格好良い姿を見せて下さい〜筆者ヨーシア〜

■ショートシナリオ


担当:呉羽

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:6人

サポート参加人数:2人

冒険期間:09月19日〜09月24日

リプレイ公開日:2007年09月28日

●オープニング


「こんにちは、おばさん」
「あれ。ヨーシアちゃんじゃないか。帰ってたのかい?」
「はい。そろそろ収穫祭じゃないですか。私が頑張って〜立派な記事に仕立て上げないと!」
「そりゃ楽しみにしてるよ」
 1人の娘が、パリに帰って来た。
 娘の名は、ヨーシア・リーリス。日常の事、旅の事、珍しい物、面白い物の事。何でも文章にして酒場に貼り付けている。文章を書くのを仕事としている為に、よく店の宣伝文など書かされているが、それも仕事。だが彼女が目指しているのは、冒険や旅行の記録を分かりやすいよう、楽しい内容で読んでもらう、という事だ。お堅い内容の記録が多い中、庶民でも楽しめるような‥‥。
「こんにちは」
 酒場に顔を出して、様々な人から話を聞くのも彼女の仕事だ。話を聞かなければ記録は残せない。しかし彼女が書く記事の中でも皆に人気なのはやはり‥‥。
「冒険者さん、ですよね?」
 彼女は頭に被っていた羽飾りのついた帽子を手に取り、にこっと笑った。
「実はお願いがあるんですけど‥‥」
 温めたミルクを頼み、彼女は椅子を許可無く彼らの卓に割り込ませて、一同を見渡す。
 そして。

「皆さんの格好良い姿を、私に見せてもらえませんか?」


 パリ郊外で出来ればモンスターがいそうな所に行って、冒険者の冒険者らしい、素敵で格好良くて惚れ惚れしそうで『きゃぁ〜、ぼうけんしゃさまぁ〜』と応援したくなるような姿を見せて欲しいのだと、彼女は彼らに告げた。
「‥‥そんな事言われても」
 モンスターと戦うということは、例え格下の相手であろうとも命を懸けて戦うということである。それをいちいち格好良さを追求して戦ってなどいたら、負わなくても良い怪我も負いかねない。
「大体、そんな演技とかしろって言われても‥‥上手い奴はいいだろうけどさ」
「演技なんてしてもらう必要はないですよ。今回、このパリで酒場に貼りたいと考えている記事は、冒険者さんを紹介する内容なんです。紹介出来れば今までの経歴なんかも含めて‥‥。そして、今こう在る! というような。日頃冒険者さんに助けられたりお手伝いしてもらう事はありますけど、やはり大多数の人々は冒険者さんの素顔って知らないわけなんですよね。それから、冒険者さんって、こんなに格好良いんだよ! って事も」
「‥‥そんな格好良いと言われるようなものでも‥‥」
「ふふふ〜。甘いですね! 女の子にもてたくないですか?! 女の子は、普段といざと言う時に見せる顔とのギャップに弱いんですよ! 普段は、ぼーっとしてる貴方でも! 戦うときの真剣な横顔に! 女の子は恋をしてしまうこと間違いありません!」
「‥‥でも、現場に女の子がいるわけじゃないし‥‥」
「だ・か・ら!」
 手に持っていたペンをくるりと回して、彼女は満面の笑みを浮かべた。
「私が書くんじゃないですか! そのお手伝いをするんですよ、私の文章で!」
「‥‥」
「あ。あ、勿論女性冒険者も素敵に書く自信はありますよ! 男の子にもてたくないですか?! 男の子は、普段はしっかりしているお姉さんタイプの貴女でも、いざと言うときにうっかりミスをしちゃうと、ぐっと来るんです!」
「‥‥それ、役立たずじゃない」
「そ、そんな事ありませんよ?! ドジっ子というのは、なかなかの人気を誇っているらしいですよ?!」
 少し必死になって『ドジっ子』を援護するヨーシア。
「えーと、とにかく。女性でも格好良く、というのがお望みならば、格好良く書きます! 可愛くというのなら、男性でも可愛く‥‥書けるといいなぁと思います! でも、冒険者さんの冒険中の日常も書いてみたいですし、一緒に行動して冒険をして、冒険者さんの苦労も書いてみたいと思っているんですよ? 今回は、その取っ掛かりとして、皆さん1人1人を書いてみたいと思うわけです」
 冒険者という一括りではなく、個人を書いてみたいのだ、と彼女は言う。
 その人の個性を。冒険者にもいろいろあって、今があるのだという事を。そして、今の姿を。
「モンスターと戦闘になっても、その姿もばっちり記憶しておきますね。自然体でいいですよ? そのほうが格好良いですから!」

