【開港祭】 踊−船上で仮装パーティを

■ショートシナリオ


担当:姜飛葉

対応レベル:フリーlv

難易度:易しい

成功報酬:4

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月03日〜11月08日

リプレイ公開日:2004年11月08日

●オープニング

 幾つもの明かりが灯され、港に停泊された船を彩る。
 海面も、港と船とに灯る光を返し、港町は賑やかな祭の夜を迎える。

 賑やかな楽の音に、楽しげな喧騒が響き。
 酒樽をひっくり返す勢いで振舞われる酒に、美味そうな料理の数々。

 もうすぐ宵闇、日の沈む頃。
 賑やかな旅芸人であろう姿が2つ。
「さあさ、皆様おいでませ、今宵は素敵な船上パーティ。船の上で飲んで踊って楽しんで♪」
 華やかな衣装の娘が、幾重も連ねた鈴の環輪を響かせ手を叩き、道行く冒険者達に声を掛ける。
「そうそう、今夜は折角の『開港祭』、是非ともとびっきりのご衣裳でご参加を!」
 道化が1人、大仰な仕草で礼をとる。
「とびっきり? 正装でなければお断り?」
 興味深げに足を止めた者が訊ねると、道化は大げさに首を横に振って見せた。
「いいえ、そんな滅相な。とびっきりの衣装は人によって違うのですよ。その人にとってのとびっきり。日頃からとびっきりの人だっているでしょう。例えば、折角だから…普段出来ない格好の『とびっきり』も素敵じゃないですかい?」
「折角のお祭は、めいっぱい楽しんだもの勝ちっ♪」
 お気が向いたら、船へどうぞお越しくださいと慰勲に礼をとる道化と娘に見送られ…。

「堅苦しいのは抜きにして楽しんでこその祭じゃございませんか?」
 親しい人達に声を掛け、たまには遊んでみるのもいいかもしれない。
 

●今回の参加者

 ea0493 ニコル・ヴァンネスト(25歳・♂・ファイター・エルフ・ノルマン王国)
 ea1509 フォリー・マクライアン(29歳・♀・レンジャー・人間・ノルマン王国)
 ea1656 インヒ・ムン(28歳・♀・バード・人間・ノルマン王国)
 ea5970 エリー・エル(44歳・♀・テンプルナイト・人間・神聖ローマ帝国)
 ea6065 逢莉笛 鈴那(32歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea6282 クレー・ブラト(33歳・♂・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 ea6392 ディノ・ストラーダ(27歳・♂・レンジャー・人間・神聖ローマ帝国)
 ea7504 ルーロ・ルロロ(63歳・♂・ウィザード・エルフ・ノルマン王国)

●リプレイ本文

●Let’s make up!

‥‥エチゴヤで買った礼服を、綺麗なドレスに仕立て上げ〜♪
‥‥気合をいれてお化粧しよう〜♪
‥‥立派なマントを羽織り〜♪
‥‥一夜の夢を見てみよう〜♪


●EasternDragonPrincess&Pirate
 フォリー・マクライアン(ea1509)は、期待に胸ふくらませながら彼女の騎士を待っていた。
 イギリスで知り合った友人を今日の船上仮装パーティに誘ったのだが、お互いどんな仮装をするかは報せていない。
 フォリーとしては、正統派のかっこいい騎士様だといいなぁ‥‥と願うのだが。エスコートをして欲しいとお願いはしてある。彼女はどきどきと高鳴る胸を抑えて待っていた。
 フォリー自身は、華国出身の友人から借りた華国の衣装に長い黒髪の鬘を被り、その頭に幻獣を模すようにやぎ角のヘアバンドを飾る、更に羽衣風にショールを羽織れば、東洋の龍姫もかくや? 憧れの華国に一歩近づけたかも!という渾身の仮装だ。
「踊れないけど、周囲の真似をしていればなんとかなるよね? ニコルさん、正統派騎士様みたいな仮装だったらいいなあ。西洋の王子様と東洋の姫みたいで‥‥うふふふえへへへ♪」
 と、そこにドリーム状態のフォリーに掛けられる声。
「‥‥ん、いたか。仮装だと知己でも見つけにくいな」
 それでもフォリーをきちんとみつけてくれたのは、仲の為せる技なのか、それともフォリーの雰囲気のお陰なのか。
「ニコルさん、待ってまし‥‥!?」
 憧れの騎士様ご到着、と振り返ったフォリーの視線の先にはニコル・ヴァンネスト(ea0493)が立っていた。
 立っていたのだが、彼の様相にフォリーは二の句が告げられない。
 ヴァイキングヘルムを被り、海賊の眼帯を付け、船乗りのお守りを帯び、豪華なマントを羽織れば‥‥どう見ても悪趣味な成金海賊にしか見えない。そこは、仮装している本人も承知の上である。
 福袋で手に入れた数々の品。それは『このパーティで着ずしてどこで着る!』と、天から説教でも聞こえてきそうなラインナップ。もはや着るしかねーだろ、と‥‥こうなったわけである。
「そもそも俺に、そんな優雅で紳士な真似事を期待する方が間違ってる」
 フォリーの驚きを通り越した表情に眉根を寄せきっぱりニコルは言い切った。
 ‥‥暫し、返答に詰まっていたフォリーだったが、仮装でニコルの線の細い繊細な‥‥エルフならではのその容貌が翳る事もなく。
 滅多に見られぬ彼の奇抜な服装と捉え、気持ちをきりかえたようである。
 せっかくの仮装パーティ、せっかくのおめかし。楽しまなくては損だ。
「じゃあそれはそれで。一緒に踊ってね」
 ニコルの腕を取り、賑わう踊りの輪が溢れる船首の方へと歩き出すフォリー。
 彼としては、美味い酒を飲みつつ、いい演奏を聴いて、船上から風景でも見ながらのんびりしたいところではあったのだが‥‥
「‥‥って俺は踊れないぞ?」
「私も踊れないけど、なんとかなるよね。お祭りだもの」
 嬉しそうに歩くフォリーに、結局『‥‥ま、いーか。祭りだしな』と引きずられていくニコルだった。


