●リプレイ本文
●ということで〜あ、普通の冒険者だ〜
──パリ・冒険者酒場『マスカレード』
今回の依頼はあまりにも変則的である。
が、それを知るのはピエールの依頼を受けた一行のみ。
とりあえずメンバーはカトリーヌとロバートと会う為に、待ち合わせ場所の『冒険者酒場・マスカレード』に向かったのである。
「御無沙汰しています。お変わりないようでなによりです」
ペコリと挨拶をするのはカトリーヌ。
礼に始まり礼に終る。
いつもながら優しい娘である。
「初めまして、ロバートと申します。今回の依頼ではお世話に為ります」
カトリーヌの横でそう告げつつ、丁寧に挨拶をするロバート。
「お久し振りです、カトリーヌ殿。変わらぬお姿を拝見し、再び助力出来ることを嬉しく思います。・・・・ロバート殿、でしたか。信ずる戒律は異なっても同じ主の僕。よしなに願います」
丁寧にそう告げるフランシア・ド・フルール(ea3047)。
「こちらこそ。これもまた、神の思し召しです。私も頑張らせて頂きます」
ニコリと笑みを浮かべてそう告げるロバート。
(・・・・ん、こいつは嫌な奴だ・・・・)
そのやり取りを見て、オイフェミア・シルバーブルーメ(ea2816)はそう思った。
ちなみにどれだけ嫌な奴かは、まあそのうち判るでしょう。
とりあえず一行は挨拶を行うと、出発までの時間、細かい打ち合わせを行うことにした。
──一方・アリアンはというと
「・・・・そうですか」
パリ大聖堂の礼拝堂で、ロバートについて神父に問い掛けていたアリアン・アセト(ea4919)。
「ええ。実に真面目な青年ですよ。神聖騎士としての叙勲も素晴らしいものでした。彼は、セーラ神の教えを広く伝えてくれるでしょう・・・・」
ベタ誉めとまではいかないものの、ロバートの人となりについてはおおよそ理解。
「色々とありがとうございました。それでは失礼いたします」
「貴方にも、セーラの加護があらんことを・・・・」
礼を告げて出て行くアリアンに、神父は静かに言葉を紡いだ。
●という事で現地〜真面目にいきましょう〜
──地下墳墓入り口
なだらかな丘陵地帯。
その一角に掘られた巨大な穴。
自然でない階段がそこには作られており、その先には巨大な扉が付いている。
「トラップ関係を調べないと不味いか・・・・」
風烈(ea1587)がそう告げてから、仲間たちをじっと見渡す。
「えーっと・・・・ルイス、頼めるか?」
ちなみにメンツにはレンジャーは0。
「ああ。私で良ければ」
そう告げてみるものの、ルイス・マリスカル(ea3063)もそれ専用の技能はない。
兎に角怪しいところを調べるという大胆不敵な作戦に出たのである。
そんな作業をじっと見守っている最中、オイフェミアだけは扉に刻まれている文字列の『一ヶ所』だけを凝視している。
(これ、ただの墳墓じゃないわよっ。あの文字、御対魔法王国を記す碑文の一部じゃない。いくらあたしでも、ずっとミハイル教授の手伝いをしていたんだから判るわよっ!!)
──カチッ
「トラップの解除完了ですね」
ルイスが額に流れる汗を拭いつつ、一行にそう告げる。
「それではっ、しゅっぱーーつ」
いきなり扉に手を掛けると、ノリア・カサンドラ(ea1558)が全身の筋肉を膨張させつつ扉を引く。
「くぅぅぅぅぅぅっ。このっこのっ・・・・」
あ、流石の殴りクレリックでも、力仕事は弱いと見た!!
