【収穫祭】ノルマン演芸ダンサーズ
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■ショートシナリオ
担当:呉羽
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:10月08日〜10月13日
リプレイ公開日:2007年10月16日
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●オープニング
収穫祭。毎年恒例収穫祭。
秋の実りに感謝し、神に収穫物を捧げつつ、皆で喜び楽しみはしゃぎまくる祭りだ。
それはあらゆる町や村で行われるが、やはり都の賑やかさには叶わない。
例えばノルマン‥‥パリ。
「はぁぁぁ‥‥」
の、冒険者ギルド。
「ぅぅぅ‥‥」
内の一角で。
「もう駄目だ‥‥お仕置きされるんだ‥‥」
しくしく嘆いている男が1人、椅子に座っていた。
「お待たせしました。今、ギルド内でも収穫祭の準備に向けて大忙しで‥‥あの?」
「冒険者どの!!」
「い、いえ、私は‥‥ただの受付員ですが‥‥」
近付いた受付員に飛びかからんばかりに立ち上がった男は、そのまますとんと椅子に腰を落とす。
「はぁ‥‥もう、我ら『ノルマン演芸ダンサーズ』は駄目かもしれません‥‥」
テーブルに両肘を付き、組んだ両手の上に額を乗せて、男は深い溜息をついた。
「わたくし達、ノルマンだけではなく、各地を回って演芸を開いております、『ノルマン演芸ダンサーズ』と申します。元はイギリスから始めたのですが、ノルマンの風土が性に合いましてね‥‥。今は、敢えて地方を飛びまわり、演芸の喜び、楽しさを皆様に広めている次第だったのでございますよ」
「娯楽は人の心を潤しますからね。素晴らしいことかと」
「えぇ、えぇ。皆様の喜びが我々の糧。皆様の応援が我々の源でございました。しかし‥‥現在、我々は20数名で構成されているのですが‥‥今回、初めてのパリ公演を行うべく、こうして参ったのでございますが‥‥うぅぅ‥‥」
「そ、そんなに嘆かないで下さい。必ずや、冒険者達が力になりますから」
「‥‥そう言っていただければ、存外の喜びの極みでございます‥‥」
ようやく男は顔を上げ、受付員の手を両手でしかっと握った。
「実は‥‥その団員達なのでございますが‥‥このパリに入ってからと言うもの‥‥」
「言うもの‥‥?」
「原因不明の腹下りで苦しむ者あり、突然田舎が恋しくなってパリを出る者あり、パリで恋人を作って夢中になり出て行った者あり、いきなり聖なる道に目覚めて教会に飛び込んだ者あり、セーヌ川で溺れた者あり、タダ飯食いで衛視に捕まった者ありと、酷い有り様でございまして‥‥」
「‥‥最後の方は、同情の余地は無いかと‥‥」
「違うのでございます。濡れ衣だったのでございますよ。食事を奢ってくれるという話だったのに、気付いたら相手が姿を消していたと言うのでございます‥‥。勿論、わたくしがお金を払って事なきを得ましたが、それ以来彼は演芸をする心の余裕を無くしてしまいまして‥‥。いえ、パリが怖いところだという事は、よくよく団員に言い聞かせていたのでございますが、これほど立て続けに団員が狙われるというのはおかしな話でございます。わたくし、思いますところに‥‥」
「‥‥ところに?」
「『ノルマン歌唱倶楽部』の仕業ではないかと。彼らのライバルとなり得るわたくし共を妬み、このような犯行に及んだのでございますよ!」
「‥‥はぁ」
「『はぁ』ではございません! わたくし共も、初めてのパリ公演。何としても成功させねばなりませんし、何よりも『収穫祭』と言えば、演芸を志す者、全ての者達が技を競い合い、お客様を楽しませる最大の期間でございます。1年でもっとも。もっとも輝く日に、我々が何も出来ない‥‥その事が口惜しくてならないのでございます。わたくし共は、より皆様と密着した公演を心がけて参りました。この思いを、この熱情を、歓喜の魂を! 捧げなくてはなりません。何としてでも」