●The dressed-up Lady
 逢莉笛 鈴那(ea6065)は、ドレスアップして船上パーティに参加していた。
 持っている荷物の中から、使えそうな衣装を選び身につけて。
 彼女が選んだのは、故国ジャパンでは見られない華やかなローブ。そして水晶のティアラ。銀の鎖で水晶を繋ぎ形作られた繊細なティアラは、鈴那の黒髪によく映えた。
「私の場合、ドレス着てると仮装って気がする。…ジャパン出身だからかな」
 鏡の前で出来栄えを確認するも、本人的には上手く着こなせているのか自信がない。
 一応仮装パーティだし‥‥と、付けてきたグレートマスカレードは、その微妙なデザインに適当な所で外そうと思いながら、人で賑わうパーティの中心へと向うのだった。

「美しい黒髪のお嬢さん」
 声を掛けられ振り向けば、正装姿に獣の面を被った人物。
 声音からすれば男性のようだが‥‥小首を傾げる鈴那に狼は謝りながら、面をあげて顔を見せた。
 どこか東洋風の顔立ちの女性にも見える線の細い少年のようだ。鈴那と目が合い彼はにこりと微笑んで。
「私の心を揺さぶる、あぁ何て罪なヒトだ」
「ええと、そう? ‥‥ちゃんと着れているかしら?」
 仮面の奥で鈴那の瞳が苦笑に細められ。
 一言二事言葉を交わし、そのまま別れる。鈴那には、パーティに来たもう1つの楽しみがあったからだ。これからのためにもそちらも大切である。パーティにてそのような事は常であり、お互いその気が無ければ深追いはナンセンスだ。狼の面を付けた彼も、其処は心得『良い夜を』と交わして。
 祭りの夜はまだこれからだ。


●Knight
 彼は怪しくも素敵な仮面を身につけた騎士だった。
 それは彼にとって憧れの仮装。
 仮面をつけていれば、きっと焦がれる機動力がえられるかもしれない。
 仮面をつけていれば、きっとかの方のようになれるかもしれない。
 そんな素敵な仮面、仮面騎士さま。えられない、なれない等のツッコミは既に自分でいれおき済み。
 気にせず、楽しむ。それがお祭り。


●Eating is also pleasure
「やほー♪ 偶にはこういうのも良いものだね♪」
 目一杯のお洒落をして、インヒは仮装船上パーティに乗り込んだ。
 まずは、目に入ったのは色々とりどりのご馳走。祭りだからこそ並ぶ珍しい料理もあれば、こうした席には欠かせない祝い事用の大人数料理も多く並ぶ。
 好きな物を好きなだけ、自分好みに取り食べる事ができる形式だったので、インヒ・ムン(ea1656)はつい歌を口ずさみながら、あちらこちら色々な料理に舌鼓を打っていた。
「うんうん♪ 美味しいね♪」

