森の社(もりのやしろ)
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■ショートシナリオ
担当:姜飛葉
対応レベル:1〜3lv
難易度:やや易
成功報酬:0 G 78 C
参加人数:4人
サポート参加人数:-人
冒険期間:01月11日〜01月18日
リプレイ公開日:2005年01月17日
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●オープニング
●明けて、その年。
――神聖暦1000年。節目の如き年。
だがそれは、人々の営みに劇的な変化をもたらす物ではなく。
市井に暮らす人々にとって、常と変わらぬ‥‥けれど新しい年を迎えた季節だった。
●年の始めの‥‥
パリの街からそう遠くないとある山村。
その村は、森にあって細々とした農耕や狩りを、主に村の生計としていた。
森の恵みに感謝し、日々健やかなる事を願い、村では山中にある自然洞を用い立てられた小さな祠で、折々の季節祈りを捧げる事を常としていたのだが。
「ゴブリンが、祠の周辺に居付いてしまったんです」
新年の祝いの供え物に惹かれたか、祠にあった食べ物を食い荒らし、酒を煽り。
ゴブリン達は、祠の周辺にたむろし、荒らしているという。
新年の供え物を下げ、冬の花を飾ろうと祠を訪れた村人が、1番最初に見つけた。
ただの人たる村人にとって、ゴブリンは抗いがたい恐ろしい存在。
ほうほうのていで村へ逃げ帰った彼らの報告により、こうして新年早々ギルドへと依頼が持ち込まれたのだ。
ゴブリンの全ての数は、把握できていないが、10には満たないだろうと言う話である。
「‥‥お願いします、あの場所は、村にとって昔から大切な場所なんです。どうぞ奴らを退治して下さい」
村の代表者たる男は、そういって冒険者達に頭を下げるのだった。
●リプレイ本文
●依頼、最初の第一歩
「神への供物を捧げる祭壇に、ゴブリンが居座るとは‥‥許せぬものだな」
カルファ・レングランス(ea8705)が言葉尻も荒く呟いた。
「まったくだな」と同意し、頷くドルニウス・クラットス(ea3736)。
「この森、良い薬草が見つけられるのに‥‥」
一方、薬草――特に毒草の知識に長けたソール・ディア(eb0418)が森を見渡し、嘆息をついた。
彼らが立つのは、村人より奪還を依頼された祠のある場所にはまだ少し遠い、村のそばだった。
すっぽりと法衣のフードを頭から被ったソールの格好は、特徴たるその耳を隠し、村人に不要な混乱をさせないための彼自身の配慮。
「‥‥ゴブリンを追い払う、か。皆さん、どうするのかな? 何か良い方法があると良いのだけどね」
ソールは、自分がハーフエルフである事と、ハーフエルフが忌まれる理由の一つ『自分の狂化条件』を仲間に前もって話し、不要な混乱を前もって避けられるよう気を配ったのだが、これといって具体的な策は持ちえられず引き受けたこの依頼。
ソールの問い掛けに、ドルニウスとカルファがそれぞれ考えていた『ゴブリンを祠から引き離す方策』を話す。
ドルニウスは自分の考えは元より、仲間の策が最善と思われれば柔和に対応を切り替える事も視野に入れていた。
1人では難しい事でも、仲間と力を合わせれば成し遂げられるかもしれない。
依頼にあたるのは、決して1人ではないのだから。上手く仲間と知恵と力を合わせ、依頼にあたる事ができることも冒険者として必要なスキルの1つである。
少ない人数ながらも、受けた依頼は果たすべき事。3人は『ゴブリンの撃退』と『出来れば祠に被害を出さず取り返してほしい』という村人の依頼を果たすべく、準備を整え始めるのだった。
●いざ、祠を奪還せよ!
