It’s So CooL!

■ショートシナリオ


担当:姜飛葉

対応レベル:2〜6lv

難易度:普通

成功報酬:5

参加人数:5人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月27日〜08月01日

リプレイ公開日:2005年08月06日

●オープニング

「お父様、わたくし‥‥もう、耐えられませんわ‥‥」
 ゆったりしたデザインの薄水色のドレスを纏った可憐な少女が、さめざめと泣き伏せていた。
 顔を伏せ嘆く様から表情は見えないものの、肩を流れ落ちる髪は、陽光を紡いだかの如き輝きの白金。
 水色のドレスが映える、雪のような白い肌。
 おそらく、名匠の手により作られた人形のような可憐な少女なのだろうと思われる彼女は、ただ只管に肩を震わせ、涙を零す。
 膝の上で握られた、ほっそりとした苦労を知らぬ手指だけが、握り締める力の余り、血の気を失い青ざめていた。
「愛しい我が娘よ、何があったのかね? 父には言えぬ事なのか?」
 なぜ娘が嘆き悲しむのか理由が分からず、その姿に父はただうろたえるばかりである。
 おろおろと、機嫌を伺うように訊ねかける。
 父の問いかけに、娘は小さく首を横に振ると、嘆く理由を語ったのである。
「お父様‥‥わたくしには、もうこの暑さを耐え忍ぶことはできません」
 娘が今いる離れは厚い石造りの建物で、熱された外気を遮り、室内を涼しく保ってくれている。
 外にいるよりも、そこらの室内よりも、余程快適なハズであるこの離れの中ですら耐えられないというのか。
「そうか、そうだったのか。至らぬ父ですまない、娘よ‥‥」
 娘の悩みに気づかなかった父は、頭上を仰ぎ、額を押さえた。
 ‥‥風が吹けばくず折れてしまいそうな娘には、この夏の暑さは耐えがたいものなのかもしれない。
「雪解け水が凝った露氷の菓子でもよいし、清らかで冷たい泉水を用い、屋敷に泉を作っても良いぞ? それでは足らんか?」
「お父様、氷菓子も冷水浴も‥‥もうたくさんですわ。わたくし、ふやけてしまいます」
「そうだ、新しいドレスを仕立ててもよいぞ? 気晴らしに珍しい芸をするものを呼ぼうか?」
「この暑さでは、せっかくお父様に頂いた流行のドレスを着て出かける気分ではございません。芸を見るにも、だらしない格好では皆の前に出られませんわ‥‥」
 娘のためならば、どんな労苦も問わないとばかりに語る父に、娘はただ首を横に振るばかり。
 愛しい娘の嘆き悲しむ姿に、やがて父は決心し、喧伝する。


 ―――求む、娘の望みを叶えてくれるもの。礼は惜しまず、高額の報奨金を与えよう―――

●今回の参加者

 ea2004 クリス・ラインハルト(28歳・♀・バード・人間・ロシア王国)
 ea4324 ドロテー・ペロー(44歳・♀・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea9103 紅 流(39歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea9855 ヒサメ・アルナイル(17歳・♂・神聖騎士・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)
 eb1460 エーディット・ブラウン(28歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)