●今回の参加者

 ea5242 アフィマ・クレス(25歳・♀・ジプシー・人間・イスパニア王国)
 ea8384 井伊 貴政(30歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea9927 リリー・ストーム(33歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)
 eb5549 イレクトラ・マグニフィセント(46歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 eb6702 アーシャ・イクティノス(24歳・♀・ナイト・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb8642 セイル・ファースト(29歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)

●サポート参加者

シヴァ・アル・アジット(ea8533)/ ポーラ・モンテクッコリ(eb6508

●リプレイ本文


 皆様お久しぶりです。お元気でいらっしゃいましたか?
 ノルマンの皆様の為、知りたい情報を素早くキャッチ。素早く皆様にお送りしております、私、ヨーシア・リーリスの『冒険記』第1弾!
 そう。皆様も日頃、気になっていますよね? あの人達の事が!
 と言うわけで、『小さな事から大きな事件まで万事解決便利屋冒険者、しかしその実態は?!』と題しまして、日頃町のあちこちで見かける放浪しゃ‥‥いえ、立派な志の元、『冒険者』となった方々に密着し、彼らが日頃どのような生活を送っているのか。それを調べて参りたいと思います。

 では。
 今回私の調査にご協力いただきました冒険者の方々の紹介をさせていただきます。

 『笑顔がちょっと小悪魔的。その腕に抱える人形とどちらが腹黒なのか?! イスパニア出身の愛らしき乙女は16歳。アフィマ・クレス(ea5242)さん』
 アフィマさんは、元々は信仰一筋お堅い家の娘さん。大喧嘩の末に家を飛び出しジプシーに転職。今年で冒険者歴も3年目と、お小さい体で驚くべき行動力です。では、アフィマさんから一言。
「ふふふっ、人形使いの格好良さを是非見せてあげなきゃね!」
 おや? アフィマさんはジプシー。人形使いとはどういう事でしょうか。
「占いや踊りを生業とする人も多いけど、あたしはこれね。道芸のひとつって事で」
 なるほど。人形を操る芸を見せる事で日銭を稼いでいるわけですね。
「あたし達は、人の心を明るくする仕事をしてるの。だから、人形を使ったり話術を使ったりしてみんなをからかうのが得意。笑いは人を楽しくさせるでしょ? だから、悪戯はやっぱり欠かしたくないライフワークね、うん」
 まさか私の後ろに罠張って、嵌まるのを待ってたりしてないですよね?!
「やりすぎないのがポイント。そして、普段は明るく元気良く!」

 『万年修行中! 卓越した技能を持ちながら調理しか能が無いと言う控えめさは、ジャパン男児ならでは? 若き浪人、井伊貴政(ea8384)さん』
 貴政さんはジャパン出身の浪人さん。ノルマンの皆さんには、『浪人』という言葉は馴染みが無いですね? 私もありませんので聞いて参りました。
「ん〜‥‥。浪人とゆーのは、主君を持たずにぶらぶらしている武士の事かな〜」
 武士とは?
「こっちでゆーと、ナイトみたいなものですね〜」
 なるほど。それは分かりやすいですね。しかし、せっかく王に仕える事が出来る資格があると言うのに、何故お仕えしないのでしょう?
「実は、このパリが冒険者として活動し始めた初めての場所で、1年くらいこっちに居たんですよ〜」
 成人した時には既にこちらに移り住んでいた、という事なのかもしれませんね。
「その後、ジャパンに帰国して、大体京で剣や料理の腕を磨いて修行してました〜。たま〜に思いつきでパリに戻って来たりしてます〜」
 では、その思いつきで、こうしてお話を聞かせていただく機会が出来たわけですね。
 しかし、あれ? 聞いたことあるお名前だな‥‥と思った方。その思いに間違いはありません。貴政さんはこのノルマンでも有名な冒険者さんなのです。そんな有名人の日常を知れる良い機会。じっくり読んでくださいね。

