【怪盗と花嫁】闇色の兵団を撃破せよ
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■ショートシナリオ
担当:姜飛葉
対応レベル:2〜6lv
難易度:やや難
成功報酬:1 G 69 C
参加人数:10人
サポート参加人数:3人
冒険期間:04月05日〜04月10日
リプレイ公開日:2005年04月12日
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●オープニング
慌しいパリの近状‥‥動き出した冒険者ギルド、そして依頼に伴い駆け回るのは冒険者達。
彼らが求めるのは、真偽か探究心を満足させえるものか‥‥或いは、時の流れを見極める為か、流れにのるためなのか。
「情報が入った。その情報に基づいた討伐戦が君達への依頼内容になる」
依頼書を手にしたギルドの受付員が、単刀直入に切り出した。
‥‥誰から、とは言わない。今更である。
不穏な噂、不確定な情報、混在する話や依頼の数々‥‥。
今、冒険者ギルドを賑わせる一連の依頼ひとつに関わるものだというだけで、事は知れる。
「情報によれば、マント領を目指し進むモンスターの群れがいるらしい。群れというには語弊があるんだが‥‥どう手懐けているのかはわからないが周辺のゴブリンやオーク共を集め吸収し数を増やしながら進んでいる。そして、そのモンスターの群れを背後で操っているのは、マント領領主・カルロスだ‥‥という話らしい」
冒険者達の反応を見ているのか、それとも。受付係はそこで言葉を1度切った。
背後関係を示す話の真偽が如何あれ、群れたゴブリン達がいる事は確かな事実。
それにこれ以上ゴブリン達に徒党を組まれても、厄介な事この上ない。
怪盗の仲間がもたらした情報によれば、ゴブリン達を集めながら束ね進む群れの中心となっている存在がいるという。一見してわかる他のゴブリンやオーク達よりも一際大きな体躯のオークを討ってさえしまえば後は烏合の衆、頭さえ潰してしまえば蹴散らすのも容易なはず。
だからこそ、頭を討ってほしいというのが依頼だった。
「モンスターの群れが大手を振って道を歩けば目立ちもする。流石に、奴らも多少目立たない努力はしてるようで、進行速度は遅い。最も、奴らなりの努力だから冒険者が探す気になって動けばわからないなんて事はない‥‥でなければ、情報も入ってこないだろうしな。だから、上手く段取りをつけることが出来れば先回りする事も可能かもしれない」
本当に群れを操っているのがカルロスであるとすれば、その群れが目的地に辿り着くことはデビルとモンスターの混成部隊が出来上がること。
逆に操っているのが、怪盗であればそもそもこの依頼には‥‥。
「群れの要のオークを倒す事。それが、君達への依頼‥‥それは変わらない。頭を倒すには、周辺の雑魚も上手くあしらわないといけないだろうが、上手く果たしてほしい」
時間に猶予はなく、選択肢は既に目の前に用意されているものを選ぶのみ。
なしえるべき事をなせるかは、当人達次第である。
●リプレイ本文
さあ、立ち向かおう 災い播きし行軍に
幾多の戦、内一つなれど 大事な事には変りない
討伐を成し遂げて 皆の不安取り除こう
●索敵
「あれか‥‥わかりやすいな」
「一際大きな巨体‥‥装備も体の大きさも他のオークに比べても段違いですね‥‥なるほど、一目でわかります」
偵察に赴いたサテラ・バッハ(ea3826)とガイアス・タンベル(ea7780)の視線の先。
そこにいたのは、オークとゴブリンのモンスター混成部隊だった。
