フラリと冒険に出かけよう

■ショートシナリオ


担当:久条巧

対応レベル:1〜5lv

難易度:やや難

成功報酬:5

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月27日〜08月02日

リプレイ公開日:2004年07月29日

●オープニング

──事件の冒頭
 そこはいつもの冒険者酒場。
 依頼を受けて戻ってきたもの、これから冒険にいくものなど、様々な冒険者で賑わっている。
「こっちこっちー。こっちにワインー」
「おせーぞ、ねーちゃん。とっととオーダー取りに来い!!」
「だから‥‥ここの依頼って、今ひとつお金にならないのよねぇ」
 依頼金で懐があったかくなったもの、自己負担で懐が寒くなったものなど、そこには様々な人間模様が映し出されていた。

 そんな中、何処のテーブルかは判らないが、こんな会話が聞こえてきた。
「つまり、南の沼地にいけば、それなりにスリルが在るってことだろ?」
「そうだなぁ‥‥あの辺は獰猛な動物やモンスターも徘徊しているっていう噂だし、実際そこに行ってきた奴等は、それなりに満足していたらしいし‥‥」
 冒険者達が『ギルドの依頼』ではなく、パーティを組んで南の沼地を探索したという話らしい。
 武者修行件スリルを求めてというところだろうが、お金にならない場合が殆どである。
 が、金儲けではなく、他の『何か』をもとめる冒険者にとっては咽から手が出るほど美味しそうな話であることには間違いは無い。
 そのテーブルの一行は、やがて数名のパーチィーを引き連れて店から外に出ていった。

──そして
「南の沼地かぁ。どんなことが起こっているのかなぁ‥‥」
 ふと、とあるテーブルに座っていた一人の男が呟いた。
 身なりなどを見てみると、どうやら何処かの貴族のぼっちゃんといった感じの少年である。
「だれか、その南の沼地っていうところに行って、どんな事件が起こっているのか見てきてくれよ。おいらは此処で待っているからさ。その冒険譚が面白かったら、報酬として少し懐から出してあげるけど?」

●今回の参加者

 ea1583 エルド・ヴァンシュタイン(30歳・♂・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea1944 ふぉれすとろーど ななん(29歳・♀・武道家・エルフ・華仙教大国)
 ea3000 ジェイラン・マルフィー(26歳・♂・ウィザード・人間・ビザンチン帝国)
 ea3124 北道 京太郎(37歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea3412 デルテ・フェザーク(24歳・♀・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)
 ea3677 グリュンヒルダ・ウィンダム(30歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)
 ea4426 カレン・シュタット(28歳・♀・ゴーレムニスト・エルフ・フランク王国)
 ea4857 バルバロッサ・シュタインベルグ(40歳・♂・ナイト・ジャイアント・フランク王国)

●リプレイ本文

●それは激しい戦いでした
 パリを出発し、冒険者一同は街道を抜けて一路、前人未到の地へと足を踏みいれた。
 酒場で聞いていた沼地までの方角を確認し、隊列を整え、いつ何が起こっても大丈夫なように慎重に行動を続けた。
 途中、ゴブリンやコボルトの襲撃などもあったが、前衛がそれを蹴散らし、後方支援が追い撃ちを掛ける形で、難無く切り抜けることができた‥‥。

