袴(戦)隊 巫女練者ー
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■ショートシナリオ
担当:呉羽
対応レベル:フリーlv
難易度:やや難
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:7人
サポート参加人数:7人
冒険期間:06月15日〜06月20日
リプレイ公開日:2007年06月26日
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●オープニング
「なぁなぁ」
パリに最近開店した酒場『華麗なる蝶パリ亭』の近所に、小さな帽子屋があった。帽子屋と言っても店で売るわけではない。注文を受けて作り金持ちに売るのだが、帽子以外にも靴下や人形などを毛糸で編んでいた。
「ジャパン風の帽子作ってくれよ」
「お断りです」
だがその小さな店で1人帽子を作っている職人が、まさかジャイアントだとは誰も思わなかっただろう。ジャイアントをパリで見る事は少ない上に、彼らは元々あまり器用ではない。
「お前、ほんと妹そっくりだよなぁ。冷たすぎだろ」
「エミール様が突拍子も無い事を言い過ぎるのですよ」
「この前も、『シャルトルのノルマン江戸村みたいなの、レスローシェに作ろうぜ』って言ったら殴られた。『ノルマン京都村』とか『ノルマン蝦夷村』とか良くねぇ?」
「客寄せと経費の兼ね合いを考えて下さいね」
その辺に置いてあった帽子を被って遊んでいたエミールは、冷静な忠告に溜息をついた。
「遊び心が足りねぇなぁ‥‥」
「遊びで無駄金を使われては困りますよ」
「せっかくジャパンの商人捕まえたのになぁ」
「美人の娘でも居たんですか。その商人に」
「そうそう。黒髪が艶々してるんだよな〜」
嬉々として話し始めるエミールの隣で、帽子を編んでいたジャイアントは軽く顔を上げる。
「私が暗殺者の纏め役なら、美女ばかりを集めて送り込むでしょうね」
「ジャイアント界の美女なんかいらないからな!」
エミールが文句を言った所で、突然扉が開いた。メイド服姿の娘が中を覗き、2人を見つけて嬉しそうに声を上げる。
「あ。御主人様発見です〜」
「お。次の『天使隊』の服、揃ったか?」
「それなんですけど」
娘は背中に背負っていた袋をよいしょと下ろした。
「ジャパン風っておっしゃっていたので〜。こう言うのは如何ですか?」
翌日の冒険者ギルド。
受付員は、メイド姿の女性と向き合っていた。
「メイドのメーちゃんとお呼びくださいね」
笑顔で開口一番そう言われても、「はぁ」としか言いようが無い。
「『袴隊』を募集したいんです。隊員の皆さんには、巫女服を着てお仕事してもらいます。あ、袴の色はいろいろあるんですよ〜。単衣(ひとえ)は白で合わせようかな〜って思ってますけど。千早もいいかなぁ‥‥」
「はぁ‥‥」
「巫女さん見習いみたいな感じで行こうかなって。あ、巫女さんと言うのはですね。神にお仕えする‥‥神官さんの事です」
女性限定職だけれど、とは言わない。
「なので男性女性問わず募集です」
にっこり微笑む。
「体格の良い男性が巫女服を着て颯爽と掃除してたりすると、萌えますよね〜♪」
「はぁ‥‥よく分かりませんが」
「もしご自分で巫女服を持っているなら、それを着てもらっても構いません。お気に入りのを着てもらったほうがお仕事もはかどりますしね」
「それで‥‥具体的な内容というのは、まさか神官見習いを冒険者がするという体験依頼でしょうか‥‥?」
「巫女さん見習い風です。勿論それは、仮の姿ですよ」
楽しそうに笑みを浮かべ、メイドさんは辺りを見回した。
「その実態は、巫女服を着て悪の組織と戦う『巫女練者』です」
「‥‥は?」
「ほら、最近『悪の組織』って多いじゃないですか。いろいろ物騒ですよね〜。預言で大騒ぎですしね。やっぱりキャッチコピーは、『巫女練者が殺らなければ誰が殺る』かしら。『行け、ぼくらの巫女練者』というのはどうでしょう?」
