【収穫祭】炎の祭り―再生への願い

■ショートシナリオ


担当:姜飛葉

対応レベル:フリーlv

難易度:易しい

成功報酬:0 G 62 C

参加人数:8人

サポート参加人数:4人

冒険期間:10月19日〜10月26日

リプレイ公開日:2006年10月27日

●オープニング

●お誘いはいつも唐突に‥‥
「ねぇねぇ、火の番してみない?」
「‥‥‥‥‥‥は?」
 何のためにするのか、どのような経緯があるのか。
 必要な言葉すら省かれたシェラ・ウパーラ(ez1079)の説明は要領を得ないものだった。
 唐突に声を掛けられた冒険者の一人は、その言葉の意味を図りかね、怪訝そうな表情を浮かべる。
 そんな彼らの様子を気にする事も無く、同じ冒険者である彼女は、にこにこと話し始めた。
「ノルマンは収穫祭の季節だよね? 何かね、そんなにおっきな町じゃないんだけど、やっぱりこの季節は町の皆で収穫祭をしている町があるんだって」
「‥‥そりゃあ、この時期は大抵の町や村でやってるけどな」
 ぽそりと呟かれた言葉はツッコミのようだったけれど、シェラは「そうなんだよね〜」と大きく頷く。
 1年の実りを感謝する祭りである収穫祭は、ノルマン王国の民にとって大切な季節の催しの一つ。
 あちらこちらの町や村で、それぞれに感謝を捧げる収穫を祝う祭りが催されている。
「えーとね、そこの町ではね、町の広場にお祭りの間中、ずーーーーーーーーっと火を燃やしてるんだって。何でかって言うと‥‥」
 シェラが楽しそうに話す内容によれば、1年の実りを与えてくれた収穫後の畑は、とても疲れているのだという。
 けれど、そんな疲れ切ってしまった畑も、炎で土を焼き清めれば、また翌年も新たな実りを約束してくれる。
 炎は実りと繋がりを持つ大切な意味を持つもの。
 だからこそ、収穫を祝う祭りで感謝し炎を燃やし続けるのだ。
「収穫祭では、広場の中心でずっとずーっと火を燃やし続けるの。だからね、逆に火が消えてしまったらダメなんだって。大切な火が消えないように番をするお仕事なの」
 また、なぜそういった依頼がギルドへ持ち込まれたかといえば、昨年の収穫祭で広場の火に対し無体な真似をした酔漢が居たらしい。
「楽しい気持ちで過ごしていたお祭り気分がしぼんじゃうと、寂しいし悲しいよね。依頼としてはあんまりお金にならないけど、でも、順番こで番をすれば、お祭りも楽しめてお仕事も出来るから便利だよね!」
 よくよくその町の収穫祭の話を聞いてみれば、近隣の住民のみならず、旅人も多く訪れ、にぎやかな食べ物を供する店も数多く立つそこそこに大きな祭りという事だった。
 広場の中心に燃える大きな火を囲み過ごす祭り、行ってみても楽しいのかもしれない。

●今回の参加者

 ea1674 ミカエル・テルセーロ(26歳・♂・ウィザード・パラ・イギリス王国)
 ea3785 ゴールド・ストーム(23歳・♂・レンジャー・エルフ・ノルマン王国)
 ea7489 ハルワタート・マルファス(25歳・♂・ウィザード・エルフ・ビザンチン帝国)
 ea7780 ガイアス・タンベル(36歳・♂・ナイト・パラ・イスパニア王国)
 ea9343 ウェルリック・アレクセイ(37歳・♂・クレリック・エルフ・ロシア王国)
 eb1460 エーディット・ブラウン(28歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 eb2762 クロード・レイ(30歳・♂・レンジャー・ハーフエルフ・イスパニア王国)
 eb5528 パトゥーシャ・ジルフィアード(33歳・♀・レンジャー・人間・ノルマン王国)

