兎印のお薬屋さん、大感謝祭

■ショートシナリオ


担当:呉羽

対応レベル:フリーlv

難易度:やや易

成功報酬:4

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:12月12日〜12月17日

リプレイ公開日:2008年01月19日

●オープニング


 ぐつぐつぐつ‥‥こぽこぽこぽ‥‥。
 とある日のパリ、冒険者街。の中のとある一軒の家‥‥で。
「後は、これを半日煮込めば‥‥」
 鉄製鍋の中身をぐるぐるかき混ぜている娘が1人。柔らかそうな銀髪は連日の大仕事ですっかり艶をなくしていたが、その双眸は生気に満ちている。
「完成っ‥‥と‥‥」
 そして混ぜる手は休めず彼女は振り返った。後方の木製テーブルの上には木の器が所狭しと並んでいる。どの中にも液体が入っていて色も各々違うが、1つだけ空の器があった。そう、最後の1つ。この鍋の中身を注ぐ入れ物だ。
「ねぇ、料理とパンケーキはどう?」
 問われて隣の部屋からエルフの女性が顔を出した。
「下ごしらえは大体終わってますよ」
「じゃあ、これはスープに。あれはワインに。そっちはパンケーキに練りこむ?」
 2人は顔を見合わせ、くすと笑う。それは共犯者の微笑み。
 そう。全てはエル・サーディミスト(ea1743)の目標と夢の為に。


 エルは、万能薬を作り上げる事を目標としている。だが何にでも効く万能薬を作る道は果てしなく険しい。日々野外に出向き、冒険に出かける度に様々な野草を手に入れ研究を重ねても。あらゆる書を読み漁り伝聞を纏め、時には自らの命を危険に晒す所まで踏み込んでも。
 勿論自分1人では限界がある。友人や仲間の協力理解があってこそ、この研究も一歩ずつ進んでいるのだと彼女は信じているが、1つの成功の裏にはその100倍もの失敗があるわけで。
「はぁ‥‥。誰も飲んでくれないよ‥‥」
 最近ではすっかり警戒されて、出来上がった『薬』を試しに飲んでくれなくなってしまっていた。
 だがこのままでは、自分の研究が頓挫してしまう。だからと言って、見ず知らずの人にいきなり「良い薬がありますぜ、旦那〜」などとプレゼントするわけにも行かない。
「どうすれば、効果を目の前で見れるかなぁ‥‥」
「こう言うのはどうです? 冒険者ギルドに行って、冒険者の方々に試飲を」
「それって、もし大変な事になったら‥‥冒険者登録剥奪とかにならない‥‥?」
「なるかもしれませんね」
 『大変な事になるかも』という自覚は‥‥ある。だがこれも、全ての人に希望をもたらす『万能薬精製』の道の途中で必ず通るべき場所なのだ。うん、仕方ない。
「あ、そうだ。もうすぐ聖夜祭だよね。1年の感謝を込めて、皆さんをパーティにご招待〜☆ ってどう思う?」
「それは良いかもしれません」
 共犯者‥‥いや、助手が嬉しそうに両手を合わせて微笑んでくれたので、エルは大きく頷いた。
「じゃ、早速っ」
 2人はすぐさま友人達に手紙を書き始める。
 リル・リル(ea1585)、ギルツ・ペルグリン(ea1754)、フェリシア・ティール(ea4284)、ロート・クロニクル(ea9519)の4人分。それぞれとの関係はいろいろだが、誰もが大切な友人であり仲間である。そう、大切な大切な‥‥。
「良いパーティになるといいですね」
「そうだねっ♪」

●兎印のお薬屋さん、大感謝祭☆
『冒険者の皆様へ
 私、エル・サーディミストの自宅にて、皆様に1年の感謝をお伝えしたく、パーティを開きます。料理にパンケーキ、ワインに香草茶などもご用意しておりますので、是非ご参加下さい。皆様のペットご同伴も可能‥‥むしろ是非。一緒にみんなで楽しみましょ〜☆』

