着ぐるみを取り戻せ!

■ショートシナリオ


担当:まひるしんや

対応レベル:1〜3lv

難易度:普通

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月10日〜07月15日

リプレイ公開日:2004年07月16日

●オープニング

 ゴブリンが田舎の村を襲うのは珍しい事ではない。
 それが、村から離れた一軒家であれば、なお更だろう。
 そして、此処に今、ゴブリン達に略奪されたばかりの一軒家があった。
「あぁ‥‥折角、折角作ったばかりの最高傑作がぁ‥‥」
 打ちひしがれているのは、この家の主にして、皮製品の名作家である。
 この人物、自身で作る皮製品の材料は、自分自身で手に入れるというポリシーの持ち主であり、そのため森の直ぐ近くのこの一軒家に居を構え、制作活動を行ってきたのである。
 自身で皮の元となる獲物を取っているだけに、それなりに腕も立つのだが、いかんせん今日は留守を狙われたらしい。
 部屋の床のあちこちにゴブリンのものと思しき足跡が残り、作業台の上に在ったはずの作りたての最新作が失われている。
 またその試作に作った物も、見事に奪い去られており、残ったものは皮の切れ端すらないという有様だ。
「そんなぁ〜〜〜〜!」
 悲鳴は、むなしく室内に響くばかりであった。

 その数日後。
 街道沿いに奇妙なゴブリンが現れるようになったとの情報が広がり、同時に冒険者ギルドに新たな依頼がだされていた。
 それは
「ゴブリンを倒して服を取り戻せ?」
「そうだ。なんでもどっかの皮製品の名作家の最新作を、ゴブリンが奪っていったらしい。それで、その最新作‥‥なんでも、皮製の服らしいんだが、それをゴブリンが来て街道で悪さをしてるらしいんだ」
 その皮製品、全身を包むような構造で、毛皮に覆われたその姿は、ぱっと見は動物が歩いているかのように見えるらしい。
 分厚い毛皮が防具のように作用する為、防御効果もあり、悪さをするゴブリンはその分手ごわくなっているとの事。
「ふつうなら、手ごわくてもゴブリンだ。普通に倒せば済む事なんだが、その作家のたっての願いでな。さらに縛りが入る。服を無傷で手に入れたいから、刃物や服が悪くなるような武器を使わないで欲しいそうだ」
 つまり、ゴブリンを倒すと同時に、その着ている服を無傷で取り返せということだ。
 コレは中々難しいといえる。
「まぁ、報酬は期待してくれ。元から高めで服が無事なら当然ボーナスだ。苦労するかいはあるとおもうが、どうだ?」
 親父の言葉を聞きながら、冒険者たちはその服を無事に手に入れる手段を、早くも考えだしているのだった。

●今回の参加者

 ea0123 ライラック・ラウドラーク(33歳・♀・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea0324 ティアイエル・エルトファーム(20歳・♀・ゴーレムニスト・エルフ・ノルマン王国)
 ea0353 パトリアンナ・ケイジ(51歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea0356 レフェツィア・セヴェナ(22歳・♀・クレリック・エルフ・フランク王国)
 ea0643 一文字 羅猛(29歳・♂・僧兵・ジャイアント・ジャパン)
 ea1355 シスカ・リチェル(21歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea2194 アリシア・シャーウッド(31歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea4221 アルフェリーザ・イグニアス(34歳・♀・神聖騎士・人間・イギリス王国)