●サポート参加者

アリアドル・レイ(ea4943)/ リスター・ストーム(ea6536)/ レオパルド・ブリツィ(ea7890)/ フィリッパ・オーギュスト(eb1004

●リプレイ本文

●1日目―愛宕火
 この街の収穫祭は、広場に大きく燃える炎が主役。
 当然食べ物を供する露店や祭りに訪れる人々を目当てに商いに励む商人達は、炎が有る広場を囲むように店の軒を並べている。
 そして、祭りに浮かれ騒ぐ人々の気持ちを更に愉しげに盛り上げる芸を商う者達も、炎を囲むようにそれぞれの技を披露目ていた。
「お、きたな。ガイアス」
「大盛況ですね」
 人々の隙間を縫い顔を見せたのはガイアス・タンベル(ea7780)。その肩には緑色の蝶の羽根を休めるようにシェラ・ウパーラ(ez1079)がとまっていた。
 声を掛けられたリスターは‥‥といえば、色とりどり複数の玉を同時に幾つも投げ取り、あるいはその合間に更に一芸を挟むなど、見目にも楽しい大道ならぬ広場で演ずる演芸を披露していた。勿論その芸を見ていた2人の顔も周囲の人々と同じく素直な感嘆と賞賛の色に染まっている。
「彼女でも誘って見に来いや」などとリスターにからかい混じりに招かれたガイアスは、兎にも角にも折角久しぶりに一緒の依頼なのだし‥‥と、シェラを誘って収穫祭の散策に出たのだけれど、翠瞳をきらと輝かせ心底感激した様子で大道芸を眺めていたシェラの様子に誘って良かったと思い、またリスターの気遣いにも感謝する。
 そうしてのんびり祭りを巡れば、年に一度だけの祭りとなれば、賑わいも心浮き立ち加減も違うのだろう。実りの良かった家のお内儀などは夫に労いを求め、または長く刈入で忙しく逢瀬を叶えられなかった恋人達が求める心を汲み狙うように装飾を商う店も、食べ物を配る露天に混ざり少なくない。
 そんな人々に混じり、買い求めた焼き栗を嬉々と頬張りながら店先を覗くシェラの様子にふとガイアスは訊ねかけた。
「シェラさん、お祭りの案内のお礼にアクセサリとか欲しいのないですか? 買いますよ」
 シェラは、彼の問いと申し出に小さく首を傾けた。
「いえシェラさんといると楽しいので! そのお礼ていうか記念ていうか‥‥」
 要領を得ないシェラの様子に一瞬に血の気が顔に上り、慌てて手と首を横に振るガイアスはどこか混乱した様子。
 でもようやく彼の言葉を理解したのだろう、やがてシェラはにっこりと笑みを返した。
「それじゃシェラもガイアスちゃんにしないとだめだね、たくさんたくさんありがとーがあるから。お祭り一緒に来てもらったし、他にもいっぱい♪」
 左右に振られていたガイアスの手指を取り、シェラは「お礼お礼〜♪」と店先に並ぶ品を本気で物色し始めるのだった。

「お祭り‥‥ですか? まぁ珍しい」
 穏やかな口調で驚きを口にしたアリアドル。収穫祭はこの季節のノルマンの風物詩。彼が驚いた理由は祭りが珍しいという意味ではない。
 愛想の無い甥っ子のクロード・レイ(eb2762)が珍しく社交的な(?)場に、依頼とはいえ赴く事に驚いての事である。
 祭りが始まって早々、見張りの担当となったクロードを手伝い彼も炎の傍らに在る。
(「これでもうちょっと、明るくなってくれればいいんですけどね」)等という心中は声には出さず。
 当のクロードはといえば、これから番をする事になる賑やかな様子を見せる祭りの広場の傍らで、念のために『当たると痛いが怪我はしない武器』を用意するため、石にボロ布を巻いていた。
 見張りがてら布を巻くクロードがいれば、フィリッパはこの後数日をかけ番をするための用意を整えるゴールド・ストーム(ea3785)を手伝う。
 祭りの喧騒は初日だからこそなのか。これから7日間も続くのにこの勢いでもつのだろうか‥‥と、フィリッパは思う。
 彼女は1日だけだけれど、ゴールドはこれから7日間火の側。
 騒ぎに負ける事無く仮眠場所を確保する彼の負担を少しでも軽くするために、彼女は収穫祭に浮かれる街へと向う。
 また、ウェルリック・アレクセイ(ea9343)に力を貸すべく、レオパルドも1日だけだけれど‥‥と、恵みをもたらす炎と、恵みを与えてくれた畑に感謝し火の番の手伝いを申し出ていた。
 人々にその熱を惜しみなく与える赤々と燃える炎を見上げ、エーディット・ブラウン(eb1460)が提案した願掛けを試みた。
 炎に影響与える物を投げ入れるのは許されないが、エーディットは炎を絶やさないための薪へ書き付け願いを投じる事を提案していたのだ。
 彼がこの祭りに参加するのは1日目だけだから、願い事は秘め、願掛けは皆より一足先に。
 投じた薪が炎に包まれ、炎を助け共に燃え上がるのを彼は見守っていた。