●今回の参加者

 ea1585 リル・リル(17歳・♀・バード・シフール・ノルマン王国)
 ea1743 エル・サーディミスト(29歳・♀・ウィザード・人間・ビザンチン帝国)
 ea1754 ギルツ・ペルグリン(35歳・♂・ナイト・人間・ビザンチン帝国)
 ea2843 ルフィスリーザ・カティア(20歳・♀・バード・エルフ・フランク王国)
 ea4284 フェリシア・ティール(33歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)
 ea5118 ティム・ヒルデブラント(27歳・♂・ナイト・人間・ノルマン王国)
 ea9519 ロート・クロニクル(29歳・♂・ウィザード・人間・フランク王国)
 ec4208 ミア・ティーム(22歳・♀・バード・シフール・ノルマン王国)

●リプレイ本文


「みんな、来てくれてありがとっ♪ 堪能していってねっ」
 誰もがつられて笑ってしまいそうな満面の笑みで、エル・サーディミスト(ea1743)が両手を広げた。
「皆さんに楽しんで頂けるように、私も精一杯頑張りますね」
 エルさんの研究の為にも、という言葉は心の中に伏せておいて、ルフィスリーザ・カティア(ea2843)も微笑む。
「お久しぶり! パーティに誘ってくれてありがとう。とても嬉しいわ」
 そんな2人に赤と緑で彩られた花束を手渡し、その手を握ってフェリシア・ティール(ea4284)も笑みを返した。その後ろからひょっこり現れたティム・ヒルデブラント(ea5118)も楽しげに辺りを見回し、それからトレントを見上げる。
「パーティいいですね。楽しいのは大好きです!」
「ん‥‥パーティな。普通のパーティならな‥‥うん」
 ぼそとロート・クロニクル(ea9519)が呟いたが、エルの『邪気の無い太陽のような笑顔』に焼かれて目を逸らした。
「あの‥‥私も入れてもらって良かったのでしょうか‥‥? 勿論、楽しい事は大好きなのです♪」
「うん。勿論〜♪」
 パリの常識しふしふ挨拶をしてから、リル・リル(ea1585)がちょっぴり不安げなミア・ティーム(ec4208)の周りをくるんと回る。そして最後に入ってきたお客様は、自分も客で良いのだろうかと思いつつ一同を見回した。
「お招きに預かり光栄だ」
 落ち着きのある声音でギルツ・ペルグリン(ea1754)は挨拶し‥‥視線を自らの婚約者へと向ける。
「‥‥久しぶりだな、ルフィスリーザ」
「はい‥‥」
 視線を重ねただけで2人の世界を作りかけた恋人達を、皆は楽しそうに見守った。


 お客様もパーティの準備に携わる。それがパーティの楽しみの1つだ。
「トレントさん、退屈じゃないかな〜?」
 エルとルフィスリーザのフェアリー、そしてリルがトレントの周りを飛び始めた。高い所の飾り付けを行う為に、小さな体に大きな飾りを持って回る。
「あ〜‥‥もう少し右じゃねぇか?」
 高い所に星を付けようとしていたリルに、ロートが下から指示を出す。聖夜祭のツリー風に飾る為だ。
「ロートさんもお飾りするのです‥‥!」
 皆に飾りを1個ずつ渡していたミアが、ロートにもそれを渡そうとした。
「俺? 俺が手伝ったら最後だぞ。腐海が広がるのは目に見えてるんだぜ‥‥」
「じゃあ、ロートさんをお飾りするのです‥‥♪」
 彼女曰く『きらきらでほわほわなお飾り』をロートの頭に載せ、満足そうに頷く。
 一方その頃、エルとルフィスリーザはパーティに出す料理を作っていた。2人とも料理の腕はごく普通だったから、あまり難しい物は作れない。簡単な料理を作る一方で、パリの料理店に注文を出す。
「あ。このパン美味しいよ♪」
「本当ですか? 干し葡萄と胡桃を入れたのですよ」
「ねぇ、ロイヤル・ヌーヴォーを持って来たのだけれど、ここに置いていいかしら?」
 そこへフェリシアが入ってきてその高貴なワインを手渡した。
「‥‥美味しいままか、見事に古ワインか‥‥まだ中を見ていないのよね」
 ノルマン王室にも献上された逸品なのだが、何せ2年前のワインだ。当然‥‥。
「でも上質なワインなら、古くなっても美味しいと思います」
「ありがとう、ルフィスさん」
「これで飲み物もいろいろ揃ったね」
 ずらりと棚には小さな樽が並んでいる。ハーブワイン、ハーブエール、麦酒、どぶろく、オーズレーリル‥‥。これだけあれば、実験も様々な結果が出る事だろう。例えば飲み物や食べ物の成分によって変化する薬もあるかもしれず‥‥。
「良い情報が取れそう♪」
 エルは1人こっそり笑むのだった。