「ゴブリンごとき、ウリの敵じゃないニダ。ホルホルホル!!」
ひっそりと静かな冬の森に高らかな宣言の声が響いた。それは、金 正成(ea5257)のものである。
唐突に現れた声の主を、ゴブリン達は一様に訝しげに見る。
祠の前にたむろっていたゴブリンは4匹。4対の瞳の注目を浴び、正成はなおも続けた。
「ゴブリンなどウリ一人で十分ニダ。ウリのテコンドウは無敵ニダ!」
傲岸不遜に言い放つと、彼は敵に突っ込んだ。
――正面から。全く何も考えずに。
ゴブリンは元来、姑息でずる賢いオ−ガに分類される。
とても憶病だが、集団で無防備の者を攻撃するのを好み、無抵抗の者をいたぶるのを最も好む傾向にある。
‥‥仲間がどうとか配慮もなく単騎で攻撃した彼。いかな、冒険者とはいえ‥‥多対1。
斧を手にしたゴブリン達に一斉に迎え撃たれ、泣き叫びながらあえなく敗走。
逃げる彼の背にも容赦なく石などが追いかけてくることとなる。
そんな悲痛な叫びは、ゴブリンだけではなく、森の入り口にてゴブリンを撃つべく備えきた同じ冒険者仲間の耳にも届き。
「「「?!」」」
カルファ達3人は一様に首を傾げる間もなく。ソールは己が背に逃げ込んできた正成に驚きスタッフを構える。
そして正成を追うように、獲物を手にしたゴブリン達が、カルファ達の前に現れた。
ゴブリンがいることは、判っていた事。
ドルニウスは、手にしていたゴブリンをおびき寄せるべく用意した炙り肉の入った袋を脇に放り、冷静にロングソードを構え迎え撃った。
簡単に追い払えた正成を庇う新たな存在。
けれど、剣やメイスといった武器を手にするのは2人。勢いづいたゴブリンは、引く事はなかった。
斧を振りかざし、3方からドルニウス達に襲い掛かるゴブリン。唐突に、討伐戦の火蓋は切って落とされた。
機先を制したのはドルニウスだった。
まず先頭きって斧を振るったゴブリンの一撃を上手く剣で受け流し、剣を返しざま斬りつける。
彼の背を狙うように斧を叩きつけようとした別のゴブリンの鼻先を、ソールの手繰る炎がなぶった。
村で借りておいたランタンを火種に、ソールの意思を映し炎はゴブリンを焦がす。
「援護は任せて」
「‥‥頼む!」
ドルニウスが、ちらと視線をめぐらせば、木々の合間の視界の隅に捉えたのは岩洞らしき色合い。
戻らせぬよう祠と後衛の仲間を庇う位置取りで、それらを背に剣を振るう。
一方、祠前への闖入者の対応は仲間任せで、焼かれた油の匂いをたてる肉の袋に手を伸ばすゴブリンもいた。
けれど、手を伸ばすもゴブリンの視界から肉の袋は消えうせて。
ゴブリンの視界を奪い、更に畳み掛けるようにカルファのブラックホーリーがゴブリンを襲う。
先んじて視界を奪われたゴブリンに、反撃を許すわけも無く。
そして彼らの尽力により、ゴブリンは一掃され森に静けさが戻る事となる。
●戻る平穏、祠への信仰
「ありがとうございました」
ゴブリンが討伐された事で、また村人達が祠へ祈り供えに行ける平穏な日々が戻ってきた。
村人は、口々にドルニウスらに礼を述べ、頭を下げる。
過疎の村、老人も多く村に近い場所にゴブリンが棲みついて以後は不安な毎日だったのだろう、村人達の顔は一様に明るい。
村人達の礼の言葉と明るい笑顔に、何より依頼を達成できたことが実感としてドルニウス達の胸に起こる。
そして、久方ぶりに祠の周辺は清められ、燭代の蝋燭には炎が灯り、ささやかな供物が備えられた。
「ウリの大活躍で勝ったニダ!」
そんな中、実に堂々かつ偉そうに誇る正成。戻ってきた4人の冒険者に、村人は同じように感謝をしていたのだが。
供えられた側から、寒村では貴重な甘味や供物を手にかじり、果ては少々凝った細工の燭台まで懐に納めようとされては村長も流石に見逃せなかったのだろう。
若い村人達に追いまわされる正成の姿があったという。
「お疲れ様、だったね」
1番見目若いソールが、特徴的なその目を細め笑む。村の女性には接触の無いよう祠が戻ったささやかな祝いの宴も遠巻きにしていた彼。
頷き、互いに労うカルファ達。依頼にあたり、倒さねばならない存在と対峙する時間はこれからも増えるもの。
けれど、こうして喜ぶ人達の顔を見れることも、上手くゆけば増えるのだ。
歴史に残るような偉業を成し遂げたいと願うドルニウスだが、また彼らが挑むのはどのような依頼になるのだろう。
年はまだ明けたばかり。
冒険者としての経験も、日々の生活と共に重ね、研鑚していけばよいだけのこと。
晴れ渡った空の下、最初の冒険をやり遂げた達成感に笑顔がこぼれるのだった。