「交代しますわ、万が一の時の援護をお願いします」
「それではいきますね。せーのっ!!」
右扉にはカトリーヌ、左扉にはアルアルアが付く。
──ギィィィィィィィツ
重々しい音が響き、扉が開かれる。
中を覗くと、石造りの細い回廊。緩やかな傾斜が続いている。
「隊列を組む必要があるか・・・・しかし、幅から察するに二人で並んで良いぐらいか」
レイジ・クロゾルム(ea2924)が皆に聞こえるようにそう呟く。
「それなら、私はロバートの横ねっ!! 私を守ってねロバートっ!!」
素早くロバートの腕に抱きつくと、身体を寄せながらそう話し掛けるアルアルア・マイセン(ea3073)。
「え、わ、私ですか? 判りました。セーラ神に誓って、貴方には指一本触れさせません!!」
最初は真っ赤な顔をして戸惑っていたものの、直に聖職者としての冷静さを取り戻すとそうアルアルアに返答するロバート。
(いきなりそういう方法でくるとは・・・・)
そう心の中で呟くオイフェミア。
そんなこんなで、一行は細い回廊を移動開始。
●世間話に花が咲く〜のろけの王道〜
──回廊
「カトリーヌさんって、恋人いるの?」
細い回廊を下へ下へと大移動中。
ノリアがカトリーヌにそう問い掛ける。
「ええ。大切な人が。ピエールっていいまして、作家の卵なんです・・・・」
ここから30分間、ノリアは延々とピエールについてののろけ話を聞かされることになる。
──30分後
「ふぅん・・・・じゃあ、前のほうで歩いているロバートさんのことは?」
ニコニコと問い掛けるノリアであるが。
「ロバートさんは大切な『冒険仲間』ですわ。後ろを安心して任せられる良きパートナーでしょうね」
ふぅんと呟くノリア。
「ノリアさんは彼氏がいらっしゃるのですか?」
いきなり話を振られてしばし考えるノリア。
「んー、あたしは、なんでも出来る完璧超人より少しぐらい欠点持ってる方が好きかも。足りない部分を補ってこその恋人同士だよね。あたし、恋人いないけどね、あははー」
そう笑っているものの、なにかカトリーヌを羨ましいと思うノリア。
大丈夫。
君にも『酔狂客ばすたぁ』という相棒がいるじゃないか。
頑張れ『マッスルシスターズ』。
「そうそう、カトリーヌ。アレからピエールは真面目にやって居るのか?」
烈がカトリーヌにそう問い掛けるが。
「ええ烈先生。最近はとある錬金術師の方の元に弟子入りして日夜研究に明け暮れていますわ」
その言葉に、一行は『ほぅ・・・・』と感心する。
「その先生は止めてくれ。俺達は共に依頼の成功を目指す対等の仲間だ、それに、もう一人前の冒険者なんだろ。だから、俺の事は先生ではなく、好きなように呼んでくれ」
そう照れつつも告げる烈。
「では、烈兄様とでも」
──プッ!!
その言葉に、一斉に吹き出す冒険者一行。
「兄様って・・・・」
そのまま困った表情になる烈。
そんなやり取りの中、フランシアはロバートと色々と話をしている模様。
「ロバート殿。冒険者にとって大切な事とは?」
聖書から引用したり、
「冒険者にとって大切な事は、やっぱり相手を思いやる気持ちでしょう。依頼という形式ではありますが、やはり救いの手を差し伸べているのですから、その思いに答えなくてはなりませんよね?」
ニコッと微笑むロバート。
その側では、アルアルアがロバートにピッタリと寄り添っている。
時折『なにか嫌な感じがします・・・・恐いッ』と抱きつく当たり、なかなかの芸達者である。
が、ロバートは直にアルアルアに対しても優しく『大丈夫ですよ』とフォローを忘れない。
そんなやり取りがまた、オイフェミアには気に入らない。
(ただの女たらしじゃないのさっ!!)
──そして少ししてから
「カトリーヌさん。ちょっと質問してよろしいでしょうか?」
アリアンがそうカトリーヌに問い掛ける。
「ええ。構いませんわシスター」
丁寧にそう返事を行ない、アリアンの言葉を待つカトリーヌ。
「カトリーヌさんはどうして冒険者になったのですか?」
「ピエールの為です。あの人は大切な両親を失い、生きがいを失くしてしまっていました。そんな彼の為に、支えになってあげるのが、彼女として、私が愛するピエールに出来る事ですから・・・・」
ポッと頬を赤らめつつ告げるカトリーヌ。
「彼の為でしたか。それで、彼は元気を取り戻したのですか?」
「はい。ですがなかなかいい仕事が無くて。私はこうやって冒険に出ては彼の為に生活費を工面しています。最近は彼も『錬金術師』の弟子になって、日夜いろんな事を学んでいるのですよ」
「それはなによりですね。でしたら、カトリーヌさんはもう冒険に出る必要はないのでは?」
アリアンの問い。
「錬金術というのは、莫大な研究費用がかかるのです。彼は助手として働いているのでお給料は戴いていますけれど、その倍以上の研究費用がかかるのです。私はそのために冒険を続けているのです」
献身的なカトリーヌ。
其の場に居合わせた一行が、おそらくは全員、心の中で拳を握り締めた。
(あのヒモ男・・・・)
「ほら・・・・ピエールの勘違いだな。これで俺達はロバートとカトリーヌの仲を裂く必要はないだろう」
そうオイフェミアの耳元でそっと呟くレイジ。
「でも、アイツは気に入らないから・・・・」
おいおい、頼むぜオイフェミア。
「ふぅ・・・・まったく面倒臭い奴だな・・・・ロバートっ!!」
レイジがやれやれという表情でロバートに話し掛ける。
「はい、なにかありましたか?」
「カトリーヌはいい女だな。お前の恋人か?」
冷めた表情でそう訪ねるレイジ。
「いえ、恋人だなんて・・・・カトリーヌさんには思い人がいらっしゃいますし・・・・」
そう少しうつむき加減にそう告げるロバート。
(惚れているのは事実か・・・・面倒くさいな)
そう心の中で呟くと、レイジは『やれやれ。それは気の毒だな』と聞こえるように告げた。
●という事で突撃〜修羅場というかそれ以上〜
──地下墳墓
「敵アンデット増援っ、正面50mに5、右前方15mに2、左前方36mに6っ」
バイブレーションセンサーで次々とアンデットの位置を割り出すレイジ。
前方では、カトリーヌと烈、ノリア、ルイスがスカルウォリアー相手に善戦している模様。
「雑魚は下がっていろっ!! 鳥爪撃(ニャオ・ジャオ・ジィ)っ」
オーラパワーにより強化されている脚。
それにより烈の必殺技が炸裂!!
