●リプレイ本文
●これから始まる大レース
某主人が例によって唐突に決めた乗馬レース。
ギルドにも参加者の公募が出された事も在り、かなりの参加者が集まっている。
その数、おおよそ30騎ほど。
彼等は、キャメロットの町外れにて、スタートの時を待ちわびていた。
「あなたには絶対に負けませんから」
早くも熱戦の火花を散らしているのは、レンジャーのアシュレー・ウォルサム(ea0244)。
直ぐ隣に居る参加者に、堂々と宣戦布告。
アシュレーは自分の馬は持っていないが、動物の知識が豊富な為、主催者が用意した馬の中でも能力の高い者を選び取っていた。
必要最小限の装備だけを身につけ、軽量化に余念が無い。
「乗馬レースという企画はとても魅力的ですね。私も馬が好きですから楽しみです」
そう愛馬の背を撫でるのはナイトのカイン・アークブレイド(ea0414)。
ウィンディと名づけたその愛馬と共に、乗馬の腕を競えるのを喜んでいるようだ。
3つあるというコースの中、カインが選ぶつもりなのは森の中のコース。
最短コースでもある荒地を進みたい気はあるが、乗馬の腕に不安があるため避けたらしい。
「馬を持てど、なかなかに走らせる機会がありませんでねえ‥‥良い機会に巡り合えました」
同様に愛馬と共に参戦なのは神聖騎士のノア・カールライト(ea0422)。
マイペースが身上のようだが、その作戦は中々強烈。
徹夜に強い事も在り、他参加者のペースが落ちる夜間に勝負をかけるつもりのようだ。
視力が良い事為、夜目もきかせることが出来る。中々に有効な作戦に思えるがどうだろうか?
一方、何かやけにハイになっているのは
「あっはっは〜貴方達、今度のレース愉しみましょうね」
と周囲に集まったライバル達にゲラゲラ笑いながら声をかける神聖騎士のクレア・クリストファ(ea0941)。
愛馬には
「ルナ、貴女と私の力‥‥見せてやりましょう」
と優しく声をかけているので、ゲラゲラ笑っているのは他参加者に対する威嚇だろう。
一方、同じく神聖騎士のラス・カラード(ea1434)は
「今回のレースに参加させていただくラス・カラードです。よろしくお願いします」
一参加者として参加しているという噂の、某主人と思われる人物に挨拶して回っていた。
もっとも、その人物像は謎に包まれている為、基本的にあてずっぽう。
「やるからには全力でお相手させていただきます」
「???」
今も挨拶をされた参加者が目を白黒させていた。
「おーし、やるぞ!」
エルフのナイト、ウォル・レヴィン(ea3827)の目標は、騎士の名に恥じないレースをする事。
乗馬の腕は貴族としてのたしなみ程度だが、この機会をいい経験と捉えているようだ。
今は参加者の中でも乗馬の腕がよさそうな者の動きを見て、その技を覚えようとしていた。
ちなみに、今その視線の先にあるのは、
「乗馬も貴族の嗜みの1つ。わたくしの華麗なる手綱捌きを見せて差し上げましょう」
と宣言するレジーナ・オーウェン(ea4665)だ。
ちなみに、このレジーナ。天候が悪くなった方が自身の進もうとしている街道コースに有利になると考え、天候操作の魔法の使える人物を先ほどまで探していた様子。
だがそうそう都合よくそういった人物が居るわけがなく、その行為は空振りに終わっていた。
そして今の季節は夏。快晴といっていい天気が上空を支配している。
レース中に天気が崩れる見込みはなさそうだ。
さて、自信たっぷりな参加者が多いのだが、中には不安そうな者もいる。
バードのオリタルオ・リシア(ea0679)がまさしくそれ。
実の姉に、馬に乗るだけの依頼があると薦められて参加したらしいが、レースとまでは聞いていなかったようだ。
参加した以上はがんばろうと思っているようだが
「でもやはり‥‥私だけ場違いのような」
周囲の参加者を見回し不安げ。
借り受けた馬にまたがりレースの開始を待っている。
そして、各参加者それぞれの思いを乗せ‥‥レースは幕を開けた。
●レーススタート!