──そして沼地
 そこは広大な湿地帯。
 沼地と呼ぶよりも、まさに泥の湖といった感じである。
 彼方此方に巨大な木々が乱立し、光を遮っている。
 そのためであろうか、この湿地帯はどんよりと薄暗くなっている。
「ランタンは必要ないようだけれど、ジメジメとしてうっとうしいな」
 それはエルド・ヴァンシュタイン(ea1583)。
「仕方ないわよ。沼地なんだから」
 ふぉれすとろーど ななん(ea1944)の、意味のあるようなないような突っ込みに、一同は口許を和らげる。
「さて。ここに来る途中、色々と考えてていたんだけれどさぁ‥‥」
 パーティーに明るい雰囲気が戻ったのを確認して、ジェイラン・マルフィー(ea3000)がそう切り出す。
「何かあったのか?」
 北道 京太郎(ea3124)がそう問い掛ける。
「んーと。おいらの知っている伝承では‥‥この辺りには、確か古い街があった筈なんだ。古代の‥‥えっと、何かを祭っていた小さな街なんだけれど‥‥なんだったかな?」
 ジェイラン、何かを思い出しはじめたが、途中で挫折、惜しい。
「でも、この辺りは珍しい薬草もありそうですね。」
 デルテ・フェザーク(ea3412)が近くの樹に張り付いている苔を繁々と見つめながらそう呟く。
「まあそうですね。花や、草など、証拠となるものを採取していくのもいいかも知れませんね」
 そう呟きながら、グリュンヒルダ・ウィンダム(ea3677)が近くの樹にノーマルホースを繋ぎはじめる。
「ん?」
 と、その樹の根元に、まだ新しそうなロープの端が結ばれているのを発見した。
「どうやら、本当にこの沼地には別の冒険者が来ていたみたいですね」
 ロープは馬を繋ぐときに良く使われる結びかたで固定されていた。
 ただ、それが途中で千切れているというところが引っ掛かった。
「何か気になることでも?」
 カレン・シュタット(ea4426)がグリュンヒルダに問い掛ける。
「ええ。判ったことが。敵は結構近くに来ているかも知れないということですね」
 そのグリュンヒルダの言葉に、バルバロッサ・シュタインベルグ(ea4857)がロングソードを引き抜く。
「敵はどこだ?」
 静かに、まるで独り言を呟くように低音で話すバルバロッサ。
「バイブレーションセンサー、行きます!!」
 デルテがそう告げると同時に、素早く印を組み韻を紡ぐ。
 淡いブラウンの輝きに包まれ、デルテが詠唱を終える。
「何か‥‥大きな物が近付いてきます‥‥数はみっつですけれど‥‥」
 そう告げながら、そちらの方角を指差すデルテ。
 だが、そこには広大な沼地が広がっているだけである。
「沼に入ると危険だな。ここで待ち構えたほうがいいか」
 京太郎もまた、前に出ると素早く日本刀を引き抜く。
「そういうこですかラ、後衛さんは後ろに下がっていなヨッ」
 ナックルを装着し、カキーンと両拳を打ち鳴らす『ななん』。
「さて。鬼が出ますか邪がでますか?」
 グリュンヒルダも沼地用のダガーではなく、繋いである馬の鞍に固定してあるロングソードを引き抜いた。

