ゆけゆけマスクドタイガー

■ショートシナリオ


担当:まひるしんや

対応レベル:1〜3lv

難易度:難しい

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月10日〜07月15日

リプレイ公開日:2004年07月20日

●オープニング

 パピヨンマスカーなる変態たちが現れて数日後。
 今度はキャメロットを挟んで反対側の森の中に、屈強な変態が現れたらしい。
 その名も自称『マスクドタイガー』。顔に虎を模した仮面をつけ、残りはやはりブーツと股間に咲いた薔薇の花のみ。
 森の中の街道に突如白い染料で周囲を真っ白に染め上げると、自身のテリトリーだといって、そこを通る者に通行税を要求するらしい。
 コレを断ると、突如襲い掛かってきて、スープレックスやホールドなどで失神させて来るとの事。
 そして被害者が気がつくと、このマスクドタイガーと同じ姿にされているというのだ。
 そして
「お前は虎だ、虎になるんだ!」
 延々と耳元で囁かれ続けるらしい。
 これにはよほどの神経のものも参ってしまうらしく、心的ダメージで当面立ち上がる事すらままならなくなるとの事。
 こんな変態のこれ以上の増殖はいくらなんでも危険すぎる。
 よって、この新たな変態をとっとと仕置きしてもらいたい。
 よろしくお願いする。
 なお、今回も当然負ければこの姿になる。
 覚悟するように。

●今回の参加者

 ea0393 ルクス・ウィンディード(33歳・♂・ファイター・人間・フランク王国)
 ea0418 クリフ・バーンスレイ(31歳・♂・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea0616 太郎丸 紫苑(26歳・♂・志士・パラ・ジャパン)
 ea0717 オーガ・シン(60歳・♂・レンジャー・ドワーフ・ノルマン王国)
 ea0734 狂闇 沙耶(28歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea0907 ニルナ・ヒュッケバイン(34歳・♀・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 ea0926 紅 天華(20歳・♀・僧侶・エルフ・華仙教大国)
 ea0945 神城 降魔(29歳・♂・志士・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●前口上は通訳付き
『人に己の生き様を植え付け、生き方を捻じ曲げる行為‥‥‥人それを、『傲慢』と言う!』
 新たな変態が現れたという街道に、堂々たる前口上が響く。
 その余りに堂々とした物言いに、虎の仮面をつけたその変態、マスク・ド・タイガーの双眼がカッ! と見開かれた。
 白く塗りつぶした背景をバックに、闘魂の意志の宿った瞳が声の主を捜し求める。
「新たなる挑戦者か‥‥‥何者だ」
『お前に名乗る名など無い!!』
 言うと同時に颯爽と登場したのは、ルクス・ウィンディード(ea0393)。フランク王国出身のファイターである。
 だが、その言葉を聴いても、マスク・ド・タイガーは微動だにせず‥‥いや、首を傾げていた。
「あ〜‥‥聞き方が悪かったな。何と言っている?」
 立派な前口上にも拘らず、ルクスは残念ながらいまだイギリス語を話せなかった。話せるのは母国語のゲルマン語のみ。
 無論それではマスク・ド・タイガーに通じない。
 同様に、馬に乗って颯爽と現れた神城降魔(ea0945)の
「マスクドタイガーとお見受けする。日本よりの志士、神城絶倒斎。お命頂戴するため、参上仕った』
 というセリフも‥‥
「いや、すまんが‥‥頼むからイギリス語で話してはくれんか?」
 神城がジャパン語とゲルマン語しか話せないため、通じない。
 立派な前口上も言語が通じかければ空振りするという良い典型であった。
 さらに‥‥
『虎よ、貴様は此処におるんじゃな。まぁ、それはともかく、街で良い殿方を探しながら仕事でもしたいのぅ♪』
 と、後方で待機しつつつぶやく忍者、狂闇沙耶(ea0734)や、
『若いもんは元気よのぉ‥‥』
 と、後方支援を決め込むフランク王国出身のドワーフレンジャー、オーガ・シン(ea0717)など、母国語しか話せない冒険者が何気に今回多かったりする。
 よくもまぁ、移動の際など困らなかったものである。
 酒場やギルドでの通訳に慣れきってしまった影響なのだろう。
 もっとも、
「また変態さんの相手だよぅ〜。しかも今回もまたまた囮〜。本当にこれしかしてな〜い!」
 などと嘆くジャパンの志士、太郎丸紫苑(ea0616)がジャパン語とイギリス語を話せるため、何とかゲルマン語→ジャパン語→イギリス語の通訳のラインが何とか成立していた。
 そうでなければ、話にすらならなかったところである。
 そのため、コレ以降は、記録係のたっての希望で、神城と太郎丸の通訳後の会話内容となる事、ご了承願いたい。
 それはともかく‥‥
『(バイリンガル)では、改めて言おう、人に己の生き様を植え付け生き方を捻じ曲げる行為‥‥‥人それを、『傲慢』と言う!』
 はじめから仕切りなおしである。