「‥‥あれ?」
 トレントへの飾り付けはさすがに時間もかかる。
 リルがほわほわ〜とロートの頭に乗ってだらけている間も、ミアがせっせと当初とは違う場所を飾っていても、ティムは張り切ってトレントの装飾を行っていた。
「あ、ミアさん。高い所にこれ‥‥。あれ? リルさんは」
「ロートさんとお買い物に行ったのです」
 ぺたぺた壁に何かを貼りつつ、ミアが実に楽しげに答える。その手を止めてこっちを宜しくとは言えないので、ティムは飾りを持ってトレントを見上げた。
「木登りは小さい頃してたし、僕でも出来るよね」
 トレントにとっては結構迷惑かもしれないが、ティムは木を登り始める。勿論枝にロープをあらかじめ引っ掛け、それを手に登り始めたのだが‥‥。
 つるり。
「ひやぁ!」
 それなりの高さまで登った所で足を滑らせ、落ちかける。慌ててしがみついたが枝にロープが絡まってそのまま一緒にぶらりんと枝に宙吊りに‥‥。
「だれかー‥‥。だれかいませんか〜」
 こういう時に限って、誰も居ないものである。ぶらーんぶらーんと揺れながら、ティムは涙目で声を上げた。
「飾り付けも終わったわね」
「はい。後は明日のパーティが始まるのを待つだけです」
「楽しみだね〜♪」
 などと言う会話が厨房で繰り広げられていたり。
「ロートくんの頭、丁度いい大きさなの〜」
「荷物持ち、俺1人ってちょっとキツイよなぁ」
 と、のんびり買い物の帰り道だったり。
「随分華やかになったな」
「はい。がんばりましたですよ‥‥♪」
 とか室内でやっていたりしている間も。
「あう〜‥‥だれか〜‥‥たすけてくださいー‥‥」
 ティムが居ない事は気付かれず、少しずつ冷え行く玄関でトレントと共に夜を過ごす事になろうとしていたのだった‥‥。