『日頃から重装備? 全身を白で包みペットも純白。この馬は、何処で色を塗ってきたのでしょう。我らがノルマン出身のナイト、リリー・ストーム(ea9927)さん』
「これは白馬ですわ! 元からこの色なのよ」
 何と、翼が生えた馬です。このような動物を見る機会は滅多にありません。冒険者と会う時、密かに連れているペットに興味深々な方もいらっしゃるのではないでしょうか?
 ところで、リリーさんの経歴などを‥‥。
「私の? そうね‥‥。ノルマンの人々の祈りに導かれ、天から舞い降り‥‥その場所で、真の英雄であるセイル君と出会って、恋に落ちたのよ」
 ‥‥なるほど。年甲斐も無く‥‥いえ、いつまでも純真な心を持ったたおやかな女性です。
「それで、その時のセイル君がね‥‥」
 嬉しそうに話すリリーさんの姿が印象的でした。冒険者と言えども、恋や愛に無縁ではありません。私達と同じように悩んだり喜んだりしているのですね。

『イギリスからお越しのナイトは何と軍船乗り? 思わずお母さんと言いたくなる頼りがいのある女性。イレクトラ・マグニフィセント(eb5549)さん』
 イレクトラさんはゲルマン語が喋れませんが、私、通訳を務めさせていただきました。冒険者の皆さんのお手伝いが出来るなんて、少し照れますね。
 さて。イレクトラさんはノルマンにはあまりいらっしゃっていない様子。この機会に、ノルマンの素晴らしさを説いておきましょう。
「こっちには娘がいるのさね。それで‥‥あれもね、出て来ないかと思うんだが」
 『あれ』?
「娘の父親さね。この事が酒場に張られて、もしそれを読んだあれが出て来てくれたら‥‥と思うのさね」
 ‥‥その『あれ』は、イレクトラさんの旦那様では無いのでしょうか?
「せめて元気でいてくれると良いさね」
 はぐらかされました。
 冒険者にもなかなか深い事情があるようです。

『犬大好き、散歩大好き。でも、いつも黄金の兜を装着? 怪しい雰囲気漂うは、こちらもイギリス出身ナイト、アーシャ・ペンドラゴン(eb6702)さん』
「かっこよく書いてくださいね〜」
 明るくそうおっしゃったアーシャさんですが。‥‥書いても良いそうなので書かせていただきますが、ハーフエルフの娘さんです。冒険者の中にはハーフエルフもそれなりの数がいますが、誰もが虐げられても人を救おうとする勇気を持っています。
「え? 狂化が見たいの? でも強い敵がいないと〜」
 そして、気安くアーシャさんは了承して下さいました。狂化する事で危険な目に遭うかもしれませんが、実態を調査しなくては、『冒険者に密着』になりませんからね。

『冒険者だって結婚します。ちょっぴり照れ屋のファイター、何でイギリス人比率が高いんでしょう。セイル・ファースト(eb8642)さん』
 セイルさんは傭兵を生業としています。そして。
「‥‥こっちが妻のリリーだ‥‥。まぁ、よろしくな」
 乙女心満載リリーさんの旦那様でいらっしゃるそうです! そっぽ向きつつの紹介ですが、そんな照れ屋なところがツボだったのですか? リリーさん。
「セイル君は全てが格好良いのよ〜」
 そこまで言っていただけるセイルさんは果報者ですね!