「どう、と言われても‥‥」
「最近、パリの子供の間では魔法少女が流行りだって言うんです。『らちゅ☆たん』だか『こーりー☆たん』だか知りませんが、負けられません!」
いろいろ言いたいことはあったが、受付員は諦めて依頼人の話を聞いている。
「子供達のヒーローあーんどヒロインは、『巫女練者』じゃないと! これは私の野望で御主人様には関係の無い事ですけれども、頑張ります!」
「‥‥それで‥‥暇な冒険者を集めれば宜しいのですね‥‥」
多大な疲労を感じながら、受付員は立ち上がった彼女を見つめた。しかし彼女は微笑みながら羊皮紙を手渡す。
「はい、これ募集案内です。このまま貼っていただいて構いませんよ。それで集合場所なんですけれども、敵に見つかると困るので、こちらの場所を借りても良いですか?」
「お好きにどうぞ」
仮想敵までいるのかと呆れつつ、受付員は頷いた。
「では、この募集に興味を持った人には、こう伝えて下さい。『君達の最初の仕事は2択だ。とある場所にジャパン村を作るべく奔走するか、とある修道院を訪ねその修道院の実情を暴くか。どちらか1つ選びたまえよ、諸君』」
●リプレイ本文
●
巫女。それは本来、神に仕える聖なる職務ではないだろうか。神職なのだから、冒涜してはいかんのです。いかんのですが。
「ミコとは何ですか?」
エフェリア・シドリ(ec1862)の問いが尤もであるように、ここノルマンではそれが何を示すものなのか分かっていない人が多い。
「てん‥‥いえ、新しい任務と聞いて来たのですが、私‥‥何か勘違いしておりますでしょうか?」
リスティア・レノン(eb9226)のように、別の仕事と勘違いして来た者もいる。そうだ。ノルマンに巫女なんて仕事はほぼ存在しない。
「‥‥悪寒がしたのは間違いではありませんでした‥‥。おのれガブめ‥‥一度ならず‥‥ぎゃー! 荷の中に何か入って!」
だが冒険者とは世界中を旅して回る職業でもある。ジャパンに行った事のある、そうミカエル・テルセーロ(ea1674)のようにそれが何たるかを知りながら騙されてやって来て、おまけに荷物の中にこっそり巫女服が入れられていたりもする者もいた。
「でも、巫女装束は着てみたかったのですよね」
一方、久々の依頼なので勘を取り戻すべく軽い気持ちで参加したティエ・セルナシオ(ea1591)のような者もいる。そして。
「一旦受けた以上は、仕事は真面目に取り組むんだ‥‥真面目に‥‥。く‥‥何で俺はこの依頼に‥‥」
巫女服を受け取りながら涙するラシュディア・バルトン(ea4107)の姿があった。彼の受難がこれだけで終われば良いのだが。
●
『モナッサ修道院』は、『女好きで、最近ハーフエルフの元メイドさんを探し回っていると有名な貴族』が出資して作ったらしい。名前は『バトン男爵』。ただしこの名前を修道院で出すのは厳禁である。例え『きな臭い証拠』を掴んでも、だ。
「まさか‥‥いえ、でも‥‥間違いないですね」
その修道院の表門から少し離れた所で。リディエール・アンティロープ(eb5977)が潜んでいた。彼の目には、門を守る者達の顔がはっきり見えている。
「表から入れませんね‥‥」
「どうかしたのですか〜?」
そんな彼の後ろから、リーラル・ラーン(ea9412)が声をかけた。彼女は『家事と精神修行』目的で修道院に入れてもらおうとやって来たのだ。勿論表向きの理由だが、ぽやっとした彼女の表情からは何を考えているのか読み取れない。
「実は、あの右の男性。以前‥‥依頼中の取引でお会いした事が」
言えない。あんな真面目な顔して筋肉を修道服に隠して槍を持って立っている門番が、実はひらひらピンクドレスを着る趣味があったなんて。そして、その男と強制デートさせられたなんて。
「裏から入るのはどうですか?」
「画家を装うつもりですから‥‥。裏から入れていただけるかどうか」
門番の趣味をネタに脅す手もあるのだが、そんな事を考えるリディエールでは無い。
「考えるより実行ですよ。私は先に行きま‥‥はう!」