●白く塗られた、雑木林に
「ふん、現れたな、仮面の素晴しさを理解できぬどもめ‥‥いいだろう、かかって来い!」
 ルクスの声に応じ、身体を覆っていたマントをばさりと開くと‥‥その下から現れたのは、鋼のように鍛え上げられた屈強な肉体。
「正体を隠す事で解放された心と、衣服から解放されたこの筋肉、倒せるものならかかってくるがいい!! はっはっはっっ!!!」
 ポージングと同時の大音響は、闘う魂に満ちた漢の叫びだ。
 ‥‥‥これで、せめて股間に薔薇ではなく、もう少しまっとうなものであったら‥‥そう思わずにはいられない堂々さ。
 その声につられ、ルクスが正面から
「よし! まずは力比べだ‥‥‥さぁかかってっ!!」

 グチャ

 挑みかかるも、瞬殺。カウンターで一撃が入り、その後投げ捨てられたらしい。
 流石に鍛え抜かれた筋肉は伊達ではない。
「ルクス殿が! ‥‥おのれ!」
 そのあまりなやられっぷりに激昂したのか、馬と共に神城が突っ込む。
 が、コレも身軽なマスク・ド・タイガーにあっさり避けられ、
「残念! 龍槌閃斬りぃっ!」
 次いで仕掛けた武器さえも粉々にする一撃(バーストアタックEX付き)も、
「武器も鎧も持たん俺に、そんなもの仕掛けてどうする」
 避けられると、スープレックス一閃、マット‥‥(失礼)大地に沈められてしまう。
 コレで残るは太郎丸のみ‥‥
「ふっ‥‥この二人には虎仮面を後でかぶせるとして残るはお前だけだな」
「いやぁ〜!」
 怯える太郎丸に、にじり寄るマスク・ド・タイガー。
 その口元だけのぞいた顔が怪訝そうな表情を見せたのは、次の瞬間だ。
 思うように動けないのだ。
 ほとんど裸に近いこの姿で、何故か体が重く感じる。
 太郎丸のかけたアグラベイションの効果だった。
 そして、その動きが鈍くなった所を見計らい、のこる冒険者たちがやってきた。
 終わらせる為に。

