仮面怪人『はにゃはにゃ』登場

■ショートシナリオ


担当:まひるしんや

対応レベル:1〜3lv

難易度:普通

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月17日〜07月22日

リプレイ公開日:2004年07月27日

●オープニング

 逢魔が刻、キャメロットのスラムの一角、人通りの少ない路地で、その惨劇は起こっていた。
「ひ、ひぃぃ!」
 顔中に恐怖の色を浮かべ、後ずさりする青年。
『それ』は、そんな青年の様子を楽しげに見つめると、ズンズンと無造作に近寄っていく。
「た、助けて‥‥だ、誰か!」
 その声にはすでに絶望が混じり始めている。背後は壁、行き止まりだ。これ以上逃げられない。
 そして、それは手を伸ばせば届くほどまでに近寄ってきた。
「そんなに怖がる事は無いぞ、青年。我輩は真実の伝道師。君に素晴しい世界を見せてあげようというのだ。感謝したまえ」
 威風堂々とした声の響き。声だけなら、威厳さえ漂っていると表現できるだろう。
 だが、その姿を見れば、そんな感想は死んでも紡ぎたくないだろう。
 仮面だった。
 羽仮面だった。
 新たな仮面の変態だ。
 無論股間の薔薇以外は仮面とブーツ以外、何も身につけては居なかった。
 さらに言うなら、毛深かった。
 そりゃもう洒落にならないくらい。
 特にとんでもないのがその胸毛だ。
 髪の毛か? と首を傾げたくなるほどに豊かなその胸毛は、なんと言うかある種の芸術だ。
 それもう、一般人に理解できないものの類だった。
「ほう、この胸毛が気になるのかね?」
 そりゃもう、そこに視線が行きますさ。
「青年、君には素質があるようだな。この素晴しさを理解できるとは。良かろう、君にはフルコースをプレゼントだ!」
 なんだか喜んでいるらしいその変態は、おもむろに青年の顔を掴むと、ぐいと引き寄せた。
 胸元に。
 無論そこには『凄い』胸毛があるわけで。

 はにゃはにゃ

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ、ぅわっ、ひぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
 青年の魂の悲鳴が長く長くこだました。

 この変態、自称『はにゃはにゃマスク』を退治するよう冒険者ギルドに依頼が出るのは、実に当然の事であった。

●今回の参加者

 ea0043 レオンロート・バルツァー(34歳・♂・ファイター・人間・フランク王国)
 ea0448 レイジュ・カザミ(29歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea0729 オルテンシア・ロペス(35歳・♀・ジプシー・人間・イスパニア王国)
 ea0763 天那岐 蒼司(30歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea1450 シン・バルナック(29歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea2767 ニック・ウォルフ(27歳・♂・レンジャー・パラ・イギリス王国)
 ea3777 シーン・オーサカ(29歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea4531 ウルフラム・ナハティガル(28歳・♂・クレリック・人間・ロシア王国)

●リプレイ本文

●今宵も登場、はにゃはにゃ仮面
 それは今日も現れた。
 時は夕暮れ、逢魔ヶ時。
「変な所へ迷い込んだねぇ。そういえば、ここには真実の伝道師が出ると客から聞いたが、まさか今ここに現れたりしないだろうなぁ」
「最近の夜は物騒ですからね‥‥」
 キャメロットの一角、薄暗い路地を進む数人の人影の前に、それはゆっくりと歩いてきた。
 大きい。身長は2mを超えるのではないだろうか? マントとつば広の帽子で姿を隠しては居るのだが、その肉体は有り余る存在感を抑えきれない。
「!?」
 人影の驚きをどう受け止めたのか、
「ふっふっふっふ!」
 『それ』は低い声で笑うと、ばっと帽子とマントを脱ぎ捨てた。
 そこにあったのは『毛』。
 なんかもう、有り余るほどの毛だった。
 筋骨隆々としたほぼ全裸の身体よりも何よりも、どうしてもそこに目が行ってしまう。
 仮面も股間の薔薇もこの際置いておこう。それほどまでに、この存在の目のインパクトは凄まじかった。
 胸元にふさふさと豊かに揺れる毛は、奇妙なほどにナチュラルストレートだ。
 さらにその毛は股間の薔薇で隠れる辺りにまで続いていたりする。
 いろんな意味でヤバい存在だった。
「真実の伝道師、『はにゃはにゃ仮面』参上! 君たち、この世の真実を理解したいとは思わんかね?」
 良く見ると、カイゼル髭さえも生やした、このミスター『毛』。
 致命的なほど朗らかに、数人の人影に話しかける。
 無論、こんな存在に話しかけられれば、脳内で危険信号が点灯しまくるのは当然のこと。
「このっ! 変態仮面っ! 薔薇の世界に帰って一人ではにゃはにゃしててくれぇぇぇ!」
 その人影の中の一人、天那岐蒼司(ea0763)の反応も自然だ。
 魂を込めて全力で身を翻すと、目いっぱいの勢いで遁走を図る。
 だが、涙声な悲鳴が響く前に、その腕はガシリと掴まれた。
「むぅ、これから真理を教えようというのだ、遠慮する事は無いぞ! はっはっは!」
 どうやら余計な刺激を与えてしまったらしい。ターゲットに定められてしまっている。
 身軽な所為か、予想以上に素早い動きが実に性質が悪い。
「それにはにゃはにゃは、実に素晴しい物だ。よし、君から真実を教えてあげよう!」
 ガッシリ頭を掴まれると、逃げられないほどの強烈な力でグイと胸元へ引き寄せられる。
 目の前には‥‥そう、毛が満載だ。
「この身体は、傭兵時代から幾百度と無く水浴びを覗かれ、幾十度と無く、寝込みをいろんな意味で襲われて来たがなっ! 貴様にくれてやるほど安くないし、先刻この身体には、先約があるんだよっ!」
 必死に叫び、振りほどこうとするが、不幸な事に力の差は歴然だ。
 用意しておいた物を身代わりにしようとしても、こう頭がしっかり抑えられては不可能だ。
 抵抗むなしく顔が毛にうずめられる。

