月夜の恋物語
 |
■ショートシナリオ
担当:まひるしんや
対応レベル:1〜3lv
難易度:普通
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:07月18日〜07月23日
リプレイ公開日:2004年07月30日
|
●オープニング
その依頼を受けることにした冒険者たちは、ギルドの一室へと通された。
そこにはけだるげな美女が一人。
入ってきた冒険者たちを一瞥すると、興味がなさそうな様子で窓の外へ視線を向ける。
それ以後、一言も発しない彼女へ、戸惑いと共に語りかけようとする冒険者。
「あの‥‥」
それを遮るように、美女は語りだした。
「あぁ、すまないねぇ。ちょいと考え事をしちまってね? アタシはエルラーミカ。ミカってよばれてる」
妖艶な色気と、退廃的な同時に何かに疲れたような気配をにじませてその美女、ミカは冒険者たちを見つめた。
「アタシが頼みたいのはさ、アタシに近寄ってくるあるボウヤを何とかしてほしいのさ。‥‥って言っても、力ずくでどうこうって訳じゃないよ? 出来るだけ穏便にアタシの事を、嫌うように仕向けて欲しいのさ」
なんでもその少年、リシェルは彼女と隣同士の家で度々彼女の元を訪れていたらしい。
はじめは可愛い弟のように感じ、可愛がっていたミカだが、次第にリシェルから彼女への視線が変わっていくのを意識し、コレではいけないと感じ始めたという。
「アタシは、見てのとおりのオンナさ。アタシみたいなのに、これ以上あの子が囚われちゃいけない。あのボウヤにはもっとイイ相手が居るはずさね。で、アンタ達に頼むのさ。出来るだけあの子を傷つけないように、アタシから遠ざけてくれないかい?」
けだるげな中、瞳だけは真摯に冒険者たちを見つめ続ける。
そして数刻後、同室で暫く待たされた冒険者たちは、ある少年からの願いを聞くことになる。
「はじめまして。ボクはリシェルって言います。今日は貴方たちにどうしてもお願いしたい事があるんです‥‥‥? どうしたんですか? 何だか驚いたような顔ですけど‥‥」
冒険者の戸惑いを感じたようだが、リシェルは気にせず続ける。
「ボクには、幼い頃から憧れた女性が居ます。エルラーミカ姉さん、ボクはミカさんて呼んでいるんですが‥‥」
ミカの名で冒険者たちは確信する。この少年が先程のミカの言った当人だと。
「このミカさんにずっと長年抱いてきた想いを伝えたいんです。『好きだ』って。でも、最近、ミカさんはボクを避けているみたいで‥‥お願いします。ミカさんへの想いを伝える為に、力を貸してください!」
さて、これはどうしたものだろう?
穏便に別れたいと願う美女と結ばれたいと願う少年。
どちらの願いを聞き届けるべきなのだろう?
●リプレイ本文
●二人の揺れる恋模様
揺れる想いを抱えたリシェルとミカの願いを聞いた冒険者達。
二人の願いは相反するもの。
だが、その根底に流れるのは、互いを想う心だ。
「うーん‥‥なんかいろいろ複雑な依頼だな。お互いの気持もわからなくはないし、でもお互いの知らないこと知ったらいろいろ変わるかもしれない。ミカさんにとっては知られたくないことかもしれない。だけどそんなにリシェルさんも子供じゃないし、真実を知った上で気持ちを再確認したらいいと思う」
アクア・サフィアート(ea0355)の言葉もそれを感じ取ったもの。
それ故冒険者たちは決断を下した。
どちらの依頼を受けるでなく、双方がお互いの事を知り合うのが先だと。
かくして、まずはこの二人の事を調べる事にしたのだった。
「ミカの過去に関しては詳しい事はわからなかったな。10年前くらいにキャメロットに来たらしいが、その時には、既に今の職で生計を立てていたらしい。リシェルとはキャメロットに来た直後にであって、それからの仲の様だな」
神聖騎士のシーヴァス・ラーン(ea0453)は、あちこちでミカに関して聞き込みをし、その内容をまとめていた。
エルラーミカの素性は、この町の生まれでない為はっきりとはわからなかったらしい。
本人に尋ねてみても、
「すまないねぇ、昔の事はあんまり覚えていないのさ」
この町に来る以前の事は余り話したくは無い様子。
少なくとも、話をしていて感じる印象は、その容姿の印象に反して情が深く世話好きな面があるという事。
シーヴァスはその様子から自堕落さから今の職に就いたとは思えず、何か事情があると感じたが、それが何かについては判らずじまいだった。
同じ頃、李明華(ea4329)は、リシェルに付いてまわっていた。
依頼を受けた以上、詳しく話を聞く必要があるというのがその名目である。
「ねぇ、リシェル君。ミカお姉さんってどんな人ですか?」
道すがら、何気なく問いかける明華。
こんなことを尋ねれば、リシェルの反応は決まっているも同然だ。
「ミカ姉さん? とってもやさしいんですよ。それに会った時からずっと綺麗で‥‥ボクはずっと憧れていたんです。それに、それに‥‥‥」
際限無くリシェルの口からこぼれるのは、エルラーミカがいかに素晴しい女性であるかという事と、その魅力。
ウィザードでもあり、学問に関しても知識が深いリシェルは、その知識と豊富な表現力を総動員してそれを語っていく。
それを聞きながら、ふと思いついたかのように、明華が問いかける。
「リシェルさん冒険者ですよね? それなら一般の人より裏の面を知っているとは思いますが、ミカさんにも人に知られたくない面も有ると思いますよ」