●リプレイ本文

●訪れ
「娘や‥‥お前のために、涼を授けてくれる冒険者達殿がいらしてくださったぞ」
「まあ、皆様女性の方ばかりですのね」
 涼を求める深窓のお嬢様の求めを叶えるべく、屋敷を訪れた冒険者らを依頼人の親子は歓待をもって出迎えた。
 冒険者らを前に、娘は優雅な一礼をとる。
「クローディアと申します。どうぞわたくしに冒険者様のお知恵をお貸し下さいませね」
 冒険者の中に年の近いクリス・ラインハルト(ea2004)とヒサメ・アルナイル(ea9855)の姿を見つけ、少しだけ驚く。
「まあ、わたくしとそうお年も変わらないご様子ですのに‥‥冒険者というお仕事は大変でしょう。どうぞ宜しくお願い致しますわ」
 同じ年頃と思われるヒサメの手を取り、微笑みかける。
「俺‥‥いえ、お嬢様にそう言って頂けて‥‥お力になれるよう頑張ります」
 口篭もりつつ、か細い声で答えた。幾分声の低い少女かもしれない。
 笑いを堪えるのが大変だった――というのは、一部の話である。
 エーディット・ブラウン(eb1460)などは赤らむ頬をそっと両手で抑え、クローディア達から目をそらしている。
「‥‥何か?」
「いいえ、何も。その衣装、中々良くお似合いよ」
 憮然とした表情、細い声音でヒサメが年上の仲間達に訊ねる。
 綺麗に梳られた銀の髪を耳の上辺りで可愛らしくリボンで束ね、幾分ゆったりした落ち着いたデザインの衣装を着ていた。
 そんな彼女(‥‥)に対し意味深に笑う紅 流(ea9103)に、クローディアは冒険者らを不思議そうに見比べるのだった。


●細々とした知恵
「まず最初は私ね。とはいっても、直接涼を求める方法ではないのだけれど」
 流の言葉に、クローディアは小首を傾げる。
 そんな彼女の前に、執事が平箱を捧げ持って来る。
 平箱に収められていたのは――扇子。
 地紙に使われているのは涼やかな手触りの絹という贅沢な扇子。それよりもクローディアの目を惹いたのは、その扇子に用いられていた布面にあった見覚えのある図柄だった。
 しげしげと眺め見つめるクローディアに、流は扇子の末を持ち、顔を差し出す。
「お嬢さんの為に作ったんだもの。どうぞ広げてみて?」
 逡巡はほんの僅か。好奇心の方が勝ったのだろう、クローディアは勧められた扇子を受け取り、そっと開く。
「まあ‥‥」
 クローディアに見覚えがあったのも道理。
 不要となった彼女の衣装から、新たに涼を身近に運ぶ扇子を作ったのだ。
 家事に優れた流の手に掛かれば、不要となった衣服も新たな道具として生まれ変わる。
 細かな骨の細工や地紙の工夫。繊細でうつくしい扇子だった。
「要らなくなった服を‥‥というお話でしたけれども、こういう使い方をされたんですね。お気に入りだったんですけれど、幼い頃の衣装は流石にもう着られませんもの‥‥素敵な使い方ですわ」
 ふわり、流の扇子で扇ぎ。身近で意外な涼に、広げた扇子を手に嬉しそうにクローディアは微笑んだ。


