ラティール再興計画〜京都村(起)〜

■イベントシナリオ


担当:呉羽

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 13 C

参加人数:9人

サポート参加人数:-人

冒険期間:12月10日〜12月10日

リプレイ公開日:2008年12月20日

●オープニング

 その土地の名はラティール。小さな領地を有するが、現在その場所に領主は居ない。
 代わりに、領主代行がその場所の再興計画を指導していた。その領主代行を更に後ろで操る人物が居るのだが、その辺りの説明を始めると日が暮れてしまうので簡単な説明にしておこう。
 ラティール領は、かつて荒れていた。様々な不幸な理由で、人心も土地も懐具合も荒れていた。富める者や賢い者はとうの昔にその地を去っており、技術者さえも居ない有様だった。白教会のボロボロ具合からして、どのような状況であったかは知らない者でも想像がついた。
 しかしある時。冒険者が動いた。その地の荒れ具合を見、改善への道を交渉したのだ。その事によって、このラティールは良い方向へと進み出した。
 何の特産物も名品もない、金を生み出す力のないこの場所で、人々は働き口を見つけ、貧しい生活を改善する余地を見つけ、新しく心の支えとなるものを見つけ、未来への希望を見つけ出した。この狭い領地は、人々を呼び込む場所として、新たに生まれ変わったのだ。
 
 つまり。
 新しい、観光的な名所として。

「本当にこの道。まるで都会に居るようですよ!」
 馬車に乗っている男が、興奮しながら周囲を見回した。
「いやぁ、昔ね。この辺の道はもう酷くて、商売なんかで使えたものじゃなかったんですよ。舟を乗り入れる停泊所も小さくて、皆素通りするような場所でしてね。盗賊も一時多かったですし、治安が一番悪かった頃なんて、わざわざ皆、迂回してましたからねぇ」
「皆さん、苦労なさっていたんですね」
 馬車には8人の人が乗っている。きちんと誂えた馬車で、多少の衝撃で壊れる事は無さそうだ。
「娯楽の町レスローシェとも近いし、レスローシェとは違う物が売れるじゃないですか。最近は月道も気軽に使えるようになってジャパンも近くなりましたけれど、それでもいろいろなものがあるレスローシェとラティールには、人もたくさん集まります。レスローシェも変わった町だと思ってたんですけどねぇ‥‥最近のラティールの発展は目覚しいものがありますよ!」
「ジャパンも近くなった‥‥のと、ラティールに何か関係があるのか?」
 饒舌に喋っているのは、商隊を持つほどの商人だった。だが今回彼は、一人旅であるらしい。彼の話を聞いているのは、2人の少年。彼ら3人を含めて、この馬車内に居る者は皆、元々顔見知りではない。
「そりゃ大有りですよ! 最近、ラティールではジャパン村を作る計画を立てているらしくて、既に『温泉』と『茶屋』が出来ているんですけど、本格的に色々やりたいとの事で‥‥それができれば私との取引も増えるということで、もう興味津々なわけです」
「‥‥でもあそこは、広場の中にわざわざ土運んで盛り上げた丘の上に『聖女の像』を立てるような変な町だろ」
「聖女様が降りた町ですからねぇ‥‥。まぁこんな世の中ですし、聖女信仰が興っても可笑しくはないわけで」
「本当に聖女様が訪問なさった町なら、僕も一度その話を詳しくお聞きしたいと思います」
 少年の一人が、ホーリーシンボルを片手に持って小さく祈った。
「あぁ‥‥なら、もうすぐ中心地だ。そこの近くに聖女像はあるようですから、一度降りてみては?」
「でも申し訳ないです。皆さん、レスローシェに向かうためにこの馬車に乗っているのに、わざわざ停めていただくのも‥‥」
「大丈夫ですよ。この馬車、レスローシェがわざわざ出してる『レスローシェ直行便』ですけど、最近はラティールと提携していて、ラティールに新しく作った『名所』に停まるようになってるんですよ。あぁ‥‥ほら、あの辺りが『温泉』ですよ。そこを中心として『京都村』。聖女像がある辺りから東側を『学者村』にするとか何とか」
「学者村‥‥ですか? たくさんの学者が集う場所になるんでしょうか」
 片方の少年は、京都村よりもそちらの話に食いついたが、もう一人の少年は遠くへと目をやった。
「手は2、3打っておく、って事か」
「まぁ『学者村』が見所のひとつになるかは分かりませんけどねぇ‥‥。あぁ、『温泉』には治療院も備え付けられてるそうですよ。猫屋敷もあるとか。レスローシェの猫男爵よりも多く飼っているらしいですし、あの人どうするのかなぁ‥‥」
 商人が呟いた所で、馬車は速度を緩め始める。間もなく『温泉』に着くのだ。
「俺はそこで降りる。領主代行は何処に居る?」
「さぁ‥‥。あちこち動き回ってるそうですからねぇ」
「僕は、聖女像を見に行きたいと思います。奇跡をこの地にもたらした方なら、ご挨拶をしておかないと」
「その内、巡礼場所のひとつになったりしてねぇ‥‥はははは」