 はにゃはにゃ

 初め感じたのは信じられないほど感触の良い肌触りだった。
 ふわふわと柔らかく、滑らかな感触。頬に感じるサラサラとした流れが、一瞬意識を恍惚の世界へ持っていく。
 何だか思わず自分からほお擦りまでしてしまう、それほどの心地よさ。
 そこまで行き着いてしまって‥‥我に返った。
(「今、一瞬、うっとりしなかったか? それもコレはなんの感触‥‥」) 
 それに気付いた時、絶望していた。
 よりにもよって、こんな変態の胸元で幸せを感じるとは!
「うぉぉぉっぉぉぉ!?」
 それはアイデンティティーを守る為の魂の叫びだった。
「ふっふっふ! 真理を知ったようだな。そう、この毛の手触りこそが真理! 至高の幸福なのである!」
 毛に顔をうずめさせられて意味不明の悲鳴を上げる天那岐と真実を伝道した喜びに目を細めるはにゃはにゃ。
 此処に、また新たな犠牲者が誕生した。

●でも、変態度はこっちが上
「さて、次に真実を知りたいのは誰かね?」
 背後に真っ白になった天那岐を置いて、はにゃはにゃが新たなる犠牲者を探す。
 だが、もはや狩人の立場は移っていたのである。
「僕こそが本物の真実の伝道師。葉っぱの素晴らしさをもっと世の中に伝える為に、邪道な薔薇は懲らしめさせてもらうよ! さあ、僕に立ち向かってご覧!」
 宣言も高らかにはにゃはにゃの前に躍り出たのは、キャメロットの新たな怪異『怪奇葉っぱ男』のほしいままにするレイジュ・カザミ(ea0448)だ。
 その股間には薔薇の花‥‥ではなく葉っぱが頼りなげに揺れている。
 微妙に揺れるその影から、モノが見えそうで見えないところが、実に見事。
 伊達に葉っぱ男を名乗っていないと言えるだろう。
「き、きさまが葉っぱ男! 真性の変態か!」
 はにゃはにゃもその名を知っていたのか恐れおののいている。
 だが、更なる脅威が存在していた。
「出たな三流変態が!! 貴様の様な下郎に本物を見せてやる!!」
 自身から変態を名乗り飛び出したのはレオンロート・バルツァー(ea0043)。何故か全身を油でテカテカにぬめらせている。
「顔に羽仮面、股間にはバラ‥‥ふっ、笑止!! その格好が変態だと笑わせるな、それは貴様にまだ羞恥心が有る証拠。そんな三流変態に、この私が負ける筈が無い!!」
 確かに、完全全裸のその姿は真性の変態だ。
 記録係も股間を隠すのに必死である。
「貴様に本物の凄さを貴様の身体に味合わせてやる!」
 ポージングしながら意気込む姿は、余りにアレだ。
 なんと言うか冒険者ギルドから退治の依頼が出てもおかしくない程。
 実際、この三者が並んでいると、露出度的に冒険者たちから倒すべきなのではと思いたくなる。
 そんな印象を抱きながら、囮となった最後のメンバー、シン・バルナック(ea1450)はオーラソードを呼び出すとはにゃはにゃに突きつけた。
「仮面の変態さん‥‥あなたは二つミスをしました‥‥一つ目は丸腰だが私はオーラで武器を作れる事‥‥もう一つは『慈悲深き死刑執行人』の私に敵と見なされてしまった事です」
 だが、はにゃはにゃは聞いちゃいない。
 レオンロートとレイジュ、二人の強烈な変態に囲まれてそれ所ではない様子。
 無理も無い。
 その様子を無視されたと感じたのか、
「ふははははっ!! はにゃはにゃよ!! 光になれえぇぇぇぇぇ!!」
 シンがキレた。
 オーラアルファーを発動すると、はにゃはにゃを吹き飛ばそうとする。
 此処で余談だが、オーラアルファーは術者の全周15m内全てのものに効果を及ぼす魔法である。
 それが意味する事はただ一つ。
「「「「うわぁぁぁっ!???」」」」
「あ、しまった」
 はにゃはにゃはもちろんの事、レオンロートやレイジュ、さらには真っ白に燃え尽きていた天那岐も吹き飛ばす事になる。
 大惨事だった。