「次は、俺‥‥いえ、私の涼を得るお薦めの方法を」
 口篭もるのは緊張しているのだろうか?
 クローディアの疑問は、口に上らず。彼女は説明を遮る事はせず、ヒサメの言葉に耳を傾けた。
「私の祖母の受け売りですが、涼を得るには風通しや五感に訴える事が重要です。外気を嫌い風の通りを塞いでませんか?」
 窓を見れば、外からの熱気を嫌い閉ざされた重く厚い窓辺。
「五感に訴えるといわれますが‥‥外の風は、夜でもなければ熱っぽい嫌な風しか入ってきませんもの」
「お部屋へは風を。空気に流れが出来る事で大分変わりますよ。それと、窓際にはこれです」
 眉を顰めるクローディアに構わず、ヒサメは重い窓を一息に押し開き、エーディットが手にしていた鈴飾りをヒサメに手渡す。
「定番ですよね〜」
 手渡された幾つもの鈴を束ね連ねた、鈴飾りをヒサメは窓枠に吊るし掛けた。
 ヒサメの手を離れた鈴飾りは、風が抜ける度に軽やかな音色を響かせる。
「音を聞いていると、何だか涼しくなった気がしませんか〜?」
 エーディットの勧めに倣い、石壁に囲まれた部屋の中に響く鈴の音に、クローディアは耳を澄ましてみる。
「‥‥ええと、そうですわね‥‥そんな気も、する‥‥かもしれませんわ」
 勧められる言葉を無碍に出来無いだけともとれる返事。
 これはだめだったでしょうか〜‥‥という内心の苦心は、表に出さず。
 エーディットは、窓辺に素焼きの瓶を並べ飾るヒサメを見た。
「仕組みは単純なんですが、効果の説明が難しいんですよね‥‥こうしておくと、水が冷えるそーな‥‥だそうです。ミント等の香草も入れておくと、冷たい水気と香を含んだ風を感じる事が出来ますよ」
 ただの素焼きの瓶を窓辺に置くという意外さから、そも、クローディアには珍しく興味を引いたらしい。
 こくこくと頷きながら、ヒサメの説明を聞いている。
 熱心に聞いている様子に、ヒサメも祖母譲りの知識を、熱く語りだす。
「又その冷えた水で首の後や膝の裏等を濡布で冷やしてみ? 全然違うハズだぜ‥‥ですから」
 勢いの余りうっかり出てしまう地に、こほんと咳払い1つ、言い直してみたりするのはご愛嬌。 
 他にも使用人に指示し、『贅沢なものであれば涼しいわけではない』と絹の布張りから、麻など部屋の内装についても涼を求めやすいものへ変えていく。
「‥‥これで、涼しくなりますの?」
 ヒサメの勧める知恵は、即効性の涼を求めるものではない。
 効果の程はじき‥‥にこやかに語るヒサメに、クローディアは黙って頷いた。


「さて、それじゃ私の番ね」
 ドロテー・ペロー(ea4324)がクローディアの部屋へ持ち込んだのは1枚の絵画だった。
「私もヒサメに近いのだけれど、私の場合は五感の中でも視覚‥‥目で見て涼んでみるのも良いと思って」
 そう言ってドロテーが石壁に飾ったのは、湖面を吹く爽やかな風が今にも漂ってきそうな、森の奥深くにある湖の絵だった。
「この絵は、なんと言う方の作品なのでしょう?」
「恥ずかしながら私の作よ。お嬢様の涼を求める依頼に合わせて描いたの」
 クローディアの問いに、にっこり微笑み語るドロテー。
「まあ‥‥」
 単なる涼しさを誘う絵ではなく、それが自分のために描かれたものとなればまた心に届く物も違うのだろう。
 瞳を輝かせるクローディアを見て、ドロテーの笑みが深まる。
「涼を求めるための絵にこの湖の選んだのは、目で見て涼む他に理由があるのよ」
「理由‥‥ですか?」
 小首を傾げるクローディア。
 説明を聞いている事を確認し、ドロテーは一呼吸おいて『絵に描かれた湖』にまつわる話を語りだした。
 それは、許されぬ恋に落ちた恋人達の悲しい物語だった。
 話の中の二人は、幾ら恋焦がれ求め合おうとも、この世では幸せを望む事など出来ず。
 結局――今世の先を選び取ったのだ。
「許されぬ恋に落ちた恋人同士が、共に身を投げた湖がこの絵の湖ってわけ」
「‥‥悲しい湖ですのね」
 聞きやすい語り口のドロテーの話に、すっかりクローディアはしんみりとしてしまった。
「そうね、悲しい話かもしれないわね。でも、この話には続きがあってね」
 クローディアは、言葉の先を求めるようにドロテーを見上げた。
「二人が身を投げて以降この湖では、耳を澄ますと時折どこからともなく女性のすすり泣く声や、人の飛び込むような水音が聞こえてくる事が‥‥」
 あるのですって‥‥と、絶妙な間をとりドロテーは語った。
 しん‥‥と静寂に包まれる室内。
 微笑むのはドロテーばかり。
 クローディアは、そんな彼女の予想以上に凍り付いていた。