●薔薇よさらば
「さて、どうも変態さんが出るようで。いやぁ、ボクにはそういう趣味はないのでよく分からないのですが、そんなに自分のお粗末なものを晒して何が楽しいんでしょうねぇ?」
 軽い調子で現れたのは、クリフ・バーンスレイ(ea0418)。風の魔法を使うウィザードである。
 姿などを鑑みるに囮役が似合いそうだが、
「だってあんな汗臭い人とくんずほぐれつなんてボクは嫌ですよ」
 との事で辞退した様子。
 その代わりなのか、登場すると同時に、風の刃をマスク・ド・タイガーに向けてはなっている。
 それも股間へ。
 薔薇へ、もしくはその隠しているモノへ。
「む、むおっ! な、何をする」
 流石にヤバさを感じたのか股間を隠すタイガー。
「花にも命はあるんですっ! この世界の神秘を司る精霊が宿っているんですよ〜!」
 太郎丸からの声援(ただし、対象は薔薇)のおかげか、ダメージからは逃れないが、大切なモノは守り通したようだ。
 だが‥‥
「ぬふぁ〜〜〜〜〜」
 様子がおかしい。見れば、背後‥‥というか『後ろ』に矢が刺さっている。
 迂回し、退路を立ったオーガがおもむろにはなった矢。
 それが、モロに直撃してしまったようだ。
 タイガー、大切なものの代わりに、失ってはいけない物を失った様子。
 がっくりと力が抜けている。
 そこへ追い討ちをかける冒険者達。
「我が名はニルナ・ヒュッケバイン! 変態虎仮面を撲滅するものなり!」
 イギリス語を無事に覚えたニルナ・ヒュッケバイン(ea0907)が動きの鈍ったタイガーを聖なる力で打ちのめすと、
「黒死鳥の何おいて命ずる‥コアギュレイト!」
 その動きを呪縛し完全に身動きを取れなくする。
 これで、ほぼ勝負は決まったようなものだ。
 タイガーは『後ろ』に矢、前は散りかけの薔薇という微妙な状態で、妙なポーズのまま凍りついたように動けない。
 その有様を上から下までじっと観察するのは、華国の僧侶、紅天華(ea0926)。
「‥‥服が買えぬほど質素な生活をしているのか‥‥?」
 真顔でこんな事を問われれば、精神的に来るものがある。
 動けないまま、何気に震えているようにも見えるタイガー。
 哀れだ。
「そうか、貴殿が最近この地を騒がしている変態とか痴漢とかいう輩か、始めてみたぞ」 
 一応、痴漢はしていないのだが、お構い無しの紅。周囲を歩きながら好き勝手に天然なセリフでタイガーの心をザクザクと刻みつける。
「風の噂に聞くがそなたのような戦いの作法では仮面を奪うことは、その人間の死を意味するらしいな。その面‥‥日の下に拝んでくれようぞ!」
 さらには、動けないタイガーの仮面を無理矢理剥ぎ取る!
 その瞬間と、コアギュレイトの効果が切れるのは同時だった。
「ぬ、ぬぁぁぁ〜〜〜〜!!」
 あられもない悲鳴が上がると、がっくりと膝を突くタイガー。
 素顔で居るのは余りに恥ずかしいのか、顔を隠したままのた打ち回っている。
「これが‥‥変態なのか‥‥!! 虎よ、漢の誇りと共に現世を去れ!」
「喰らえ!懇親のヒュッケバインダガー!!」
 それを隙と見たのか、ニルナと狂闇が共にスタンアタックつきの渾身の攻撃を、タイガーの薔薇へと叩き込む!
「!? っゎぁっぃぉぉぉぉぉっ!!!!!!」
「また‥‥つまらぬ物を蹴ってしもうた」
 タイガーの声にならない悲鳴と狂闇の呟き。
 ポトリと落ちる薔薇。
 夕日をバックに無常な光景が広がっていた。

●戦い終わって、それでも戦いは続く(何)
「さて、どうしますか? 皆さん」
 戦い終わって日が暮れて、残されたのは、素顔をさらされ、簀巻きにされたマスク・ド・タイガー。
 その身柄をどうするか、ニルナ主導の下話しが進められていた。
 「私は‥‥この虎の格好をやめてくださいとお願いしますよ。人生にはまだまだ楽しいことがいっぱいあります。それに賭けてみませんか?」
 やめるも何も、タイガーは心身双方のダメージで、何気に廃人っぽく放心状態だ。
 このままではとりあえずダメっぽい気がする。
 その様子に、ルクスが立ち上がった。
「俺らの友情パワーが‥‥‥負けるはずが無い!! 行くぜ相棒!!」
 放心状態の元マスク・ド・タイガーを立たせると、
「友情‥‥!! バスターーーーーーー!!」
 気合を入れるかのように大技を叩き込む。
 瞬間、元タイガーの瞳に何かが宿った。
「そうか‥‥マスクはなくとも、まだ戦う事は出来るのだな‥‥」
 何かを吹っ切ったように大地に横たわり、夜空を見上げるタイガー。
 その表情に迷いは無い。
「そうだ、勝ったんだ‥‥そう、真の虎だ! 俺らは虎になったんだ―!!」
 熱く手を握り合う二人。
 何だか明後日の方向に走っているような気もするが、それも一興である。
 かくして、仮面の変態は消え、何か勘違いした人物が新たに誕生したのだった。

 めでたいかどうかは謎である。