●毛よさらば
「‥‥くすくす、楽しそう‥‥」
 その様子をウルフラム・ナハティガル(ea4531)は十二分に堪能していた。
 囮がはにゃ被害に遭うのを、物陰からつぶさに観察していたらしい。
 助けろよ、とか言う意見もあるだろうが、そこはそれ。
 それはさておき、オーラアルファーで吹き飛んだはにゃはにゃが近くに着地(落下とも言う)を見て取ると、ウルフラムはそっとその傍に座り込んだ。
「あの‥‥わ、私も、して‥‥ほしい‥‥」
 頬が上気していたり目が潤んだりしているのは気にしてはいけないことなのだろう。
「う、うむ、そうか‥‥」
 吹き飛ばされたショックで意識が朦朧としているはにゃはにゃもその様子に気がついていないのか、無造作に近寄る。
 その無防備なはにゃはにゃの胸元に銀光が走った。
 ハラリ‥‥舞い落ちる毛。
「な、なんと!?」
「アハ♪ 可愛い‥‥」
 なんと、ウルフラムは隠し持ったナイフで、はにゃはにゃ自慢の胸毛を根元から一気にそり落としていたのである。
 流石にコレには深刻な心理的ダメージを受けたらしい。
「わ、我輩の‥‥はにゃはにゃが‥‥」
 はにゃはにゃはヨロリと立ち上がると、弱弱しく後ずさる。
 その背後から突如ウォーターボムの洗礼が襲った。
「はにゃはにゃ敗れたりっ!」
 振り向くと、シンの隣に白地に黒の縦じまの入った上着や紙をまるめて作った円錐形のものを持ち、額に『トラ必勝』と書いたハチマキを巻いてたシーン・オーサカ(ea3777)が立っていた。
「毛ぇ濡れたら重うて動き辛いやろっ! どーや?!」
 そのとおりなのだが、いまのはにゃはにゃには肝心の胸毛が失われている。 
 まぁ、腹毛とかその他の毛はまだ無事なので、濡れて動きにくいのは確か。
 そこへ追い討ちとばかりに、
「レオっち! コレ使って一発キツいのキメたって!」
 と、何故かアイスコフィン氷付けにされたニック・ウォルフ(ea2767)をわたして殴りつけさせる。
 それが止めになったのであろう。
 心理的、身体的ダメージに耐えられなくなったはにゃはにゃは、
「わ、我輩の負けである‥‥」
 がっくりと膝を突いて降参するのだった。

●オシオキは念入りに
「寒くて‥‥眠い‥‥あ、天使さまがお迎えにき‥‥た」
「こら、寝たら死ぬで!」
「暖かい‥‥光が‥‥‥‥あ、シーンさん」
 ニックが解凍し、遠い世界へ旅立つ一歩寸前で呼び戻されたりする頃には、はにゃはにゃはすっかりおとなしくなっていた。
 やはり自慢の胸毛を剃られてしまったのが痛恨だったのだろう。
 先ほどまで毛布かぶってあったかいミルクを飲むニックの横で、
「どうだっ!? 熱いっ!? 冷たいっ!? 痛いっ!? 気持ちいいっ!? だらしがねぇなぁ、オイッ!!?」
 天那岐に形容しがたい行為を行われていたり、オルテンシア・ロペス(ea0729)に鞭とロープを使って逆エビの体制で手と足を繋いで縛り上げられたり、全身の毛で転がされて丸められたり、三つ編みにされていたりとおもちゃにされていたのだが、余り反応が無い。
 とりあえず、オルテンシアは仮面を剥いだはにゃはにゃが何気に渋めのいい男だったのが気に入ったらしい。
「男が好きみたいだけど‥‥たまには女も相手にしてみたら?」
 今はその豊かな胸に、はにゃはにゃを抱いていたりする。
 男性陣にはある意味羨ましい光景と言えるが、よくよく見るとはにゃはにゃは先ほどから息ができていないようなので、なんとも微妙。
 その様子を見つつ、
「‥‥お腹、一杯‥‥ウフフ」
 ウルフラムは満足そうな笑みを浮かべるのだった。

 その後、はにゃはにゃは全身の毛という毛を毛根から抜かれ、再起不能になったということである。