トトからの微妙な依頼 〜仮面編〜

■ショートシナリオ


担当:まひるしんや

対応レベル:1〜3lv

難易度:易しい

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:07月17日〜07月22日

リプレイ公開日:2004年07月28日

●オープニング

「やぁ、君たちが僕の依頼を受けてくれる冒険者かい?」
 冒険者ギルドに現れた青年。どうもウィザードが学者らしいこの青年は、冒険者たちの姿を認めると気さくに話しかけてきた。
「おっと、自己紹介が遅れたね。僕はトーマス・トースター。魔法のアイテムや珍しい物品について研究しているんだ。トトって呼んでくれると嬉しいな」
 そういうと、トトは懐から何かを取り出した‥‥仮面だ。それも蝶をかたどった仮面だ。
「君たちも最近仮面をつけた盗賊が出た話をしってるだろ? それも随分と常識を逸脱した姿だったって話じゃないか。じつは、コレはその中の一人が身につけていたものなんだけど、僕はコレ自体が怪しいと思っている」
コレ自体? 例の変態は仮面が原因だと言うのか?
「そう、この仮面をかぶった事で、彼等がおかしくなったんじゃないかと僕は仮説を立てたんだ。でも、仮説だけじゃ立証はできない。仮説を裏付ける信頼の置ける実感結果が欲しいんだ。そこで、君たちの出番さ」
 意味ありげに笑うトト。冒険者たちに何か言い知れないやな予感がよぎる。
「で、それで俺たちに何をしろと?」
「この仮面をつけて暫く過ごしてくれ。そうだな、期間は一週間。寝るときも酒場でも、ずっとつけっぱなしで頼むよ。何の拍子で目覚めるか判らないし」
 ザワ‥‥冒険者たちに動揺が走った。
 コレを? つけたままで? 何考えてやがるんだ、こいつは。そもそも何に目覚めるって言うんだ?
「ちなみに、仮面をつけて『目覚め』たらボーナスを出すよ? 何しろ仮説が正しかったことになるんだから」
(「ボーナスの変わりに、何か大切なものを失うダロ」)
 とはいえ、ボーナスは魅力だ。おまけに危険は無いに等しい(別な意味でのある種の危険はあるが)ときている。
 未だに話し続けるトトを見つつ、冒険者たちは羞恥心と報酬とを慎重に天秤にかけるのだった。

●今回の参加者

 ea0258 ロソギヌス・ジブリーノレ(32歳・♀・レンジャー・人間・エジプト)
 ea0728 サクラ・クランシィ(20歳・♂・クレリック・エルフ・フランク王国)
 ea1303 マルティナ・ジェルジンスク(21歳・♀・レンジャー・シフール・フランク王国)
 ea1704 ユラヴィカ・クドゥス(35歳・♂・ジプシー・シフール・エジプト)
 ea2220 タイタス・アローン(31歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea2681 フーリ・クインテット(20歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea3130 ザキ・キルキリング(31歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea4879 ムネー・モシュネー(22歳・♀・クレリック・ドワーフ・イスパニア王国)

●リプレイ本文

●報告書序文
 青年トトから仮面を借り受けた冒険者達。
 かれらはそれぞれ思い思いに仮面をつけた生活を送っていた。
 では、それぞれがいかにこの一週間を過ごしたのか、一人づつ順を追ってみて見よう。

●仮面の生活 〜ロソギヌス・ジブリーノレ(ea0258)の場合〜
 まずは、ロソギヌスからである。
 キャメロット城の門前に彼女はいた。
 何気にボロボロなのは、今しがた城から追い出された所為である。
「な、ななななんでですか!? 差別ですか!? 仮面の人はお城にも入れないというんですか!?」
 そういうことも無いだろうが、ただひたすらに怪しいのは確か。
 最近はアレな変態がキャメロットでも現れている為、同類に思われたのかもしれない。
「なんかお店に入ってもコワモテのお兄さんに叩きだされるし‥‥あ、こら! 子供たち、石を投げちゃ‥‥痛たた‥‥いけませんよ〜」
 その哀れっぷりとダメっぽさは、かなりのものだ。
 子供たちから棒でつつかれたり石を投げられたりと、転落人生まっしぐらといった風情すらある。
 そんな調子で数日暮らすうちに、見事に路上で行き倒れたりしているロソギヌス。
「くぅ、仮面なだけで世の中はなんて冷たくなるんでしょうか。この仮面、やっぱり呪われてるんですかねえ‥‥なんだか眠くなってきましたよ‥‥」
 夏場ゆえに凍死とかそう言ったことはないはず。お約束的幻影が見えるのは、ただ単に空腹ゆえ。
 そんな調子で路地裏で寝転がる事一日。
「‥‥あ、道端で丸一日寝こけてしまいました!」
 我に返ったらしい。そこでふと、一日寝ていたにも拘らず盗みなどにあっていないことに気付く。
「‥‥これってひょっとして選ばれた人間の証とかそんなのですか!?」
 違います。
 とはいえ空腹やその他もろもろの為思考がトんでいるロソギヌスがそれに気付く事は無い。
「ふっふっふ、仮面のみなさん、待っててください! 超常で同盟なアレをアレしてアレを結成して大暴れですよ!!」
 なんか微妙に壊れたらしい。
 その後、近くの飲食店で恐喝罪及び無銭飲食で捕まえられた仮面の人物が居るとの事。
 なんとも微妙であった。

