ネズミ退治は大仕事
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■ショートシナリオ
担当:まひるしんや
対応レベル:1〜3lv
難易度:普通
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:06月14日〜06月19日
リプレイ公開日:2004年06月22日
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●オープニング
キャメロットからほど近いある村。此処では、今ある問題が持ち上がっていた。
「今年も奴らの被害は深刻だ。ここ数日でかなりの作物が食われてる」
集会場に集まった村人達は、口々にその惨状を訴える。
皆一様に重い表情だ。
「去年は数が少なかったが、今年は多めだな。早いうちに何とかしないと不味いぞ」
「今のうちに手を打たないと奴らは増えるばかりだからな」
件の問題の相手、そのことを口にする度、村人の顔に怒りの色が見え隠れする。
そして、一通り話が終わったところで、村長は結論を下した。
「では、今年もキャメロットに使いを出すとしよう。毎年と同じようにな」
かくして、冒険者たちへ出された依頼。それは、
「ネズミ退治?」
「そうだ。毎年の事なんだが、ネズミが畑を荒らすのさ。で、お前さん達みたいな新米冒険者にそれを退治させてるって訳だ」
なんでも、キャメロットから片道1日半ほどの村から話が来ているらしい。
報酬はさほど高くはないということだが、そう長い旅をするでなく相手がネズミだけに危険は少ない。
となると新人冒険者の腕試しにには持って来いという事になる。
「お前さんたちも酒場でクダ巻いてるよりも、何か仕事した方が実入りがいいだろう? 暇つぶしと思ってやってみたらどうだ?」
確かに、酒場で飲んでばかりでは、腕も鈍るというもの。
軽い運動をすると思えば悪くないかもしれない。
そんな乗り気な冒険者たちを見た冒険者ギルドの男は、イタズラ気に頬を緩める。
「ただ、な」
「ただ、なんだ?」
「いや、気にするな。行ってみりゃわかる事だ。まぁ、気楽に行って来るといい。上手くいけば新鮮な野菜でもてなしてくれるさ」
意味ありげな笑みをいぶかしむ冒険者たち。
彼らは知らない。
退治すべきあいてが、ネズミはネズミでもジャイアントラット(巨大ネズミ)である事に。
●リプレイ本文
●果たして任せてよいものか?
ネズミの害に悩む村。
短い旅の後たどり着いた冒険者達は、村長をはじめとする村の住人から出迎えられていた。
「我々は確かに新米冒険者である身、然し引受けたからには万全を尽す‥‥心安くいるがいい」
自信たっぷりに村長に告げるのはシーヴァス・ラーン(ea0453)。
神聖騎士として従事する人物であり、駆け出しとはいえ、ウーゼル特有の戦技を身につけた人物でもある。
だが、その彼を見る村長の目はいささか不安げだ。
(「何故、普段着そのままの姿なのだろうか?」)
その目は、明らかにそう語っていた。
そう、他の冒険者達が、思い思いの武器や防具等の装備に身を包む中、シーヴァスだけはまるで酒場にでも出向いたかのような身軽な姿だ。
一応、剣などの装備を持ってきてはいるようだが、大丈夫なのだろうか?
さらにその後ろに視線を移した村人達は、一層の不安をかき立てられる事になる。
「あらあら‥‥ネズミさん達がですか? じゃあ、懲らしめないといけませんね」
「我が初陣、勝利で飾って見せねばならぬ」
初陣に心躍らせる二人の女性神聖騎士、ニルナ・ヒュッケバイン(ea0907)とヒカル・サザンテンプル(ea1884)。
シーヴァスと異なり、戦いの準備も万全なこの二人。
問題は、村人達にその言葉が伝わっていない事だ。
そう、二人は神聖ローマ帝国の生まれであり、その生来話してきた言葉はラテン語。同時にいまだイギリスの言葉に不慣れなのである。
そもそも、共に依頼を請け負った仲間達とさえも通訳を介さねば意思の疎通が出来ない有様。
酒場やギルドのシフール通訳に慣れすぎてしまっている所為かも知れない。
「可愛らしいお嬢さんの馬に乗せてもらえて光栄ですね」
今の所、ヒカルの馬に乗っていたイギリス語とラテン語共に堪能なジプシー、ユエリー・ラウ(ea1916)の助けを借りて事なきを得ているものの、とっさの時にはどうなるのか?
