村長奮戦記 〜湖の主編〜
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■ショートシナリオ
担当:まひるしんや
対応レベル:1〜4lv
難易度:易しい
成功報酬:1 G 0 C
参加人数:10人
サポート参加人数:-人
冒険期間:08月15日〜08月20日
リプレイ公開日:2004年08月24日
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●オープニング
「ふはははは! 夏なのであ〜〜〜る!」
真夏の日差しが照りつける中、某村の村長は今日も元気だった。
ちなみに村長が今いるのは、村長の村の裏山にある湖のほとり。
周囲には、村長の出したこの依頼に参加した冒険者達。
何故か手に持たされているのは釣り道具だ。
「で、依頼内容をもう一度教えてくれないかな?」
尋ねる声がやや疲れ気味なのは、この場所に来るまでに村長の無闇なハイテンションに当てられた所為だ。
「うむ、ではもう一度言おう。この湖には、何でも主と呼ばれる巨大な魚がいるらしいのだ。コレを釣り上げるのが目的なのである」
なんでも、その主は2mを超える大物らしい。これまで魚影などで目撃証言はあるとの事だが、実際に釣り上げた者は居ないとの事。それを聞いた村長が、何を思ったのか、コレを釣り上げようと言い出したことから、今回の依頼と相成ったのである。
(「‥‥成功しそうに無い目的だ」)
そう思う冒険者達を誰が責められるだろう。
居るか居ないか判らない主を釣るなど、なんとも微妙な話だ。
そんな冒険者の様子を理解しているのかいないのか、村長は変わらぬ調子で話し続ける。
「心配は要らないのであ〜る! 主は釣れなくとも、この湖は魚が豊富なのである。食料には困らないのである」
そういう問題か?
まぁそれはともかく、村長が言うには、主を釣れなくても参加者には手数料を払うとの事。つまり、額は安いが報酬は確保されている事になる。
そして、主を釣り上げたものには無論ボーナスを出すとの事。
この湖には3日ほど滞在する予定なので、時間的な余裕はある。もし主が居るとするなら、釣り上げるのも不可能ではないかもしれない。
「折角の夏山だ。息抜きもかねてのんびり釣りを楽しむのもいいかもしれないな」
誰かが言った言葉も尤もなもの。
湖の周囲は広葉樹の森。山地ゆえに暑さも穏やか。
夏山に遊びに来たと考える事も出来るだろう。
村長もあまり細かい事を気にするタイプではない。息抜きで遊んでいても気にも留めないだろう。
そんな訳で、湖の主釣りに名を借りた夏山の休日が幕を開けるのだった。
●リプレイ本文
「夏だ! 湖だ! 遊ぶぞ〜〜〜♪」
湖の上を通り過ぎたその声は、近くの山肌にぶつかりこだまとなって響き渡る。
こだまに耳を澄ますシフールのクリスタル・ヤヴァ(ea0017)。
何とも楽しそうなその顔はまさしく夏色に輝いている。
「今回楽しみます。バカンス、バカンス‥‥」
セレス・ブリッジ(ea4471)も遊ぶ気満々だ。
一応主釣りの手伝いはするつもりのようだが、
「ちが〜〜〜う! 主釣りなのであ〜〜〜〜る!」
「主釣りよりも遊びがメインですね、一応しますけど」
平然と村長の前で言ってのける辺り、遊び倒すのが中心といった所。
何か村長もほざいているが、気にすることは無い。
今回の依頼は主釣りと銘打たれてはいるが、要は夏山を楽しんだものが勝ちなのだ!
そうとも、夏なのに楽しまないでどうする!
「僕、主を釣る能力なんてこれっぽっちも持ち合わせていないから、遊び倒すよ」
そうヒンメル・ブラウ(ea1644)も言ってるぞ!
ただし、イギリス語では無いから、余り周囲には通じていないのがアレだ。
ちなみに、その背後には某村長の村の子供たちが大勢。
イギリス語も話せないのに、何故か子供達を引率してキャンプをするつもりらしい。
通訳可能な仲間が居る為不可能ではないが、少々微妙であった。
とはいえ、その手振り身振りで伝えられる冒険譚に子供たちは大喜びだ。
案外それなりに引率できているのかもしれない。
‥‥と、いうわけで、無意味にヒートアップする村長を尻目に、冒険者達はおのおの夏の休日を楽しんでいた。
ある意味一番遊び倒しているのは、パラのレンジャー、ニック・ウォルフ(ea2767)だ。
レンジャーだけに屋外の活動には慣れている。
とはいえ、その遊びかたはまさしく夏を満喫したもの。
適当にまきを集めて、それを組んで夜にするキャンプファイヤーの準備をしてみたり、一人で滝を探して、涼んでみたり、動物と戯れてみたり、ぼけーっと木の上で寝たり‥‥
他のメンバーがしている事を興味本位で覗き込んだりするのも忘れてはいない。
そうやら期間中はずっとそんなこんなで過ごすつもりのようだ。
思わず鼻歌が出るほど上機嫌なニック。
そんな風に遊びながら、夕食を楽しみに待つのだった。
「妹が馬に乗るだけの依頼から帰ってきた日に、姉のあたしはバカンスへ出発‥‥いやー、あたしって悪い姉かしらねえ?」
笑いながら一人ごちるのはアルテリア・リシア(ea0665)だ。
主釣りを試みるものたちから離れ、先ほどからのんびりと日向ぼっこや水浴びを楽しんでいる。
この場についた時点で天候予測の魔法もつかっている。この晴天は暫く続くようだ。
もっとも、何気にレジストサンヒートの魔法を使い、日焼け対策はばっちり。
何も恐れることは無い。
ちなみにアルテリアの今の姿は一糸纏わぬ裸体。胸が大きいのが良く判る。
何気に誰かに覗かれたら拝見料をふんだくろうとしているらしい。
ある意味、まったく油断ならないと言える。
まぁ、それはさておき。アルテリアはその後水中でもライトの魔法が有効であることを確認したりと、水遊びを十分に楽しむのであった。
一方、森の中では
「んー‥‥気持ちいいですね、森の香りですっ」
ルーシェ・アトレリア(ea0749)が森林浴を楽しんでいた。
ただ歩くだけではなく、食べられる野草などを探す目的もあるのだが、それを忘れそうになるほどこの森は心地よい。
新鮮かつ清涼な空気の所為だろうか?