──ドバァァァァァッ
 それは完全な不意打ちにはならない。
 だが、冒険者に対しては十分脅しにはなったのかもしれない。
 目の前の沼地が突然隆起し、そこから3本の触手が伸びてきた。
「何ッ。一体何者なんですカ?」
 素早くその触手を回避し、体勢を整える『ななん』。
「解らん。ただ、嫌な感じがする」 
 京太郎も難無く躱わし、構えを取り直す。
「ツッ‥‥!!」
 バルバロッサは躱わしきれずにその触手に撃たれた。
 ジュッという音がし、バルバロッサの皮膚を軽く焼いた。
「酸だな。触れると危険だが、それさえ押さえこめば」
 そのままガード体勢をとり、次の攻撃に対して身構えるバルバロッサ。
「援護入るっ!!」
「同じく、いかせて貰うじゃん」
「援護入ります!!」
 エルドとジェイラン、デルテの3人が同時に詠唱準備にはいる。
 それとほぼ同時に、カレンは今の触手の位置を捕捉、沼の畔をゆっくりと歩きはじめた。
(角度は‥‥あと少し先ですか‥‥)
 そして前衛の4名もまた、見慣れない敵の姿を確認。
 それは体長1m程度の茶色のゼリー状の生物。
 名前はよく判らないが、体表面を泥で覆われているため、沼地ではカモフラージュになっているようである。
 その不定型の体から、時折触手を飛ばしてきては威嚇するようにゆっくりと這い回っている。
──シュルッ!!
 突然一本の触手がバルバロッサに襲いかかった。
 だが、バルバロッサはそれを完全にガードすると、同タイミングで沼地に飛込みゼリー状の生物に向かってカウンターアタックを叩き込んだ。
──ドバシュッ!!
 体のあちこちが飛び散ったが、その傷はすぐに塞がっていくように感じ取れた。
「まるで手応えを感じられない‥‥」
 そのまま体勢を整えるバルバロッサ。
 そしてバルバロッサの切り込んだ敵に対して、京太郎も右サイドから斬りかかった。
──ドシュッ!!
 やはり日本刀でも手応えをあまり感じられない。
 グリュンヒルダもまた、オフシフトで敵の攻撃を躱わすと、カウンターアタックを叩き込んでいた。
「こっちも駄目。なんなの? こいつらは?」
「あいやぁ‥‥気持ち悪いよォ!!」
 一発殴ったがぬめぬめして気持ち悪い。
 その刹那、『ななん』は気を拳に込めた。
「バオ・フー・チャンっ!!」
──ドバァァッ
 ゼリー状の物体が飛び散る。
 と、『ななん』はその手応えに何かを確認した。
「効いていないわけではないヨ。ただ、手応えとして取れないだけだヨ!!」
 そうと判れば恐いものなし。
 素早く全員が後方に下がる。
「ファイヤーボムっ!!」
──チュドーーーン
 その爆発により、3体のゼリー状生物はグズグスに焼かれた。
 さらに
──ヒュゥゥゥゥゥン
 ジェイランのアイスチャクラが体表面を切り裂く。
「効果ありなら、行けるとこまでいくしかねーじゃん!!」
 そう呟いてパシッとアイスチャクラを受け取るジェイラン。
「えいっ!!」
 さらに止めと言わんばかりに、デルテがグラビティキャノン発動。
──ドゴォッ!!
 徐々に体表が崩れていくゼリー状生物。
 そして‥‥
「いきます!!」
 角度よし、タイミングよし。
 カレンがライトニングサンダボールト発動。
──キィィィィィィン
 稲妻が2体のゼリー状生物を貫通。
 かなり動きが弱まっている。
「あとは、じっくりと片付けるまでだ」
「かかってこい!!」
 京太郎とバルバロツサがそう叫びながら切りかかる。
 やがて二人がかりで切り付けた後、なんとか一体撃破。
 同じく『ななん』は鉄拳と『バオ・フー・チャン』による攻撃を組み合わせて、無事に一体撃破。
 グリュンヒルダもデルテのグラビティキャノンの援護を受けて一体撃破。
 だが、傷も結構ひどく、一同は一旦怪我の手当の為に休息をとった。
 食事を取り、持ってきていないものに対しては、余分に持ってきている者が分け与える。
 近くの森から食べ物なども確保し、それなりに満ち足りた食事も取る事ができた。 