●2日目―鹿火屋
「‥‥‥‥‥‥何でソレなんだ?」
 薪が爆ぜる音を聞きながらの番、街人の騒ぎ浮かれる声に消される事なく届いたゴールドの疑問は、傍らに在る女性へ向けてのものだった。
「祭りは馬鹿やったモン勝ちだから?」
 返答も疑問系。返る声がなんだか女性にしては低い。
 何よりも見慣れぬ豪奢な衣装は人目を惹く。先ほどから祭りに訪れた人々の注視を浴びている気がするのは気のせいではないだろう。
「ジャパンには月にお姫様がいるらしいぜ」
 そのお姫様とやらの格好なのだろうか。ジャパンに滞在していた事もあるが、ゴールドはその衣装を見たことが無かった。
 がさりと炎を助ける薪の囲みが崩れる音が響く。幾人かが炎の側で歓声にも驚きにも似た声を出した。
 対応しようと咄嗟に立ち上がりかけたジャパンの姫君は、けれど「重い‥‥」と呻いて起き上がれずに固まる。
 呻きを耳に、小さく頬を掻くと火の傍らへとゴールドが向うのだった。


●3日目―竜燈
「‥‥陽が落ちても、こうして賑やかだと明るくていいな」
「そうですね」と頷きを返し、ミカエル・テルセーロ(ea1674)はクロードと一緒に収穫祭を散策していた。
 火の番を分担し空いた時間で散策する事を約していた事を忘れず、クロードはちゃんとミカエルを誘い祭りに繰り出した。
 街を徒に騒がせる積りも無かったクロードは、耳が押さえつけられる感覚が苦手なもののバンダナを巻きその耳を隠している。
 いつものフードでは無いのは連れ立ち歩くミカエルに配慮しての事だ。
 喧騒の熱に浮かされる事は無いものの、それでも雑多に賑わう祭りの市は覗くだけでも楽しい。
 折角の機会なのだから、故郷では珍しい食べ物や焼き菓子のような甘味、今年の新酒‥‥と、好きなものを探し歩くのだから尚更である。
 袖を引かれ、足を止めたクロードが振り返るとミカエルと目が合った。
 背の高いクロードとパラであるミカエルは、大人と子ども程も歩幅が違う。
 賑やかな人混みではぐれないよう気をつけていたものの、つい服の裾を掴んでしまったようだ。
「あ‥‥、ついとっさに。ごめんなさい」
 慌てて袖を離し、顔を真っ赤にしつつ謝罪する様子に夜の空と同じ色の瞳を眇め、少し考えクロードは手を差し出した。
「‥‥はぐれんようにな」
「ありがとうございます」
 ほんわり笑みを浮かべ、差し出された手をとってミカエルは再び歩き始めた。
 素敵な気持ちを抱え、もっと素敵なものが見つかればいいと思いながら。