それを聞き、口をつぐむリシェル。
「‥‥‥知ってます。ミカ姉さんがボクに秘密にしていることが幾つかあるって‥‥ボクは、ミカ姉さんがそれを教えてくれるのを、待っているんです‥‥」
その横顔に浮かぶのは、寂しげな表情。
明華は、リシェルのその表情を見て、リシェルの想いが本物である事を改めて察するのだった。
一方、ミカの勤める店では、セレス・ブリッジ(ea4471)が店主に聞き込みをしようとして逆にスカウトされていた。
「いえ、ですから私が勤めたいわけではなく、ミカさんがここで働くようになった理由を知りたいのですけど」
スカウトを断りつつも聞き込みを行うセレス。
断片的に話を聞けたのだが、半分はシーヴァスと概ね変わらない情報だった。
他には、ミカは妙に客受けがいい事などや、ミカのもてなしを受けた客は不必要に頑張り過ぎたのか大概疲れた顔をしているということ。が、今回の件に関してその情報が果たして役に立つのか、いささか微妙なところがある。
とはいえ
「年の差なんて種族問題に比べれば‥‥」
と考えるセレスが想う結末は、実質両思いの二人が結ばれる事。
聞き込み(と、勧誘の拒否)を続けながら、セレスは男女間の問題についてふと考え込むのだった。
●二人の知る、お互いの秘密
夜もふけた頃、フレィム・ドラーディン(ea4688)はミカから彼女の職に関して話を聞いていた。
「アタシの仕事をそんなに聞いてどうしようってんだい? エルフのお兄さん」
同じテーブルに着くのは、他にはシーヴァス。
今後、この依頼をどうやって成功させるか、ミカも交え話し合う名目だったのだが、話がいつの間にかそういう方向になっていたらしい。
と、酒場が一瞬静まり返り、その後朗々とした歌声が響き渡った。
「ある裏町の娘ミラルカと冒険者リシェイルのお話。リシェイルは愛するミラルカに想いを告げるが、ミラルカはひた隠しにする己の職業故に、彼の求愛を受け入れる覚悟が出来ない。ましてや、彼女は籠の中の鳥。年季が明けるか、身代金を支払うまで彼女の身に自由はない。しかし、リシェイルはへこたれない。必ず彼女を迎えに行くと誓い、何度も危険な冒険に乗り出す。しかし、ああなんたることか、ついに彼は冒険の最中、命を落としてしまう。ミラルカは冷たくなって戻ってきたリシェイルの前で号泣し、彼の愛用していた剣で己が胸を貫く‥‥」
それは、バードであるラージュ・ヴァルディーナ(ea4228)の歌声だった。
「これって‥‥」
ミカがその歌詞を聴き、表情を変える。
そこに歌われているのは、脚色が加えられ、少々あからさまにされた彼女とリシェルの様子ではないのか?
「ちょっと、一体コレってどういう‥‥」
ラージュに詰め寄ろうとするミカ。
そのとき、酒場に新たに入ってくる集団があった。
「ボクの仕事も手伝ってもらえるなんて、光栄です。おかげでスムーズに依頼をこなせました」
「面倒を見るのは嫌いじゃない。だりいがな」
それは、リシェルを先頭とした、市川葉(ea0678)他数人の冒険者。
どうやら依頼ついでにリシェルの受けていた依頼を手伝っていたらしい。
と、そのとき店内を見回していたリシェルと、ミカの視線がぶつかりあった。
「え? ‥‥ミカ姉さん?」
「リ、リシェル‥‥‥」
呆然と向き合う二人。
心の準備もなしに出会ってしまったためか、お互い言葉も無い。
そのとき、さらに新たな声が響いた。
「おや、お嬢さん。こんな餓鬼とまずい酒なんか飲んでないで私と一緒に飲まないか? ‥‥そういえば、お嬢さんの姿、この先の店で見たことがあるな。あれはなんて店だったか‥‥」
首をかしげ、店の名を思い出そうとするその酔っ払い。実は夜枝月奏(ea4319)だった。
呆然としていたミカの腕を取り、絡んでみせる。
無論、リシェルはすぐさま激昂、
「ミカ姉さんから手を離せ!」
夜枝月とミカの間にわって入る。
「餓鬼は向こうでミルクでも飲んでな、俺はこのお嬢さんと飲むからよ」
だが、夜枝月は気にした様子もなく、ミカにさらに近づく。
だが次の瞬間、
「リシェル!」
怯えるようにリシェルの方へと逃げるミカに突き飛ばされ、近くの柱に頭を打ち、気絶してしまう。
‥‥‥憎まれ役を買って出たとはいえ、その姿はなんとも哀れ。
だが、そのかいあってか、リシェルとミカは思いもよらぬほど急接近していた。
お互いの秘密としてきた部分の一端を、お互いが知ったのだ。
微妙な雰囲気になるのも無理は無い。
そして‥‥冒険者たちから、お互いが依頼を出していた事を知らされると、
「互いに想うならまずは話し合ってみるのもひとつの手だ。手札を公開し、その上で考えてみるのも遅くはないと思うぞ?」
冒険者たちの手で、二人っきりにされるのだった。
リシェルとミカ、二人自身で決着をつけさせる為に。
●終わり? いえ、始まり
その後に関しては、実は余り特筆すべき事が無い。
お互いの隠してきたことを明かしあった二人。
コレから一気に話が進展するかと思いきや、双方が双方何か想うところがあったらしく、暫く様子を見るということになったのだ。
どうやら、性急な決断は避けたようである。
だが、リシェルとミカのお互いを見る目が非常に意識したものに変わっているのは確か。
恋模様はこれからいくつも局面を迎える事になるだろう。
その先にあるのは何か、これからどうなるのか、それはまた別の物語で語られる事になるだろう。