●仮面の生活 〜マルティナ・ジェルジンスク(ea1303)の場合〜
 彼女は、まるっきり普通の日常生活を送っていた。
 共に参加した仲間の手伝いもしようとも思うが、誰しも急に弾けた事を出来るわけではない。
 そもそも、まだイギリスに来て間もない彼女。
 言葉が片言の所為か、店などで知らない野菜を売られたりと只でさえ苦労も多いのだ。
「仮面をつけて‥‥‥どうしよう? とりあえず‥‥出歩いちゃいけないとかじゃないから、日払いで私なんかでもできる仕事さがしてみようかな?」
 そんな調子で幾つか職を探すマルティナ。
 とはいえ、普通の生活を送っていても、仮面をつけていては怪しい人物に見られても仕方が無い。
「配達とか、掃除(清掃)とか・・・・・・仮面とらないとダメ? 客商売だから仮面取れ? 目障りだから取れ? 素顔が見たいから取れ? ‥‥‥そうだよね?」
 職が見つからず、激しく落胆するマルティナ。
 何気に職ではない方向で声をかけられた気もするが、それはスルーだ。
 そんな調子で、いささか日常生活に支障をきたしつつも、普通に過ごすマルティナ。
「トトさんの考えが立証できれば私も嬉しいけど‥‥私はどうなってるんだろ? 目覚めて、すべてを失うのかな?」
 そう考えると、普通に過ごす方がどう考えてもいいような気もする。
 そんな調子で一週間過ごしたマルティナは、ごくごく普通に依頼を終えるのだった。

●仮面の生活 〜ユラヴィカ・クドゥス(ea1704)の場合〜
「でゅわっ!」
 奇妙な掛け声と共に仮面を装着したユラヴィカ。
「ついでに『ステキな服』を仮面をつけた全員におそろいで用意してもらいたい!」
 何だかテンション高く、トトに対して申し出る。
「全員に? う〜ん、研究費が心もとないから、とりあえず君の分は用意してあげよう。でも、後で返すように」
 とはトトの返事。案外けちの様だ。
 それはともかく、用意されたのはびしっと決まった礼服。
 なんともエレガントだ。
 かくして、礼服を着込むユラヴィカ。
(「よし、これで、『覚醒』と思わせつつ、大概の人の注意が仮面と服に集中するので却って個人の印象は覚えられ難くなるはずだ」)
 といった意図もあるようだが、いかんせん礼服は普通のものなので仮面の方がはるかに目立っている。
 中々思い通りには行かないものである。
 また、ユラヴィカはシフールでジプシーのため、実は仮面をつけて礼服を着込んだとしても違和感がなく、体の小ささの為余り目立たない。
「シフールサイズの仮面は、探すのに手間取ったけど効果はどうかなぁ?」
 トトもサイズの所為で気付きにくい仮面に不満のようだ。
「ほんとに仮面で『目覚めた』かどうかは、自分でつけてみるのが一番手っ取り早いと思うんじゃがのー」
 また、ユラヴィカもトトに仮面の着用を促すのだが、
「観察者が正気を失うわけには行きませんから」
 とにべもない。
 そんな調子のユラヴィカ。結局目覚めたっぽい発言や合言葉を作るものの、ボーナスを貰うまでには至らなかったそうである。

●仮面の生活 〜タイタス・アローン(ea2220)の場合〜
 彼に関して記述する事項は、余り多くない。
 ただ、仮面をつけたとたん、近くの森へと走り出し、その後一週間雄たけびのようなものが盛りに響き渡っていたことは、森の周囲に住む住人の苦情から明らかになっている。
 おそらく、何かに目覚めるのではなく、壊れてしまった可能性が高いと思われる。
 また、最終日の夜トトが何者かに襲撃され、ちょっとボロボロになった際にも、彼らしき姿が目撃されていたという。
 はたして、それが真実なのかどうなのか‥‥
 とりあえず、依頼後折角出たボーナスが取り上げられてしまった事を此処に明記しておこう。

