恋心〜或るシフールの恋〜
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■ショートシナリオ
担当:呉羽
対応レベル:フリーlv
難易度:やや難
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:4人
サポート参加人数:1人
冒険期間:05月20日〜05月25日
リプレイ公開日:2008年05月30日
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●オープニング
異種族同士の恋愛。
それは決して歓迎されるものではない。
勿論恋はどこに転がっているか分からないもの。
だから彼らはそれをひっそりと育む。
でももしそれが‥‥。
誰からも赦されるわけが無い。
誰が見ても死に直結するような。
悲恋にも成り得ない。
そんな恋だったら‥‥?
●
「はぁ‥‥」
ぱたぱたと羽を揺らして、1人のシフールがテーブルに突っ伏していた。と言っても残念ながらシフール用では無い、彼らにとっては巨大なテーブルであった為、テーブルに乗っての行為だったが。
「お客さん〜。テーブルの上に乗らないで下さいね〜。シフール用の椅子とテーブル用意しますから」
「うぅ‥‥」
酒場のウエイトレスに言われて、シフールはしくしく言いながら用意された椅子に座った。
「あぁ‥‥どうすればいいんだろう‥‥」
シフール用のテーブルの上に、どんと置かれた人間用のグラス。それをしっかり両手で持って、ふぅと彼は溜息をついた。
「もう会えないのかな‥‥。うぅん、そんな事ないはず。きっと、又会える‥‥」
呟きながらもどよんと落ちこむ彼の姿を、柱の陰からそっと1人のシフールが見つめていた。
●
「彼の名前はロニ=レン。あたしの幼馴染なの」
翌日。緑の髪を綺麗に結い上げ、人形のような服を着たシフールの娘が1人、冒険者ギルドを訪れていた。
「1ヶ月前だったかなぁ‥‥。ロニが手紙を運んでいる最中に、村にモンスターがやって来たのは」
娘はカウンターの上に座って、受付員を見上げながら話を続ける。
「ロニの話だと、『大変だったんだよ、ルーラ』。あ。ルーラってあたしの事ね。『たくさんのモンスターがやって来たんだ。村の人達は逃げるし、僕も必死で逃げようとして慌てて飛んだら、木の枝に引っかかって』。ロニってね。いざと言う時に慌てて失敗しちゃうタイプなの。でね。『モンスターがこっちにもやって来て、もう駄目だ! って思ってたら、突然僕を枝から下ろしてくれたんだよ! 僕はその人の格好良さにぼーっとなっちゃって‥‥』」
「『なっちゃって』?」
「恋をしたんだ、って言うの。格好良い、って男の人? って訊いたら、女の人だって言うんだけど‥‥。でも相手はシフールじゃなくて異種族みたいだし、一目惚れでしょ? 協力してあげたくても名前も顔も分かんないし、その日以来ロニは落ち込んでるし‥‥。だから、冒険者にその人探してもらおうかなって思って来たの」
「お話は分かりました。しかし、実際にご本人からお話を伺ったほうが、お相手の事もより分かると思います。宜しければ、ロニさんを‥‥」
連れてきてくださいと言いかけた受付員の視界に、慌てて飛んできた一人のシフールの姿が入った。
「ルーラ、大変!」
「ロニ。どうしたの?」
「あの人の居る場所が分かったかもしれない! ねぇ、どうしよう」
「本当?!」
ロニは何度もこくこく頷いて、両手に持っていた今にも落とすくらい重そうな首飾りをカウンターの上に置いた。
「冒険者さんにお願いがあります。僕と一緒に、村に行ってもらえますか。そこにこれと同じ首飾りをしていた人がいたらしいんです。きっと‥‥仲間の人なんだと思います」
「その首飾りは‥‥鎖で出来ているようですが」