●納涼
「涼しくなるっていったらやっぱりアレよねぇ。ふふふ♪」
「あの‥‥お話の他に何か‥‥?」
 恐る恐るドロテーに訊ねると、庭の散策という答えが返ってくる。
「もう日暮れ時。大分薄暗くなってきましたけれど、昼の暑さが引いていく涼しい夏の散策に良い時間なんです」
 いわゆる『夕涼み』の提案に、食事前に少しの時間なら良いだろうと庭園へ出る事になった彼ら。
 庭園とは言っても、広い貴族屋敷の庭。
 小さな森ともいえる木々が、涼しげな木陰を作る方へと散策に向かう。
 生い茂る木に遮られ夕闇が一層深まる庭。けれど鈴の音にも似た虫の音が響き、爽やかに木立を吹き抜ける風が通る。
「本当に、この時間の外はとても気持ちが良いのですね」
 絹の扇子を手に、ドロテーの後ろを歩きながらクローディアは木立を見上げ呟いた。
 さやさやと葉擦れの音と虫の音の響く中‥‥ふと、重たげな音が響く。
「この水音は‥‥誰かが飛び込んだような音じゃない!?」
「庭に確かに泉はございますけれど、それはこの森の中ではありませんわ。気のせいでしょう?」
 よくよく耳を澄ませば、木々のざわめきにもすすりなく女性の声が微かに混じっているようで。
 目に見えて怯えるお嬢様の様子に、夕涼みもそこそこに彼らは屋敷の方へ戻り始めた。

 その頃。
「‥‥こんな感じでしょうか〜」
 木陰にこっそりと潜み様子を伺っていたエーディット。
「そうだね、タイミング良かったかも?」
 頷くクリスも同様にピーピング(ぇ)。
 重い水音の正体は、エーディットの作り出したウォーターボムが地に落ち弾けた音。
 すすり泣く女の声は、クリスの声音が作り出したものだった。


●熱々作戦☆
「さて、次はボク達のオススメ♪」
 クリスは満面の笑顔で、クローディアを出迎えた。
 そこは食事を取るための部屋。
 なんだか部屋から熱気が溢れている上、その熱気でドアノブが歪んで見える気がする。
 クローディアは嫌な予感を感じつつ、クリスが開け放った扉の向こうは予感に違わず、南国も比ではない空間になっていた。
 食堂の暖炉には、夏という季節にも関わらず赤々と火が熾り。
 同じく冬に暖をとるための炭桶までが幾つも置いてあった。
「‥‥あの、これは‥‥」
「まあまあ、どうぞですよ〜」
 問いかける間もなく、着せ掛けられた物を見て更に驚くクローディア。
 エーディットが肩へ羽織らせたのは、暖かい毛皮のコートだったからだ。
 促されるままに席につくも、何もしなくとも汗が浮かぶ。
 クローディア同様冬支度を整えたクリスやエーディット、流、ドロテーが一緒に卓につき。
 やがて、運ばれてきたのは数々の『温かい料理』だった。
 熱々のスープに前菜、メインの肉や魚もいうわずもがな、サラダまでが温野菜という暖かな物のみのメニュー。
 贅沢にもふんだんに使用された香辛料や香草の類が、美味しそうな香りを漂わせる。
「あっつい食べ物を食べて、体をぽかぽかにして貰うですよ〜。我慢すればする程、後が天国なのです〜♪」
「名付けて『熱々ディナー作戦』だね☆」
「‥‥‥‥」
 にこやかな笑顔を浮かべ説明するエーディットらに対し、クローディアの方は熱で上気する頬とは逆に表情は暗い。
 流石、このような依頼を出せる貴族様。
 お抱え料理人の作る素材を活かした料理の数々は、クリスの予想に違わず大変美味しかった。
 こんな状況でなければ、きっともっと美味しかった事だろう。
「この魚の煮込み、美味しいですね〜」
「揚げ物の餡かけも美味しいよ?」
 クリスらの感想にも、返答は無く。
「はふはふ、こ、これも涼しくなるための手段なのよ!」
「‥‥‥‥」
 赤いのか青いのかわからない顔色に、料理をご相伴する流が訴えようとも返答は無かった。
 駄目押しとも言える暑さに参ったのか途中でクローディアの食事の手が止まる。
 頃合だろうか、とエーディットらは視線を交し。
「それじゃ、仕上げにいきますか♪」