●4日目―秋麗
「お帰りなさい」とウェルリックの声に、散策に出ていたクロードとミカエルは迎えられた。
 彼らの手には、流行の菓子と新酒の酒瓶が握られている。クロードの手にあったのは、彼がこの祭りの中で見つけた気に入りの店のものだと仲間達は一目でわかった。
 交代制での見張りをしていたものの、気がつけば炎の周りに集っており。迎える声が暖かで、ミカエルはつい笑みを零す。
「ただいま戻りました。何か変わりはありませんでしたか?」
「おう、ちょっと酔っ払いが暴れてたけど、後は何にもないぜ」
 ぞんざいな言葉は元々のもの――格好に相応しい口調にならないのはどうなのだろう?
 ジャパンの伝統姫装束を着込んだハルワタート・マルファス(ea7489)はちらと振り返り迎え答え、再び前に向き直った。
 動けないのならば動かなくても良いようにするのみとばかりに、新酒を樽で仕入れたハルワタートは、その樽をテーブル代わりにパトゥーシャ・ジルフィアード(eb5528)やゴールドばかりか、街人まで巻き込みカードに興じている。
 初日に浮かれた酔漢達がいたものの、そこでしっかり存在をアピールしておいた事が良かったのだろう。
 冒険者の目があって、確かに無体な真似をする素人はそうそう現れなかった。
 簡単な食事を買い出して来たミカエルは、差し入れにウェルリックに預けると、子供達が集まり騒ぐ様子に小さく微笑んだ。
 静かに耳を傾ければ、喧騒にまぎれ祭りを賑わす音楽も聞こえてくる。
 小さく精霊に感謝し、ミカエルが唱えた呪に従い、炎は小さく幾つもその身を分ける。
 炎から生まれた炎の蝶が、ひらりひらりと広場を舞い飛ぶ光景に、子供たちから感嘆の声があがった。
 いつしか広場に満ちた拍手は洪水のよう。蝶を炎へ還したミカエルは拍手に応える様にぺこりと頭を下げた。
「綺麗でしたよ〜」
「素敵だったね」
「火の輪舞、修行中よくやったんですよ‥‥」
 カードを手繰る手を止め。賞賛のために共に手を叩き贈っていたエーディットとパトゥーシャに、彼ははにかむような笑みを浮かべるのだった。


●5日目―秋耕
 祭りの騒ぎもこうも長ければ一段落つくのだろう、初日と比べれば落ち着いた広場の様子も手伝ってか、あるいは日頃の生活の賜物か――ゴールドは、見張りの交代に備え丸めた毛布を枕代わりに頭に敷きころりと転がり仮眠を取っていた。
 それでも静かとは言いがたい祭りの中、良く眠れるものだと思う。
 その傍らでは、主人の命に待機するセッターのヒルダが伏せており。更にそのヒルダに寄り添う形でシェラがとろとろとまどろんでいた。
 平穏だからこその光景に、ガイアスは小さく笑み零した。
 灰をかき炎の糧を火に投じていたウェルリックもその笑みに気づき、釣られるように微笑む。
「古来、神の世から火は破壊の象徴でもあるとともに再生を司る象徴として有名ですね。特に有名な物では『火の鳥』‥‥炎に住む不死の鳥の話でしょうか。己が身を炎で焼き尽くし、その灰の中から再び羽ばたくと言いますからね。この火祭りの謂れと、どことなく通じる物がありますね」
「ジャパンにも、ヤキハタってのがありましたがそれと似てます。付き合い方、使い方さえ間違えなければ、彼ら‥‥火の精は恵みを与えてくれる。それをよく知って下さってるんですね」
 ミカエルの言葉に頷き、彼と共に番に立つガイアスに、ウェルリックは沸かした湯で入れた茶を満たした湯杯を差し出した。
 礼の言葉と共に湯杯を受け取ったガイアスは呟き炎へと目を移す。
「植物の成長に灰とか良いらしいですしね。それに夜昼なくずっと燃える火の回りでお祭りって何だかロマンチックです」
 ミカエルが同意し微笑む言葉を聞きながら、ウェルリックは祈りの言葉を零した。
 冷え込み増すこの季節、燃える炎は暖かく。温もりの中、唱えられる祈りの言葉――今年の地の恵みを感謝するとともに、次の年にも恵みを賜らんことを願う聖父への祈りを。