「はい。これ、端が切れちゃってて‥‥。襲撃された村の中で拾ったんです。あの人も同じ首飾りをしていたのを憶えていたから。‥‥もしかしたら攻撃されたのかもしれない。不安ですけど、でも‥‥生きてるって信じてますから」
「分かりました。では、その村に一緒に行ってくれる冒険者を募集するということですね」
「はい。モンスターが近くを徘徊していて危険だとも聞いたので、お願いしたいです」
2人のシフールは去り、後に残された首飾りをしげしげと受付員は見つめた。
「‥‥サイズ的に、ジャイアントじゃないかな‥‥相手は」
異種族という時点で実らない恋かもしれないが、それにしたってシフールとジャイアントという組み合わせは無いだろう‥‥。想像してみて慌てて首を振る受付員だった。
●リプレイ本文
●
「ロニさん、ルーラさん、壬護蒼樹(ea8341)と言います。今回護衛を務めさせてもらいます。宜しくお願いしますね」
2人のシフールにとっては山のように見えるであろうジャイアントが、柔らかな口調で挨拶をした。だが長い髪を綺麗に梳かして衣類の皺を伸ばしているその姿は、護衛というより『今からデートです』という雰囲気が漂っている。
「とりあえず、道中いろいろお話を聞けると嬉しいです」
「はい、お話します。皆さん、宜しくお願いします」
ロニがぺこりとお辞儀するのを見て、エーディット・ブラウン(eb1460)が正体の掴みきれない笑顔でそれを見つめた。
「こちらこそお願いしますね〜。種族が違っても、恋は素敵ですよ〜♪ ですから相手の方を探しやすいように、顔や特徴を教えてもらえますか〜?」
「は、はい!」
「それにしても、ジャイアントとシフール。何とも奇妙な取り合わせね」
少し離れた所で腰に片手を当てて眺めていたジャネット・モーガン(eb7804)が、素直な感想を述べる。
「下々のやる事はよく分からないわ」
「恋心を縛ることは出来ない。好んで好きになったわけじゃないと思うわ」
それへミシェル・サラン(ec2332)が口を挟んだ。
「まぁ、サイズ違いの恋は勧められないけど」
「それもノルマン1神聖にして祝福された存在であるこの私にとっては些細な事。民草の為に力を貸してあげるのも、高貴なる者の勤め。さぁ、行くわよ、愛馬コルベット!」
人の話を聞いているのか聞いていないのか分からない勢いで、ジャネットは愛馬の手綱を振るって出発し掛け。
「あら。出発前に情報を得なければならないわね。高貴な身分の者の嗜みとして、当然の事だけれども。さ、そこのお主。酒場に行って商人でも捕まえて情報を得るのよ!」
「えっ、わたくし?!」
適当に近くに居たミシェルを指差すと、彼女は一瞬嫌そうな顔をしたが次の瞬間肩をそびやかして笑んだ。
「わたくしはロニから得る情報ほど確かなものは無いと思うわ。というわけで、ロニ」
「は、はいっ」
「いろいろ聞き出すからきちんと答えてね」
「簡素な作りでもお揃いと言う事は、何かの目印とかでしょうね〜。この首飾りについて、何か噂はないですか〜?」
ギルド員に尋ね回ったエーディットは、預かった首飾りを持って回った。簡素な作りながら結構重く、片手で持っているとずっしり来る。
「落し物届けとか〜出てませんか〜?」
「あ‥‥お嬢さん」
ギルド内をゾウガメと共にのっしりうろうろしていると、不意に依頼を出しにきたであろう男から声を掛けられた。
「はい〜」
「そ、そのゾウガメを是非わたくしめに譲っていただきたく」
「そのご要望には答えられません〜」
「そ、それは残念です‥‥」
がっくり肩を落とした男は、エーディットが持っている首飾りに目をやる。
「む‥‥それは」
「見覚えがあるんですか〜?」
「えぇ‥‥実は」
一方、ジャネットは愛馬に乗って町中を颯爽と進んでいた。
「お客さん‥‥馬で酒場内への乗り入れは禁‥‥」