きっと聖夜祭の期間にも同じ事を言うのだろうなと思いつつ、受付員は頷く。
「では‥‥つまり。不足している団員の方の代わりを、冒険者から募る、という事ですね」
「代わりなんてとんでもない。各々方の得意な演芸を披露していただければそれで結構でございます。ただ、わたくし共は『ノルマン演芸ダンサーズ』でございますから、演芸の締めくくりには観客の皆様を交えての踊りの披露がございますし、様々な演芸の中で観客の皆様を巻き込むのが我々の手法でございます。踊りは下手でも宜しいのでございます。ただ、皆様と心の底から楽しむ。それこそが、我々『ノルマン演芸ダンサーズ』の使命でございます。見せるだけではなく、分かち合う。この思いに共感いただけるのでございましたら、どなた様でも結構でございます。どうか、我ら『ノルマン演芸ダンサーズ』のパリ公演での一員となっていただき、この素晴らしきパリで、皆様に喜びを与えていただきたく思うのでございます」
●リプレイ本文
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「ん〜。おはよー。いい朝だねー」
見事に晴れ渡った秋の空を見上げ、ノリア・カサンドラ(ea1558)は大きく伸びをした。この季節の早朝は、肌寒いが清清しい。
「‥‥ノリアお姉さん、元気だね〜‥‥」
「今日から本番だしさ。いつもは楽しむほうに回ってたけど、今回は楽しませる役になって目立‥‥祭りを盛り上げるというすーこーな使命が!」
テントからもぞもぞ出て来たアフィマ・クレス(ea5242)は、まだ半分ぼーっとしている。
「あら、お2人さん。おはよう。今年も遂に、この季節が来た! という感じね」
植え込みの傍に座って横笛を布で磨いていたガブリエル・プリメーラ(ea1671)が、辺りを彩る飾りに目をやって微笑んだ。パリにやって来た一芸を披露する者達の内、馬車を使うほどの大所帯の者達が野宿をしている広場。テントがずらりと並び、派手な衣装に身を包んだ者達がうろうろしている。彼らは独自性を主張する為、テントや馬車に飾り付けを行っていた。それが実に華やかで、この広場に居るだけでもお祭り気分が高まってくる。
「お早うございます、皆さん」
テントの脇から鳳双樹(eb8121)がやって来た。小さな甕に汲んであった水を鍋に入れている。
「朝は豆のスープみたいよ。しっかり食べて頑張りましょ」
豆が入った袋を持って焚き火の前に待機していたレア・クラウス(eb8226)が、皆を見回し呟いた。
「そう言えば、最近本業らしい事やってなかったけど‥‥勘が鈍ってないかな」
「だいじょーぶ、だいじょーぶ。さ〜、みんな。今日から『ノルマン演芸ダンサーズ』がんばるぞー。おー」
「おー」
ノリアが拳を突き上げながら威勢良く声を上げる。皆がつられて応じる中、ノリアに片手を一緒に上げさせられたアフィマは。
「‥‥おー‥‥あふ‥‥」
欠伸をしていた。
●
団長は、助っ人が大体妙齢の女性だった為、激しく感動した。
「揃いも揃って美女ばかりお越しになるとは! わたくし、この感激は生涯忘れませぬぞ!」
通常の3倍ほどの大仰な褒め言葉を並べる団長に正直辟易した部分もあったわけだが、団員達も皆、彼女達を歓迎した。男性団員達が慌てて自分達のテントを綺麗に掃除してから明け渡し、通常の3倍ほどの毛布や衣装を彼女達の為に用意するほどには。
「物語はこういうのはどう?」
動ける団員達が彼女達の生活面の補助をしたり、日頃の活動内容の説明をしたりする中、皆もアフィマが組み立てた演芸内容を練り上げて行った。踊りの練習をしたり皆で合わせてみたりしつつ、団員達と3食昼寝宿泊を共に過ごし、和やかに過ごす。