 一方、料理を食べて楽しむのに「仮面は邪魔」と外し、鈴那は人の良さそうな『猫を模した耳と尾をつけた仮装をした』給仕の男性を捕まえ、あれやこれやと料理を前に訊ねていた。
 人柄ついでに顔も良い給仕を捕まえてくるあたりは流石である。
 彼女の生業は食堂の店員。『料理に興味あるし、私の生業も食堂店員だしね!』と、とっておきの笑顔と共に、出たお料理の材料やレシピとか聞いたり、ドレスタットで安くて美味しい料理を出す店を教えてもらったり。‥‥こっちで勤められそうなお店も一緒に訊ねてみたり。
 ドレスタッドに詳しい、猫の給仕の他にも裏方ならではの情報もつ人達とのおしゃべりと、美味しい料理とで彼女の楽しい時間は更けていく。
 ちょっぴり変わった姿をみかけ、彼女の目が驚きに見開かれたのも仮装パーティならでは。


 クレー・ブラト(ea6282)は騎士然とした格好で、福袋で当てた持参の漆の酒器でワインをノンビリ飲みながら談話していた。
 余り酒は得手ではないが、こういった場では雰囲気に助けられてか杯がすすむ。少々慣れない仮面が気だるくもあったが、今宵のパーティでだけ、クレーは憧れの仮面騎士なのだ。
 賑やかな人々のざわめきを聞きながら、灯り照り返す夜の海を肴に酒を飲むクレーの耳に嫌がる女性の声が飛び込んできた。
「折角のお祭りやさかい楽しまなー‥‥て、無粋な奴がおるんやな」
 やれやれ、と重たい足を向ければ、給仕の女性に絡む男を『貴方様にお会いしたいと申される御婦人がいらっしゃいますが』と声を掛ける。
 何だと振り返る男に『向こう』とクレーが指をさせば物憂げに海を眺める少女然とした可憐な容貌の女性。単に海を眺めていたその女性を上手く使ってしまう辺り如才が無い。
 靡かぬ女性よりも、呼ぶ貴婦人へと色めきたった迷惑男を連れ出すのは簡単だった。
 ちょいちょい手招いて『彼女照れ屋さんやさかい、待ち合わせは別でな?』と人気の無いところへ連れ込みそのままポイントアタック併用のスタンアタックで気絶させそのまま部屋に転がせば、迷惑男退治は終了〜。
「ちょいと酔っとるけども、ちゃんと加減はしといたはずや♪」 
 仮面騎士の機転に助けられた給仕の女性は、クレーにお礼ととっておきの笑顔を返すのだった。


●Shall we dance?
 料理を食べ、楽士達の間をめぐっていたインヒ。
「ボクはインヒ・ムンだよ〜宜しくだね〜♪」
 あまり上手には踊れないけれど、ときちんと伝えて。誘った紳士は、誘った者の責務として踊りの輪にインヒを誘い、彼女をリードし踊りだす。
「キミが相手をしてくれるなら〜ボクは上手になるかもね〜♪」
 一生懸命、その場で上手く合わせてようとするインヒの努力もあってか―彼女のクラスはバードである、音楽的なセンスも手伝い直ぐに踊りの輪の中で素敵なペアになっていた。
 大抵一度踊れば、余程嫌な思いをしたのでなければもう1曲ぐらいは同じ相手と踊るもの。
 そうして曲を重ねていって、流石に疲れて飲み物を受け取り縁へと退散するインヒ達。
 休憩でふと、紳士がインヒに問いを重ねた。不快でなければ、と言い置いて。
 インヒは笑って琵琶を手に、踊りではなくその旋律で問いを返した‥‥
 ‥‥ボクは今宵はキミだけの吟遊詩人なのだ、と‥‥


●Wolf and Little Red Riding-Hood?
 物憂げな可憐な少女は、誰をナンパしようか‥‥そう悩んでいた。
 パーティにと礼服を少々いじってフリルたっぷりの可愛らしいドレスに変じ。
 金の髪を二つに結い別け、リボンで飾る。頭上をティアラで飾り、指輪や首飾りなどかわいらしい装飾に身を包んだ彼女のイメージはお姫様である。