 そんな風に、この場所は大きく発展を遂げようとしている。
 さて、貴方は‥‥。ここに、どんな風を吹き込んでくれますか?

●今回の参加者

ラテリカ・ラートベル(ea1641)/ ミカエル・テルセーロ(ea1674)/ ユリゼ・ファルアート(ea3502)/ リリー・ストーム(ea9927)/ アリスティド・メシアン(eb3084)/ アーシャ・イクティノス(eb6702)/ ジャン・シュヴァリエ(eb8302)/ エルディン・アトワイト(ec0290)/ エフェリア・シドリ(ec1862

●リプレイ本文

●京都村
「‥‥変わった名前のお店ですね」
 冬枯れの雰囲気漂う光景の中、ラテリカはもぐもぐとダンゴを頬張った。
「‥‥本当に変わっているよな」
 その隣で、ジャパン産の茶をアリスティドが味わっている。
 彼らがのんびり佇む場所は、将来京都村の一画となるであろう『有栖亭』。ジャパン名物茶屋を模しているが、冬に外で楽しむような客は居ないから、建物内から少し窓を開けて外を見ている。
「お客さ〜ん。寒いから窓閉めてくださいよ」
「は〜い」
 一方、リリーも観光でこの地を訪れていた。しかし、彼女の場合は。
「お心遣い、感謝致しますわ」
 ラティール再興に尽力する、領主代行オノレを訪ね、滞在場所を確保していた。と言うのも。
「『聖女様』であり続けるのも、なかなか骨が折れる事ですな。貴女が『降臨』なさった時の姿、私も拝見しておきたかったと最近よく思うのですが」
 彼女が『聖女様』としてこの地で慕われているのには、大きな理由がある。しかし、事情を知っている者がその『降臨現場』を見ていたなら、いろいろ笑える部分もあっただろう。だが、その『現場』に遭遇した者は、それほどの数も存在しない。そして、その『降臨なさった聖女様』の顔を覚えている者も、今となってはさほど居ない。彼女の話は尾ヒレがついてこの地で広がり、彼女の姿を模して作られた『聖女像』は、最近であればあるほど、慈愛溢れる慈母の如き美しさに磨きがかかっている。
 まぁ得てして、歴史とはそんなものだ。良い事も悪い事も、大げさに広まっていく。

