●リプレイ本文
●参上パピヨンマスカー
「どうしよ、ここが噂の盗賊が出る道‥‥どうか何事もなく、無事に街まで着きますように!」
「待てい! そこを行く旅人よ!」
キャメロット近くの、雑木林の傍を通る、本来ならば静かな街道。
今まさに、その道を通り抜けようとする旅人数人に、突然大音声がかけられた。
「!?」
余りの声の大きさに驚いたのか、足を止める旅人たち。その彼等の前に、『そいつ等』は現れた。
身軽にバク転や側転をくりかえし、勢い良く雑木林から飛び出した5人組。
筋肉隆々の身体に、急所を薔薇で隠し、仮面をつけただけ異様な風体。
そう、最近現れるようになったという、変態盗賊団が現れたのだ。
噂で聞く所、この5人はレンジャーであるとの事。何故かそれぞれにポーズをキメているのは、その様式美の為なのかもしれない。
無論ポーズを決めたら前口上だ。
「仮面と裸身の素晴しさを世に知らしめるため!」
「パ」
「ピ」
「ヨ」
「ン」
「「「「「マスカー! 此処に参上!!」」」」」
中央の赤いパピヨンの仮面を身につけた変態から順にさけぶと、一人ずつ背中を旅人に向けていく。
背中にペイントされた文字がつながって、『パピヨンマスカー』と出来上がる。
ドド〜ン! と背後に土煙が上がったような錯覚を起こすほど、それは強烈な光景であった。
「シツレ〜イ! ボクはドウチュウ迷子になってしまいましたが、道案内してプリーズ〜?」
だが旅人の一人は、どう考えても怪しさ満載のこの一団に話しかける。
もっとも、話を聞く気が無いのか、変態たちのリーダーらしき赤いパピヨンの仮面をつけた男が、旅人たちに続ける。
「君達は仮面と裸体が如何に素晴しいか知っているかね。無限の開放感とワンポイントの薔薇の芸術性。これほどすばらしいものはこの世に二つとしてないのだよ。我々は、この素晴しさを、この祝福をもっと多くの人々に堪能してもらおうと思っている」
ニ! と、一斉に歯を見せ笑うパピヨンたち。なんと言うか、無駄な清々しさだ。
「よって、君たちにもこの素晴しさを伝授しよう。何、心配はいらない。目覚めてしまえば楽になれるのだ!」
さらに微妙に発言が危険。
いろいろな意味でリミットいっぱいというところだ。
だが、パピヨン達は未だ気付いていなかった。
目の前の旅人たちは、ある意味彼等パピヨンを超える者達だということに。
●囮は斜め上
その中の一人、身体を包み込むようにマントを身につけていた青年が、突如肩を震わせ始めた。
怯えているのだろうか? いや、違う。その口元を見れば判る。
耐え難いモノを抑えきれないその歪んだ口元。笑っているのだ。
「!?」
それにパピヨン達が気づくと同時に、マントを脱ぎ捨てる青年‥‥それは夢見る漢にしてアルスターの剣士レイジュ・カザミ(ea0448)。
そうこの旅人たちは、当然のことながら冒険者たちがパピヨンたちをおびき寄せるため、囮となった者達。
「股間に薔薇なんて邪道! 股間には葉っぱでなくちゃいけない! 歌にだってなってるんだから! それに仮面をつけるなんて卑怯な。漢なら、堂々と顔を見せるべきだよ!」
そのレイジュのマントの下は、あろう事か素っ裸。辛うじて局部を大き目の葉っぱで隠している以外は、見事なまでに何も身につけていなかったのだ!
