宝物を求めて ―冬山登山

■ショートシナリオ


担当:姜飛葉

対応レベル:1〜4lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 44 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:01月27日〜02月03日

リプレイ公開日:2005年02月06日

●オープニング

●収集家ギース
「宝探しを依頼したいのだけれど」
 そうギルドの受付係に、にこやかに声をかけたのは、年のころは30絡みであろう1人の男。
 服装は一見地味ながら良い生地の仕立てのようであるが。
『宝探し』などといわれ、訝しげな受付係の様子に気付いているのかいないのか。
 男は、気にした様子も無く『ギース』と名乗った。
 ギース、爵位をもつ貴族の名にそんな家名の者がいたような‥??
「ギースって『ギース伯爵』?」
「そういう風に呼ばれたりもするね。‥‥とりあえず、私の個人的な依頼だからギースでお願いしたいのだけれど」
 暗に内々の来訪なのだと彼は告げる。
『ギース変境伯』と呼ばれる方が多いかもしれない、いわゆる「変わり者」に分類される。
 そんな噂しか聞えてこない。地方にこもっているがゆえの嘲りも含まれているのだろうが、『宝探し』とは‥‥やはり、噂は侮れない本当の変わり者なのかもしれない。
 骨董や珍品問わず、とにかく集めるのが趣味という。そんな趣味が高じて『収集家』。
 そんな彼が今夢中で集めているのが俗に『宝の地図』といわれるものらしい。
「‥‥こうした地図がえてして、ガセだというのは理解しているつもりだよ。
 けれど、本当にガセなのかどうか‥‥それは確かめて見なければわからないだろう?」
――‥‥それって理解してないじゃん。そう受付の彼がつっこまなかったのは、短くないギルド受付係歴の賜物だったろう。
「私は収集家だ。冒険は専門家に任せようと思ってね。
 報酬は、結果および成果とは別に支払おう。地図が『外れ』だったとしても、それなら冒険者には、まったくの損にはならないはずだ。そして、探索の結果見つかった物次第では、更に報酬を上乗せする。ただし、成果は隠さず全て報告する事。それが条件だ」
 対価をどれほど求めるかは、冒険者次第だが。そう悪くは無い話なのかもしれない。
 けれど、結果を待つだけでギースは本当に楽しいのだろうか?
「‥‥集める事、揃える事が楽しいのだよ。私は集める。君たち冒険者は確かめる。『適材適所』という言葉を知っているかい?」
 冒険者達を前に、彼はにっこりと人のよさそうな笑みを浮かべそう問い掛けるのだった。


●今回の探索場所
「今回君たちに探索をお願いしたいのは、ここパリからそう遠くない山の中。かつて名を馳せたある冒険者の残した地図の場所に、何があるかを確かめてもらいたい」
「その場所は?」
 問いかけに、ギースはゆっくりと首を横に振った。
「依頼を受けてくれれば地図の写しを渡そう。まだ依頼が成立するかもわからないのに、宝があるかもしれない場所を示す地図を見せるわけにはいかない。ここは、その手を生業とする者達が大勢いるのだから」
 変わり者という噂を聞くものの、どうやらギースは真性のバカではないようだ。
「冬しか見つけることの出来ないものらしくてね。かつ『人の立ち入りを禁ずる、秘しておくべきモノ』とある。
 まあ、地図の残し手が冒険者である事を考えれば、普通の人はたどりつけないんだろうねぇ。はっはっは」
――『はっはっは』じゃねえよ。そう思ったのは1人2人ではないだろう。
 そんな周囲の雰囲気をまったく気にする様子も無く、依頼内容について続けるギース。
「自然が障害となるのか、それとも別の障害があるのかは‥‥地図がかすれていて書き込み個所が見えないんだよねぇ‥‥ま、頑張ってたのむよ」
 冬は、地元の者は入りたがらない程の山。比較的登り易い夏に人を遣った事もあったらしいが、地図と道が上手く合致しないという報告を受けたらしい。「なぜだろうね?」と首を傾げるギース。けれどそれで結局は、冬に行って探すしかないだろうという結論になったらしい。
「冒険を好むものには傾向がある。この地図の持ち主は、どうやら人の手の及ばない秘境や珍しい動植物を見つける事が好きだったらしいよ。‥‥本当かどうかはわからないけれどね」
「依頼は、『見つけること』で良いのか?」
「可能なら『そこで見つけたものを持ち帰って欲しい』けどね。注意書きも気になるから、まずは『確認すること』かな。けれど、皆で口裏を合わせての虚偽報告は勘弁して欲しいね」
 質問に対し、ギースはほがらかに頷いた。‥‥これだから貴族はと言いたくなるような釘さしも忘れずに。
 やがて『受付完了』と席を立った彼は「‥‥そういえば」と付け加えた。
「山では積もった雪が重みや僅かに溶けた水分でさらに厚い氷の層になっていたりもするそうだよ。扱いには気をつけたほうが良いかもしれないね」
 冬の雪山。あえて、依頼を受けて立とうという冒険者は果たしているのだろうか。