●6日目―燈火親しむ
――人混みは苦手だけど、行けるトコまで行ってみよう
 そう思い立ち、散策に赴いたパトゥーシャ。
 祭りの賑わいが落ち着きを見せた頃合だったから、心配していたよりも人込みに巻かれず巡る事が出来た。
 交代で番をする間、随分と差し入れをもらったから、お返しを買っていかなければ‥‥と覗く店先に並ぶ菓子は多種に渡り、見ているだけでも十分に楽しい。
 買い求めた甘菓子の店主によれば、収穫祭の最後の日になれば、また人々が集まり大きく賑わうらしい。
 幸いな事に、危惧していた天候の崩れは無かった。
 天を仰げば、目に入るのはどこまでも澄んだ高い空。
 この分ならば、空の機嫌を損ねる事無く祭りを終えることができるだろう。
「あ、美味しい」
 一口齧った焼き菓子は、小ぶりの食べやすい大きさで手軽さが売りの祭りならではの携行食らしい。
 無愛想な面持ちながら甘いものを好むクロードに勧めてみようと思いながら、パトゥーシャは残りも少なくなってきた祭りを歩き楽しむ。
 もう一度程、火の番がまわってくるだろう。一緒に番をするエーディットにも差し入れしよう。
 美味しいお菓子は嬉しいもの。美味しい食事は幸せなもの。
 数日共に火を囲む仲間に何を買い求めよう‥‥そんな悩みは幸せな悩みなのかもしれない。


●7日目―豐年
 炎を見守り続けて七日と七晩。炎に感謝するこの街の収穫祭も今夜で最後である。
 見守っていた炎は、今なお天を焦がす勢いで広場の中央で燃えている。
 交代を定めておいたものの、結局は炎の側で共に時間を過ごす事が多かった彼らのように、炎に惹かれ人々が集まっていた。

 いつのまにか目も覚めるほど鮮やかな青のドレスにお色直しを果たしたハルワタートの姿を、エーディットはうっとり満足げに見つめる。
 図らずも、収穫祭なのだから‥‥と、パトゥーシャなりにしたお洒落とお揃いの色である。
 魅惑の肢体を表現すべく、エーディット指導により詰め物もばっちりなハルの扮装はパトゥーシャの目に叶ったのだろうか?
 フレイアから届いた手紙の返事は、エーディットにとって残念なものだったけれど、今年の収穫祭も共に過ごす仲間との時間は穏やかで楽しかった。
 共に番をする時間に交わした会話も、気持ちも全部。
 エーディットは、『家内安全』と『世界平和』と薪に書き付け、炎に願いを託した。
 それを真似、あるいは提案に乗りパトゥーシャやシェラ、ハルも願いを書き綴り、炎へと投じる。
 願いを飲み込み空へ届けるように明々と燃える炎を見つめ、エーディットは少し考えてもう1つ願いを書いた薪をくべた。
『ハルワタートさんやヒサメさん達と、いつまでも一緒にいられますように』と書いて。エーディットがずっと一緒に居たい人達の名前。

 やがて明けの空が白み始める頃、炎の周りに集う人々の姿が増え始めた。
 7日7晩燃え続けた炎は祭りが終わる頃に静かに燃えきり消えてしまうけれど‥‥炎はその身を分け、町のあちこちに灯る。町の人達が、分け各々持ち帰るのだ。
 その姿を皆に誇るように最後に明々と燃える炎。来年の実りが豊かであれば再び会えるその姿。けれど、今年の炎は今だけのもの。
「おまえらみんな大好きだぜ〜vv」
 祝い酒に酔い、惜しみなく祝いの口付けを贈るハルの襲来を逃れ、あるいは退ける男性陣の声が響く。
 エーディットとシェラの楽しげな笑い声を聞きながら、パトゥーシャは小さく微笑んだ。
 人混みや賑やかな所は苦手だけれど、たまにはこうして過ごすのも良いのかもしれない。
――ありがとう
 7日間傍らにあったの炎に彼女は小さくそう告げる。
 再生の祈りがこめられた火は、町の人々と彼らの願いを天へ届けるかのようにその身を大きく揺らめかせ、祭り終えるその時まで燃え続けるのだった。