「さ今回が初になります、この『あ、アレ食べよ』杯乗馬競走。各馬スタートラインに立って準備万端。後はスタートの時を待つばかり。中々興味深い展開が予想されますこのレース、臨場感溢れるレース模様をお贈りする為、あえてこのわたくし記録係、解説はウォルター(仮名)氏の語り口調でお送りいたしたいと思います。さて、解説のウォルター(仮名)さん、レースの展開はどのようになるとお考えですか?」
「3つのルートをいかに選ぶかが焦点となるでしょうな。それぞれの実力に応じたコース選択が勝敗を分けるかと存じ上げます」
「ありがとう御座います。さぁ、早くもヒートアップ。合図の係が段上に上がりました。間もなくスタートです!」
「位置について‥‥用意!」
「さぁ、旗が振り下ろされましたっ!! 各馬一斉にスタート!! おおっと!? いきなり落馬です!! 妙に恰幅のよい人物が馬に振り落とされて、もがいています!! おっと、タンカです!! 落馬の際にどこかを強く打ったようです。まさかのいきなりリタイアだ〜〜!!」
「おや、あれは‥‥ふむ、最近食が進まれ過ぎていましたからな。体重もそれ相応に‥‥馬もそんな重い物を載せるのはイヤだったので御座いましょう。それに‥‥どなたかのコース取りが絶妙でしたな」
「‥‥という事は、アレが例のご主人ですか‥‥ま、まぁ気にせずレースを追いましょう。現在トップはレジーナ選手、スタートダッシュにいきなり鞭を入れて先頭に立っています」
「どうやらレジーナ選手は街道を選択のご様子ですな。キャメロットを出て暫くは同じコースですが、コース取りに違いが見受けられます」
「ノア選手、オリタルオ選手他何人かの選手がその後を追う展開。一方、森よりにコースを取っているのは‥‥これまた先手必勝で逃げの鞭を入れたルーウィン・ルクレール(ea1364)選手!! これはあからさまに逃げています、逃げてます!!」
「荒地よりも距離がある森コースだけに、少しでも優位に立とうということでしょうな」
「ルーウィン選手、逃げを体現するような走りっぷり。その後を追うのはカイン選手、クレア選手、ウォル選手等です!! そして、最難関にして最短コースを選択したのは‥‥」
「アシュレー選手にラス選手のようですな。どちらもモンスターが出現するのは覚悟の上とお見受けいたします」
「その他の参加者も数名荒地に向う模様です。さぁ、混迷のレース展開。此処から後は各コース順に展開を見てまいりましょう」
●街道を行く
スピードに乗って街道コースに飛び込んだレジーナは、そのままの勢いを保ったままひた走る。
その意図としては、街道はもっともスピードが物を言うコースという認識なのだろう。
ただ、忘れてはいけない。このコースは最長コースなのだ。
そして、ゴールまでは数日かかるという長丁場。
それが意味するものは何か? 街道コースは、実際の所もっともスタミナが必要だという事だ。
それゆえに、スパートをかけたレジーナにとっては、辛い展開が待ち構えている事になる。
夜半も過ぎ、スタミナの切れた愛馬を休ませるレジーナの横を、夜も一定ペースを維持したままのノアが通り過ぎていく。
さらに、その後を乗馬に慣れないながらレースを行ううちに余裕の出てきたオリタルオが
「約束の地を目指して馬は行く♪ 示された街道を馬は行く♪ 時には先見えぬ森に迷い込み♪ 苦難の荒地に踏み込むかもしれない♪ それでも前に馬は行く♪ 約束の地を目指して馬は行く♪ 未来を信じて馬は行く‥‥♪」
歌を歌いながら通り過ぎる。
呆然とその様子を眺めるレジーナだが、まだ諦めはしない。レースは長丁場、逆転のチャンスはいくらでもあるのだから。
●森を行く
森に先頭で入ったルーウィンは内心で舌打ちしていた。
それは、自身の重装備に向けてのもの。普段の感覚で武器や鎧を装備したままレースに参加した為、馬のスタミナの消費が激しいのだ。
まれに姿を現すモンスターをあしらうのには良いが、流石にコレでは問題がある。先行逃げ切りを狙った序盤の走りもあり、レース半ばで愛馬はかなり疲労していた。