●今回の参加者

 ea2606 クライフ・デニーロ(30歳・♂・ウィザード・人間・ロシア王国)
 ea2733 ティア・スペリオル(28歳・♀・レンジャー・パラ・ノルマン王国)
 ea5460 ギアリュート・レーゲン(35歳・♂・ナイト・人間・フランク王国)
 ea5636 ファルド・トラニッシュ(61歳・♂・ファイター・ドワーフ・ノルマン王国)
 ea7372 ナオミ・ファラーノ(33歳・♀・ウィザード・ドワーフ・ノルマン王国)
 ea8737 アディアール・アド(17歳・♂・ウィザード・エルフ・ビザンチン帝国)
 ea9633 キース・レイヴン(26歳・♀・ファイター・人間・フランク王国)
 eb0751 ルシール・ハーキンス(27歳・♀・神聖騎士・人間・ノルマン王国)

●リプレイ本文

●出発準備
 かくして冬の雪山へという無理な依頼にも応じた冒険者達のお陰で、ギース変境伯の宝探し依頼は無事成立。
 それにあたってギースが彼らに託した地図は、原図ではなくそれを精密に写し取ったものではあったが、彼らの手にある行く先を示すただ一つの物でもある。
「しかし『秘すべき』と言いながら地図を残すというのも矛盾した行為ですね‥‥まぁ私は宝物より雪山自体に興味があるので、構いませんが」
 地図を確認しながらのアディアール・アド(ea8737)の指摘も最も。率直な忌憚のない言葉にギースは笑う。
「彼が何を思って残したのかはわからないけれど、標がなければ再び見る事が叶わない道のりなのかもしれない。矛盾については色々考えられる」
「まあ、人数も揃った事だし‥‥冬の山。それこそ色々な可能性を考えて相談しないとね」
 クライフ・デニーロ(ea2606)の提案に、彼らはこれから臨まねばならない場所の過酷さを思い、打ち合わせを綿密に始めた。
「高名な冒険者が残した宝の地図‥‥楽しみです! きっと凄い剣や鎧や盾が‥‥」
「‥‥‥‥」
 一瞬の静寂が辺りを包む。雪道への対策に靴底に縄を掛けておくことを提案していたナオミ・ファラーノ(ea7372)が苦笑を浮かべる。
「‥‥こほん。困っている人を助けるのって、神も認めるとても正義な行いですよね」
 仲間の視線を一身に集め、咳払い1つ、神の名の下にルシール・ハーキンス(eb0751)は話題を誤魔化した。
「ま、地図の真偽がどうであれ、偶にはトレジャーハントも悪くないな」
「うにゃ! 雪山‥‥珍しい風景やすごい景色も見られそうだし、頑張ろうね!」
 キース・レイヴン(ea9633)やすごい宝を手に入れたいと望む様々な土地鑑に優れたティア・スペリオル(ea2733)が笑んで頷く。
「俺は、金銀財宝とかいうものではないような気がするが‥‥秘境や珍しい動植物を見つける事が好きだったっていうし。まぁ、とにかく見つけて確かめるしかないな」
「そういってもらえると助かるね。報告を楽しみに待っているよ」
 ギアリュート・レーゲン(ea5460)の結びの言葉に、ギースはにこやかにギルドを辞した。
「冬山か。晴れておるといいのぅ。何も見えぬ程の吹雪には遭遇したくは無いんじゃが‥‥」
 ギースが、ギルドを去った後‥‥髪と同じ白い髭をなでながらファルド・トラニッシュ(ea5636)は、山がある方を見て呟くのだった。