「ああ、なんて爽快なんでしょう!」
 流の感想は、そのままクローディアの感想と同じ。
 内から火照った体を冷水で鎮める。ただ、暑さから逃れるための冷水浴よりも効果は歴然だった。
「これはいいわね、さっき迄はとても大変だったけれど、その分とても涼しいわ」
 ドロテー自身も、冷水浴を楽しみ、その間、エーディットがちらとクリスとクローディアを見遣り「まだまだですね〜」等と呟いていたのは、幸いにも彼女らの耳には、届いていない。
「我慢した分、気持ち良いと思いませんか?」
 クリスの問い掛けに、頷くクローディア。
 そんな二人にエーディットが声をかけた。
「仕上げにちょっぴりです〜」
 驚かないように注意を促したエーディットの詠唱で、ふわり浴場に水球が現れ浮かぶ。
 驚き見上げるクローディアの前で水球が床に落ち弾け。雫が跳ね、周りにいた彼女らに優しく降り注いだ。 


「とても涼しくなりましたわ。ヒサメさんは、ご一緒いたしませんの?」
「いえ、私は‥‥」
 先ほどから一人行動離れるヒサメに、クローディアは声を掛けた。
 冷水浴もしていない。
 誘うクローディアの言葉をヒサメは断っていたのだが、よかれと思うあまりか過ぎる誘いについ声が荒ぐ。
「だからっ!」
 少年の域を出るか出ないか微妙な声域。
 けれど、己を引き剥がす腕の力強さに、ようやく気付いたか呆けた様にヒサメを見上げる。
「‥‥男の方‥‥ですの?」
 つい出てしまった地に舌打一つ、額を抑えるヒサメ。
 得られた涼しさ以上にクローディアは驚き、そんなヒサメの白皙の美貌を見あげるのだった。


●涼を呼ぶ知恵とは
「びっくり大会でしたら1番でしたわね」
 微苦笑を浮かべるヒサメに対し、涼を得るため窓辺に下げられた鈴のように涼しげで軽やかな笑い声を零すクローディア。
 クリスらと共に冷水浴を楽しんだとはいえ、体の内から温められ血行の良くなった身は火照り。
 けれど、それゆえ部屋を抜ける夜の風が、心地よかった。
「皆様のお陰で涼を得るのは、とても大変だという事は判りましたわ。我慢‥‥というものが必要な事も」
 礼を述べつつもその顔には、正直な苦笑が浮かぶ。
 単に求めるだけより、余程効果があったという事の積み重ねに対しての苦笑なのだろう。
「皆様それぞれのお知恵は、流石に冒険者様の知識の深さですわね」
 誰が1番というわけではなく、それぞれの方法で涼をもたらしてくれた全員に感謝の意味合いで報酬を支払う事をクローディアは約束した。
「楽しんで涼んでもらえたらそれがボク達にも1番かな♪ きっと今夜はぐっすり休めますよ☆」
 元より競うのではなく、協力し合う姿勢ですすんだクリスの言葉に皆頷き。
 結果、依頼主が示した『感謝』の形が何よりの依頼の成功なのである。


 笑み交す冒険者ら。その中で掛けられた小さな問い掛け。
「‥‥あの、絵のお話はご冗談‥‥なんですよね?」
 おずおずと訊ねられた言葉に、ドロテーは一瞬瞳を見開き‥‥やがて、笑いを堪えるように口元を手で覆う。
「絵そのものは素敵ですけれども、本当でしたら飾っておけませんもの。ドロテー様? 如何なんでしょう?」
「涼は、十分味わってもらえたようね」
 涼を呼ぶ湖畔が描かれた絵画は、今もクローディアの私室に飾ってある事だろう。