 そこへ、狼の面を被った正装の男性が、縁に佇む彼女を見つけ足を止めた。『お嬢さん』と掛けられた声は若い男性のもの。
「可愛らしいご衣裳だ。無論、お嬢さん自身が何より可愛いのけれど」
 そう続く言葉も中々上手い。私は今夜はお姫様‥‥そう自分に言い聞かせ、振舞う彼女の所作は洗練された貴族のそれ。
「本当にお姫様のようだ。失礼‥‥」
 彼は、狼の面を外し見せれば‥‥冒険者ギルドで顔を合わせた冒険者仲間のディノ・ストラーダ(ea6392)だった。
(おや‥‥)という内心の驚きは顔には出さず。若き姫君は、ディノへ訊ねた『私どれくらいにみえる?』と。女性から問われた事にディノは少し驚いた顔をしたものの、直ぐに返事をかえした。
「‥‥失礼ながら、俺と同じ頃合かな、と思ったが」
 こうした問い掛け、見立てより2,3下にいうものだが。けれど、正解を訊ねる事も彼には出来なくて。何せ女性に歳を尋ねるのは失礼である、仮装パーティは歳どころか性別や種族を忘れて楽しむ物なのだから。
 ディノの回答に『わからないかししら?』と重ねた問いは、少女じみた話し方ではなく大人の女性のもの。
 瞳を瞬かせ、ディノはようやく姫君に見覚えがあることを思い出した。
『あ』と声をあげたディノに、エリー・エル(ea5970)は明るい笑みを浮かべる。
「う〜ん、やっぱり十代前半は無理だったかなぁん」
「それだけ見栄えする長身では難しいかもな。まだ夜は早い、一曲俺にさらわれてもらえるか? お姫様」
 芝居じみたディノの所作にくすっと笑いを溢し。
 エリーは差し出された手をとり、姫君は狼への答えを返す。
「狼さぁん、私をさらってぇん!」
 何時までも壁の花では、仕方ない。まずは楽しむ事から。
 踊り話し健やかに過ごしているうちに、そうでなければ得られない物もあるのだ。


●A Japanese-made thief
 鈴那がみかけた故郷の喜劇中に良く見受けられる典型的な泥棒に(見えるかもしれない)は、ルーロ・ルロロ(ea7504)だった。
 彼の仮装のテーマは、『ジャパンの泥棒』。
 彼自身は生憎ジャパンには行った事は無く、知り合いも居ない。
 聞きかじった知識と多くは無いがノルマンにいるジャパン人の雰囲気や様相を参考にさせて貰ったらしい。
「コレはジャパンの物じゃろう」
 と、彼が選んだのは鮮やかな女性用の着物。帯の代わりに麻の紐。
「コレは何に使うのかのう? 首のところで結んでるのを見たことがあるが‥‥マントかの?」
 そうしてマント代わりに羽織ったのは唐草模様の大風呂敷。
「あとは布を頭に巻いて出来上がりじゃ」
 そうして手拭でねじりハチマキをまき終えるとそこには!!
 ‥‥得意げな勘違い爺の出来上がりである。グレートマスカレード&ハリセンも忘れずに装備済みだ。
 仮装を超える怪しさ全開である。
『ジャパンの泥棒はこうだ!』とルーロが言い張ればジャパンを知らないノルマンの民は納得してしまうかもしれない。
 鈴那が驚いたのも無理は無いだろう‥‥。もし、彼女が詳細を知っていたらツッコミをいれていたのだろうか。

 実は彼には目的があった。生業の為の情報収集をする為にパーチィ(正:パーティ)に参加したのだ。
 彼の通り名は「ドルゲ」。生業は職人気質の泥棒である。その生業の資金を稼ぐ為に冒険者をしている。
 獲物一つを盗るにも時間と資金が掛かるものらしい。勿論ナイショである。仮装は別の意味では、正装なのかもしれない。
「まずは仕事のためにも貴族や商人の顔を覚えんとのぅ」
 あとはそれとなく宝の自慢話を引き出せれば成功‥‥と賑わう船上パーティの只中に、堂々と泥棒がいる事に気付く事が出来る者など一体どれだけいるのだろう。
 ときおり、『東洋の泥棒じゃからの。お宝の話には目がないのじゃ。ホッホッホ〜♪』などと仮装をネタに絶妙に誤魔化すことを考えてながら、ドルゲは主催の協賛として参加し賑わう商人達の一群へと向うのだった。


●finale

‥‥そうやって海を見ながら一夜を明け〜♪
‥‥お別れの時がやってきて〜♪
‥‥又逢う約束しつつ、別れるのさ〜♪

 賑わう船上パーティも、やがて月が沈む頃に終わりを迎える。
 一夜の賑わい、ひと時の常と異なる自分の時間。
 出会いがあれば、別れもあるが…こうして祭りが有る事で暮らす人々に活気が溢れる刺激となるのもまた事実。
 それが縁でまた再び出会う事もあるだろう‥‥。祭りがあれば、かの国に戻ろうと思う故国者もいるのだから。

『ただいま、ノルマン!』

 また次の祭りでは、どんな物語が紡がれるのだろう‥‥