、白く輝く綺麗な玉を手に持っている。
「正体を現わしたな悪魔めっ!!」
 シクルがそう叫びつつ、ショートソードを引抜き切りかかる。
──ガシィィィッ
 だが、ヘルメスは避ける気配すら見せない。
 その一撃を首筋に受けてもなお、傷一つつくことは無かった。
「シクル下がれッ!!」
 天華がいきなり詠唱開始。
「食らえっ!! ブラックホーリィ!!」
 漆黒の球体がヘルメスに向かって飛んでいく。
 だが・・・・。
──ビシィッ
 ヘルメスがなにかを呟いた瞬間、彼女の周囲になにかが発生した。
 それに包まれたヘルメスの身体にブラックホーリーが直撃するが、彼女は傷一つ付かない。
「残念ね・・・・貴方たちの持つ『神の加護』はもう効果ないわよ・・・・。それじゃあねー。私はパりにでも戻りますので・・・・『綺麗な花嫁』を見にね・・・・」
 その言葉の後、ヘルメスは静かに風景に溶けこんでいった。
「逃げられたっ!!」 
 そう叫ぶシクルだが、全身が震え、鳥肌も立っている。
「あれが、私達の敵か・・・・」
 天華もそう呟いたものの、既に脚がガクカグと震えている。
 正直、二人はヘルメスと対峙した時に死を覚悟したのである。
 それが悪魔の持つ力であろうと自分に言い聞かせると、二人は取り敢えず皆と合流すべく酒場へと向かった。


●島へ〜ピーチボーイズ救出〜
──とある小島
 子供達のやってきたと思われる小さな島。
 忠司、伝助、巴、レーヴェの4人は船乗りに連れられて無事に島への渡航を完了する。
 その途中、波間を漂っている一隻の小舟を発見した一行は、どうやら子供達が島に移った後船が流れて帰ってこれないのではと推測。
「・・・・まずいっすねぇ・・・・」
 伝助が島に上がるや否や、砂浜に広がっている大量の足跡に気が付いた。
「なにか判るのか?」
 そのレーヴェの問い掛けに、伝助は静かに肯く。
「こいつはゴブリンっすよ。足跡の数からして10以上。オーグラならとっくに喰われていると考えていいかもしれないでやんすけど、ゴブリンならその心配はないでやんす。けれど、この数は尋常じゃないっすよ」
「捕まっていると考えたほうがいいか?」
 その巴の言葉に、伝助は肯く。
「それならば、救出劇と行きましょうか」
 そのままいっこうは装備を整えた後、足跡を辿ってゴブリンキャンプをにたどり着く。
 奥にむき出しのまま置かれている檻の中に子供達の姿を発見すると、一行は素早くキャンプに突入、一気にゴブリンの軍勢を蹴散らしていった。
 いくら数が多いとはいえ、相手はたかがゴブリン。
 ものの30分もしないうちに、ゴブリンたちは全滅してしまった・・・・。

──そして
「ごめんなさぁーーーーい」
「もう二度とこんなことはしませーーーん」
「恐かったよぉぉぉぉぉぉぉぉ」
「そう?」
 大泣きしている3人+桃太郎役の子供は、船に乗せられて港へと帰還。
「まだ貴方たちには冒険は無理です。もうしばらくの間、両親の元でいろんな事を学んでください」


●酒場にて〜皆さん元気ですねぇ〜
──酒場『根性の酒樽亭』
「・・・・参りましたね。それが本当にシルバーホークの手のものとしたら、私達では相手になりませんね」
 子供達を送ってきた後、忠司達は酒場にて天華達と合流した。
 そこで天華は、ヘルメスに付いての報告を皆に行なったのだが、その直後全員が言葉を失っていた。
 まだ、事件は始まったばかり。

〜Fin