土が恐い!?
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■ショートシナリオ
担当:まひるしんや
対応レベル:1〜4lv
難易度:やや難
成功報酬:1 G 44 C
参加人数:12人
サポート参加人数:-人
冒険期間:09月23日〜09月30日
リプレイ公開日:2004年10月18日
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●オープニング
「お前さん達、ちょっと用事を頼まれてくれんか? まぁ、ちょっとしたモンスター退治の仕事なんだけどな」
冒険者ギルドで親父に声をかけられた冒険者達。
丁度暇をもてあましていた彼等は続きを促す。
「キャメロットからちょっと行った所にある鉱山村でな、厄介なモンスターが暴れてるらしいんだ。数はそう多くない分、お前さん達でも何とかなるとおもうんだが‥‥」
そう前置きをおいた親父は、詳しい話を語りだす。
何でもその村は、鉱山で成り立っているらしいのだが、そのある坑道にゼリー状のモンスターが住み着いてしまったらしい。
詳しく言うと、土に擬態するクレイジェルと、金属に擬態するメタリックジェルの2種類だ。
ただでさえ暗い坑道の中で、このようなモンスターが出没しては鉱山村に住む人々もたまったものではない。
一応、それぞれ別の坑道に住み着いているらしいので、混合で襲い掛かってくることが無いのが救いだ。とはいえ、このまま放置しておくわけには行かない。
「そこでお前さん達の出番って訳だ。とりあえず、こっちは土に擬態するクレイジェルの坑道の駆除担当だな。なに、擬態さえ見破っちまえば大した事無いやつらだ。なんとかなるさ。じゃ、頼んだよ?」
あまりに投げやりな親父の物言いだが、まぁ、何時もの事だ。そんな訳で、冒険者達は件の鉱山村へと向かうのだった。
●リプレイ本文
遠くで風が岩の間をすり抜けてゆくのが聞こえた。
人ならぬ者の声にも聞こえる不気味な音。全身の毛が逆立ち、嫌悪感と不快感が蛇が肌を舐めるように這い上がってくる。音の原因はしたたり落ちた水の滴らしい。ぽつん、ぽつん、と岩に落ちる音が響き渡る冷え切った洞窟内。冷気のなかを長時間歩いたせいか、皆の体は冷え切っていた。それでも仕事はまだ終わらない。
「チョンチョンとかなら羽根が綺麗だけどさー、クレイジェルって泥だよね?」
つまらないとチップ・エイオータ(ea0061)はふてくされていた。何しろ入り口で一体、分かれ道で二体待ちかまえていたクレイジェル。坑道の中を進みながら何処にいるのか分からない泥に擬態したモンスターを捜し出すのは至難の業だ。
「これじゃあ刃毀れ起こしちゃうわ」
敵が酸を使うため、武器の扱いは注意しないとあっという間に駄目になってしまう。キラ・ヴァルキュリア(ea0836)は先程までの戦いでクルスダガーが駄目になってしまわないか心配だった。名無野如月(ea1003)が煙草が吸いたいと小言を零しながら奥へ進む。
「土に擬態する怪物は初めて見たが、まぁいい、叩き斬るまでだ」
なかなか豪快な姉さんである。琥龍蒼羅(ea1442)がため息を吐く。
「クレイジェルの耐久力を考えると複数を相手にしては分が悪い。とりあえず三体までは個別に撃破できたが、残りはどうなのやら」
「クレイジェルとは言え、六体。侮っていては痛い目に‥‥だが、後は三体だ。気を引き締めて行こう」
スプリット・シャトー(ea1865)の言うとおりだ。ジェルモンスターは手強い。それが一気に六体かかってこられたら、いくら何でも死傷者が出かねない。その点、一種袋叩きのような状態で順調に三体まで撃破できたのは運が良かった。一行は残り三体のクレイジェルを探して歩いている。エヴァーグリーン・シーウィンド(ea1493)を初めとし、明かりを持っている照明担当者は気味悪げに奥を眺めた。先は全く見えやしない。
「こう薄暗いと回り全部ジェルが化けてるみたいに思えてくるよ〜いやになっちゃう」
「暗いよねー」
暗いところには色々嫌な記憶があるアリシア・シャーウッド(ea2194)は、周囲をぐるりと見回してそんな事を呟いた。周囲全部クレイジェルで巣の状態だったら勝ち目がないが。ニック・ウォルフ(ea2767)も適当に相づちを打つ。明かりでも判別するのは難しい。
「まぁまぁ、みんながんばろー? うちも気ぃ引き締めるさかい」
「リヴィールエネミーでひっかかるといいんだけどなぁ。上手くいかないものよね」
イフェリア・アイランズ(ea2890)が気が沈みかかっている皆を励ます。実際長時間気を張り続けるというのは必要以上の労力を伴うものだ。疲労感がちらほら見えてきている仲間達。せめて安易に見つけられればとリゼライド・スターシス(ea4664)が呟くものの、クレイジェルの知能は低い。基本的に獲物がいれば食う、という行動しかとらないモンスターだ。攻撃性が増した時はともかくとして、通常時に発見できる可能性はきわめて低い。