ある程度の集団‥‥今なお数を増やしつづけているという情報から、踏み固められた地面、折れた枝葉、足跡や野営の後などがないかもたらされた情報を元に森を捜索していた。
情報は大まかなものだったが偵察に赴ける冒険者が多く、その中にオーク戦士達が隠れ蓑とした森を渡るに長けた者が多かった事も好材料だったのだろう。
更にアルンチムグ・トゥムルバータル(ea6999)の依頼で、空からの物見を行ったギヨーム・ジル・マルシェのもたらした情報からこれまでの進路は割れている。
マント領の方角と合わせ先読みは可能だ。
「ボクらが見つからない内に手早く撤退しよう?」
深追いはしない、それが皆との共通の認識。偵察が確認すべきは、部隊の規模とその進路の先読み。
インヒ・ムン(ea1656)の言葉に頷き合い、彼らはその場から速やかに離脱したのだった。
偵察結果から先回り可能と判断し、先路を急ぐ傍ら。仕掛けるタイミングは昼と決めた。
「こっちの態勢を整えられるし、森林の真っ暗の所でやりあったら危険極まりないからな」
あえて相手に合わせ不都合な時を選ぶ事もないだろうというギアリュート・レーゲン(ea5460)の提案に否を唱える者はいなかった。
進行上からは僅かにそれている。実際に偵察、斥候に向った仲間から得られた情報からも進行速度は遅く、迎え撃つべく先回りした冒険者がいる地点には到達されないだろう。
迎え撃つべきは明日の日中。
「いくらカリスマあっても悪魔やゴブリン共を大勢配下にして嬉しいんかいな‥‥。伯爵はごっつ趣味悪いお人やねんな」
情報を整理し、打ち合わせた中でアルンチムグは呆れたように毒づいた。
「まあでも、花嫁はえらい可愛らしいらしいさ?」
「誰やねん、おなごの趣味だけはマトモやとかいうてる人は? うちらの戦いもまた大事なことには変わらへん。いっちょ気張るでー!」
ドナトゥース・フォーリア(ea3853)の笑みを含んだ言葉にツッコミを返しつつ、胸にあるのは部隊を瓦解させる明日へ向けて。
臆する事無く、気負いも過ぎず、万全を図る事を怠らず事に当れるという姿勢は重要だ。
「まあ、一連の怪盗騒ぎはもはや一般人まで脅かす様な事態になって来てますから。今回の依頼は『縁の下の力持ち』的任務‥‥小さき僕にとってもそれは真に重要な事ですし必ずや成し遂げたい所存です」
アフラム・ワーティー(ea9711)の言葉ももっともで、パリを目指し進軍するデビル達やアンデッド達の対応に向かった冒険者もいる。
混沌のマント領‥‥時流は果たしてどちらへ流れるものなのか。
「まぁ暴れるなら今がチャンスだと唆されたんでしょうね、このオーガ族集団。このタイミングだと良くて増援。悪くてもこちらの人数減らしの為の陽動かな、敵の意図は」
サテラの呟きに、精悍な美貌を損なう事無い笑みを浮かべながら手にした日本刀の刃をドナトゥースは確かめる。
「さてな? まあ華の都を守る為頑張るさー? 異教の神を信じていても、守るべき相手は守らなければさ」
結局はそのためにこそ、この場にいるのだから。護るべきパリ‥‥それは、かの地にいる想い人護る事。
誓いの指輪を一瞥し、ドナトゥースの言葉に頷くイコン・シュターライゼン(ea7891)。
「僕の目標もパリを護る為、皆さんと協力してモンスター部隊を撃破する事です」
「取りあえず、俺は戦闘さえできれば良い」
体躯に劣らぬ巨大な直剣を抱えアール・ドイル(ea9471)は、悪びれず言い切った。
「あ〜それと、俺が狂化したら近づかないでくれ。つうか寧ろ逃げてくれ」
「戦闘中にそんな余裕があればってとこさ?」
「僕が、何とかしてあげるよ〜♪」
