偏屈老人の置き土産
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■ショートシナリオ
担当:まひるしんや
対応レベル:1〜4lv
難易度:普通
成功報酬:1 G 0 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:08月15日〜08月20日
リプレイ公開日:2004年08月31日
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●オープニング
その老人は、偏屈だった。
若い頃は冒険者として、歳を経てからは魔法の研究者として、それなりの成果をあげてきた人物なのだが、どうにも気難しい。
さらに、微妙にケチであり、買い物は全て『付け』。
何気に市場のほとんどの店に大量の付けが溜まっていたりする。
でその老人、実はつい先日ポックリお亡くなりになってしまった。
原因は何と食べ物を喉に詰まらせたというもの。
食い道楽なところがあり、わざわざ数十日を費やし、とある料理店におもむいた際の出来事だ。
まぁ、それはそれだ。起きてしまった事は仕方が無い。
問題はその後だった。
この老人が抱えていた『付け』、コレが大問題なのだ。
老人の訃報を聞き、市場の面々も偏屈な人物だったとはいえ、その死を悼んだ。
しかし、悼んでばかりも居られない。市場の面々も商売で身を立てている。溜まった付けを支払ってもらわなくては困る。
そんなわけで、老人の屋敷に向かった市場の店主たち。
だが‥‥
「「「うわぁぁぁ〜〜〜〜〜!!」」」
散々な目にあい、逃げ帰ってきたという。
そんなわけで、冒険者ギルドである。
「付けの取立て? そんな依頼もあるのか?」
「これは事情が事情でな。まぁ話を聞いてくれ」
見慣れぬ依頼に首をかしげる冒険者たちに、ギルドの親父はその『事情』を語り始めた。
色々あって、老人の屋敷に向かった店主たち。
だが、その屋敷には老人の留守を任されたゴーレムがいて、屋敷に入ろうとする店主たちを追い払ったというのだ。
恐らく、留守の間は何者も屋敷に入れないように、といった命令でもされているのだろう。
コレでは、たまりに溜まった付けを回収する事が出来ない。
そこで、冒険者に依頼が回ってきたというわけだ。
「ゴーレムは屋敷の敷地に入った者を無差別で追い払っているらしい。今の所庭に1体居るのがわかっているが、多分屋敷の中にも居るだろうな。とにかく、ゴーレムを全部何とかすればいいわけだ。じゃ、よろしくたのんだよ」
ゴーレムはどうやら材木で作られたウッドゴーレムらしい。材質で大きく強さの変わるゴーレムだが、ウッドゴーレムならば金属で出来た物より弱い為、今の冒険者たちでも十分に相手取る事が出来るだろう。
かくして、冒険者たちは、問題の屋敷へと向かうのだった。
●リプレイ本文
偏屈だったと言う老人の屋敷。
その庭先に、そいつはいた。
傍目から見ると、大きな木製の置物(ちなみに熊だ。鮭を口に咥えていたりする)にしか見えないそれ。
だが、時折周囲の様子を眺めるかのように首を左右に動かす辺り、明らかに置物ではありえない。
店主たちの『付け』の取立てを妨害したと言う、木製のゴーレム‥‥ウッドゴーレムにまちがいない。
その姿を敷地の外から遠巻きに見ながら、冒険者達はゴーレムに戦いを仕掛けるタイミングを見計らっていた。
「しかしまぁ、魔法というのも便利なように見えて不便な物だな‥‥何も死んだ後まであんな物を残さなくても」
苦笑しながら話すのはジェームス・モンド(ea3731)。イギリス生まれの神聖騎士だ。
「ツケを残しているって言うのが良くないよな‥‥死んだと言ってもやっぱり払うものは払わないと」
そうも言いながらクルスソードを抜く彼は、ゴーレムを倒す気満々だ。
「やれやれ‥‥たかが取り立て程度で俺達に仕事が来るとはな?‥‥ま、とは言っても、相手がゴーレムじゃ普通の人間には無理だよな。ったく、面倒なものを残してくれるジジィだぜ‥‥」
同じく、既に亡くなった老人に一言ありなのは、ナイトのリューグ・ランサー(ea0266)。
たしかに、自分の屋敷の警備とはいえ、こんなゴーレムを放置されるのは迷惑この上ないと言える。
だが、老人も普通に帰宅する予定でいえをでたのだから、その辺りはカンベンしてもらいたいものである。
誰しも不慮の事故は起こりえるのだ。
まぁ、付けを溜めていたのは非難されてしかるべきことではあるが。
一方、違った感想を抱くものもいる。
「確かに‥‥このゴーレムというものは家の警備に関しては有効かもしれないな‥‥老人の親族の方がいればゴーレム操作の方法を知ってるのではないかな? と思うが孤独の身か?」
今ものそのそ動くゴーレムを見てそう評したソルティナ・スッラ(ea0368)がそうだ。
確かに一定の仕事をさせるにはゴーレムは向いているかもしれないが、こういったものは過去の遺産やよほどの魔術に秀でたものが作り出すほか無い。そうお手軽なものではないだろう。
ちなみに、老人には遺族は特にいないらしい。
若い頃には結婚もして子供もいたらしいが、病でことごとく先立たれたとの事。
偏屈になったのはそれかららしいとは、近所の噂だ。
「今回は変態さん相手じゃない依頼なので、ちょっとホッとしてたりします」
その横では、忍者の大隈えれーな(ea2929)が何故か胸をなでおろしていたりする。どうもイギリスに良く現れる変態と最近依頼でかかわる事が多かったらしい。
今回は、少なくともそういう変態が現れる事は少ないと思われるので、強敵のゴーレムが相手とはいえ精神的に楽なのかもしれない。
ちなみに、ゴーレムに対しては何らかの作戦を考えているようだ。
そして、冒険者達は動き出した。
敷地に次々と入ってきた冒険者たちを察知し、木彫りのクマ‥‥では無くゴーレムが早速、過去に受けた命令を遂行しようと動き出す。
その前に飛び出すえれーな。
今まさに飛び掛ろうとするゴーレムに向かいその言葉を投げかける。
「ただいま!」
そう、停止の合図がこういったものではないかとの作戦だ。
だが、
「きゃぁぁ!?」
何事も無かったかのように攻撃を繰り出してくるゴーレム。間一髪避けられたから良かったものの、当ったら洒落にならなかった所だ。
考えてみれば、このゴーレムたちの主は、偏屈老人。そんな簡単な合言葉を用意するわけが無く、また、そもそもそんなものを用意する事もいささか怪しい。
少々目論見が甘かったという事頃だろう。
これを見て、冒険者達は一斉に動き出す。
えれーなの盾になるようにリューグがその前に回りこむと、ジェームスが横合いから剣を構えチャージングを仕掛ける!