 さて。冒険者の魅力をお届けする為、ただお話を聞いただけではありません。
 今回何と! 特別に、冒険者の皆さんと盗賊退治に行って参りました! 皆さんが馬に乗り、私もイレクトラさんの馬に同乗させていただいて出発です。
 盗賊が出て困っている村は、パリから馬で1日の場所にありました。その間、一緒に野宿もさせていただきました。皆さんもご存知のように、道の脇とはいえ森の中の野営は非常に危険です。何が出るか分かりませんからね。
 冒険者の野営の方法はこうです。まず、日が暮れる前に野宿場所を決め、木々を拾い集める。テントを張り、近くに川があれば水を汲み、焚き火を作る。鍋をかけて夕食。その後、交代で見張りを立てて就寝。この時、焚き火が消えないようかつ勢いが強すぎないよう調整します。火は大切ですが、自分達の居場所を誰かに知らせる必要も無いですからね。この辺りの火に対する工夫は見事なものでした。
「これでいいか?」
「秋の魚は旨いのさね」
 猟師の心得があるセイルさんと、漁師の心得があるイレクトラさんが、夕食と朝食を華やかなものにして下さいました。日頃保存食で旅をしている冒険者にとって、楽しみのひとつなのでしょう。
「保存食しか無くても、味や風味を変えて飽きないよーにとか、単調になりがちな旅を少しでも楽しく出来ればいーんですけどね〜」
 貴政さんが更にそれを調理して、驚くほど美味しい料理に変化させて下さいました。なるほど。これだけ美味しければ、あちこちのレストランから是非にというお誘いがあるのでは?
「僕は冒険者ですからね〜。それにまだ修行中の身ですからー」
「体を拭くだけなんて私には無理っ」
 この叫びはリリーさんです。羽のついた馬に乗ってあっという間に飛んで行ってしまいました。冒険者と言えば、お世辞にも綺麗な格好とは言えないと思いがちですが、最近の冒険者は身だしなみにも気を使っている‥‥とはご近所の方のお話です。


 そろそろ皆さん、冒険者の活躍が読みたい頃ですよね?
 冒険者達は、村に着くなり人々に話を聞いて回っていました。迅速な情報収集が勝機をもたらす。さすが冒険者。地道な作業も平気です。敵の人数、位置と地形なども詳しく聞いていました。
「え? 人形使いはどうやって戦うか、って?」
 必要な情報を手に入れたところで話し合い。そして敵のアジトに向けて出発です。でも、一見戦えそうに無いアフィマさんは、戦闘中はどうしているのでしょうか?
「それはね‥‥こう『クセモノダ〜』」
 突然、アフィマさんの声が低く変化しました。よく通る声なのは良いのですが、何とその叫び声は敵の家の玄関先。
 叫んだ後、アフィマさんは素早く私を連れて茂みに隠れました。実はこの時、他の冒険者達は家の裏手に回っていたのです。木を突き破るような音がしました。ここでアフィマさんと一緒に隠れているわけには行きません。私はこっそり裏に回って冒険者の姿を見守りました。
 まず、イレクトラさんが放った矢が綺麗な弧を描いて飛んでいきました。弓を構えるイレクトラさんには隙がありません。まるで船頭に飾ってある彫像のようです。
「メンターを頭の上にでも乗せて良いかね?」
 こっそりやって来たはずが見つかってしまいました。そして、イレクトラさんに付き従う隼が私の肩に止まりました。お利口な子です。
 一方、家の中に突っ込んだ人達はどうしていたのでしょうか。
 セイルさんは。
「いくぜええええええっ!」
 叫びながら扉を蹴り壊して突入していました。その後を、アーシャさんと貴政さんが続きます。
「弱くて狂化できないですね!」
 アーシャさんの剣の柄が、敵を斬る度にきらきらと輝きます。その近くで突出しないように(と後からお聞きしたのですが)刀を奮っていた貴政さんの身につけている鎧は、ジャパン製で火のように赤い色をしています。アーシャさんが敵の頭を叩くと、貴政さんが別の敵の腰を打ちました。その華麗なコンビネーションは見ていてうっとりするほどです。
 セイルさんの剣は、黒味を帯びた刃をしていました。それが敵の真ん中で大きく弧を描き、敵をなぎ倒します。力まかせの技に見えますが、そこはファイター。鮮やかに敵を転倒させていました。
 その時、
「『コッチニニゲロ〜』」
 また、玄関のほうから声が聞こえてきました。アフィマさんです。
 敵はその声に誘われるようにして扉の外へと出て行きました。でも、そこへ。
「改心しなさい‥‥。え? 改心しない? だったらおしおきしちゃうわよ♪」
 翼のある馬に乗ったリリーさんが下りてきました。白き槍、白き鎧、白き馬。風にゆらめく髪さえも神々しく思えてきます。
「おしおきすま〜っしゅ」
 槍が空中で一回転し、柄が盗賊の頭を打ちました。鮮やかな槍さばきに、思わず拍手してしまうほどです。
「大体終わったかな」
 アフィマさんも出て来ました。しかし人形を使って戦うのかと思いましたが、そうでは無いのですね。
「人形使いって人間を思い通りに操る人の代名詞。敵さん、すっかりペース乱されてたでしょ?」
 この夏にモデルチェンジしたという愛らしい人形アーシェンを動かしながら、アフィマさんはこう言います。
「ペースを掴めれば、動きも心も自在に操れる。明るくさせるのも涙を流させるのも、人形使いの仕事だからね」
『身長ハ、ドウニモナラナイケドネ‥‥』
「うわ、ひどい」
 早速アフィマさんが、アーシェンを操り披露して下さいました。
 なるほど。戦いの後でも、暗くなりがちな時でも、こうして笑いをもたらしてくれるのですね。