●山へ到着―1日目
「‥‥あんた達正気かい?」
 まずは案内は期待出来ずとも、地元の住民に道や山の様子について地図との相違などの情報収集に動いていたクライフ達を迎えてくれた言葉は一様に似たようなものだった。山へ登るという彼らへ、止めようとかけられる言葉。
 山そのものは、ファルドの願いが通じたのか、ここ数日の天候は落ち着いているという。逆にいえば、今まで降り積もった雪がゆるみ雪崩れやすくなっている可能性もある。
「生憎、誰も風読みに長けた者は誰もいないんだよな」
「その分、装備なども出来る限り万端そろえたつもりだし、山に詳しいティアさんもいます。僕も雪上の事でしたら多少心得があるから、油断なく慎重に行動すれば大丈夫じゃないかな」
 山を見上げ、危惧するキースにクライフが地図を手にそう応じた。
「ん、やっぱり厳しい山ってことも改めてわかったし、下山の事も考えて、期日内に可能な限り安全に出来れば余裕を持って達成できるルートを考えるよ」 
 仲間達の装備の確認と改めて山を見ていたティアが頼もしくそう答えた。
 登山において気象は重要な登山技術のひとつ。天気の変わり目を予測できなかったために、危うく命を落とすこともありえるのが自然と相対するのに難しいところ。
 麓の村人に、馬を預け、分担して荷を背負い合う。
 前途多難な様子をみせつつ、冒険者達の登山ははじまったのだった。


 山の高さはそう高い山ではなかった。さほど高くは無いにも関わらず、登る事を厳しくしていたのは、季節と天候。
 そして山そのものの険しさだった。
 仲間の中で山や雪上に詳しいティアとクライフを先頭に前もって打ち合わせておいた隊列を組み山を登り始めた。
 麓に近いに場所へベースキャンプを張る事を決めていた為、其処を拠点にしての探索となった。
 皆、防寒着を装備しているとはいえ、標高があがれば気温も下がり。山に積もった深い雪は、進行を遅らせ冒険者達の体力を奪う。
「うにゃ‥‥1日でどこまで行けるかなぁ」
「一度荒れると、おさまるまで1日2日かかったりするそうですから、何とか天気がもってくれるといいですね」
 拠点を地図に記し、これまでの進度を日の高さで確認しながらティアが唸った。麓の村で聞いた話にルシールも心配そうに小さく息をついた。
 力自慢のファルドを中心に、皆で話して選んだ風を避けられる場所への設営を終え、早めの食事。
 ナオミのお陰で、寒い場所で更に常よりかちんこちんに冷えて凍った食べ難い保存食だけの食事という事態にもならずに済んでいる。
 彼女自身は、できる事が少ないと仲間に気後れている様子もあるのだけれど。厳しい自然の中の進行は、助け合いが重要である。
 無理な進退はしないつもりで、拠点に戻れなくなった時も考えて装備を分ける。
「山は降りるより登る方が大変だから、とりあえず、道をしっかり選んですすもう」
 詳しいティアに従い、円滑に探す事は皆納得の上。
 余計ないざこざもなく彼らは、目的の場所目指し登り始めた。