「あ、双樹。お祭りで演芸団の宣伝するんでしょ?」
踊りや歌に自信は無いが、団員達とぱたぱた走り回っていた双樹は、本番前日レアに呼び止められた。
「まさかその格好でするつもり?」
「‥‥変ですか?」
首を傾げた双樹が手に持っていたのは、白とレースが美しい品の良いドレスだ。舞踏会で着れば喜ばれるに違いない。
「向こうのテントの人達の衣装、見てないの? あれくらいやらないと宣伝にならないんじゃない?」
「えっ‥‥」
双樹が赤面したのは、ライバル大道芸人達の衣装があまりに派手で薄布過ぎたからである。
「あそこまでやる必要は無いと思うわよ。上品に行きましょ」
ガブリエルは驢馬からヴェールを下ろしていた。美しい薔薇の模様が光を受けると浮かび上がるようで、実に彼女に相応しいと言えるが、少々収穫祭の陽気さには合っていない。宣伝に使っても本番で身につける事は無いだろう。
「じゃあ、これ。貴族の屋敷でも着れると思うけど、双樹が持っているのより宣伝になると思うわ」
企むように笑いながら、レアは双樹に真紅のドレスを手渡した。
●
街は人で溢れかえっていた。踊り歌い飲んで騒ぐ人々もあれば、それを見て楽しむ人もいる。酒場では、今年出来立てのワインについて話が弾み、作物の出来については話が膨らむ。通りを歩けば物売りの声が飛び交い、時には半ば強引に屋台の前まで引っ張られた。それらの通りのあちこちで、単独のバードやジプシー達が芸を披露している。祭りの間中も、彼らが稼ぐ場所は定められているが、警備をすり抜けてより人が多い場所で仕事をする者は少なくない。そして人が集まれば衝突も起きる。収穫祭の間は、衛視達の仕事も通常比の何倍にも膨れ上がるのだ。
「あ、これ1つね」
そんな中、アフィマは屋台で昼食を買っていた。
「おっと」
しかし袋から銀貨を落とし、拾おうとしながら不思議な脚の動きを披露する。うねうね動く足に近くに居た人が立ち止まった。更に彼女はその小さな袋から銅貨をどんどん出して行く。周囲に居た人の目が丸くなった。
「それは魔法の袋かい?」
「おじさん、試してみる?」
屋台の前で輪が出来る。アフィマは営業妨害にならないよう少し場所を移し、更に芸を披露する。少しずつその輪が広がって行く中、彼女は仲間達が集まっているかどうかを確認すべく辺りを見回した。
「『ノルマン演芸ダンサーズ』です〜。広場で演芸を行っております。宜しくお願いします〜」
仲間達は宣伝や準備で動いていた。
スカーレットドレスを押し付けられた双樹は、その色気たっぷりのドレスで通りを歩いている。酔っ払いに絡まれてもおかしくないのだが、何故か彼女の行く先の空間が開いて行く。
「‥‥」
彼女の魅力を実に台無しにしているのは、前後に掛けられた木板だった。『ノルマン演芸ダンサーズ』と書かれた看板をぶら下げて歩いているのだ。と言うのも。
「『ノルマン演芸ダンサーズ』の看板を背負って、頑張りたいと思います」
などと団長に挨拶してしまった為に、本物の看板を背負わされてしまったのである。
一方、やっとテントを出る人達もいた。
「ノリア、まだ作ってたの?」
借り物の衣装を決めかねていたレアがそれを目撃する。
「いやー、凝って作ったら、時間ぎりぎりまでかかっちゃったよー」
ノリアは自分の着る衣装を自作していた。
「特にここ。この背中が苦心しちゃってさー」
「へぇ〜‥‥」
これらの衣装作成代は、勿論演芸団が出している。衣装を山ほど持っていたり多くの団員を抱えていた事もあって、ジプシーのレアは思うのだ。この演芸団は結構金持ちじゃないかと。
団員の中にはバードも居たようだが、既にパリを離れてしまっている。よって、演芸を陰で支える重要な役どころ、音楽の担当はガブリエル1人だけだった。彼女も街を歩いて宣伝しつつ、早めに広場に行ってアフィマの傍についた。