 冒険者達は、この地を再興させるべく、数々の尽力をしてきた。
 そして、今回は。

「ゴバンのような町です! 町を四角く区切って道を縦横に♪」
「ゴバンとはなんじゃ?」
「ゴバンと言うのはですね‥‥んーと‥‥こんな形の‥‥」
 かりかりと地面に線を引き始める少年、ジャン。それを覗き込むのは、『京都村建設予定地』で整備を行っている職人達だ。かつて、この地を離れて行った職人達の多くは、今、この地に戻ってきている。職人達を養成する学校も出来、そこの先生をやりながらもこうして仕事に参加している者もいた。
「そして区画を作って、区画ごとに『名所』にちなんだ名前を付けるといいと思うんです! 観光しやすいように道を廻らせて、辻ごとに案内板を立てて‥‥」
「区画ってなんじゃ?」
「えーとですね‥‥」
 ジャパンとノルマンでは、様々な事が異なる。それをひとつひとつ説明して理解させるには時間がかかるだろう。理解できない事もあるだろう。ジャパンとノルマンの融合の末に、『ジャパン京都風』の場所が出来れば良いのである。
「町の名前は、温元町、薬師町、湯女町、寝子町、有栖町‥‥とか、いろいろ考えればありますよ」
「字が分からんのぅ‥‥ちょっとお前さん、そこの木に書いてくれんか」
「はっ! すでに看板があるじゃないですか!」
「わしらは良い仕事をする事で有名なドワーフ3兄弟なのじゃ。こんな仕事は朝飯前なのじゃよ」

 と、まぁ現場では結構適当に進む事もあるようだ。

「どう変わってるか楽しみだったの」
 ユリゼは治療院と『温泉』を訪ねていた。その後方に同行者兼ガイドっぽいものを連れている。
「‥‥顔が広そうだからお願いしたけど‥‥デートじゃないわよっ」
「こういう場合、私はどう対応すべきかな。1、『分かっているとも。仕事で来ているんだよね』。2、『分かっているとも。共に行動する事こそがデートだと言う事を』。3、『分かっているとも。だがもっと素直になろうじゃないか、お嬢さん』」
「そういう事は、胸の中に仕舞っておいて貰える?!」
 いろいろと、素直なんだか素直じゃないんだか分からない2人である。
「ジャパンでは、お湯に柚子って柑橘類を入れるみたい。干した柑橘類の皮をハーブと混ぜて薬湯にしたらどうかな。花びらの形に切って浮かべてお湯の彩りも兼ねて。治療以外にも入るのが楽しくなれば良いなと思うの」
 あれこれ薬師や店員と話すユリゼの後方で、男はにこやかに待機していた。多少狡猾な犬のように。
「って、女性向けに考えたんだけど‥‥フィルはどう思う? 男性側の意見も聞いてみたいんだけど」
「ははははは。足湯以外の混浴があれば後は何でもいいなと思うけれど、そんな事は言わないとも」
「‥‥覗きに行くの?」
 一通り試作も行った後、2人は茶屋から出てきたバード2人と出会った。
「あら? お茶屋さん、どうだったの?」
「こんにちはなのです。とっても美味しかたですよ♪ にゃんこさんとー、温泉とー、でも、一番の楽しみは、お食事だったです♪ これからも、おししょさんとあちこち食べ歩きするですよ」
「楽しんで貰えると、ここに住んでいる人も嬉しいと思うわ。存分に観光楽しんでね」
「はいです♪ でも、ノルマンでお着物を着てあちらのお料理を食べるは、不思議な気持ちがするですね」
「着物、すごく似合ってるわ。寒い冬を彩る花みたい」
「えへへ〜」
 などと褒めながら、ユリゼはふと『ブラン商会』を思い出していた。お土産として、この地に支店を持ってもらえないだろうか。他にも、こじんまりとしていても良い。いろんな土産物店が並ぶ通りが出来ないだろうか。例えば、聖女様やアーモンドの花のモチーフを使ったカンザシや櫛。
「茶屋か‥‥」
 一方、女性陣の後方では、フィルマンが『有栖亭』を眺めている。
「君は、ジャパンに行った事は?」
「ん?」
 問われたアリスティドもそちらを見る。
「ジャパンで茶屋と言えば、江戸では出会い茶屋、京都では貸し座敷と言ってだな‥‥。実に風流な場所なんだが」
「そう。一応、聞かなかった事にするよ」