●翌日〜まあ、これが伝承なんでしょうねぇ〜
 皆の持っていたリカバーポーションで傷を癒し、一同は翌日、沼地の調査を開始した。
「昨日の奴は、もういないだろうな?」
「またいたら厄介じゃん」
 エルドとジェイランがデルテに問い掛ける。
「ちょっと待ってくださいね‥‥」
 デルテのバイブレーションセンサーにより、周囲の安全を確認。
 そしてロープで体を固定すると、沼地に入り探索を開始。
「‥‥で、何で俺の体にロープ?」
 自分に固定されているロープを手に取り、その先にいる『ななん』に問い掛ける。
「うふふ〜エルドさんにロープを巻いて〜、沼の方に〜♪ …やらないよ?」
 何やら楽しそうにそう呟く『ななん』。
 ジェイランはパッドルワードで沼地に何か来なかったか問い掛けたが、良い情報は得られず。
「行くぞ」
 途中で拾った枝を目の前の沼地に突きながら、バルバロッサが沼地をゆっくりと進む。
──コツン
 と、何かが枝に触れたらしく、沼地に手を突っ込んでそれを引っ張り上げる。
「バルバロッサ、何を拾ってって‥‥おい」
 横を同じ様に歩いていた京太郎が、それを見て激しく突っ込む。
 それは何かの『大腿骨』、つまり脚の骨。
「鹿か? それとも何か‥‥」
「昨日のゼリーにでも喰われたか?」
 そう呟く京太郎。
「疲れたら交替しますから、いつでもおっしゃって下さいね」
「猫〜、鷹〜」
 グリュンヒルダと『ななん』の二人は陸地で残ったメンバーの護衛。
「‥‥うわ、ガスが吹き出した!!」
 突然吹き出したガスに、京太郎は一歩下がる。
 その匂いたるや、半端ではない。
 辺り一面に異臭が漂い、鼻が曲がってしまいそうな勢いである。
 1度ガスの噴出が止まるのを待つため、京太郎とバルバロッサの二人は陸地に引き返す。
「‥‥やっぱり、この沼地にはたいした伝承も何も存在していないのかも‥‥」
 そう呟いたグリュンヒルダに、何処からともなく声が聞こえる。
「まあ、そうと判ったら直にでも街に帰るんじゃな」

──一瞬の沈黙

「い、今の声は誰ヨ!!」
「私じゃないわよ!!」
 『ななん』の問い掛けにカレンが頭を左右に振る。
「‥‥この樹、かな?」
 デルテがそう呟きながら、一本の樹を指差す。
「樹が話す?」
 エルドがそう呟きながら、樹に近づこうとする。
 と、その樹の枝がスルスルッと伸び、エルドを止める。
「貴様は火を使う奴だな。これ以上近付くな」
 今度は皆が確信した。
 確かに樹が話しているのである。
「貴方は誰ですか?」
「ワシか? トレントと人は呼んでいる。それより貴様達は、一体この『静寂なる声の沼地』に何のようでやってきたんじゃ?」
 その沼の呼び名は誰も知らない。
「私達は、仕事の依頼でやってきました。実は‥‥」
 どうやらトレントには敵意はないようであると感じ取ったらしく、グリュンヒルダが事の始まりから全てを話しはじめる。
「‥‥なるほどな。手ぶらで帰る事はままならぬか。ならば、約束して欲しい。ここで起こったことと『真実』は何も話さないで欲しい‥‥約束してくれるならば、汝達に私から加護を与えよう‥‥」
 そう告げると、トレントは沼地のある場所を指し示した。
 そこには、一振りの装飾剣が沈んでいた。
 そして一行は、トレントから真実を告げられると、パリへと帰路に付いた。


●真実〜トレントの話とボンボンへの報告〜
 トレントの話では、あの沼地には、今でも一つの村が沈んでいるらしい。
 とある日、突然の大雨に見舞われたあげく、クレイジェルというゼリー状の生物が大量発生し、村の全てを飲込んでしまったそうである。
 その後、村は沼地となり、今でも成仏しきれない魂が夜毎に沼の上を飛び回ることもあるそうだ。
 今でも、その物語を人聞きにやってきた無謀な冒険者がやってくるらしいが、クレイジェルや様々なモンスターに阻まれ、さらにはトレントによって追い返されていたらしい。

──そして酒場
「ふうん。中々愉しい物語だねぇ。あっはっはー」
 酒場では、件のボンボンがのどかなティータイムを過ごしていた。
 そこで冒険者達は、自分達が体験したことの半分、つまり戦い等をメインに物語を適当に作りあげて報告した。
 報告担当はデルテとバルバロッサ。
 バルバロッサの体を張った熱い語りと、デルテの静かな口調にボンボンも満足したようである。
 ただ、トレントの言っていた『加護』というものが一体なんであったのか。
 帰りの森では、モンスターにも教われずに帰る事が出来たのが加護だったのかもしれない。

 そして、沼地には静かに一振りの剣が眠っている。
 トレントに渡された装飾剣は、そのまま沼地に眠る、元の主の元に届けられた‥‥。

〜FIN〜