「上質の水と飼葉はあるかしら。コルベットに変な物を食べさせるわけには行かないわ」
「いやしかし、扉が壊‥‥」
「そんな事よりも、ある村について聞きたいの。そんなに余所者が訪れるような場所なのかしら。何か企みがあるとも思えないけれど、念の為に確認しておきたいわ」
「はぁ‥‥。その村でしたら‥‥」
そんな中、蒼樹とミシェルはロニとのんびり話をしていた。
「想いを告げた後、どうするつもりですか?」
「えっ‥‥。そ、そんなのまだ考えてませんっ‥‥!」
「そうね。好きな人と一緒に居るのは楽しいけれど、それ以上は進めない道だと思うわ」
「‥‥そ、そうですよね‥‥」
「でもそれも全て受け入れた上でお互いが愛し合うのならしょうがないわね」
「そ、そうでしょうか‥‥」
「まぁわたくしは見届けるだけね」
あっさり言うミシェルと、非常に真剣な表情の蒼樹。
そこへ、エーディットとジャネットが戻ってきた。いつもの笑顔だがその中に微妙な表情が見え隠れしているエーディットと、あまり納得のいかない表情のジャネットに、ミシェルと蒼樹は顔を見合わせる。2人が得た情報は、すぐさまロニに言えるものではないのだろう。
ともあれ、一行はパリを出発した。
●
穏やかな春の日差しを受けて、皆はのんびり道を進んだ。
「響くん。頼みますね」
愛狼に蒼樹が指示すると、子狼らしくぐるぐるその場を駆け回ってからぴゅーっと前方に走って行った。モンスターが居ないかを見に行ってもらったのだが、多少不安が残るのでミシェルも共に先行する。
「まぁ動物程度なら、この私の神聖なる威嚇で追い払えるでしょう」
ぱかぱかと馬に乗って進むジャネットが遠くを眺めた。
「怪物の場合は、神の慈悲を持って隠れてやり過ごすべきね」
「‥‥神の慈悲を持って戦う‥‥んでは無いんですか?」
「時と場合と言う言葉もあるでしょう。上に立つ者は、機を見る事も必要なのよ」
おほほほと笑うジャネットに、『そういうものですか〜』と感心して見せて、蒼樹はエーディットへ目を向ける。
ロニの言うとおりに描いた似顔絵は、恋心フィルターを通していた為、実際とはかなり違うようにも思えた。どんな状況で会ってどういう風に好きになったのか改めて聞いたが、それは一目惚れとしか言いようがなく、又、ミシェルが一緒に行動していた仲間を見たならどんな人達だったのかと尋ねたが、その容姿も要領を得なかった。
「会話くらいしてたんでしょう? それからどんな格好だったの?」
「えっと‥‥会話は‥‥してませんでした。格好は、何だろう‥‥。とても簡素でお金がかかってないような感じで」
と、全体的に曖昧なのである。
「2人が得た情報は、どんなものだったの?」
ロニとルーラが2人で花畑の花に夢中になっている間に、4人はこっそり集まって相談した。
「対象の村は人間の村のようね。ジャイアントは基本的には住んでいないようよ」
「基本的には?」
「たまに行商が来るときについてくるらしいわ。それから村の外に住んでいるのが居るとは聞いたけど」
「行商人なら会える可能性は低いわね。村の外に住んでいるほうに期待したいけど」
「でも、モンスターが出るという話でしたよね‥‥」
不安げに蒼樹が視線を揺らす。
「それで、エーディット様のほうはどうだったの?」
話を振られて、うーんとエーディットは首を傾げて見せた。
「確かな情報では無いのですけれど〜」
真似をして首を曲げるゾウガメには誰も注目していない。
「もしかしたら〜」
まだ花畑で遊んでいる2人に目をやって、彼女は告げる。
「ジャイアントでは無いかもしれません〜」
●
夜は野宿だ。
星が見える空を眺めながら皆は野宿の準備をして保存食を頂き、毛布に包まった。
「えぇと‥‥ロニさん、もし良ければ‥‥。その、想い人の事を聞かせてもらえませんか?」