肩をすくめるドナトゥースに対しインヒがフォローを請け負うと、アールは「よろしく」と注文付きで明日の事を頼んだ。
「裏で何が動いているのか分からないけど、モンスターの群れを放っておくわけにはいきません。僕は僕に出来る事をします」
語る決意の言葉は、ガイアス。実際にその目でオーク達を見てきた彼の言葉は揺らがない。
「私も剣も魔法も未熟なれど、出来る限り協力させていただきます」
頷く水無月 冷華(ea8284)。彼女とギアリュートの推察から、彼らは先回りの経路を予測立て「可及的速やかに頭を見つけて叩き潰す」事を目標としていた。
幾度も仕掛けるのではなく、1度で。そのための機会を作るために偵察を行い慎重にここまできたのだ。
「決行は、明日の昼〜だね♪」
●仕掛
「全力で奴らを潰す。それだけだ。皆、怪我するなよ‥‥」
「承知です。ギアリュート殿こそお怪我の無いように」
冷華の返しに、僅かに瞳を瞬かせるギアリュート。この先にいるオーク達の部隊を前に、成すべき事は1つである‥‥頷きあう冒険者達により、討伐戦の火蓋は切って落とされる。
夕夜の進行に備え森の中へ留まっていたゴブリン達を唐突にアイスブリザードが襲った。
悲鳴をあげる間もなく、己が身に何が起こったか知りえず凍りつくゴブリン達も少なくは無い‥‥サテラの先制の魔法。
その魔法の混乱から立ち直る余裕など与えずジャイアントソードを振りかざし、一際目立つ巨躯を誇るオーク戦士を目指し踏み込み先陣きったのはアール。
「命なんざ惜しくもねぇがそう易々とやる気はねぇぞ!」
僅かな木漏れ日差し込む森の中、まどろんでいたオークやゴブリン達が殆ど。
冒険者達の突如の襲来に、慌てふためくゴブリン達に構う事無く、アールはオーク戦士目指し駆け抜ける。
瞳が熱くなり、髪だけでなく全身が総毛立つ感覚がアールを襲う‥‥意識はただ、強者を、戦闘を求め、赤い瞳を陽光の下に晒し、彼は狙い潰すべきオーク戦士へと剣を振りかざした。
狂い猛るアールの進路を塞ぐ事無く、オーク戦士への進路を切り開くためイコンは、自身とあわせオーラエリベイションを施したガイアスらと共にゴブリン達を屠りに掛かっていた。
多数を誇る相手に対し、遥かに少数である冒険者達。
自分達の不利は承知の上で、指揮官たるオーク戦士を倒し、早々に寄せ集めのこの軍を瓦解させなければいけない‥‥だからこそ。
そして、よりたくさんの敵をひきつければそれだけ仲間がオーク戦士を討ち易くなる。
「パリにいる彼女のためにも、‥‥負けられない!」
「ええ、デビルとの合流は絶対に阻止しなければなりません! 」
二人はオーラ纏う剣を振り薙ぐ。奇襲の効果は、最初の一手。オーク戦士の叫びにうろたえていたオーク達も、武器を手に状況を把握し動きだし始めていたが‥‥。
整える隙を許さず流麗な軌跡を描き、ルーンソードがオークを切り裂いた‥‥仲間がオーラを纏う隙は、アルンチムグが埋める。ルーンソードを振るいイコンのフォローにまわり、小柄な女と侮る色は剣でなぎ払う。
「いかせへん、ここを支えるのがうちらの仕事や!」
アフラムは、周囲の雑魚掃討に徹しながらも的確に周辺情況を見極めていた。
軍勢を前にしての、回復者の不在‥‥それは、数の上以上に冒険者らにとってのマイナス材料。
それを、言い訳に退く事などできない戦いだからこそ、攻め手と守りのバランスを見極めなければならない。
オーク戦士を討つために、それに相対する仲間をフォローする為に‥‥。
攻守のバランス次第で駆けつけられるよう時折オーク戦士達への様子を探るギアリュートの視界の向こうでは、そのオーク戦士が体躯に劣らぬ大きな戦槌を振りかざしていた。