●リプレイ本文

●囮はコスプレ村娘 〜A班の場合〜
「小鳥さん達こんにちは、フフフッ」
 夏の太陽が照りつける街道沿い。
 最近奇妙なゴブリンが出るというこの道を、居もしない小鳥に話しかける一見真っ当そうに見えて何気に微妙な村娘が歩いていた。
 何が微妙かといえば、そんなゴブリンが出るような街にたった一人で居たり、外見はあくまで普通の村娘であるにも拘らず、立ち振る舞いに妙に隙が無いところ。
 普通の人間であれば、逆に怪しさを感じるかも知れない。
 さが、そんなことに構わずそれは現れた。
 急に街道脇の茂みが揺れると、ヌッと姿を現すふわふわした何か。
 その姿は‥‥クマを可愛らしく子供が描いたかのような姿だった。その数4体。
 これが件の皮製品の名作家の最新作なのだろう。
 その姿は妙にコロコロとして愛らしい。
 だが、
『ゴブゴブ‥‥誰か来たゴブ‥‥それにしても‥‥暑いゴブ』
『ゴブ‥‥そうゴブ‥‥襲わなきゃ‥‥ゴブ‥‥』
『でも、木の影から‥‥出たく無い‥‥ゴブ』
『でも、襲うゴブ〜ゴブゴブゴブ〜〜〜〜』
 その動きはなんと言うか徹底的にだらけていた。
 これらの中身(中の人などいないという意見は却下されます)は無論ゴブリン達なのだが、この夏の暑さ、さらに着ぐるみを着ている為それを何倍にも感じているのだろう。
 元々かけらも無い思考力がさらに低下し、意識が朦朧としている様子。
 それでもある種の本能のように、茂みから現れ襲いかかろうとするそぶりを見せる。
 村娘(仮定)の行動は妙に迅速だった。
「あれぇー、たーすけて〜」
 妙に芝居がかった悲鳴を上げると、これまた絵に描いたように怯えながら逃げていく。
『逃げるなゴブ〜〜〜! 運動させるなゴブ〜〜!!』
『動きにくいゴブ〜〜〜! 重いゴブ〜〜!』
『ウフフ〜〜〜!! マテマテ、まてったら〜〜〜ゴブ〜〜〜!』
『ゴブ‥‥‥何だか‥‥お花畑が見えるゴブ‥‥』
 当然追いかける着ぐるみゴブリン達。中には暑さの所為か壊れかけたり、あっちの世界に逝きかけている物もいるようだが、それは余談だ。
 ともかく、暑さで何も考えられずに村娘を追いかけたゴブリン達。
 無論、そんな状態で仕掛けられた罠に気がつくはずも無い。
 その村娘‥‥に変装したライラック・ラウドラーク(ea0123)が何かを飛び越したと先頭のゴブリンが思ったかどうか。
 次の瞬間、
『!? ゴブ〜〜〜!』
 着ぐるみゴブリン達は足元に張られたロープに足をとられ、見事に4体まとまって大転倒していた。
『ゴ、ゴブ〜〜〜』
 団子のようになって転がる着ぐるみゴブリン達。
 キグルミの手足が短い所為か、上手く起き上がれない様子。
「あらあら、動物さんたち大丈夫ですか?‥‥なんちて」
 そんな彼等を、変装を解いたライラックを含む4人の冒険者が取り囲んだ。
「着ぐるみを着るゴブリンね。変わったゴブリンも居るものね‥‥」
 珍しいものを見たかのように(確かにその通りだ)呟くのはアルフェリーザ・イグニアス(ea4221)。
 もがくゴブリンの上に飛び乗ると、逃がさないように体重を込め動きを封じている。
 隠密行動が出来ない分、取り押さえるのに全力を注ぐつもりのようだ。
「‥‥熊熊ゴブリン(勝手に命名)て本物と似ているのかな〜? 森の中だったら本物の熊さんいてもおかしくないよね?」
 そういいつつ、団子になったゴブリンを覗き込むのはティアイエル・エルトファーム(ea0324)。
 どうも、本物の熊を間違えて捕まえないかどうか罠を仕掛ける担当であった分、心配だった様だ。
 確かに、この着ぐるみは熊を模したものでは在るが、本物と見間違えるような姿ではない。
 そして、本物の熊はゴブリンとは比べ物にならない強さを誇っている。間違えずにすんで良かったといえるだろう。
 同じくロープを引っ張りゴブリンをこかしたアリシア・シャーウッド(ea2194)は、早速手にした棒で未だもがくゴブリン達の後頭部辺りを殴りつけて昏倒させようとしていた。
 可愛い物好きとはいえ、中身がゴブリンと考えると手加減する気も失せるのか、何だか妙に一撃一撃に力が入っている。
 多分、きぐるみの中で蒸れ、威力を増したゴブリンの匂いを感じ取ってしまったのだろう。
 後できぐるみの洗濯を行おうと心に決めた様子だ。
「えぇい! ゴブリンの分際で手間かけさせるんじゃないよ! おとなしくなさい!!」
 取り押さえを止め、ロープでの首を絞めるアルフェリーザも、洗濯の意見に賛成の様子。
 その様子を見ながら
(「その中で吐いたりするんなよー」)
 と内心呟くライラックは、きぐるみを報酬にしてもらえるか考えるのだった。