●色々あるもの―登山期間は3日間
「あ、見てください。あそこに狐が!」
「どれどれ‥‥おお、親子のようじゃな」
 ルシールが指差せば、ファルドが頷き。
「‥‥見慣れない木だな、なんだろう?」
「ああ、あれは高山植物の一種です。随分低いところにありますね」
 ギアリュートが訊ねれば、アディアールが答える。
 一面銀世界の中にある僅かな色味。
 それぞれのもつ知識や興味に、彼らなりに山を楽しみ登っていた。
 何か楽しみを見つけなければやっていられないかもしれない長い時間‥‥冒険にて培われた経験の賜物だったのかもしれない。


 ティアはぴたり、足をとめる。隣りのクライフを見て、地図を見て。
 先頭の2人が足を止めれば仲間の進行も止まる。
「この先、道がないんだけど‥‥」
「‥‥迂回するしかないですね。登りますか、下りますか?」
「その先で登らなければいけないから、登れる場所を探して迂回するのはだめかな?」
 首をひねり、頭をひねり。常に決定は先走らず皆で話し合って決めていた。
 地図に示される道は夏にも無かったけれど、冬にも無いのか。
 それともここ数日の落ち着いた天気、暖かいから無いのか――
「あ、あれは‥‥すごく珍しいんですよ。春に薄黄色の小さな花を咲かせるんですけれど」
「珍しいんですか?」
 足を止め、進路を決めるのに一息。ふと見上げればかわりものの植物。
 アディアールがそう説明すると、『珍しい』という言葉に興味をもったルシールが、木へと歩みより手を伸ばそうとしたその瞬間‥‥――どさささっ!!
「‥‥きゃあああっ!?」
「ルシールさん!?」
 大きな音を立ててルシールの足元から雪が崩れ落ちた。
 咄嗟に今までルシールの隣りにいたファルドがロープを引き堪える、キースが手を貸し支える間に、異変に先頭で進路を相談していた仲間も駆けつける。
 ロープを用意していた者が多かった事、備えに用意していたため、ルシールは落下を防ぐ事が出来た。
 地面があると思っていた先は、雪で張り出していただけの不安定極まりない場所だったのだ。
 危険箇所を、ティアとクライフが地図に追記する。
「‥‥これ以後、前の人が歩いた場所以外は避けて、注意だね」
 備え在れば憂いはなかった。


「復路を考えれば、猶予は後少しだな」
 彼らはまだ宝があるといわれる場所を探し出せずにいた。
 依頼の期間を考えれば、猶予はない。毛布はアディアールに、自身は防寒着の上にマントを羽織る事で寒さを堪えていたキールが嘆息する。
 途中、野犬らしき群れの縄張りに踏み込んだか、ファルドらと対応に苦心した疲れも見える。
「もうちょっとて感じなんだけどな‥‥この地図すっごい不親切だよ」
 天候すぐれず、雲がかかったような山頂付近を見上げティアはため息をついた。
 この2日掛けて歩き、道を探したものの結果は芳しくない。道が無かったり、崩れていたり。
 目的地の近くまで来ている事は確かだと思うのだが、地図上での進路と上手く道が合致しない。
「‥‥日が暮れての探索はやはりやめよう。どうしてもというのなら、やはり明日の早朝からにかけて、昼前までが限度かな」
 常に冷静なクライフの提案に、否を口にするものはいない。
 もとより時間の無かったこの依頼‥‥早朝、夜明け前から再び付近まで捜すことを決め、冒険者は僅かな休息をとる。
 寒い雪山の只中、澄んだ空気に冷たい光をたたえ、星が静かに瞬いていた。