男女は別々のテントである。だから夜はロニと蒼樹のみが同じテント。ジャイアントではないかもしれないと聞いても、蒼樹は気になってしょうがなかった。
「いいですよ。すごく格好良くて‥‥えっと、そうですね‥‥。シフールの僕からだと蒼樹さんより低いのか高いのか分からないんですけど、あそこの木の枝には届いてたと思います。それで‥‥口を閉じてると少し怒ったようにも見えるんですけど、僕を助けてくれたとき、笑ってくれました。それが‥‥とても嬉しくて、切なくて」
「笑顔が切ない‥‥ですか」
「行きずりで助けてくれただけの人だから。もう、会えないんだろうな、ってその瞬間思ったんです。そうしたら何だか泣きそうになってしまって‥‥。待って、って言いたかったけれど、仲間の人が来て一緒に行ってしまって。その後姿が本当に悲しかったんです」
「そうでしたか‥‥」
ずしんと胸に落ちてくるような思いを感じつつ、蒼樹は夜空を見上げた。
「僕もどちらかと言うと、凛々しいと評される方が好きです‥‥。初恋を引き摺っているかもしれません」
「蒼樹さんの初恋‥‥。同じジャイアントの人なんですよね?」
微笑だけ返す蒼樹に、ロニは寂しげな笑みを浮かべる。
「同じ種族だったら‥‥悩まなかったのかな‥‥。うぅん、でも、会いたいと思ったんです。この気持ちが実るのかどうかは、別の話だから‥‥」
「素敵な、方ですね‥‥」
「はい。とても」
一方女性用テントでは、ルーラが捕まっていた。
「ねぇ、実際の所、ロニの事はどう思ってるの?」
ミシェルに聞かれ、ルーラは軽く息を吐く。
「弟みたいなものよ。あたしはあの子のお兄さんのほうが好きだもの」
「ふむふむ〜♪」
嬉しそうにエーディットが相槌を打った。
「ロニには2人お兄さんが居るんだけど、正直ロニって少し落ちこぼれなのよね。頑張ってはいるんだけど、空回りしてる感じ。放っておけないし、面倒みてあげてるけど」
「そんなに心配しているのは、彼に気がある‥‥と言う事ではないの。この私の神聖にして至高の瞳の前に、見抜けない物は無いのよ」
薔薇のマント留めが留まっている寝袋に入り、ジャネットがびしっとルーラに指摘する。
「気がある‥‥?! そんなわけないじゃない。あたしはリンの事が好きなの。リンって言うのは、一番上のお兄さんなんだけど、すっっっごくかっこいいんだから! ロニなんて比べ物にならないんだから!」
言いながら少し赤くなっている彼女を見逃すような女3人ではない。
「そうでしたか〜♪ 素敵なお兄さんなのですね〜♪」
「下々の恋愛事情は知らないけれど、それで良いのかしら」
「自分に素直になったほうがいいわよ」
「違うってば!」
●
村には難なく着いた。
皆は簡単に村人に説明して首飾りを見せる。だがそれを知っている者は居ないようだった。
そこで、村の外に住んでいるというジャイアントの小屋を教えてもらって向かう。
「こっ‥‥ここですか‥‥」
異様に緊張している蒼樹に、皆は大丈夫かと彼の背中を叩いた。
「すっ‥‥すみません!」
万が一を考えて、蒼樹が小屋の中に向かって声をかけると、ほどなくしてそれが開いた。
初めに見えたのは、橙色の首飾り。『あっ‥‥!』とロニが叫んだが、色違いながらそれは想い人の身につけていた首飾りとよく似ている。
「ん‥‥? 大勢で何の用だい?」
木こり用の斧を下ろし、女ジャイアントは皆を見回す。刹那。
「ちょっと付近を見回ってきます!」
蒼樹がダッシュで森の中へと走って行った。
「‥‥?」
わけが分からない皆を置いて、彼は必死で走り続ける。
「とっ‥‥止まりません‥‥!」
女を一目見た瞬間、稲妻に打たれたようだと彼は感じた。胸が高鳴ると同時に不安な気持ちが押し寄せ、たまらなくなって逃げるようにモンスターが徘徊していないか見る為と言い聞かせて飛び出したのだ。一行に治まらない動悸と戦いながら、彼は走り続ける。