何も無いところでつるっと滑って、見事道の真ん中で転んだリーラルに門番達が近付いてきた。
●
各地を巡礼している神官ティエと、その従者ラシュディア、勉学の為に2人について回っている学者ミカエルという名目で、3人は修道院内に入っていた。彼らが偽名を使っていたかは謎である。
「こちらの建物だけ古いのですか‥‥。なるほど、この柱の様式は‥‥」
修道士から院内の説明を受けながら頷くミカエル。一方その向かい側の建物内では。
「お嬢様、こちらです!」
方向音痴を装ってうろうろしているティエを、更にあらぬ方向へ誘導しようとしているラシュディアの姿があった。
「まぁ、ここでいいのかしら!」
「我々の部屋はここに間違いありません!」
大声で迷子になっている2人に、修道士達が慌ててやって来る。
「そちらに入ってはなりません」
「私たちの部屋はこちらでしょう?」
「逆方向でございますよ」
その後も、2人は度々セットで迷子になった。あまりやり過ぎると常時修道士のお供がつきそうなので、ある程度印象だけ与えて以後は控える。
「幾つか怪しい場所がありましたね」
与えられた部屋を一通り調査した後、ミカエルが2人に告げた。
「あぁ、俺も見つけた。隠し扉が3箇所。後は常時見張りがついている場所の奥に、何かありそうだな」
「連絡係さんはもう入ったでしょうか」
窓から外を眺め、ティエは下を見下ろす。丁度そこに灰色の袴を履いた少女の姿が見えて、彼女は微笑んだ。
●
「ジャパン人のおばあさんは、宗教と言ったらこの服と言っていました」
裏門でエフェリアは兄と一緒に自らの出自設定を門番に話していた。巫女服でやって来た理由を話しているわけだが、あっさり通してもらえる。
奉仕活動の名目で中に入ったリスティアとは厨房で出会ったが、その奥ではリーラルがナイフを飛ばしていた。
「ナイフさんにも活きがいいものがいるんですねぇ。いつも私が使うと元気良く空を飛ぼうとするんですよ」
壁に刺しておきながら言う天然ぶりに修道士達も呆れているようだったが。
「こっちのナイフのほうが滑らないと思いますよ。がんばりましょう?」
にっこり微笑んで違うナイフを差し出すリスティアとは、似たもの同士かもしれなかった。
結局、裏門からリディエールもやって来て、怪しい場所を絵に描きつつ動く。リスティアとリーラルは、家事手伝いをしながら雑談の中に情報が含まれていないか探る。そして、クレリック様ご一行3名と単独行動3名との間を行き来するのがエフェリア。皆の情報を共有する為に、ジャパン語で会話伝達を行うのだ。
「地下はワインと穀物倉になっていました。ただ‥‥地上にも穀物倉はありますね」
地上の穀物倉は菜園や果樹園の近くにあるのに対して、地下の倉はやや遠い場所に位置する。厨房から近いとも言えない。
「何かかくしているのでしょうか。パーストしてみます」
ミカエルから情報を聞いたエフェリアは、早速現場に潜り込んだ。僅かに開いている扉からそっと中に入り、樽の間に隠れてパーストを唱える。何度か見る時間を変えて唱えた結果、一瞬強烈な光景が見えた。
「‥‥何でしょう」
その一瞬では理解出来ず再度試みようとしたその時、僅かな外の光が差し込んでいた扉の隙間が消えた。
「‥‥!」
暗闇の中、扉へ駆け寄ってしばらく待ち、引いたり押したりしてみる。だが‥‥それはびくともしなかった。
「‥‥閉じ込められてしまいました」
そっと扉に手を当てて少しでも距離を稼ぎつつ、彼女はテレパシーを唱え始めた。
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「エフェ‥‥いえ、ハナさんですか? 見ていませんけれど」
『ジャパン語仲間』として親しくなったという触れ込みで、彼らは近すぎず遠すぎず接している。だが夜になっても誰一人エフェリアの姿を見た者はいなかった。
「変ですね。昼から一度も誰も見ていないのは‥‥」