●その頃の
 白の教義の僕であるエルディンは、レスローシェでの豪遊をたくらんでいた。
「初めての場所なので、何らかの指南を頂きたいのですが」
「うちには教会巡りなんて品の良いもんはないぞ」
 レスローシェの主、エミールに前もって尋ねていたものの、その返答。しかし、そっと小さなメダルを渡された。
「まぁ楽しんでこいや」
 というわけで、彼は『レスローシェ案内人』に導かれ、『酒場通り』にやってきた。
 彼の冒険は、今まさに始まろうとしている。

●学者村
 その場所は、平坦な場所に作り変えられていた。
「以前、ジャパンで学問所を見たことがあるんです。ケンブリッジのような大掛かりなものではなく、文化、語学、薬草学などについて、図書館に併設で建物を作り、学者に部屋の貸し出しを行い研究場を確保し、代わりに定期的な時間に安価か或いは無償で一般市民にも、教育を受けられる場になると良いなと思いまして」
 ミカエルが、オノレに説明をする。
「月道が開いたから、冒険者や知識人の活発な交流があるはずです。紙も安くなっているはずだし、複数の言語を操る冒険者は多いし、そういった人達に写本を作ってもらったり、本を寄付してもらったり‥‥。ラティールが文化的にも名高くなって欲しいなと思って。図書館、あると便利ですよ! 大事ですよ!」
 隣でアーシャが力説した。
「古いものには、いろいろな物語、あるのです」
 エフェリアは囁くような声で伝える。
「古いものをたくさん集めて、飾って、いつでも見られるところがあると、良いと思うのです。研究をするのも、良いと思うのです。どういうもので、どうして作られたかもわかると、きっともっとすてきなのです」
「それはつまり‥‥名品古品珍品などを展示する場所ということか」
 図書館や学問所は、ノルマンの他の地域に幾つか存在する。だが、それを含めた展示場と研究所。それらが備わる場所はなかなか無いのではないか。最も、資金もそれに比例して必要となるだろうが。
「最初は小規模になるだろうが‥‥様々なものを併設するのは良い考えだな」
「飾った時に解説文、付けるのです。でも、飾っていてなくなったりするのも、大変なのです。兄は、建物をつくる時は、防犯・防災もしっかりと、と言っていたのです」
「それは大切な事ですよね〜」
「子供向けの絵本などもあればと思います。絵本は‥‥心が豊かになる第一歩ですから」
 皆の意見を踏まえて、現地をぐるぐる廻る。どの辺りに建てるか‥‥予算は‥‥など、第1案を叩き台として出し、それをオノレに提出した。
「どんな所になるでしょうか」
 夕陽が当たる平地を眺めながら、エフェリアが呟く。

●その頃の
「ここで貴女と会えたのは神のお導きでしょう」
「たった一晩だけでも、貴女のそばにいられる幸せに感謝します」
「おぉ、貴女の美しさはまるで月の女神アルテ(略)」
 美女エルフを求めて蝶のように店を渡り歩くうちに、口も脳構成も大胆になってきたエルディンは、その勢いに乗って次の店に突撃した。
「おーほっほっほっ。いらっしゃいませ、ご主人サマ」
「はっ‥‥こ、この店は?!」
「ようこそ。ここがジャパン風『三途の川』と名高い『鞭その他でゴシュジンサマをしばき倒す』店よ」
「えっ‥‥あれっ‥‥?」
 ずるずるずる。
 そうして、白クレリックがまた一人、闇の中へと消えて行ったのであった。


 夕陽が照らし出す町の風景は、かつての影も見えぬほどに優しい。
 ローブにフード姿という出で立ちの女性が、その中で遊ぶ子供たちの間を縫って歩いていた。子供たちには必ず手を差し出し、その手を見つめる子供たちに種や球根を手渡す。覗き込まれれば微笑み、また別の子供たちの方へと歩んで行く。渡された子供たちの何人かは彼女の後を追って歩き、その道のりは、この地の未来へと続く光のようだった。
 それを振り返り、彼女は呟く。

「ラティールが、素敵な土地になりますように」