「‥‥で?」
去っていった男から目を逸らし、女は皆を見下ろした。
「あ、あのっ‥‥」
この女が想い人なのだろうか。皆が見守る中、ロニは持っていた首飾りを握り締める。
「その首飾り‥‥貴女の物ですか‥‥?!」
中に入るよう勧められて、皆は古ワインを振舞われた。
結論から言えばその女はロニの想い人ではなく、女はあっさりその首飾りの入手先を告げる。
「あぁ‥‥これはオーガから分捕ったものだよ」
「オーガ‥‥」
「最近物騒だよね。村の近くまでオーガが来るもんだから、村人達も怯えちゃってね」
木こりもしている女だが、同時に村を守る事も行っているらしい。
「やっぱりそうだったんですか〜」
妙に納得したように、エーディットが頷く。
「ロニさんの想い人はオーガだったのですね〜」
「それは、この高貴なる私としては祝福できる相手ではないわね」
「意思の疎通も出来ないじゃない」
「オーガって言うんですか‥‥」
言われてぽつりとロニは呟いた。
「じゃあ、仲間というのも、オーガなのね?」
「はい、多分‥‥」
「オーガを好きになる奴なんて居たんだな」
呆れたように女は言い、首飾りを外す。
「まぁでも、あたしが倒したのは多分雄だ。何匹か倒したけどね。雌はもしかしたらどこかの集落にいるのかもしれないな」
「集落がどこにあるか、分かりますか?!」
真剣な表情で尋ねるロニに、女は首を振った。すっかり肩を落としたロニを、皆は慰める。
「探してみるといいですよ〜。村人さんなら知っているかもしれませんし〜」
「理解し難い話ではあるけれども、会ってみるだけなら問題ないわね。攻撃してきたら、神聖なる私の剣の滴となるまでの事」
「男なら、当たって砕けろって言うしね」
「皆さん‥‥」
じんわり涙を浮かべ、実に良い友情シーンを醸し出している所で、突如壊しそうな勢いで扉が開いた。
「貴女を見たたった今!」
躓きそうになりながら部屋に飛び込んできた男が、がしっと木こりの女の手を取る。
「私は貴女に恋をしました!」
「蒼樹さん、大胆告白ですね〜♪」
エーディットさんが真っ先に反応したが、言われた本人は固まった。
「なっ‥‥なに‥‥」
「惚れっぽいのね‥‥蒼樹様は」
「下々の事はよく分からないけれども、これも一目惚れというものかしらね」
「素敵ですね〜♪ 応援しますよ〜」
リボンを振って応援するエーディットにさえも目もくれず、蒼樹は女を見つめ続けている‥‥。
「え‥‥と‥‥。どこの誰か知らないけど‥‥その、どうも」
「壬護蒼樹です!」
結局、その熱い告白に女は自分はラナだとだけ告げ、返事は少し考えさせて欲しいと言うだけに止めた。
●
オーガの集落については、すぐに場所は知れた。
だが、その集落に向かうという所でロニは怖気づき、ラナからも貰った首飾りを握り締めて固まる。
「この首飾りを持っているという事は‥‥僕は彼女にとって『敵』になるかもしれないんですよね‥‥。彼女はそれでも僕に優しくしてくれるかもしれない‥‥でも、彼女の仲間はそうでないかもしれない。そうしたら‥‥彼女の仲間を傷つけてしまう事になったら‥‥」
「会える時に会っておかないと後悔するわよ」
言われてもロニは首を振った。
たとえ想い人がモンスターでなくとも、人はいつ会えなくなるか知れない。いつ失われてしまうか知れない。その時に後悔しても遅いのだが。
「でも‥‥傷つけたくないんです‥‥」
もしかしたら、想い人が攻撃してくるかもしれない。多分それが怖いのだろうとルーラは皆に言った。
結局、皆はそのままパリへ戻ることにした。
「どうして、オーガは『モンスター』に分類されているんでしょう‥‥。優しい人だって居るのに‥‥」
モンスターだから倒されてしまう。それが悲しい。
帰り道、下手な歌を歌い続ける彼に、ルーラがそっと寄り添っていた。