絵筆を持ちながらリディエールは中庭を眺める。皆、修道院のあちこちに分散して調査を行っていた。隠し扉の先は2箇所まで探索済だが外れだった為、最後の1箇所を調査しようかという時期だったのだが。
「まさか‥‥捕まったのでしょうか」
思わずリスティアが呟いたところで、ミカエルが礼拝堂のほうを振り返った。
「地下倉庫かもしれません。礼拝堂の裏に穀物やワインを保管する部屋があったんです。あの場所は人通りも極端に少ない」
「でも、倉庫にいつまでも居るなんて言うのは」
「とにかく行ってみましょう」
とりあえず彼らは二手に分かれた。地下倉庫に行く者と、最後の隠し扉を調査する者と。
人も絶えた通路を進み、地下へ下りたところで。彼らはその扉が僅かに開いたまま中から光が洩れているのを見た。
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この修道院は珍しい事に男性と女性が同じ礼拝堂で礼拝をする。普段の生活は隣り合わせの建物内で送っているが、回廊を通って礼拝堂に通う姿は、世俗に染まった者からは『見合いの場』へ向かうようにも見えると言う。
「修道士にあるまじき行為というネタは出てきそうですよね」
隠し扉の前にいつも居た番人がいない。ティエが呟きながらブレスセンサーを唱えたラシュディアを見た。
「中に3人いるな」
「どうしましょう?」
尋ねたのはリスティア。
「暴れるべき状況なら、遠慮なく巫女服に着替えて名乗りを上げましょう」
「‥‥なぁ。本気で着替えるのか? 俺、巫女服強制的に渡されたんだけど、もしかして魔法少女風にアレンジされたりとかしてないよな?」
「あ。私もメイドの『メーちゃん』さんに選んでいただいたのですよ。ほら、これです」
何故か背負っているバックパックの中から巫女服を取り出すリスティア。
「魔法少女風になってたら困るの?」
「嫌だろ! 大体そんなの巫女服じゃないもんな。そうだよな。大丈夫‥‥」
「『魔法のウィザード、プリティらしゅ☆』の知り合い?」
突然。近くの壁から声が聞こえてきた。
「な?!」
そして、べろんと壁が‥‥いや、壁に見せかけた何かが剥がれて中からメイド姿の娘が出てくる。
「あら? メーちゃんさん」
「そう。ラシュディア・バルトン。どこかで聞いた名前だと思ったのよ。まさか、らしゅ☆たん本人だったなんて‥‥」
「な、何故それを知ってる!」
「やっぱり本人なのね‥‥ショック。でもいいわ。これ着なさい。そして『魔法巫女らしゅ』として名を広めなさい。じゃ、そういうことで」
ラシュディアに魔法少女風巫女服を渡して、メーちゃんは壁へと戻って行った。
「見つかったみたいですね」
これだけ隠し扉の前で騒げば見つかるだろうと分かっていたティエだったが、扉が開いて中から男達が出てくるのを見、彼女はにこりと微笑んだ。
「お前らここで何をしている!」
「待ってくれるそうなので、皆さん着替えましょう‥‥ね?」
微笑の中に冷たい気配を漂わせて彼女は遠慮なく、容赦なく‥‥。
1人の男にウインドスラッシュをぶちかました。
「な、何をする!」
「そこから先にこちらに出ては駄目ですよ? 着替え終わるまで待っていてくださいね?」
「ふざけるな!」
「あの‥‥貴方達は、悪い事をここで企んでいたのでしょうか?」
着替えながらリスティアが尋ねる。
「お前らのような凡人に何が分かる! 我々の計画は壮大かつ崇高な陰謀な」
ごおっ。3人の男を弱めのアイスブリザードが襲った。壁の一部が削れて破片が飛ぶ中、男達は慌てて部屋内へと後退する。
「如何なる悪も見逃しません、勝つまでは! みこれんじゃあ、りすてぃあ・れのん。見・参です!」
緑の袴に白の単衣。だがゆったり作られているはずの巫女服の胸の辺りが、何故かぴったりふぃっとしているのは気のせいではないだろう。今回は細工されていないと良いが。
「同じく、巫女練者、黒巫女ティエ!」
「う〜‥‥」
「早く名乗りましょうね?」
まだ確実な悪事のネタを手に入れてないけどまぁいいやと思いつつ、ティエはラシュディアを急かした。