その隣を、ほぼ同時に駆け抜けた者達が居る。クレアとウォルそしてカインだ。
いずれも森に関して知識が豊富であり、その駆け抜け方も熟知している様子。中々のペースでコースを走り抜ける。
乗馬の腕でややウォルが遅れ気味であるものの、時折現れるモンスターで中々差は広がらない。
このまま最後まで行きそうな気配がある。
それを見たルーウィンも、愛馬に再びまたがると後を追うのだった。
●荒地を行く
荒地でのレースはかなり過酷だ。
元々道が荒れているため、乗馬の腕で上手くコース取りをしなければ馬にかなりの負担がかかる。
その上でモンスターの出現頻度が高いとなると、無論かなりの高難度。
そして、さらに‥‥
「モンスターの相手はおまかせしますね〜」
他の参加者を囮にして出し抜こうとするアシュレーや、
「大丈夫‥‥あなたはまだ走れますーー!」
自身や愛馬が多少傷をおったとしても、リカバーで直ぐに癒してしまうラスがこのコースを選んでいる為、かなりの混戦模様。
ゴール手前の合流地点まで、その行方はもつれそうであった。
●そして、運命のゴール
「さぁ、数日行われたレースも、そろそろ決着です。このゴール手前の合流地点、もっとも早く飛び込んでくるのは誰でしょうか? おっと、早くも誰か来たぞ? あれは森コースを選んだクレア選手だぁ〜〜〜!!」
「ルナ! 今よ!! はぁぁぁぁぁぁ!!」
「コレは凄い気迫だ! 今まで溜め込んでいたものを一気に爆発させるように駆け抜ける! おっと、その跡にやや遅れてカイン選手、ウォル選手も続いているぞ? 先行逃げ切りを狙ったルーウィン選手はさらに後方に姿があるが、追い上げは難しそうだっ!!」
「やはり重量は大きな要素でしたな」
「あ〜っと、荒地コースからも姿が見える! あれはアシュレー選手にラス選手! 森コースメンバーにやや遅れて到着だっ!!」
「荒地のコース取りを上手く行うのには、二人ともやや乗馬の技量が足りなかったのでしょうな。ですが最短コースだけにまだ余力は在りそうに見えますな」
「そしてそして、街道コーズからも飛びだす影がっ! あれはノア選手だ!! コーナーを絶妙のコース取りで駆け抜けるぞっ!コレは期待できそうだっ!!」
「安定したペースが効をそうをそうしていますな。スパートをかける余力は十分でしょう」
「その後をレジーナ選手とオリタルオ選手も続いている! コレは混戦模様、大混戦だ! 他の参加者の姿は見えません! かなり遅れているのでしょう!」
「まぁ、登場させてもアレですからな」
「さぁ、ラストスパートだっ! やや先行は合流点が一番ゴール寄りだったノア選手、その後を荒地コースの二人が追いますっ! しかしっクレア選手の追い上げが凄いっ! コレが脅威の末足だ! 4馬身3馬身2馬身と、一気に差をつめるっ!! 後方のカイン選手も一気に来るぞ! ゴール前横一列、5頭並んだ〜〜〜! 抜け出した選手が優勝だっ!!」
「後は純粋な乗馬の腕ですな」
「あ〜〜〜っ!! ラス選手、カイン選手、クレア選手が、半馬身リード! さらに来た〜〜〜っ!!」
「ここからゴールまで! 一気に勝負に出ますッ!」
「ラス選手だ〜〜〜っ!! 此処に来て魔法での回復作戦が効いたか、それとも体重の軽さが物を言ったのか、一気に先頭にたった〜〜〜っ!! ゴ〜〜〜〜〜〜〜ル!!!」
●結果発表
こうして、レースは幕を閉じた。
入賞者は以下のとおり。
優勝:ラス・カラード
2位:クレア・クリストファ
3位:カイン・アークブレイド
4位:ノア・カールライト
入賞者にはそれぞれ賞品が手渡され、その他参加者には参加賞が渡された。
そして‥‥
「何で俺が落馬なのだ? 納得が出来んぞ!」
「でしたら、もう少し食を控えられたら如何ですかな?」
「むぅ‥‥」
早々に落馬し、いいところの無かった某主人は、また今度レースを開こうと心に決めながら、少々体重を気にするのだった。