渡るノルマン鬼ばかり〜嫁姑バトル〜
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■ショートシナリオ
担当:久条巧
対応レベル:4〜8lv
難易度:難しい
成功報酬:5
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:04月23日〜04月29日
リプレイ公開日:2005年04月28日
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●オープニング
──事件の冒頭
それはとある日の朝。
いつものような変わらない朝。
少年は目を醒ますと、側にあるセーラの像に祈りを捧げる。
ゆっくりと寝床を纏めると、そのまま簡単な朝食を取る。
其の日は、近くの森で捕まえた兎の肉を干したもの。それと、定期的に少年の家を訪れる『冒険商人』から買った果物と堅パン。
そして豆を煮込んだスープが少年の朝食であった。
──コンコン
静かに扉がノックされると、一人の老婆か顔を出した。
「おはようおばあさん、こんなに早くどうしたの?」
「実は・・・・家にいづらくてねぇ・・・・ちょっと話を聞いて貰えるかい?」
少年は、近所に棲む優しいおばあさんが真剣な顔をしているのに気が付いた。
「まあ、ハチミツティーでものんで話を聞かせてよ」
おばあさんにハチミツティーを差し出すと、おばあさんは静かに一口飲んでからこう話を切り出した。
「実は、息子の嫁が私の事を苛めるんだよ。この村に引っ越してくる前は優しかったんだけれど、この村に越してきてからはどうも私を邪魔扱いしてねぇ・・・・」
そう告げると、おぱあさんはハチミツティーを一口すする。
「あったかいねぇ。うちの嫁なんて、私には冷たく冷めたスープとか、乾しすぎで固くなった肉とか、半分腐ったような生魚とかを食べろっていうんだよ。私が文句を言ったら直に涙を浮かべて息子に擦り寄って・・・・いつも私は悪者扱いさ。ああ、たまには軟らかいお肉が食べたいよ。息子が兎とかを捕まえてきても、嫁は軟らかい所をとってしまって、私には筋ばかり・・・・本当に、あの嫁は鬼だよ!!」
そんな話を聞いて、少年は少し困った。
「判った、とりあえず知合いの冒険者さんに話を聞いてもらおうよ!!」
そう告げると、少年は荷物をまとめて家を飛び出した。
以上、ここまで全てオーガ語での物語でした。
しっかし、『鬼嫁』って・・・・そのまんまじゃん。
──という事で冒険者酒場『マスカレード』
「いらいおねがい、おばあさんこまっている、たすけてあげて」
酒場でのどかに酒を飲んでいた皆さんの元に、またしてもひっょこりとギュンター君がやってきました。
さて、みなさんはどうしますか?
●リプレイ本文
●という事で〜やってきました『オーガキャンプ』〜
──ギュンター君の家
「ここ、ぼくのいえ」
まずはご挨拶。そして一行はひとまずギュンター君の家へと案内された。
──ガチャガチャ
台所でお湯をわかし、ハチミツティーをいれるギュンター君。
その光景を一行はのどかに見ている。
ただ、アリアン・アセト(ea4919)だけがはぁ‥‥と溜め息。
それも其の筈、ギュンター君の住処は『元教会』。正面に掲げられている十字架とセーラの像は綺麗に掃除されているが、その他は荒れ放題。
「まあ、ギュンター君もセーラを信じ、祈りを捧げているのですから‥‥」
そう自分を納得させるアリアン。
「さて、とりあえず挨拶も終ったことですし、まずはギュンター君に嫁姑バトルというものを理解してもらう必要がありますね‥‥」
そう告げながら、ベルシード・ハティスコール(ea2193)(以後ハティと呼ぶ!!)はバックの中から自作の紙芝居ならぬ絵芝居を取り出す。
薄い木版に作られた綺麗な絵芝居。
コミカルなタッチで描かれた絵には、夫、嫁、姑が書きこまれている。
それをドン、とテーブルの前に置くと、ハティは静かに話を始める。
「それでは、始まりはじまりぃ‥‥」
そしてハティの嫁姑物語が始まった。
ただ、ちょっと普通の物語とは違う、不思議な物語となっている。