周囲の同朋を巻き込む事など気にする様子も無く、目の前で障害となる冒険者達へ容赦なく槌を振り下ろす。
「‥‥ちっ、やっぱり狂化中は連携なんてとれないか」
元より狂い猛るアールに多くは望んでいなかったドナトゥースだが‥‥。
ただ熱く剣を振るい、オーク戦士に肉薄するアールの戦い方は引くことなど思いも寄らないただ強い者へと挑み打ち倒そうとする怒気のみが察せられる。
引くことを知らず剣を振るうアールが、オーク戦士の戦槌による一撃を避けえているのは彼の剣を振るう力量の騎士としての高さの現れだったが、それだけでは事は足りえない。
インヒのムーンアローが戦槌持つ腕を阻害し、サテラのウォーターボムがアールやドナトゥースをオーク戦士から引き剥がそうとするゴブリン達を退ける。
「助かるさ?」
「だったら、早く決めろ!」
重たい水に潰される地に膝付くオークを手の刀で切り伏せるドナトゥースに、気にする事無く次の詠唱に入るサテラ。
インヒのムーンアローは月はないものの、行動を妨げる効果には十分で‥‥苛立たしげなオーク戦士の唸り声に、詠唱結ぶインヒにゴブリンの斧が振り上げられる。
「!!」
振り上げられた斧は、腕ごと地に転がり。吹き飛んだ腕に耳障りな声を上げるゴブリンを返す刀で切り伏せた。
「私が守ります。インヒ殿とサテラ殿は、オーク戦士へ‥‥アール殿達を支えてあげてください」
「‥‥っと、危ないありがとう〜だよ♪」
冷華が二人を守り、そしてその二人の援護を受けドナトゥースらは、オーク戦士を追い詰め始めていた。
――ウォオオォガァァアアアアッッ!!
森に響き渡る耳障りな悲鳴。
「やりましたか!」
目の前のオークを切り伏せながら、ガイアスは先に居るオーク戦士のほうへ視線をやった。
ドナトゥースの鋭い日本刀の刃が素早く掠めるようオーク戦士を襲う‥‥刻まれる鋭い太刀筋に、とっさに生まれた隙を戦闘に狂った騎士が見逃すはずは無かった。
振り上げ突き下ろされた巨大な刃が、オーク戦士の首を深く抉り、そして‥‥飛ばしたのだった。
●光勝
「応急手当を心得ておいて良かったです‥‥」
ため息混じりのアフラムの呟き。万一に、と備え持っていたポーションは、アルンチムグやギアリュートの分と合わせても十分ではない。
「結果は成功‥‥だな」
アフラムの様子に苦笑を浮かべながら、森と仲間を見渡しギアリュートは息をついた。
「‥‥魔法が効いて良かった〜♪」
苦笑を浮かべつつ、疲れた様子の口調だがインヒの声は暗くは無い。
オーク戦士が倒れた後、アールがその剣を振り上げたのは、間近に居たドナトゥースへだった。
「俺もオーク戦士に負けてないほど強くみえたってことか」
仲間に対し本気で剣を振るうわけにはいかない。自然、ドナトゥースは防戦一方という形になったのだが、対するアールは、インヒの魔法によりその猛りを強制的に絶たれ眠りにおちたのだった。
戦場での意識の喪失にも、イコンが彼を庇いに走ったため大事には至らなかった。まだ目覚めないが、起こしたとしてももう問題は無いだろう。
格下相手と侮らず、役割を徹底し図った策はうまくいった。
全てを討つ事は出来なかったが、軍を形成されるほどのものではなく散り散りに追い払えた。
あれだけの数を相手に、重傷者も出さず達成できた依頼‥‥1つの成果であろう事に間違いはなく。
同じ空の下、影で暗躍するデビルらに負けぬよう向った同胞達の成果を祈り願い。
冒険者らの勝ち鬨の声に、インヒの琵琶の音が静けさ取り戻すであろう森に響いた‥‥。
災い招き闇色の兵たちは 敗れ退き
守れたモノの大きさに 勝利の笑みと声が 高く遠く響き渡った
パリの灯りはけして消えない