怪奇葉っぱ男の誕生した瞬間だった。
「な! へ、変態め!」
その姿には、パピヨン一同も驚愕の色を隠せない。というか、こいつ等だけには言われたくない! というセリフまで飛び出している。
どうやら、自覚がなかったらしい。
だが、まだまだ変態盗賊達の驚愕は続く。
レザーアーマー姿だったナイト、レディアルト・トゥールス(ea0830)が突如その鎧と服を脱ぎだすと、仮面を取り出し装着。
マントと股間のバラ(閉じている)そしてブーツとマスカレードという、パピヨンたちとタメを張れる姿へと生まれ変わる。
「‥‥貴様等は罠に嵌ったのだ‥‥‥我が名はマスカレード男爵‥‥貴様等のような変体を討つ」
新たなる伝説、マスカレード男爵の誕生した瞬間だった。
「馬鹿な! 変態がまた増えた!」
再びパピヨンの悲鳴。
「そんな格好をして恥ずかしくないんですか〜!!?」
囮の一人、忍者の太郎丸紫苑(ea0616)のセリフは一体誰に向けられたものだろう?
少なくとも、彼自身に向けられたものではない、それは確かだ。
そして、残念ながら、彼以外の面子に羞恥心は残っていまい。
こんな時、常識を残している人物は実に不幸である。
とはいえ、こうしてにらみ合っていても仕方が無い。
「ええい、変態達め! 貴様等をパピヨンで染め上げてくれるわ!」
焦りか、痺れをきらせたのか、ポージングをしながら襲いかかる変体達。
だが、
「‥‥このマスカレードは、ある村人達が思いを込めて渡してくれたものだ‥‥貴様等の一つ幾らで買えるものと一緒にするなど言語道断。ましてや我等の筋肉は貴様等のような無駄な筋肉でない。必要なのは、しなやかさだ」
オーラエリベイションで士気の上がったレディアルトと、カウンターを駆使するレイジュ、アグラベイションをつかう太郎丸はその5人の猛攻を辛うじてしのぎきる。
「見えるか、この大輪のバラが? 感じるか、このオーラを? これがマスカレード男爵の本領だ‥‥」
しのぐと同時に、閉じていた薔薇を作っておいた仕掛けで開かせるレディアルトに、パピヨン達がどよめいた。
それで、囮の役割は十分だった。
後方から、残りの冒険者たちがやってきたのだ。
●ヲトメ強襲!
その先頭、二人の女性ナイトのサラ・ミスト(ea2504)、レジーナ・フォースター(ea2708)は、問答無用とばかりにチャージングを変態たちへ仕掛ける。
どうも存在自体を完全否定の様子。剣を使っては穢れると思ったのか、武器は双方クラブや素手だ。
「‥‥変体は滅する‥‥」
「なっ破廉恥です! 居酒屋ボンバー!」
いや、レジーナはやや方向性が違うか。先ほどまで、さも嬉しそうに後方から変態たち(囮も含む)の競演を見つめ続けていたのだから。
それはともかく、チャージングをうけ、早々に吹き飛ぶパピヨンたち。
だが、その筋骨隆々とした体格の所為か、深刻なダメージには至っていない様子。
それどころか、
「思ったより痛いけど軽傷ダメージがちょっと快・感★」
などとうっとりする始末。
だが、コレは逆効果。
この二人に火をつけたも同然である。
「私を脱がしても良いのは、自身と、最愛の人のみだ」
馬から飛び降りたサラは、快感に震える変態に真正面から飛び込むと、地面ぎりぎりから下からすくい上げる様に振り上げ大輪の薔薇を一撃する!
「オウ! デ〜リシャス!」
流石にコレは強烈だったのか、よろけるパピヨン。だが、目元が潤んでいるのは果たして痛みの為なのだろうか?
一方、レジーナは‥‥切れていた。
「不潔です! 不潔です! 不潔です! 不潔です! 不潔です! レジーナ様と御呼び!! 不潔です! 不潔です! 不潔です!!!」
錯乱しているのか、鞭を振るっての大暴れ。
何気に途中で微妙なセリフが混ざっているのは、その女王を示す名の所為だろうか?