嫁姑のバトルとは、遥かな古から行われてきた嫁と姑のプライドを掛けた神聖な戦いであり、戦いを通してお互いに切磋琢磨して成長する結婚生活には不可欠なものである。
そんな内容なのだが、すっかりギュンター君は瞳を丸くして絵芝居に見入ってしまう。
「うぁ!! しんせいなたたかいなら、ぎゅんたなにもできない‥‥」
そう納得するギュンターだが。
──すぱぁぁぁぁん
いきなりハティの後頭部を『緑色の履物』で引っぱたくレン・ウィンドフェザー(ea4509)。
「うそをおしえてはいけないの‥‥」
そうつげると、レンはギュンター君をつれて何処かに移動。
「すぐもどるの‥‥」
‥‥‥‥
‥‥‥
‥‥
‥
「ただいまなの」
あ、本当にすぐ戻ってきた。
「何をしていたのかな?」
そうレンに問い掛けるのはターニャ・ブローディア(ea3110)。
「そのいえのおーがのおばあさんだけがそうなのかなとおもって、ほかのいえのこともきいてまわったの」
そう告げると、レンはギュンター特製ハチミツティーを一口。
「で?」
「そのいえだけなの。おばあさんがいじめられているの」
ホッと一息のレン。
「では、ギュンター君、ちょっと息子さんだけを呼んできてくれますか?」
「うぁ、よんでくる!!」
そのターニャの言葉にギュンター君は思いっきり肯くと、そのまま外に飛び出した。
‥‥‥
‥‥
‥
「うぁ!! つれてきた!!」
さらに早っ。
身長は2m近い巨人のオーガ。
それがゆっくりと頭を下げて教会に入ってくるのは、かなり心臓に悪い。
「おっおっおっ‥‥オーガだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
慌てて一行の後ろに隠れるのはアルト・エスペランサ(ea3203)。
いや、驚く前にギュンター君もオーガだって‥‥。
「では、ギュンター君、通訳をお願いしますね」
そう告げて、ターニャはオーガ夫と話を始める。
と言うことで、以後の会話は全て通訳モードでお送りします。
驚いた事に、夫オーガは嫁オーガが姑を苛めている事を知らなかった。
「ですが、私が思いますに、おそらくは全てが誤解から生じているのではないでしょうか?」
そう告げるアリアン。
『誤解?』
頭を捻るオーガ夫。
「ええ。食事のことにしても、実はある種の珍味だとか、栄養的に優れているとか、ということはないのですか?」
『普通』
「実はお嫁さんはご懐妊ですとか?」
『普通』
「‥‥はぁ。本当になにもないのですね‥‥」
そう告げると、アリアンはオーガ夫に一つ提案をする。
「お姑さんは、食事の事でも困っていました。自分と嫁とは差別されていると。出来れば、貴方の作っている料理を食べさせて頂けますか?」
そう告げると、オーガ夫はギュンター君の家の台所を借りて、食事を作る。
とりあえずオーガ食で昼食を取ることになった一行だが。
取れたての兎の肉を、ただ焼いただけ。
生きたままの蜂の子
食べられるか不安な木の実
巨大芋虫生け造り
味もそっけもなにもない。
ギュンター君はかろうじて故トール氏の教育の賜物であろうか、それなりの味付けをしている。
「うぁ、とーちゃんすごい。今日はごちそう!!」
そう叫ぶと、ギュンター君は胸の前で手を組む。
アリアンはそれが自然に見についているらしく、ほぼギュンター君と同じタイミングで手を組んだ。
慌てて一行も急いで手を組むと、食事の前の祈りを捧げる。
「今、この時に我等に糧を与えて頂いたことを感謝します」
アリアンがそう告げると、全員が復唱。
ただ、ギュンターくんは難しいらしく、いつもの自分口調。
「せーらさまありがとー」
そして食事を開始したが。
まあギュンター君は気にせず食事。
アリアンも気にしない。
(確かに堅いですけれど‥‥ああ、お年の為、歯が弱っているのですか‥‥)
レンジャーであるキースはまさに気にするそぶりなし。黙々と食事をする。
(オープンフィールドでは、この程度の食事は当たり前だったか‥‥冒険者になって、久しぶりの感覚だな‥‥)
レンは台所から岩塩を引っ張りだして、ガンガンと砕いてそれで味付けして食べる。