 無事盗賊は捕縛。村まで連れ帰り、近くにある衛視の詰所まで運ぶ事になりました。その後は、村の人達も一緒に宴会です。
 毎回、依頼を達成した後宴会をするわけではないそうです。毎回宴会だと、それを楽しみに依頼に参加する人が出てくるかもしれませんものね。
 宴会の間、貴政さんにはパリで受けた依頼の中で印象に残るものを教えていただきました。以前、ノルマン中を騒がせた魔法陣のお話。それから虫に関係する連続依頼。依頼人の人柄が出る話なども面白く伺いましたが、こちらで紹介するには羊皮紙が足りないようです。
 イレクトラさんとアーシャさんは、宴会の輪から少し離れたところにいました。アーシャさんはずっと兜をかぶっています。暑くないのでしょうか。
「だって仕方ないじゃないですか〜」
「私はゲルマン語が分からないからね。こうしてアーシャ殿と語らっているのさね」
「本当は宴会大好きなんですけどね〜。でも、嫌な思いをされてお酒が不味くなったら嫌ですしね〜」
 冒険者は、いろいろと気遣いも大変のようです。
 さて。冒険者夫婦はと言いますと、リリーさんは皆さんに踊りを披露しておられました。私のようなひょろひょろの女が踊っても見ごたえはありませんが、やはりリリーさんは一味違います。リリーさんの踊りを見たい方は、是非某酒場まで。
 一方旦那様のセイルさんは、酔いつぶれて寝ていました。
 今回の依頼は、6人の冒険者にとってはかなり簡単な内容だったようです。この『冒険記』の為に、皆さん華麗に戦って下さいましたが、本当はもっと地味な作業や突撃前の入念な準備などが必要だそうです。冒険者の仕事と言うと、華やかな部分ばかりに目が行ってしまいますが、実際は影の部分が多い仕事なのですね。そういう苦労を人に見せない素晴らしさは、私達も見習わなければならないのではないでしょうか。
 リリーさんは踊りの後、寝ているセイルさんにそっと毛布をかけ、皆が眠ってから寄り添って寝ていました。理想的な夫婦の姿をここに見た気がします。
 そうそう。翌朝もお2人は散歩に出かけられたようですよ。
 その間にお2人に何があったのか‥‥。そこまで書くのは野暮というものですよね。いつか、『冒険者恋愛話』という記録を書く事があったら、その時にこっそり皆さんにお教えしましょう‥‥。

 最後に、アーシャさんから言葉を頂いて来ました。
 この思いに切なさを感じたのは、私だけでは無いはずです。皆さんもどうか、考えてみて下さい。
『差別されたりするけれど、それで人間を恨む事は無いです。99人に嫌われても1人に好かれればいいのです。嫌われたら、次に会う時は仲良くなれたらいいなと思います。だって、ハーフエルフを嫌いになる気持ちも分かりますから』