●それでも登ったその先に
 山頂付近、靄がかかり視界の悪さを越えれば‥‥彼らの目の前に広がっていたのは光の煌きだった。
 見つけられたのは、少しの偶然と、冒険者達の粘り強さ、そして彼らが選んだ行程が重なっての産物だった。
 周囲に気を配り、時間に配慮し、歩いた結果。僅かな雪と岩の隙間の先にそれはあった。
 まばらに生える木々の枝の間に氷が付き、1つ1つは小さなそれらが重なり合い連なることで繊細な自然の紋様を刻んだ薄い氷の壁が出来ていた。
 そして、それを透かし光が差し込むことで表現しようのない幻想的な空間が其処に在った。
 自然の造形美の極み。人工的な灯りの群れとは全く異なる景色が彼らの前にひろがっていた。
「‥‥これが、お宝なのかな?」
 地図を手にティアが呟いた。
 確かに感受性の強い者が見れば美しいと思えるかもしれない‥‥けれど、万人にとって宝かと問われれば。
「自然の雄大な風景とかも、見る人によっては宝になりえるからな」
 地図の残し手は、そういったものを愛している冒険者だったとギースは言っていた。
 そんな中、明らかに人の手が入ったと思われる石が、片隅に植物に抱きとめられ氷の中に埋もれるようにあった。
「これは‥‥」
 光の洪水から真っ先に我にかえりそれをみつけたのはクライフである。
 それは、地図を残した冒険者が残したメッセージが刻まれた石版だった。
 ナオミがヒートハンドで、石版にこびり付き白く凝った氷を溶かす。
「なんて書いてあるんです?」
 クライフに問われアディアールが読み上げた。
 要約すれば‥‥
 
『岩の形、植物の群生の模様、風の吹き抜ける通り道。
全ての偶然が積み重ねられた結果から、自然の産物として生み出される氷壁。
僅かな時間だけ、光りの差し込むその時にしかみられない光の紋様。
人の手が入り、何かが欠け変わってしまえばけして作り出される事がなくなってしまう自然の結晶。
冬の雪に閉ざされた僅かな時間しかみられないものだが‥‥』

「‥‥出来れば美しいと感じる者がいるのなら、この場所は自然のままで残しておきたい‥‥旨が書かれていますね」
「いずれ、風に岩が削られ、植物の繁殖が変わってしまっても見られなくなるかもしれないものみたいですね」
 自分はどれくらいこの光と氷の紋様を写し取れるのだろう‥‥自分たちの見た感動は伝える事は難しいかもしれないけれど、そう思いながらもギースに『宝』を伝える為、ナオミは筆記具を手にとるのだった。


●宝とは
 後少し、と探索に日数を割いたが為に、冒険者達はパリへ戻る道のりを強行軍でカバーしたのだ。
 無論、雪山から戻った直後。冬の雪山を登ってきたのだ、皆疲労の色は濃い。
 そんな冒険者を迎えたのは依頼主である苦笑を浮かべたギースだった。
「地図の場所に宝はあったのかな?」
「‥‥うにゃ、この地図はもう用を成さないかもしれないよ」
 ティアから、地図の写しがギースの手に返される。その言葉にギースは訝しげな表情に。
 地図の後ろには、かの冒険者の残した石碑の文字が写されていた。‥‥そして、クライフとティアの苦心した道程の記録。
 それに目を走らせると、冒険者達へ視線を戻した。
「改めて、報告書を纏めて貰って君達の過程を聞こう。今は休む事だね‥‥ぼろぼろだよ。苦労したみたいだな」
 ティアに続きナオミがギースに差し出す。それは、雪山でスケッチした物だった。
「下手糞だけれどね」
「‥‥いや、有り難いよ。冒険の成果の一部としていただこう。行かなければ得られないもの、か。冒険者はいいね」
 少しの羨みと寂しげな響き。
「もちろん道中の困難な冒険も含めて!ご報告します。こういう事は過程から知らないと、感動も半分ですからね。話し方は上手くないですけど、ギースさんが少しでも一緒に冒険した気分になってくれれば嬉しいです」
 ルシールの励ますような言葉に、そんな寂しげな様子は一瞬だった。
「そうか、ありがとう。楽しみにしているよ。‥‥まあ、私は『苦労の代償』と『安穏さ』、どちらを選ぶかって決まっているけども」
 ギースが冒険に出ることはやっぱりないのかもしれない。
「君達にとっては、『宝』となりえたかい?」