不安は募るばかりだ。
(「今年の冒険者はハズレかもしれない」)
言葉には出さないが、村人の脳裏に浮かんだ言葉は、余りとはいえ無理も無いものであった。
●それでもガンバル冒険者
とはいえ、初めての依頼に対する冒険者達の意欲は本物。
挨拶が済むと、早速各自で情報収集を始めていた。
「ネズミがジャイアントラット? 話が違うんじゃないか?」
村人から、真相を聞き驚きの声を上げたのはラーサ・カーディアル(ea0753)。
モンスターの知識もあるこの戦士の驚きは、当然といえば当然だ。
だが、村人が言うには、これは冒険者ギルドなりの今後への教訓であるらしい。
駆け出しの冒険者に対し、依頼を受ける時点で不確かな情報を与える事で、今後正確な情報の大切さを教えるのが目的らしいのだ。
また、ジャイアントラットが相手なら駆け出しの冒険者でも十分に対処できる。
それらを考慮に入れた、誤情報なのである。
「たしかに、これくらいなら僕でも出来るかなぁ。とりあえずネズミは怖くないし」
別の村人から話を聞いていたジプシーのトア・ル(ea1923)もそうもらす。
もっとも、中には
「ジャイアントラットですか。それは、ますます楽しくなってきましたね」
等と不穏当な言葉をこぼす者もいたのだが。
とにかくそういった訳で、情報の大切さを再認識した冒険者達は、ジャイアントラットの大まかな数やこれまでの被害の状況など、事細かに聞き出して行く。
それによれば、ジャイアントラットは8匹ほどの小さな群れを作っているらしいとの事。
昼間は姿を見かけず、夜になると畑にやって来ているらしい事。
散発的に村の周囲の畑を荒らしているが、被害は村の東側に多い事。
去年までのネズミは、村の東の森に巣を作っていた為、今年もそうなのではないかとの予想。
聞き出したいくつもの村人の話をまとめると、やるべき事が見えてくる。
「そのジャイアントラットが好きな野菜を少し分けてくれませんか?」
そうやって村人から野菜を貰い受けると、夜桜翠漣(ea1749)は村の東側、森から畑へと向かう獣道へ罠を仕掛け始めた。
武道家ながら、猟師の技や様々な動物、魔物の知識をかじっているだけに、その罠は的確だ。
それなりに大きな動物が暴れても決して逃さないような仕掛けや獲物の接近を知らせる警戒用、ネズミを仕留める為の物などが無数に作られ、それとわからぬよう隠されてゆく。
村人の助けも借りて、その準備は着々と進んでいる。
同様に罠を仕掛けているのは翠漣と同じ華国出身の武道家鬼哭弾王(ea1980)。
「これなら、引っかかったネズミの行動を多少は阻害できるんじゃねぇかな?」
そう言いながら作るのは網を使った捕獲用のもの。
翠漣のものと同様に野菜でネズミをおびき寄せ、それに噛り付いた所をあらかじめ敷いておいた網を引き上げて絡めとる仕掛けだ。
殺傷力は無いが、確かに動きは妨げられるだろう。
こうして、ネズミ退治の準備は整えられたのだった。
●私たち、ちゃんと役に立つんです
村の東の森。
そこにネズミの巣穴を探しにきた冒険者達は、迷うことなくあっさりと目的の場所を見つけ出していた。
尤も、まったく迷わなかったのはラーサとトアのおかげだろう。
ラーサがその知識からジャイアントラットが巣をつくりそうな地形を予想し、トアがその森の知識と陽の魔法の透視を生かして探さなければ、探索は何日も続いたかもしれない。
今も、トアの透視の目は、地面をなんとか見通して、ジャイアントラット達の姿を捉えている。
日中は眠りについているのだろう。
幾つかの塊になって巣穴の奥で動かないジャイアントラット達。
この好機を逃さず、冒険者達はかねてから計画していた作戦を実行に移した。
つまり、入り口で焚き火をし、中に煙を送り込んだのである。
暫くして‥‥
「チューーーー!!」
悲鳴のような鳴き声をあげて、ジャイアントラット達が巣穴から飛び出してきた。
煙で燻された為か、直線的で周りが見えていないかのような動き。
それを見逃す冒険者たちではない。
ここぞとばかりに手にした剣を振るい、魔法を唱える。
「さぁって、初仕事確りこなしていこうぜ!ネズミなんぞに齧られんじゃねぇぞ?」
「あらあら、じゃあ、参りましょうか」
「神の名に於いて裁きを下す!」
特にシーヴァス、ニルナ、ヒカルの三人の神聖騎士は、村人たちの不安そうな目を忘れようとしているのか、振るう剣にかなりの力がこもっていた。
これでは、ジャイアントラットに万が一の勝ち目もない。
ユエリーのナイフ投げも冴え渡り、気がつくとジャイアントラット達は全て躯と成り果てていたのだった。
だが、何かがおかしい。
この場に倒れ付しているのは、6匹。
予想では8匹だったはず。
では、残る2匹は何処なのか?
その時、冒険者達の横を影が2つ、凄まじい勢いでその場を走り去っていった。
無論ジャイアントラットである。
恐らく、巣の入り口は別の場所にもあったのだろう。
とはいえこのまま逃がすわけにも行かない。
冒険者達は逃げた二匹の後を追った。
だが結局、この2匹のネズミも命運は長くは続かなかった。
村の方向へ逃げたのが運の尽きだったのだろう。
畑の手前で翠漣と弾王の仕掛けた罠に見事にかかり、その二人の手で見事に止めを刺されていた。
素手の戦闘術とはいえ、二人の技量は見事なものだ。
弾王の重い拳は下手な武器を上回る威力を発揮し、翠漣の扱う十二形意拳・申の奥義、猿惑拳はジャイアントラットの動きを容易く捉えていたのである。
かくして、村の脅威であったジャイアントラットは、見事冒険者達の手で討ち取られたのであった。
●戦い終わって?
せめてもの情けとネズミを巣穴に埋葬し(ヒカルが主張した)村に戻った冒険者達は、村人から宴に招かれていた。
当初の不安を払拭し、見事依頼を達成した冒険者たちに対するささやかな宴である。
宴とはいえ、牧歌的な村、キャメロット等の大きな町のものと比べると華やかさに欠けるのは仕方の無い事。
だが、その分不思議な暖かさがある。何より、料理は取れたての作物を使ったものばかり。
そして、使命を果たしたと言う満足感が冒険者達に溢れていた。
自然と宴は盛り上がり、陽気な歌と踊りが溢れていく。
不意に立ち上がったシーヴァスが自慢の歌を披露し始めるかと思えば、トアが村娘達と『スキンシップ』を楽しんでいたり。
収穫も祝う宴は、夜中まで続き、そして次の日。
土産に保存食をいくらか譲り受けた冒険者達は、意気揚々とキャメロットへの帰路に着くのだった。