少なくとも、ハァハァ言いながら這い蹲るパピヨンを楽しげに踏みつけているところを見ると、『素』が出たとしか思えない風情がある。
同じように、ニミュエ・ユーノ(ea2446)も月魔法のメロディーを奏でながら、切れていた。
「お〜ほっほっほ…肉体美は見せれば良いというものではありませんことよ! 服の間からさりげなく除く殿方の鎖骨や程よくついたしなやかな筋肉の美しさに勝るものはありませんわ!! 何よりその御面相頂けませんわ‥‥かくごなさい、本気でいかせて頂きますわよ!!」
どうも、筋肉マッチョが大嫌いだったらしい。すでに半分どこか別世界にイッてるらしく、トランス状態。
『霧に沈む街並みの片隅に咲く一輪の華
儚きことこそ美しいといったのは誰の言葉か
ありのままの姿を求めるのは徒人のなすこと
見えるかしら、わかるかしら
この華の一番美しい姿が…』
パピヨンたちを真の肉体美を語る資格のない駄目人間と思い込ませるような歌詞を歌い上げているようだ。
だが何気に味方の囮もブルーな気分にさせているように見えなくも無い。
そして此処にももう一人。
「んっふっふ‥サディストの血が騒ぐぞ‥‥なぜなら変態に人権など‥」
神聖ローマ生まれのハイエラ・ジベルニル(ea0705)はさも嬉しそうに目の前の変態たちをねめつけている。
理由は彼女が語るとおり。
目の前にごろごろしているのは、人権という概念を当てはめるに値しない変態たちだ。つまり、好きなようにいたぶれるという事。
正直、囮のメンバーが『色々』されてから登場したかったようだが、囮の方が強烈過ぎたため、諦めて出てきたらしい。
その鬱憤を今丁度晴らしているところだ。
舞い踊るようなステップをふむと、迷わせるような動きの後、パピヨンの薔薇の位置‥‥急所を蹴り上げる。
気のせいか、葉っぱも蹴り上げたような気もするが、些細な問題だろう。
そう、些細な問題だ。ジャパンの忍者森里霧子(ea2889)彼女の存在に比べたら。
●仮面の忍者銀影、参上!
(「あんなヤバイ変態の囮を買って出た囮諸氏とか蝶偉い。もっとがんばれ。蝶がんばれ」)
戦いが始まって暫く、森里は生暖かく戦局を見守りながら、出所を探っていた。
そして、その瞬間が来る。
急所打ちと鞭でのシバキ、そしてメロディーの心理的ダメージで立ち直れなくなったパピヨンたち。
その目の前に突如手裏剣がつきささる!
ひるむ隙に手製の銀仮面を付けて飛び出すと、
『銀仮面はさすらい仮面‥‥仮面の忍者銀影、参上! 蜂蜜フラッシュ!』
太郎丸に通訳させつつ(森里は未だイギリス語を話せない)分身の術で分身を作り出し、変態たちの前に降臨する。
一瞬、静まり返る街道。
無理も無い。森里の姿は仮面一枚百合一輪忍者刀一本という、危険なもの。
「大奥の術! 私は脱いでもすごい!」
「痴、痴女!?」
「痴女いうな!」
ちなみに、微妙な箇所は同行している記録係により、必死に隠されている。
苦労が忍ばれるというものだ。
とはいえ、変態達の戦意を(多分味方も含む)残らず吹き飛ばしたのは確か。
その隙を突き、無防備な急所へ次々と止めを刺す森里。
無論散っていく薔薇の下から現れるモノを
「薔薇は気高く咲き、美しく散る‥‥」
などと言いながら品定めするのも忘れない。
「やはり、痴女ではないか‥‥(ガクリ)」
無念そうに呟く赤パピヨンの変態。
そう思うのも無理も無いが、彼等に言えた義理ではない。
かくして街道を騒がせた変態盗賊団は退治され、冒険者は意気揚々と帰路につくのだった。