褌と仮面 〜赤い睡蓮のサー登場〜
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■ショートシナリオ
担当:まひるしんや
対応レベル:1〜4lv
難易度:難しい
成功報酬:1 G 44 C
参加人数:10人
サポート参加人数:-人
冒険期間:08月15日〜08月22日
リプレイ公開日:2004年08月30日
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●オープニング
キャメロットの某所。
薄暗い部屋の中で、話し合う一団がいる。
『彼ら』の表情は暗がりでかげがかかり、シルエットだけしか伺えない。
だが、話し合う声には切迫したものが伺えた。
「エチゴヤに並んだ例のモノだが、やはり性能は高いらしい」
「モノを安定して固定することができる分、装着者はこれまで以上に身軽に行動できるようになっています」
「無理もない。これまでの我々のモノを隠していたのは、不安定な花だけだ。それに比べ、『アレ』は必要最小限を見事に隠しているのだ。比較にならんよ」
ちなみに、そのシルエットは‥‥ほとんど全裸&顔に仮面を確認できたりする。
そう、ここは某仮面変態たちの集う秘密の部屋である。ちなみに会員制らしい。
それはともかく
「では、例のもの‥‥褌を我々の正式な装備品として採用するということで、決定ですか?」
今話し合われていたのは、そういうことらしい。
今まで局所を隠していた花から、新たにエチゴヤに並んだ商品である褌に、装着品を移行しようということらしい。
だが‥‥
「待っていただきたい!」
突如響いた声に決定の声が遮られた。
「花はエレガントさの象徴! それを忘れ安易に新たな品に走るなど、間違っているのではありませぬかな」
見れば、妙に体格の良い影が立ち上がり異議を唱えていた。
だが、
「これは会議の決議なのだよ。いくら君の意見でも、覆すわけにはいかないな」
「くっ!」
議長、もしくはまとめ役らしき影にいさめられ、悔しそうに表情をゆがめる。
それを見て、ほくそえむ褌推進派の変態たち。
「では、次の議題は、褌の確保だな。現在エチゴヤの褌は品薄状態にある。我々が手に入れ様にもすぐさま大量にとは行くまい」
「ならば、その件はこの私に任せていただこう」
宣言したのは‥‥シルエットだけでもわかる、異様な風体だった。
筋骨隆々な一団の中にあって、その身体はむらなく鍛え上げられた痩身。
だが、それ以上に特筆すべきは、角だった。
そう、その影は角飾りつきのかぶとを身につけていた。
影に沈む中、不思議とその兜は色合いが見て取れる。
赤かった。
「赤い睡蓮。貴公に何か考えがあるようだな」
赤い睡蓮といわれたその影は、薄暗がりの中、頬を歪ませる。
「ふっ、もちろんだとも。もう直ぐ月道が開かれる。その際に褌が輸入されるのだが、エチゴヤだけがそれを手に入れるわけではない。さる貴族がそれなりの数をまとめて手に入れることが判っている。コレを奪取すれば、当面必要な数は確保できるだろう」
「なるほど、流石はサーの称号を得るだけのことはある。では、その件貴公に任せよう」
誇らしげにその任を受ける赤い睡蓮。
その姿を、先ほど異議を唱えた影が暗い目で見つめていた。
次の日、冒険者ギルドに新たな依頼が入った。
「なんでもな、ある貴族の馬車が新手の変態に狙われてるらしいんだ。何でもこの変態、この馬車が運ぶ予定の積荷の『褌』を集中的に狙うらしい。コレを阻止しろという事らしいんだが‥‥」
依頼内容の説明をする親父。微妙に腑に落ちないような顔をしている。
「どうしたんだ? 何か気になる事でもあるのか?」
「ああ、依頼人が言うには、匿名のタレ込みがあったらしい。匿名なのもそうなんだが、こんな情報何処から手に入れるんだか‥‥」
首をかしげる親父。
同じ頃、キャメロット某所では‥‥
「くくく‥‥我々に、褌など必要ないのだ‥‥」
不気味な笑いを浮かべる影が、あったとか無かったとか。
かくして、冒険者たちは新たな強敵と相対する事になる。
●リプレイ本文
●レンホー卿のH作戦
奇妙な垂れ込みにより襲撃されると伝えられたのは、キャメロット近郊に屋敷を持つレンホー卿の馬車だ。
この人物、大のジャパン好きでも在り、中でも褌はコレクションするほどの気に入りようだとか。
そして、今回の月道貿易で、さらなるコレクションを手に入れたらしい。
それが今回の馬車の積荷と言うわけだ。