 パーティ当日。
 パーティ用の衣装で訪れたお客様を、主催者達は改めて挨拶しながら出迎えた。その中には勿論ティムの姿もある。トレントと共に雪模様になる所だったティムは、危うく夜が更ける前に救出されたのだった。
「パーティだ〜! 楽器演奏しまくりだ〜♪」
 会場内のテーブルには、ずらりと料理が並んでいた。それを目にするや否や、『リルちゃんちでパーティは危険ってしふセンサーが言ってるよ』と思っていたリルが、真っ先に盛り上がり始める。
「せっかくだから、みんなのトンデモ冒険談を暴露したら楽しそうだよね〜。あたしは星になった事があるんだよ〜♪」
「星って、ツリーのお星様ですか‥‥?」
「うぅん。夜空の星だよ〜♪」
「先輩、かっこいいのです‥‥!」
 ミアの尊敬も得て嬉しそうなリルは、じゃかじゃかとバリウスを奏でた。
「みんな〜。ご馳走だよ〜♪」
 うきうきとエルが厨房から更に料理を持ってきて、皆はとりあえず席に着く。
 見た目は至極まともだ。まともな料理に見える。
「‥‥」
 皆が『危険かもしれない』事を忘れて料理を食べる中、1人ロートは忘れていなかった。何が起きるか分からない事は目に見えている。だから、主催者達が食べるのと、他の者達の具合をじっくり見届けて、更に遅効性である事も考えて自分の目の前にある料理には手を付けないでいた。
「折角たくさんごちそう、あるです。全部たべなきゃしつれいなのです‥‥!」
 横からミアの声も聞こえてきたりしたが、そこは我慢。我慢‥‥。
「ではパーティの途中ですけれど‥‥」
 ルフィスリーザが立ち上がり、リルがあらかじめ設置しておいた竪琴の前に座った。リルも名称『白爺』の前に立つ。2人の竪琴が美しい音色を奏で始め、皆はそれに聞き惚れた。
 ギルツとフェリシアに以前聴いて下さいと告げた事もあって、ルフィスリーザは張り切って歌う。それに触発されたのか、フェリシアも立ち上がった。
「こんなに素敵な歌と曲を聞かせてもらったのだもの。私も何かしないとね」
 背筋を伸ばして踊り始めたフェリシアに、2人のバードは目で合図して舞曲に切り替え合奏を始める。フェリシアは曲に合わせ、2人は踊りに合わせる。その融合とフェリシアの表現力に、皆は感嘆の息を漏らした。1曲を踊り終え優雅にお辞儀をするフェリシアに皆は拍手を送る。が。
「ここからが本番ね」
 その手をルフィスリーザに伸ばし、手を取って踊り始めた。
「フェリシアお姉様。私、踊りは自信が‥‥」
「きちんと教えるわよ。リルさん。ゆったりとした音楽に変えて貰える?」
 フェリシアにリードされて、ルフィスリーザも流れに乗っていく。それを見ていたロートは、うっかり飲み物を手に取ってしまっていた。
「お料理美味しいですね〜」
「このパンケーキがさいこうなのです‥‥♪」
 ばくばくと食べているのはティムとミア。
「‥‥そうだな、旨いな」
 ルフィスリーザの歌の時には脇目も振らずに彼女に釘付けだったギルツも、ようやく落ち着いて食事を始めている。だが。
「はい、ギルツさん。あなたのお姫様をお返しするわね」
 すいとフェリシアがルフィスリーザの手を離し、ギルツの目の前へと彼女を置いて微笑んだ。
「あ。丁度いいよねっ。2人で踊ったら?」
 皆が何を飲食しているかしっかり確認していたエルが、にっこり笑って2人を押し出す。
 突然の事に一瞬呆然としたギルツだったが、ルフィスリーザの当社比120%な潤んだ瞳に吸い込まれ、その手を取った。
「‥‥あの‥‥ギルツさん‥‥」
 踊り始めれば、社交界で培われたギルツの踊りは実に洗練されており見ているほうも溜息が出るほどだ。
「後で‥‥お渡ししたい物があります‥‥」
「分かった。俺も‥‥渡したい物がある」
 踊りながら囁きあう恋人同士を見つつ飲食に勤しむ皆だったが、フェリシアがエル、ミアと共に踊った後。
「はい。お手をどうぞ?」
 その手を真っ直ぐティムに伸ばした。
「‥‥僕ですか?」
 きょとんとしたものの、断る理由など無いので共に踊ろうとしたのだが。
「女性側も楽しいけど、男性側も得意なの」
 と言うフェリシアの強引な勧めにより女性パートを踊らされるティムなのだった。
「う〜‥‥何か違う‥‥」
「あ、そうだ。グレーシャもふっていけば? ふかふかだよっ☆」
 それを見ながら、つつとエルがロートに忍び寄る。
「おう。それが今回一番のお目当てだしな」
 雷帝を目指すロートが今回危険を承知でやって来た理由。それは勿論友人に誘われて参加拒否する事など考えられなかったからというのもあるのだが、エルが飼い始めたプラズマフォックスに興味津々だったというのもあるのだ。
 立ち上がってその狐を見つめると、狐も見つめ返して来た。これはいける‥‥!
「よっしゃ。これ、食べてみ? ほ〜れ」
 干し肉をぶら下げ、手なずけ作戦を開始する。しかし狐はぷいと顔を逸らす。
「あ。こら! じゃあ、こっちのチーズはどうだ」
 腕まくりしてじわじわと近付きつつチーズを差し出すと、狐はじっとロートを見た。これはいいかもと干し肉も持って更に近付き、その頭に手を伸ばすと‥‥。
 びりびりびり。
「罠か!」
 踏み込んだ瞬間、びりびりと体が痺れた。見ると、エルがにやりと笑っている。まさか‥‥この罠でダメージを与えておいて、動けない隙に無理矢理何か食べさせようと言う魂胆か! あ、そういえばさっき、何か飲んだような‥‥。
「‥‥あれ。ロートどうしたの? 苦しい? 痛い? どこが? どんな風に?」
「て‥‥てめぇ‥‥やっぱ盛りやがっ‥‥」
 明らかにライトニングトラップとは違う体の変調に、ロートは呻いた。体が動かない。ばったり倒れ伏すロートに駆け寄り、嬉々として尋ねるエル。
「ん? 何の事? すぐに直してあげるから、どんな状況か教えてっ☆」
 霞む視界の中で、その声は悪魔の囁きのようにも思えた。そんな彼にグレーシャが近付いて、ぺろりとその頬を舐める。勿論ライトニングアーマー付で。
「何だかティムさんの様子もおかしいわよ?」
 そこへフェリシアの声が飛んできて、ロートは痺れたまま放置された。
「あれ〜? フェリシアさん、羽が生えてる? あ〜‥‥エルさんとルフィスさん、いつの間に双子になったんですか〜‥‥? リルさんは魚なんですね‥‥ミアさんは子犬で‥‥うわ、ギルツさんが狼に見えますー。ロートさんは哀れな子羊にー‥‥」
「他は? 他は?」
 きらーんと目を輝かせてティムを覗き込むエル。ティムは酔ったような赤い顔をしてその場に座り込んでいた。
「えへへ‥‥エルさんが今日はとてもかわいく‥‥」
「そ、そう?」
「フェリシアさんも〜‥‥」
 ぼーっとした目で顔を近づけてきたティムに、とっさに固まったエルだったが。
「い、いけません! 駄目です、ティムさん!」
 駆け寄ってきたルフィスリーザに止められ、逆に「ちゅー」と迫って、顔色を変えたギルツに殴られた。
「あ、ありがとうございます、ギルツさ‥‥ん?」
 ほっと胸を撫で下ろしたルフィスリーザだったが、そんな彼女の目の前でギルツが急にばたんと倒れる。
「ギルツさん! ギルツさん、死んじゃ嫌です!」
「あぁ‥‥ルフィスリーザ‥‥。お前には花畑がよく似合うな‥‥」
「ギルツさんー!」
 その体にすがって泣き出したルフィスリーザと男性陣の状況を見回して。エルはテーブルのほうを眺めた。
「何か凄い事になっちゃったね〜♪」
 ミアが食べている物と同じ物を食しつつ、そこではリルものんびり座っている。
「たくさんあって食べきれないのです‥‥。ちょっとずつ頂くのです‥‥♪」
「ハーブティ美味しいね〜♪」
「はい‥‥♪」
「‥‥」
 ルフィスリーザもうっかり薬が入ったジュースを飲んでいた事を確認し、エルはフェリシアを見た。
「フェリシアは‥‥大丈夫?」
「今の所は、ね」
 おいおい泣いているルフィスリーザと倒れている男3人を見ながら。
 さてどう治そうかと考えるエルであった。