「それでは、百花繚乱ご笑覧。これより始まりますは、人生一度の珍騒動! さぁさ、お立ち会〜い」
●
アフィマの人形が口上を述べた。
更にどんどん場を進めて行こうとするので、慌ててアフィマがそれを止めようとする。皆から笑い声が洩れる中、ガブリエルが笛を吹き始めた。その途端、アフィマは見えない壁で阻まれてしまったように空間でぺたぺた手を動かした。地面に座っている人形は、その間も勝手に喋っている。
「人形が勝手に動いてる?!」
大仰にレアが言って人形を抱き上げた。それをするりとすり抜ける人形に、再び笑いが起こる。
『捕マエラレルモンナラ、ヤッテミナ!』
「アーシェン! 何やってるのよ! んもう、どういう事? 人形が勝手に動くなんて!」
『オット、コイツハ頂クゼー』
ひょいと、レアが持っていたナッツを奪う人形。そのまま追いかけっこが始まった。大きな動作でレアが捕まえようとしては、その間を人形が抜けて行く。
「そんな事をしちゃいけません!」
レアが転んだ所で、脇に潜んでいた双樹がばばんと飛び出た。飛び出てから‥‥気付いて看板を外して近くに立てた。
「蒼くん、雲母ちゃん! あの子を止めてあげて! 呪曲の力に捕らわれたみたいなの!」
『なの〜』
双樹の肩に止まっていた鴎が飛び上がり、愛らしい服を着た妖精が頭の上でぱたぱた羽を揺らす。観客達から思わず声が洩れた。あれも人形か? などと言う声も飛んで来る。
人形はガブリエルの足元にちょこんと座っていた。『呪曲』という言葉に皆の視線が演奏者に注がれる。横笛を吹いている為に何も言えないガブリエルは、澄ました表情で音楽を奏でていた。銀の髪がさらりと揺れて純白のマントの上に広がっている様が、どこか魅惑的だ。
「人形を止めるには、素敵な音と踊りが必要なの!」
それを引き戻すかのように、双樹が観客に向かって叫ぶ。皆の視線が再び注がれた瞬間、観客の中からローブを着た人がそれを脱ぎながら前に出た。
「正義の味方、殴りクレリック・ノリア! 只今参上!」
おぉと、どよめきが上がる中、ノリアは自らの作成した衣装、フェアリーを模した服を華麗に見せ付けた。背中につけた羽は苦心しただけあって、なかなか見事だ。
「音が必要なの? 私も出番があるのね、まかせて」
横笛を下ろし、ガブリエルも微笑む。人形は慌てたように彼女から離れた。
「私も踊るわ!」
むくりと起き上がったレアが言い、くるりと回ってから観客のほうを向いた。
「さぁ! 人形を止める為に一緒に踊ってくれる方はいませんか?」
ノリアの踊りは、妖精をイメージしたものだった。ふわふわ動き、跳ねる。くるくる回りながら人形を花と見立てて止まるかのように、しゃがんで手を伸ばしたりした。その動きは最初はゆっくりだったが、ガブリエルの奏でる軽快な音に合わせてどんどん速くなって行く。
レアはノリアをサポートするように動いていた。ノリアの踊りは真似できない。ならば主役を補助するのが役目だろう。
ガブリエルは高く澄んだ音を辺りに広げて行く。陽気に軽快に、皆が思わず踊りだしたくなるような音だ。観客達もそわそわし始めた。
「みんなも踊るよー」
ノリアが回りながら彼らに声をかける。そして強引に1人を輪の中から連れ出した。下手だからと慌てる男の手を掴み、強引に踊り出す。
「上手い下手は関係ないよ。楽しく踊らなきゃ損だよー」
「そうそう。双樹も踊って!」
「えっ‥‥私も‥‥。ですよね‥‥」
レアに誘われて一瞬断りかけた双樹だったが、観客の中に混ざっていた団員達が他の人を誘って踊りだすのを見て覚悟を決めた。