「前回に続いてまた変態さんが相手ですか‥‥イギリスにどんどん変態が増えてますね、この先どうなることやら」
この馬車の護衛に雇われた冒険者の一人、クリフ・バーンスレイ(ea0418)は、荷台に乗せられる包みを見ながら重い表情だ。
確かに、イギリスは変態比率が高いような気がしないでもない。
まぁ、ある意味平和の証拠と言えなくも無いだろうが、こうして変態から荷を護衛する立場になると、頭が痛くなるのは仕方の無いことだ。
さらに、気がかりなのは視界の端に居る人影。
「花は邪道。褌は好きだけど、現在、よりトレンディーなアイテム、葉っぱを見つけた僕は、その葉の素晴らしさを仮面盗賊達に伝承しなきゃね!」
何だかかなりイヤナセリフをこぼしているキャメロットの葉っぱ男、 レイジュ・カザミ(ea0448)がそこに居た。
最近は葉っぱ姿が板についてきているのだが、今は一応マントや鎧を身に纏っている。
当然と言えば当然だ。普段から葉っぱ一枚の姿では、微妙な犯罪者以外の何者でもない。
だが、襲撃してくると思われる変態が姿を現せば、直ぐにその本性を見せてくれることだろう。
その隣では、
「‥‥変態が4人。以前、1人と対峙しただけであの醜態だった‥‥このままじゃ勝てない」
何だか思いつめた表情の人物が居た。クリス・シュナイツァー(ea0966)だ。
手にしているのは、マスカレードのマスク。
(『メンタル面の強化。僕に必要なのは自信。誰にも負けないイメージ。前の依頼で知ったんだ。ソレは、正義の象徴に成り得るって。だから、僕も着けよう―――仮面を』)
思考が危険な方向へ向いているようだ。
ある意味、襲撃してくる変態達も、その道に進むきっかけはこういうところにあったのかもしれない。
まぁ、それはともかくとして。
そんな冒険者たちを尻目に、馬車に運ばれる褌の包みは、豪奢な箱の中に次々収められていく。
そこで作業を手伝うオーガ・シン(ea0717)は、盗難防止のための策を今から仕込んでいた。
なんと、箱の底へ釘を打ち付け、馬車の床と一体化させているのだ。
なるほど、これなら万が一の時にも安心だろう。
ただ、荷を運ぶレンホー卿の部下からは白い目を向けられている。
盗難防止とはいえ馬車に傷痕が残るのは流石にいただけないと言った思いなのだろう。
「フンドシ‥‥東洋の神秘ですね♪これを賊などに渡す訳にはいきませんね‥‥頑張って守らないと。‥‥ついでに一枚頂けたりも‥‥」
同様に、トリア・サテッレウス(ea1716)も白い目で見られているが、これは言わなくても良い事を口にした所為だ。
ただ、そんな白い目で見られても、どこか楽しそうなのは何気にMが入っている為だろうか?
余り深くは考えない方がいいような気もする。
「今回の相手は強敵です。その強敵ぐあいをいえば『メロン大好き★ヴィクトリー卿(近日襲来予定)』に匹敵する最大級の相手となるでしょう!」
レジーナ・フォースター(ea2708)も言わなくてもいいような、と言うか明らかにデンパ入ってるセリフで絶好調だ。
余談だが、彼女の言うヴィクトリー卿なるモノは存在しないし、襲撃の予定も無論無い。
とはいえ、事前の情報というかタレコミから、強敵なのは確かになっている。
気合を入れるのは必要な事かもしれない。
出発はもう直ぐなのだから。
●シーンとスレンラー、そしてテニム
出発して暫く、街道を行く馬車は平穏無事な旅を続けている。
冒険者達は交代で周囲を警戒し、襲撃への警戒を怠らない。
今の見張りの中心はヴァレス・デュノフガリオ(ea0186)。それを生業にするほどの持ち主だ。
今も周囲の状況をつぶさに眺め、そして時には見ても明らかに無駄なものまで見つめていたりする。
鳥とか虫とか雑草とか見ちゃいけないものとか。ちなみに、見ちゃいけないものというのは、この馬車の持ち主、レンホー卿が用意した御者の頭‥‥さらにその天辺だ。まぁ、何があるのかは想像にお任せするとして。
ちなみに、その御者の隣では、狂闇沙耶(ea0734)が休憩時に周囲に仕掛ける罠の準備に余念が無かったりする。
今は当番ではないので周囲の警戒はしていないが、休んでいる時でもやらなければいけないことは多いのだ。
と、その時。
急に馬車が止まった。
驚く冒険者達。同時に、ヴァレスが前方を見る。
そこには‥‥はるか遠くから走ってくる3人の人影が会ったのである。
「まて、待つんだ! シーン!」
「サーだって! 手柄を立ててあそこまでになったんだ! 俺だって!」
「我々の任務は偵察だ! まて、シーン!」