●仮面の生活 〜ムネー・モシュネー(ea4879)の場合〜
 ムネーはトトから仮面を受け取る際に
「実験結果をどこかで発表するならば、我ら結社の検閲を受けろ。本来は世に出回る筈の無いもの」
 と釘を刺していた。
「???」
 首をかしげるトト。
 なにやらムネーの背後には妙な組織でも存在しているかのようである。
 もっとも、トトは余り気にしていないようだ。
「良くわからないけど、発表する気は無いよ。この研究は個人的な趣味だから」
 というか、もっと気になることをいわれたような気もする。
 そんな調子のムネーだが、実験が始まり仮面をつけた途端、
 「ザキ! ロソギヌス! 私は人間をやめるぞ!」
 と叫び、つけた途端、ビクンビクンと痙攣しながらWHRYYYY !と哄笑をあげて背中を逸らし、その後どこかへ走り去ってしまった。
 その後一週間夜な夜なキャメロットの至る所に結社の旗を立てて声高らかに占領宣言する怪しげな人影があったとの事。
 さらには、トトの周囲をなにやらかぎまわる怪しい人影も会ったとの事。
(「あの学者、やはり我らの大願成就の秘密をかぎつけるやもしれぬ」)
 もっとも、トトは神経が図太いのか、余り気にしていない様子。
 もっとも、依頼後、
「元から目覚めていた可能性が高いね」
 という理由でボーナスを拒否されたところをみると、依頼主の周囲をかぎまわるのは余りよろしくなかったようだ。
 希望していた仮面回収もかなわなかったようで、残念なムネーであった。

●仮面の生活 〜サクラ・クランシィ(ea0728)とフーリ・クインテット(ea2681)及びザキ・キルキリング(ea3130)の場合〜
 サクラは、仮面を手にしながら思案に暮れていた。
「何かを失うかも‥‥か。そういえばフーリは『失う物などない』と言っていたな‥‥‥‥俺はまだまだ真人間だぞ。金の為に人間を捨てたりはしないぞ。でもこういう依頼では真人間を続ける方が一番の変態なんだろう?」
 微妙に自己弁護的セリフは、常識人としての最後の一線を守りたいという自己防衛の表れか。
 もっとも、その仮面を見る目つきは十分にトんでいた。
「ところで、この仮面はなんだ? 蝶をかたどっているのか?‥‥‥‥微妙に趣味が悪いぞ。物事、中途半端はいかん。地味なのか煌びやかなのかはっきりしない辺りが特に不満だ。どうせならこの辺りにラメをつけたりだな……どうせなら、ここあたりに仕掛けをつけて、紐を引っ張ると蝶が羽ばたくとかだな‥‥‥‥うむ、やはり『目覚め』というからにはこれ位は必須だろう」
 なんか仮面を改造したらしい。
 必要以上にデコレーションされ、ギミックつきとなった仮面は微妙さすら通り越している。
 そこでふと疑問に思うサクラ。
「ところでトトは実験結果を待つのみなのか?」
 どうやら、トトも巻き込みたい様子。
 だが、トト曰く、
「いやですねぇ、研究者がモルモットになってどうするんですか」
 との事。
 微妙にアレな発言のような気もするが、依頼主でもある以上その意向に逆らうのは無謀だ。
 しかたなく仮面と黒マントを羽織るサクラ。

 同じ頃、ザキはというと‥‥
「娘の養育費の為に、お金が必要なのです」
 そう意気込んでいた。
 養育費の為には自分を捨てるのをいとわない覚悟のようだ。
 とはいえ、自分から率先して何かに目覚めるつもりは毛頭無いらしい。
 そこで、何か仕出かしそうなサクラとフーリについていくつもりの様子。
 とりあえずは、何か起きるまでは普通に過ごすつもりのようだが、どうなる事やら

 一方、フーリは‥‥
「‥‥‥素敵な依頼のお陰で漸く俺は蛹から蝶になれる‥‥‥」
 何だか妙な衣装を手に、いい感じで盛り上がっていた。
 どうやら、奇妙な衣装を仮面と共に身につけるつもりらしい。
 樽のようなものを手足と胴体につけ、さらに頭にもかぶって出来上がったのは‥‥
「涼感ゴーレム『風鈴1号』」
 なんか、仮装っぽい何かだ。
「‥‥今迄街を胸を張ってこの格好で歩く事は叶わなかった‥‥仮面をつけた今こそ!」
 何だか意気込んでいるらしい。
 そんな調子でサクラと共に街に繰り出すフーリ。二人についてゆくザキ。
 そして、それははじまった。

「ふっ、心頭滅却すれば女装もショタ装もまた涼し!」
 サクラが黒マントを脱ぎ捨て、赤い首飾りと半ズボン姿になれば、
「‥‥トト、ボーナスを」
 風鈴1号姿で町行く人々の頭の毛を狙うフーリ。
 マスクとビキニパンツとマントだけで屋根に上り、
「パーピヨーン!」
 と叫ぶザキ。
 なんともアレだ。
 さらにザキは事前に用意しておいた灰を使って、アッシュエージェンシーで自分と同じ姿の分身を作り出し、
「私は『増殖する悪夢(変態?)』! グランドクロスの怪人だ!」
 と宣言。
 分身に黒地にXの旗を振らせたり、町を練り歩きだす有様。
 とりあえずザキ、本当に娘さんがいるなら、きっと泣いているぞ。
 はてにはフーリは用意した衣装すら脱ぎ捨て、踊りだす始末。
 これには町も悲鳴の嵐だ。
 そんな調子で‥‥その後直ぐに警備隊に取り押さえられた三人。
 その後釈放されたが、折角トトから出たボーナスは、罰金に消えてしまったそうである。