●リプレイ本文
●クマ退治のそれぞれの一幕
暴れ熊が出るという街道に向かう途中、
「今回は俺向きの依頼だったようだな」
そういうクオン・レイウイング(ea0714)に冒険者たちはクマの生態についてのレクチャーを受けていた。
クオンはイギリス生まれのレンジャー。そして動物やモンスターの知識、及び猟師としての知識が豊富だ。
無論その中にはクマに関しての知識も大いに含まれている。
今回の依頼にはまさしくぴったりの人材だと言えるだろう。
クマが出るというのは森の中の街道であるらしく、森林の知識もあるだけに非常に頼りになる。
「食通なのは結構だが‥‥変態と紙一重だな。ま、依頼は全力でやるがね」
一方、そんなクマを食べたいという依頼人に対して一言文句ありなのがレディアルト・トゥールス(ea0830)。
確かに、ある意味某主人は、イギリスにはびこる変態の一人とも言えなくも無いかもしれない。
まさしく、ジャパンのコトワザで言う、紙一重だ。
もっとも、様々な問題を抱えた人物だとしても、依頼人には変わりが無い。依頼は真っ当にこなす必要があるだろう。
『熊のお肉って美味しいのかな〜』
ビザンチン出身のウィザード、ミカエル・クライム(ea4675)の興味は、問題のクマ肉にあるようだ。とりあえずは自身でも食べてみるつもりの様子。
ちなみに、ミカエルはやや片言気味。イギリスの言語を言語に対する幅広い知識でおぎなっているのだが、あまり流暢には話せずに居たりする。
もっとも、仲間の中にはミカエルが唯一流暢に話せるラテン語を話せるものも混ざっている。完全に意志の疎通が出来ないわけではない。
「熊の肉か‥‥匂いが相当きついと聞いた事があるが、果たして食べられるものなのかね‥‥?」
クマの生態について聞いていたアッシュ・クライン(ea3102)も、同じような興味というか疑問を持っていた。
確かに、クマ肉は独特の臭みがあるが、慣れればどうという事は無いとも言える。
まぁ、実際に食べるのは某主人だ。それほど気にする事も無いだろう。
とにもかくにもそんな調子でクマの出る付近にたどり着いた冒険者達。
得た知識を生かして行う準備といえば、そう、罠の設置だ。
相手は手負いの暴れ熊。
ゴブリン辺りを相手にするのとは訳が違う。
早速クオンを中心として夜桜翠漣(ea1749)や森里霧子(ea2889)らが、それぞれ用意してきた罠を仕掛けてゆく。
二人の仕掛けたのは落とし穴や、縄などを使った熊の足止めをするような物が主。
特に森里は蜂蜜を依頼主から貰い、クマをおびき寄せるのに使用している。
「今から熊狩りに行くぞ。罠設置はすませたか? ジーザスにお祈りは? 森の隅でガタガタ震えて手負熊を仕留める心の準備はOK? 」
何気に呟いているセリフが微妙といえば微妙だが、恐らく気にしてはいけない類の代物だろう。
ちなみに、夜桜は設置した罠の箇所を他のメンバーに説明していた。
「罠に嵌ったら洒落にならんからな」
レイリー・ロンド(ea3982)もその説明をしっかりと聞いている。
クマをしとめるための罠で在るのに、冒険者達自身がかかっては元も子もない。
当然の行いだろう。
「使えそうなもの‥‥使えそうなものっと‥‥」
エヴィン・アグリッド(ea3647)は、その森里の手伝いで罠の材料を調達中。
主に丈夫なつる草などを集めているが、目潰しも作るつもりの為か毒性のある野草も集めている。
植物の知識があるため、その辺りの見分けも確かだ。
さらに、集めたものを罠や目潰しに使用しやすいように加工し準備万端だ。
そのころ、待ち伏せをするメンバーたちは、用意周到に潜伏場所を探し、またカモフラージュの準備を行っていた。
「どれだけ用意をしても慎重すぎると言う事はないだろう。万全にしておかねばな」
そういうヴィグ・カノス(ea0294)は投擲用のスピアの準備に余念が無い。
スピアにロープを結わえ、投げても直ぐに回収できるようにしているのだ。
ヴィグは射撃は得意だが接近戦の技術を持ち合わせていないため、こうした工夫は自身の長所を伸ばし弱点を補う点で正しいといえた。
そんな調子でクマをしとめる準備が整い、冒険者たちは主役の登場を待つため辺りに身を隠すのだった。
●森のクマさん登場!(凶暴度5割り増し)
冒険者達が罠を張った後暫くして‥‥
ガサリ!