「テニム隊長! 自分はどうすれば!?」
「スレンラー! お前はサーをお呼びするんだ!」
素手のまま走ってくる股間を花で隠した仮面の男、その直ぐ後ろをやや歳の行った男が追いかけ、最後の一人はどこかへ向けて全力疾走。
どうやら、これが襲撃部隊のようだ。
「真っ裸であそこに花つけてるのかあ‥‥風が吹いたら身動き取れないんじゃない‥‥?」
その襲撃者の姿を見て呟いたのは朴培音(ea5304)。
微妙に何か心配する所が間違っているような気もするが、まぁ、それはいいとしよう。
とにかく、この変態たちを片付ける方が先だ。
「こーら! トリア、とっとと起きて! 変態同志が来たわよ!」
休憩中だった仲間をアルフェリア・スノー(ea0934)が次々蹴り飛ばし、目を覚ませて行く。
そのおかげか、変態二人が馬車にたどり着くまでに冒険者達は十分に体勢を整える事が出来ていた。
「へっへっへ! いっちょ前に護衛が居やがるぜ」
「こうなったら、仕掛けるしかない、行くぞシーン!」
走ってきた勢いのまま、突撃してくる変態二人。だが。
「貧相な格好じゃな‥‥服さえ買えれぬのか?」
「「!??」」
狂闇の無慈悲な一言が、その動きを見事に止めてのける。
「ち、違うぞ! これが貧乏だからではなく‥‥」
「これが世を騒がす変態か、これでは痴漢の方がましじゃな」
反論した所に更なる追い討ち。新兵(何)のシーンはこれでもう(精神的に)ボロボロだ。
そこへクリフの放った風の刃が襲い掛かった。
ハラリ
たて半分に断ち切られ、左右に分かれるシーンの股間の花。
「うわぁぁぁぁっ!!!!」
「シーン!? よくもシーンを!!」
「いかん! 手下に褌を奪われるぞい!?」
花を切られて自己崩壊を起こすシーン。その姿に逆上したテニムが冒険者に襲い掛かる。
だが、荷台の上からナイフを投げるヴァレスとオーガの弓がその突進を阻む。
さらに、
「トリアシールドぉ♪」
「人間盾はッ‥‥浪漫、ですッ‥‥♪」
アルフェリアを護衛するトリアが、その身を犠牲にして行方をふさいだ為馬車にすら近づけない。
そこへ、やってきたのは朴。
テニムの肩を掴むと、その瞳を覗き込んで
「おい! 恥ずかしくないの!?」
この一言。
「う、うわぁぁぁぁ!!」
内心では、やはりどこか恥ずかしかったらしい。
そんな訳で2人の変態を無力化した冒険者達。
だが、安心するのもつかの間、そいつはやってきたのだ。
そう、赤い睡蓮のサーが。
●脅威! 葉っぱ対葉っぱ
「テニムに新兵を抑えられんとはな‥‥」
そういいながら、先ほどどこかに走り去った変態を伴い現れたのは、赤い睡蓮の葉で股間を隠した細身の変態だ。身につけているのは、顔の半分を隠す仮面に角突きの兜。
その漂わせている雰囲気は、只者ではない。
「君たちが護衛に雇われたものか。悪い事は言わない。荷物を置いて早急に立ち去りたまえ」
平然と言い放つその表情は溢れる自信に満ちている。
だが、これにひるまない漢がいる。
そう、葉っぱ男だ。
「僕こそがキャメロットの真の戦士・レイジュ。どっちが本当の漢か、一騎打ちにて勝負して頂きたい!」
言い放ったレイジュは、次の瞬間には鎧や衣服を脱ぎ捨て、キャメロットの恐怖の代名詞、葉っぱ男へと変貌を遂げる!
お互いポージングしながら、正対する二人。
「花? 褌? 否! この国には葉っぱこそが相応しい! そう、僕がキャメロットを騒がせている、あの葉っぱ男なのさ♪ いざ、参る!」
「面白い、ならば、股間の証が、戦力の絶対的なさではないことを、教えてやる!」
言うが早いか、襲い掛かってくるサー。
「はやい!?」
その動きは目にも止まらない。
ほとんど鎧や武器などをつけていない分、その動きを妨げるものは何も無いのだ。
だが、それ以上に早いこの動きはオーラ魔法を使っている所為だろう。
何か攻撃しようにも
「そうそう当るものではない!」
と脅威の動きでことごとく冒険者の攻撃を避けてのける。
これには流石のレイジュも手も足もでない。
思わず弱気にうつむくレイジュ。
その次の瞬間!
「この軟弱モノ!!」
かなり渾身のグーで殴られ、吹き飛ぶレイジュ。
レジーナが気合を注ぎ込んだのだろう。
そして、今度はレジーナがサーと対峙する。
その二人の間に何か通じる事があったようだ。
「‥‥スレンラー。テニムたちを回収しろ。今回はこれで十分だ」
その後、身を翻しかえっていくサー。
呆然とする冒険者たちだが、これも一応の決着であった。
隠して、褌は無事に送り届けたのだった。