「魔法‥‥みこ‥‥」
そんな彼の巫女服は、ステキな原色使いで不自然にレースがついている。その上花の飾りやリボンまで袴に。
「俺は魔法巫女らしゅ☆だぁああぁぐあっ」
開き直って叫んだ魔法巫女が不意に横っ飛びに飛んで行った。
「あ〜‥‥ごめんなさいです〜‥‥」
何故か回廊を転びながら滑ってきたリーラルに激突され、柱にへばりついているラシュディア。
「す、すみません。遅くなりました」
リディエールが謝りながら皆の格好を見てバックパックを下ろす。その後ろからエフェリアが顔を出してこくりと頷いた。
「地下に男の人と女の人がいました。『あいびきしているのは内緒だよ』と言っていました。『ここの院長とらぶらぶなフリをしているけど、じじいはあまり好きじゃない』『薬草で儲けて金を持っているから、金を搾り取れ』とも言ってました」
「な、なんだとぉ!」
部屋の中から再び男達が出てこようとする。それへ。
「着替え終わるまで待って下さいねと何度言ったら分かります?」
にっこりウインドスラッシュを飛ばすティエだった。
「そんな魔法、もう恐くねぇぞ!」
「‥‥マグナブロー」
ぼそとミカエルが呟いた先で、炎が勢い良く吹き上がった。
「ぎゃ〜、助けて〜」
「‥‥着替えました」
リディエールは持参品『ヤギの巫女装束』をどこか悲しそうに着込み、まだ倒れているリーラルを起こす。
「ミカエルさん、着替えないのですか?」
一方未だ着替えていなかったミカエルの背中に、灰巫女エフェリアの無垢な視線が突き刺さった。
「う‥‥」
「着替えないのですか?」
「ちくしょう! こうなったらとっておきの秘策! 私の神々しいばかりの魔法で!」
マグナブローの打撃から立ち直った男達のうち、修道院院長らしき男がずずいと前に出る。
「いざ、怒りの」
「最強の盾! らしゅたんシールドォォッ!」
とっさにそれへ、ティエが気絶しているラシュディアを投げ捨てた。
「魔法を使う者は封じ込めましょう!」
「分かりました!」
わたわたしている院長に、リディエールのアイスコフィンが炸裂。
何とか巫女衣装に着替えたリーラルが今度は袴を踏んでつるっと転び、そのまま別の男に激突。すかさず皆が体勢を崩した男達に非情なまでに魔法を撃ち込み、悪は滅んだ。
●
「‥‥着替えないのですね」
エフェリアのつぶらな瞳を背中に受けながら、ミカエルは軽やかに笑う。着替える前に事が終わったので、彼もほっと胸を撫で下ろした事だろう。後で容赦なく『関係ないけど強制お着替え』させられるかもしれないが。
「結局‥‥貴族のバトンさんとモナッサ院長が結託して、薬草で一儲けした‥‥ということですか?」
悪が潜んでいた隠し部屋を調査し、何かの計画書などを手に入れた一行は、地下倉にあった『薬草の粉が入った穀物袋』を証拠品として持って帰ることにした。まぁいろいろ脅したり宥めたり言いくるめたりすると、院長達は自分達の悪事をぺらぺら喋り出したので、そのまま騎士団の詰所まで連れて行く事にする。
これでモナッサ修道院は取り潰しになる事だろう。修道士になる人々や家族から金品を巻き上げてもいたらしいから、潰されたところで‥‥哀しむ人は少ないとは思うが。
「あの‥‥」
そして、最後尾を歩いていた‥‥いや歩かざるを得なかったリディエールが、くるりと後方を振り返った。
「私は、そういう気はありませんから」
彼の後ろを尾行しているつもりだった修道院の元番人は、声をかけられて嬉しそうに笑みをこぼす。
「デートした仲でしょぉ〜? 付き合ってくれたっていいんじゃなぁい?」
「カタつける?」
にこっと笑ってティエが後ろから声をかけた。
「魔術師勢ぞろいですからね〜。いろいろ出来ますよ」
「人が多いところは危険ですよ。巻き込んでしまいますし‥‥」
「いえ、あの、そこまでして頂かなくても」
リディエールが思わず止めたが、彼女達を止める事が出来たのかは定かでは無い。
あ。
そういえば、気絶していたラシュディアさんはどうしたのでしょうね。