森の奥から、茂みを書き分けやってくる気配があった。
そして、ノソリと姿を現す巨体。
やや赤みがかった頭部の毛の色と、矢傷と思われる傷を無数に身体に刻み込んだ威容。
付近の猟師たちから『ブラッディーヘルム』、血塗られた兜との異名をつけられたこの暴れ熊。
流石に凶悪な面構えだ。当然ながら片目は潰れていたりする。
それはともかく。
クマは冒険者たちが用意したおびき寄せ用のエサに引き寄せられている。
蜂蜜の匂いにひきつけられているのだろうか? と、エサの匂いを突然かぎ始めた。そして次の瞬間、何かを警戒するように周囲を見回す。
どうやら、人の匂いを嗅ぎ取ったようだ。
この様子に危機感を感じたのか、それまでじっと様子を伺っていた森里が思い切った行動に出た。
「そんなエサで俺様が‥‥クマー!!」
微妙に謎な掛け声とともにクマの目の前に姿を現し、クマを挑発するようなそぶりを見せると、少しづつ後ずさる。
ただし、その姿は2つ。そう、森里が二人居るのだ。なんとも怪しい。
だがこれに黙っているブラッディーヘルムではない。何しろ彼は暴れ熊なのだ。多少の怪しさなど無論気にしない。
獲物が来たとばかりに、爪を振りかざし分身襲い掛かる!
だが、その爪が森里に当った瞬間、その姿が掻き消える。
そう、この森里は忍術で作られた分身だったのだ。
それと同時に、クマの踏み出した足が地面に沈む。
落とし穴だ!
成す術も無く落ちてゆくクマ。
さらにその上からつるで作られたネットをかけられ、思うように身動きが出来なくなる。
さらに、追い討ちの目潰しがクマの目に当ると、こうなればもう冒険者たちのモノだ。
「さて‥‥まずは弱らせなくては‥‥」
落とし穴と網で身動きできなくなっているクマ。そこへエヴィンのブラックホーリーが襲い掛かり、その体力を削ってゆく。
とはいえ、野生は生命力が強い。
「上手くダメージの入る箇所を攻撃しても一撃で倒れる事はないだろうからな‥‥とにかく倒れるまでやるしかないな」
ヴィグの言うとおり、慎重に攻撃を重ねる必要がある。
とはいえ、ヴィグのスピアの投擲は、その言葉に反してクマの四肢の皮の薄い箇所をことごとく貫き、決して浅くない傷を無数につけている。
クオンも同様だ。
こちらは弓での射撃だが、その正確な狙いはクマの分厚い脂肪を上手く避け、重傷を負わせていた。
二人は念のために夜桜の護衛を受けながら、投擲と射撃を繰り返している。
『火炎を纏いて、我飛翔せん!』
ミカエルも負けてはいない。炎を身にまとい強烈な体当たりをクマに仕掛ける!
ミカエルの体当たりが炸裂するたびに、辺りには肉の焼ける匂いが立ち込める。
ここまでされては、クマも弱る。見る間に動きの鈍くなるクマ。
それをみて、武器を手に戦士たちが落とし穴の中へと踊りかかった!
「いいから寝てろっての!」
レディアルトのスマッシュがクマの腕を切り飛ばし、
「俺を待ってくれている大切な人の為にも‥‥絶対に、負けられん!」
アッシュのソニックブームがクマの喉を引き裂いて、
「森から出て来なければ倒される事も無かったろうに・・・肉は上手く料理されるだろうから成仏しろ」
オーラパワーで強化されたレイリーの一撃が眉間に突き刺さって、クマはその巨体を大地に沈めたのだった。
●クマ鍋はいかが?
ようやくクマを倒した冒険者達。
あとは、その肉をとって依頼主に届けるだけだ。
出かけ際に某執事に頼まれたのは、左手と他の部位の3分の一の肉。
まぁ、このブラッディーヘルムの巨体を全て運んで来いと言われるよりはましだろう。
冒険者たちは分厚い脂肪に苦労しながら肉を切り分けた。
「タンタタ、タタタ、タ‥‥上手に剥げました〜♪」
約一名、やけに楽しげにこの作業をこなしていたものが居るようだが、まぁそれも余談だ。
そんな訳で送り届けられたクマ肉。
既に某主人の前でぐつぐつと煮えていたりする。
ちなみに何故か冒険者たちも別室でクマ肉を振舞われていたりもするのだが、これは主の純粋な厚意だろう。
「ふむ、やはり臭みがあるな。だが、味気の無いイギリスの料理に比べればずっとましだな」
「左様で御座いますか」
満足そうな主。執事もこれで暫くはわがままが減るだろうと安堵の息だ。
冒険者たちも舌鼓をうち、その野性味を堪能するのだった。