一撃で瀕死に迄追込む。
さらにその横でも、ノリアが渾身の一撃を叩き込む。
「ノリアボンバー6っ。『聖ヨハネの一撃っ!!』」
素早くスカルウォリアーとの間合を詰めると、その下に頭を入れる。さらに相手の頭と片方の足をそれぞれ抱えて、そのまま後方に抱え投げつけたっ!!
──ドッゴォォォォン
まさに瞬殺。
いや、まだピンピンしているけど。
さらに立ち上がりざまにもう一撃。
「ノリアボンバー外式その2可変っ!!」
つまり立ち上がりざまのドロップキック。
「・・・・カトリーヌさん、相手の動きをもっと良く見てください。必ず隙がある筈です」
「はっ・・・・はいっ!!」
──ガキィィンガキィィィン
ルイスは目の前から襲いかかってくるスカルウォリアー2体を相手にしつつも、その横で必死に戦っているカトリーヌにダイレクトアドバイス。
「こうですかっ!!」
「その調子です。貴方には天性の才覚がありますよ・・・・」
その言葉に嬉しそうにするカトリーヌ。
「後方支援、お願いします!!」
アルアルアも戦闘モードとなると別。
素早く日本刀を引抜き、オーラパワーを唱える。
「判りました。無理はしないでくださいね」
ロバートは常に前衛全員が視界に入る位置を確保すると、守りに徹しつつも適時リカバーを唱えていく。
──バキィィィッ
次々と敵スカルウォリアーを撃破していく冒険者 一行。
「いけない、囲まれています!!」
アリアンのディテクトアンデットに反応。
後方から3体のレイスが近寄ってきていた。
「霊体は反応しないっ!!」
フランシアの近くでそう叫ぶレイジ。
──ブゥン
と、フランシアとレイジ、そしてオイフェミアの周囲をフランシアのホーリーフィールドが包みこむ。
「守りは私が。オイフェミアさん!!」
「ぶっとばせぇぇぇぇぇっ」
──ドッゴォォォォン
フィールドの中からのグラビティキャノン発動。
目標は、レイスの背後から近寄っている『グール』!!
「レイスにグラビティキャノンは無効だけどっ!! あんた達には有効なんだよっ!!」
そのままグールにのみターゲットを絞るオイフェミア。
そしてレイジはレイスに対してストーン発動。
一体のレイスを石化する事に成功。
アリアンとフランシアももホーリーとブラックリーでレイスと対抗。
すでに戦闘は激戦となった。
そして前衛は・・・・。
「鎧の騎士だとっ!!」
いきなり不意打ちを受けたのは烈。
そのまま一撃を叩きむけと、鎧の騎士の頭部がボロッと落ちる。
そしてそれを小脇に抱えると、右手で構えた剣を振りかざす。
「中身の無いアンデットだとっ!!」
素早くルイスのガードに回りこむアルアルア。
そして烈とノリアもまた、グール達にターゲットを絞ると、そのまま追撃に向かった。
──戦闘終了
最後の方は熾烈な戦い。
フランシアのホーリーフィールドが破られ、後方支援部隊がピンチとなる。
前衛の動けない状況で、カトリーヌとロバートが参戦、どうにかピンチをくぐりぬけた。
──ブゥゥゥゥン
そして戦いの終った後、ロバートとアリアンは仲間たちの怪我を癒す。
「綺麗な顔に傷が付いてしまうといけませんからね・・・・」
ロバートはそう告げつつも、オイフェミアにリカバーを施す。
「畜生、お前良い奴だろう!! なんて嫌な奴なんだっ」
オイフェミア、いいたいことは判るが落ち着くよろし。
的確な治療を行うアリアンとロバート。
そして仲間たちの治療が終るまでカトリーヌは烈達と共に周辺警戒。
いつのまにか立派な冒険者になったものだと、烈も愛弟子の成長に満足していた。
●そして〜とりあえず殲滅完了〜
──パリ・冒険者酒場『マスカレード』
無事に依頼を終えた一行は、依頼主に報告を行なった後(ピエールではない)、酒場で祝杯を上げている。
「しかし、ノリアボンバーを生で見られるとは思っていませんでしたねぇ・・・・」
静かに飲みつつ、そう告げるルイス。
「お待たせ、。今回は随分と早かったんだね・・・・」
おっと、ここにピエール登場。
優しそうな表情でカトリーヌにそう告げるピエール。
「早く貴方に会いたくて・・・・はい、これが今回の研究費用よ。大切に使ってね・・・・」
「大丈夫だよカトリーヌ。いつか必ず『黄金』を練成するから、それまで辛抱してね・・・・」
と、いきなりラブラブモードに突入する二人。
お前ら他でやれ、まったくうっとおしい。
〜Fin