●囮は40代 〜B班の場合〜
 一方その頃、別行動をとっていた冒険者たちはというと‥‥
「キャー助けてぇ〜」
 同様の囮作戦を取っていた。
 ただし、一つ問題が。
 囮を勤めるのは、パトリアンナ・ケイジ(ea0353)。花も恥らうレンジャーにして現在40歳。
 変装しても露骨にわかる筋肉質の体が、なんと言うかアレだった。
(「何だよ、何か文句あんのか」)
 何気に記録係を威圧する辺り、自覚を持っている様子。
 それはともかく、そんなパトリアンナ(自称パティ)の囮にも、
『ゴブゴブ〜〜〜〜!』
 きぐるみゴブリンはつられていた。
 多分、思考力など一切残っていないのだろう。案外幻でも見ているのかも知れない。
 無論そんな様子では、A班におびき寄せられたゴブリンの二の舞をふむわけで‥‥
『!? ゴブ〜〜〜!』
 転倒時のセリフまで同様に、団子となって転倒してしまう。
 当たり前ながら、手足の短さで上手く起き上がれないのも同様だ。
 そしてそんなゴブリン達の上にかかる影。
 次の瞬間、ゴブリン達の上に身長230cm、体重180kgの巨大な影が躍りかかった。
 ジャパンからやってきたジャイアント、一文字羅猛(ea0643)だ。その体格と重さを生かし、団子になりのたうつゴブリン達を次々押しつぶす。
 そしておとなしくなったと見るや、次々とゴブリン達を縛り上げていく。
 依頼にかこつけて、女性との同棲生活の円滑な進めかたを仲間に聞いて回ったとは思えない戦いっぷりだ。
「いや、他意はないぞ」
 ほんとかなぁ?
 とはいえ、
 援護として白のクレリックのレフェツィア・セヴェナ(ea0356)がかけたグッドラックのおかげか、その攻撃及び取り押さえは上手くいっている。
 レフェツィア本人は非力ゆえ攻撃はせず、
「盗まれた着ぐるみは絶対に取り戻すんだから! それで後でできたらちょっと着てみたいなーとか‥‥ダメかな?」
 等と言いつつ既に縛られたきぐるみゴブリンを突いていたりする。
 もっとも、この着ぐるみを着るのなら、洗濯はやはり必須だろう。
 文字ほどの体格に気付かずにわなにかかったゴブリン達は、よほど暑さに参っていた様子。
 その証拠とでも言うように、きぐるみを押しつぶすと、中からすえた匂いが漂ってくる。
 多分汗ですごい事になっているはずだ。
 そのゴブリンたちの匂い消しに躍起になっている少女が居る。
 エルフのウィザード、シスカ・リチェル(ea1355)だった。
 当初は、
「ゴブリンはどうして着ぐるみを盗んだのかしら? さては、ぶっさいくな容姿を着ぐるみでカバーして、ナンパ三昧モテモテ大作戦と洒落込む魂胆ですのね! ナンパの極意は、外見以上に内面と誠意が決め手っ! モテモテ大作戦惨敗の前に、シスカたちに惨敗して暫く引きこもって自分を見直すべきだわ! 愛とは厳しいのよ☆」
 等とちょっとアレで何気に電波なセリフをこぼしていたのだが、いまはゴブリンの匂い対策で大忙し。
 とりあえず後で洗濯するのは確定だが、今の時点でこの匂いを何とかしないと、きぐるみを脱がす気もおきないというものだ。
 そんな調子で取り押さえられ、きぐるみを脱がされたゴブリン、こちらも4体。
 かくして、問題のゴブリンを全て捕らえ、きぐるみを回収した冒険者たちは、洗濯の後に依頼人の下へと向かうのだった。

●未完成品は世に出ないものなのよ
 かくして無事に依頼人の下へきぐるみを届けた冒険車たち。
 上手くゴブリンを捕獲したおかげで、きぐるみの損傷は少なく、依頼人も満足そうだ。
「良くやってくれたねぇ。ボーナス出すから、期待していいよ」
「じゃぁ、着ぐるみ頂戴♪」
 何人かの冒険者が、そう依頼人に頼み込む。
 だが、
「ああ、まだだめさ。コレはまだ未完成だからね。満足のいくのは一つだけだし、コレは手もとに置いて置きたいしね」
 依頼人は首を縦に振らない。
「じゃんけんで勝負して買ったら頂戴よ! シスカが負けたら服脱ぐから」
「あたし、女なんだけど」
「‥‥‥」
 取り付くしまも無いというのはこのことだろう。
 とはいえ‥‥
「まぁ、そのうちに満足のいくものがもっと出来るかもしれないから、そのときにまた改めてくるんだね。その時には歓迎するからさ」
 ボーナスが出たのは確か。
 そんな訳で、冒険者たちはきぐるみに名残を惜しみつつ、帰路に着くのだった。