何だか元気が出てくる。
「気持ちいいなぁ‥‥‥アシュレーさんと来たかったなぁ」
ふとよぎる誰かの顔。
こんな一時を誰かと共に出来たら。
そんなことを思いつつも、散歩を終えたルーシェは
「おっさかなさんっ、おっさかなさんっ、かかってくださいな〜」
主釣りに専念するものたちに混じり、夕食のおかずをつり始めるのだった。
同じく森の中を散策するのはラディス・レイオール(ea2698)。
こちらは完全に食料調達がメインだ。
森と植物の知識を生かして薬草集めや果物集めをしながらほのぼのと。
主釣りに関わるつもりは毛頭無いらしい。
まぁ、それももちろんありだ。
もっともラディスのおかげで、冒険者たちがこの湖で滞在する間、新鮮な野草や果物は無くなる事は無かったのだった。
こだまを一通り楽しんだクリスタルは、名目上の依頼の主眼である主釣りに協力する為、湖の上を飛んで観察していた。
この湖、水草や浮き草などが多く、またかなりの数の淡水魚が住んでいる様だ。
それを目当てにしてか、水鳥や野生の動物も多く、狩をするには事欠かないといえる。
また、それほど多く獲物が居るのなら、主といわれるような大物がいてもおかしくは無いだろう。
と、眼下に広がる湖面に、何か巨大影が通り過ぎた。
「え!?」
一瞬だけだったが確かにそれは巨大な魚の影。
驚いたクリスタルだったが、直ぐに気を取り直すと村長の元へと急いだ。
主は確かに居る、それを教えてあげるのだ。
もっとも、その後は‥‥
「偵察が終わったから、うちは木の上でオカリナで曲でも作ってようかな〜♪ 湖で水遊びもいいかも♪」
夏を遊び倒す気満々。
実に正しい姿であった。
同じ頃、別の場所でも大きな魚影を見たものが居た。
「アレ、なんだろ?」
エルフのウィザード、ルーティ・フィルファニア(ea0340)だ。
当初は森の中などで、高原の植物を観察していた彼女だが、いまは湖の中。
長く豊かな髪が水に濡れるのを気にしつつ、それでも楽しげに湖を泳いでいた彼女だが、ふとその下方を何か大きなものが泳いでいくのを見つけたのだ。
その魚影の大きさは、大人一人以上。少なくとも、普通の魚ではありえない。
「あれが主? ヌシが見つかったから、ラッキー! じゃ無くて、釣りしてる人たちに知らせないと!」
何気に喜んだ後、彼女も村長を初めとする釣り組みの元へと急ぐのだった。
そして、こちらは主釣りに専念するものたちである。
「是非ともヌシを吊り上げて記録をとるのじゃー」
ユラヴィカ・クドゥス(ea1704)は目いっぱい息巻いて、村長と共に釣りに専念している。
ただ、ここに大きな問題がある。
ユラヴィカはシフールだ。身長は60cm、体重は1kgしかない。
噂によるとこの湖の主は2m近い大物との事。ユラヴィカが釣り上げるのは物理的に不可能に近い。
となると、やることは一つだ。
「ふはははは! わたしにまかせるのであ〜〜〜る!」
傍らには、大きめの釣竿を持った村長。ユラヴィカの胴には何故かフックと、村長の手の釣竿に続くロープ。
「わしが餌なのじゃ〜〜!」
無茶です。
もっとも、当人たちはまじりっけなしに本気だ。
水面ギリギリを飛ぶユラヴィカとその様子を竿を支えつつ見守る村長。
なんと言うか、アレだが、効果はあったようだ。
丁度クリスタルやルーティが魚影を見た付近を繰り返し往復するたび、何か大きな魚影がユックリ近づいてくる。
そして次の瞬間!
ザパァ!!!
水面を飛び出し、巨大な魚が空中のユラヴィカに飛び掛った!
だが、その瞬間を冒険者達は待っていたのだ。
「スリープ!」
「「グラビティーキャノン!!」」
複数の魔法が、空中に姿を現した主を捕らえ、その威力で打ち据える!
そして‥‥水面には、巨大な魚が白い腹を上に浮かび上がっていたのだった。
「つったのである! ふはははは!!!」
何だかトリップした尊重を尻目に、冒険者達は捕まえた湖の主を黒く塗り、その姿を紙に写し取っていた。
主を釣り上げた記念ということだろう。
ちなみにこの主は、この食料豊富な湖がもとで大きく育ちに育ちすぎたマスの一種だろうとの事。
実のその大きさ、頭から尾の先まで150cmを優に超えている。
とんでもない大物であった。
そんな調子で一応の目的を達成した冒険者達は、その後心置きなく夏山を楽しんで、心身ともにリフレッシュしてキャメロットに戻るのだった。