「オーラボディ!」
オーラ魔法で防御を強めたクリオ・スパリュダース(ea5678)も参戦し、ウッドゴーレムの攻撃を受け止めに回る。
だが、3対1でも流石にゴーレム。丈夫な身体は中々に致命打を受けない。
庭先での戦いは、長期戦になりそうであった。
その頃、屋敷の裏口から侵入するものたちがいた。
「偏屈な老人だから、何を隠しているか解らないな。慎重かつ冷静に対処していこう」
別働隊として屋敷に入ったクオン・レイウイング(ea0714)とアルカード・ガイスト(ea1135)、そしてリュウガ・ダグラス(ea2578)の3人だ。
「ゴーレムと住んでいたなら停止させる為の合言葉があるはずです」
アルカード曰くそういう目的らしいが、入り込んだ場所が悪かった。
裏口から忍び込んだのはいいのだが、そこは食料庫。
ちなみに老人は食道楽だったわけで‥‥
「こっちにも一体いるぞ、加勢してくれ!」
そう、食料庫にもゴーレムがいたのだ。ちなみにこっちの外見は木彫りの戦士。
屋外よりもたちが悪いかもしれなかった。
「アルカード! バーニングソードをたのむ!」
「わかりました」
「まずは戦いやすい外まで引き付けよう!」
慌てて戦闘準備を整える3人。
アルカードがリュウガの武器に炎をともし、クオンが広い場所で戦おうとウッドゴーレムを誘導しつつ外にでようとする。
だが、冒険者たちが外に出るとウッドゴーレムは追うわけでもなくそのまま元々立っていた場所に戻っていく。
「これって‥‥」
そう、ゴーレムは一定の命令に応じて動くもの。
恐らくこのゴーレムには、例の老人以外がこの食料庫に入ることを禁じるような命令が与えられているのだろう。
となれば、対処は簡単だ。
「気合入れていくぜ!」
遠距離攻撃が得意なクオンを中心にして、裏口から次々仕掛けられる遠距離攻撃。
ウッドゴーレムも丈夫であるためそれなりに時間はかかったものの、冒険者達は怪我一つ負うことなく、食料庫のゴーレムを退治できたのであった。
同じ頃、庭先のゴーレムもようやく倒されようとしていた。
「これで全部片付いたな!」
こちらは広い場所での戦いで、食料庫ほど簡単な戦いではなかったが、さほど大きな怪我も負わずにゴーレムを倒す事が出来たのだ。
やはり、広い場所での助走をつけた突撃攻撃が有効であったのも勝因の一つだろう。
また、屋外のゴーレムは風雨さらされていた為かやや強度が落ちていたこともあげられるだろう。
まぁ、それも過ぎたことだ。
今は、微かに負った傷をソルティナの応急処置で癒しつつ、屋敷の中へ入る体勢を立て直している所。
だが、それに先んじて屋敷の中を見てきたえれーなの報告で、それは必要なくなったようだ。
ロープなどを使い二階から屋敷に忍び込んだえれーなだが、もう残るゴーレムはいないのを確認したのだ。
恐らく、老人としては、屋敷に入る不審者と食料庫を荒らすネズミなどをゴーレムで退治したかったに違いない。
ちなみに、その後手分けして書斎や老人の私室を調べたのだが、停止の合言葉は結局見つからないままだったようである。
流石は偏屈老人、こういった事は流石に素直には残さなかったようだ。
そんな訳で、ゴーレムを無事倒した冒険者達。
「さてと、屋敷の中の大掃除も終わったし、帰るとするか。これでもう市場の人達も困る事はないだろう 「出来ることならこれらの資料・文献を自分の物にしたいですが‥‥全部付けの支払いに化けてしまうんでしょうね」
そんなことを呟気ながら帰路につくのだった。