(あじがしないのー。いもむしは‥‥だめなの‥‥)
アルト、椅子に座ったまま失神。
(動いている‥‥食べているよぉ‥‥)
ターニャ、火を通してあるものを食べるのが精一杯。
やはりレンから岩塩を少し分けて貰ってパラパラッとね。
(野趣の味というところですか‥‥けれど‥‥動くものは駄目‥‥)
ハティは火を通しているものを重点的に食べる。
蜂の子は口の中に放り込んで丸呑みし、芋虫は‥‥駄目。
(動いている‥‥絶対腹の中で動いている‥‥)
そんなこんなで食事も終り、一行は後片付けののちオーガ夫と再び話を始める。
「普通ですわねぇ‥‥お姑さんが、ひょっとして被害妄想が高いのかもしれませんわ」
アリアンはそう告げる。
『俺、これから嫁と話しする‥‥』
そう告げて、ドシンドシンと教会を後にしようとするオーガ夫。
「あら‥‥随分と気の早い‥‥」
「大丈夫だよ。お嫁さんだって鬼じゃないんだから‥‥話せばきっと判ると思うよ」
アルトがおずおずとしながらそう告げる。
「いや、鬼なんだけれどねぇ‥‥まあいいか。それよりもギュンター君、クリシュナから手紙を預かってきたんだ」
「くりしゅな?」
そう告げつつ手紙をギュンター君に手渡すキース・レッド(ea3475)。
そして頭を捻りつつ手紙を受け取ると、ギュンター君はさらに頭を捻る。
「そう。クリシュナ」
ガサゴソと手紙を広げるギュンター君。
そっとキースはそれを覗きこむが、何がなにやら解読不能。
だが、ギュンター君は楽しそうに手紙を読んでいだ。
「うあ、くりすな、げんき!!」
あ、理解した。
「さて、いまいちギュンター君は嫁と姑の問題がよく判っていないだろう?」
そうキースに告げられると、ギュンターは頭を縦に振る。
「ギュンター、薊鬼十郎君は知っているね?」
「うあ、きじゅろ、すき!!」
キッパリと楽しそうに言い切るギュンター君。
「そう、『きじゅろ』だ。クリシュナの事も知ってるね、『くりすな』。二人とも、君が大好きだ。でも、その好きって気持ちが抑えられなくなって、二人がケンカしだしたら? ギュンター、君はどんな気持ちかな?」
優しい口調でそう告げるキース。
「お嫁さんも姑さんも、ご主人が大好きなんだ。好きだから、他の『好き』には負けたくない。ほんの少し、相手の事を考えれば済む話さ。相手の気持ちを考えること、まだ君には難しいかな。さあギュンター、いま家に向かったご主人に言うんだ。『勇気を出して、貴方がこの争いを止めるんだ』ってね」
「うぁ!! けんかいくない!!」
ダッと走り出したギュンター。
「うまく行きますかねぇ‥‥」
そう告げるターニャだが、やることは全てやった。
最悪の場合は、アリアンが仲裁に入ることになったが、まだ不安は残っていた。
──そして夕方
嫁姑の争いはそう簡単には収まらない。
だが、オーガ夫が二人の仲裁に入り、一時的ではあるが問題回避は出来た模様。
これから二人の間のみぞが埋まるまではかなりの時間がかかる。
だが、そこから先は冒険者の出番ではない。
全ての依頼を終えたのち、アリアンは、村にいる全てのオーガ種を集めてもらうと、アリアンはありがたいお話をギュンター君を通じて行った。
その後で、
「村に住むすべての皆様に、聖なる母の祝福があらんことを」
と告げて祈りを唱え、オーガキャンプを後にした。
●帰り際〜プロスト競馬場発見〜
──街道
オーガキャンプのすぐ近く。
そこに作られたプロスト卿の競馬場近くを通りかかったとき、一行はその素晴らしい出来に驚いた。
娯楽の為に、ここまで資金を投資する貴族。
そしてそのすぐ近くに棲むオーガ達。
確実に何等かの確執が生まれることは判って居る。
けれど、今は動けない。
冒険者は『依頼があって初めて』動きだす。
ときおりフラッと出かけることもあるが、それは極まれなのだから。
「頑張ってね‥‥ギュンター君」
ターニャは、キャンプで奮闘しているであろうギュンター君に向かって、そう呟いた。
「ばいばい、ギュンター君、また会おうね」
そして最後まで、ギュンター君の正体に気が付かないアルト君であったとさ。
〜Fin