 高熱を出したギルツを店に泊め、正気に戻ったルフィスリーザに看病を任せつつもエルは薬を作り続けた。勿論、これはきちんとしたお薬である。
「ごめんね‥‥。次は、副作用のない薬作るから」
 うなされるギルツに謝ると、彼はぼんやりした表情でそれでも頷いてくれた。
「しふセンサーに引っかかった飲み物、こっそりロートくんの所に移して助かったの〜♪」
「お前の仕業か!」
 楽しげなリルを追い回すロート。
「みなさま楽しそうなのです。見てるだけで楽しくなれるですね‥‥♪」
 にこにこしながらそれを見ているミア。
「後半、何をしていたか覚えてないのですけど‥‥」
「思い出さないほうがいいわよ」
 そんな中、さりげなくリルは聞き耳を立てていた。そう、ギルツが寝ている部屋の前で。

「赤い色は道ならぬ想いの色‥‥。いや、約束の色だな」
 ベッドの上で体を起こしているギルツが、そっとルフィスリーザに指輪を渡した。それを受け取り、胸をいっぱいにして体を震わせながら彼女も指輪をそっと差し出す。
「禁忌だとしても‥‥貴方に恋した事、後悔していません。これからも、ずっと‥‥」
「本当に俺でいいのか?」
 貴方しかいませんと囁く人に、男はそっと呟く。
 流れる刻が違っても、永遠の愛を誓うと。

 月の揺り籠に微睡みながら 星に祈りを捧げよう 巡り逢えた奇跡を感謝し 明日の幸運を祈って

●ピンナップ

エル・サーディミスト(ea1743


PC看板ピンナップ
Illusted by CAM

エル・サーディミスト(ea1743


PCツインピンナップ
Illusted by 東原 史真