皆を囲んでいた輪が崩れる。もう人形がどこにいるのか、誰も分からないくらいだった。始めは遠慮していた観客達も、皆の楽しそうな笑顔に気持ちがほぐれたのか、音に合わせて大きく踊りだす。そんな彼らを見るようにして、大きな輪が再び出来た。その間を縫うように、近くの屋台の人達が売り物を持って回っている。
「もっと踊るよー」
観客の間をくるくる回って進みながら、彼らに声を掛けては一緒に踊っているノリアは、まだ見えない壁の向こうに居るアフィマに手を差し出した。
「ひめ〜。助けに参りましたぞ〜」
「やった! 妖精の王子様、げっとー」
「あはははは」
誘われてアフィマも踊る。人形はそっとガブリエルの膝に置かせてもらった。
ひとしきり皆で踊った後、アフィマの人形がくるりと一回転して膝から下りてやって来た。そのまま踊っている人達の間に入って、大きな体躯の人の肩に乗って踊ったり、皆の間を飛ぶようにしながら踊る。
「人形の呪縛が解けたみたいね」
ガブリエルが立ち上がって人形に触れた。急に大人しくなった人形は、皆にぺこりとお辞儀する。
『ミンナニ迷惑カケテゴメンネ。デモ、楽シカッタデショ?』
「アーシェン! 誠意が足りない!」
踊り終わった人達が笑いながら拍手を送った。
「皆さんのおかげで、人形は『呪曲』から逃れる事が出来ました。ありがとうございましたー」
皆が礼をしながら帽子や箱を周りに置いて回る。観客達はそれへ次々と金を入れて行った。
「なかなか面白かったぞ」
この見世物のおかげでそれなりに繁盛した屋台の人達も、売り物を皆に手渡す。
「本日は、『ノルマン演芸ダンサーズ』の出し物にお付き合いいただき、ありがとうございまーす! 今後とも宜しくお願い致しますー♪」
双樹がベゾムに跨り、空へと飛び上がった。肩に鴎、頭にフェアリーをのせて飛んでいく彼女を皆は見送りつつ、再び拍手喝采を送る。
「次は何処でやるんだい?」
おひねりでいっぱいになった箱を回収していると、観客達が皆に尋ねた。
「予告無し。見れたらラッキー。踊れたらハッピー。その日の運試しに探してみて」
それへ、ノリアが返事を返して笑った。
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翌日も、そのまた翌日も、彼女達はパリのどこかで演芸を披露した。
いつの間にか追っかけまでついて、皆の泊まっていた広場に押しかける者もいたが、人気商売ゆえ仕方ない部分だ。
「楽しかったねー」
団長はいつも以上に感激し、その稼ぎと皆の努力に感謝を述べ、皆、楽しく演芸を披露出来たか尋ねた。
「何より自分が楽しむ事。これが大事でございますよ」
最終日。団長は涙を流して別れを惜しんだ。この5日の間に、団員達の何人かは現場復帰できるまでに回復し、皆の演芸に影響を受けて新しい練習も始めていた。一時はどうなるかと思ったが、これでまだ続けていけると団員達も皆に感謝する。
「いつも以上に華やかな生活も送れたしね」
「君達は華がある。いつか、正規の団員になってもらいたいものだよ」
共に過ごした5日間を忘れないと言われ、最後の日の夕食は大きな鍋が用意された。いろいろ具を放り込んで不思議な味になったものもあったが、最後に皆で歌って踊る。
「そういえばあの曲、『呪曲』だと言ってたけど、本物かい?」
1人に問われてガブリエルは笑った。
「そんな曲、『収穫祭』に広めるわけないじゃない。それに、知っていたとしても誰も歌わないし弾かないと思うわ。何かを呪うなんて、馬鹿げた事でしょ?」
別れ際、団長はいつでも遊びに来て欲しいと涙ながらに告げた。彼らの本拠地は、レスローシェという町らしい。おかげで首が繋がったと何度も感謝する団長と、明るく別れを惜しむ団員達に手を振りながら、皆はテント広場を離れた。
収穫祭は始まったばかり。彼女達の収穫祭も、まだまだ終わりはしないだろう。
沈み行く太陽の赤が鮮やかに明るく広がる空の下、皆は歌いながら冒険者ギルドに向かうのだった。