相手が持つのは敵意ではない。補食の本能だ。しかももはや日も届かない。
「ふはははは、さっさとひと気のあるところに出てこいクレイジェル!」
「あたいも早く終わらせて酒が飲みたいよ。待つのも面倒だよねぇ」
ひたすら元気なミケーラ・クイン(ea5619)と、いまから仕事後の一杯を考えている本多桂(ea5840)。
と、そこで先頭を歩いていた数名の足が止まった。そこは広い空洞だった。いくつもの分かれ道が見える。壁や天井、床を這わせていた棒のいくつかが‥‥抜けない。
「‥‥きた!」
声に呼応したかのようだった。茶色の泥がうねるようにズッと棒を伝って這い上がってこようとする。すでに棒を端から取り込み、じわじわと持ち主に向かって触手を伸ばしていた。キラがチップの方の棒を手元寸前で切り離し、はじき飛ばす。他の者も棒を捨てた。
「三体ともおでましねー、ちょーっときついかしら」
たぶんちょっとで済まない。蒼羅の表情は厳しいものに変化した。
「取り付かれないように注意しろ、溶かされるぞ」
四人で一体。それぞれの壁からずるずると近づくクレイジェルに攻撃を繰り出す。
「にこごり風情が、叩き斬ってくれる!! ちぇすとぉぉ!!」
泥な煮こごりは勘弁願いたい、とは記録係談。如月の「さっさと終わらせて煙草吸わせろ」な渾身の一撃がクレイジェルの胴を凪ぐ。
「如月さんが叩いたクレイジェルに当たって! ムーンアロー!」
エヴァーグリーンがムーンアローを唱えた。
一方、他方から攻めてきたクレイジェルにスプリットがウインドスラッシュを放つ。
「にがさん!」
的確に放たれたウインドスラッシュは、何故かクレイジェルに当たらず傍の壁にブチ当たった。脆くなっていた其処の壁は当然崩れてくる。つまりその下のクレイジェルはというと‥‥容赦なく潰れた。びちゃびちゃと飛び散るクレイジェルだった欠片。さすがにこれでは一溜まりもない。とりあえずクレイジェル一体終了。
ただし壁を選ばないと自分達が下敷きになるので要注意だ。危険な技である。
「すごーい、なるほどね。さて私は」
アリシアは火矢をクレイジェルに向かって解き放った。攻撃性が増したクレイジェルは一気に広がるなど反則技を繰り出すこともある。早期に片を付けたほうが吉。ニックも照明を持ちながらダーツで近くの者を援護する。明かりがなければ坑道の中は無明の闇。
「イフィリアさん、ミケーラさん! 向こうからお願い!」
「まかせといてやぁ〜」
「ふははは〜、まかせろ! クレイジェルめ、覚悟しろよ、すぐ楽にしてやるからな」
どうやらニック達は、アリシアがクレイジェルの注意を引いている間に油をまいて火あぶりにすることにしたらしい。イフィリアが装備を置いて宙に舞う。油をクレイジェルにまくと表面を流れていった。また地上からミケーラが油をまきながらクレイジェルを細切れにするべくダガーを繰り出した。桂が抜きはなった日本刀で斬撃を繰り返す。
「なかなか強いけど、勝つのはあたし達!」
「アリシアさん!」
火矢を手に待機していたアリシアにニックが叫ぶ。
「いっくよー?」
ひゅぉっ!
風をきって火矢が飛ぶ。アリシアの火矢の炎はクレイジェルを炎で包み込んだ。人ならぬ奇妙な音はクレイジェルの金切り声か。ごうごうと燃えるクレイジェルをスプリットのウインドスラッシュや桂の日本刀が剔った。集中攻撃に、やがて力つきる。
「今度は人のいないところへ生まれてこいよ」
ミケーラは手を合わせた。多分其れはこの世の終わりだけだと思われる。周囲を警戒していたリゼライドがぐるりともう一班を見やった。
「そっちはどうー?」
「うーん、もうちょっとー」
チップの間延びした声が聞こえる。どうやら彼らも火あぶりを実行したらしい。半分黒く焦げたクレイジェルが弱々しい動きでキラ達から逃れようと必死になっていたが、命に関わる害虫を逃がしてやるほど彼らの心は広くない。
「すぐ終わるわ、っと」
キラが確実に打撃を打ち込む。
「うおぉぉぉ! 煮こごりもどきはイネーっ!」
防御を犠牲にしてでもサクッと突撃する如月。
「ふん、泥風情が」
日本刀を繰り出す蒼羅とムーンアローを連打するエヴァーグリーン。
「弱ってる目の前のクレイジェルにムーンアロー」
‥‥集団イジメに見えるのは私だけだろうか。
三体まともに相手をしていたら少々辛かったかも知れないが、その辺は地理を生かして上手くやれば良し。やがて最後のクレイジェルは力つきたのだった。
さてその日の夜は、鉱山村でささやかな感謝の宴が開かれた。
「困ってる人を助けるのが冒険者のお仕事って、パパ達も言ってましたし」
「仕事の後の一杯は最高よ〜〜」
村の人達に「いい子やぁ」と可愛がられているお嬢さんもいれば、仕事の後の一杯を、と飲んだくれている美女もいる。
「やっぱり戦いの後は料理が一番『ヴァルキュリア家厨房長』の腕前、見せてあげるわ」
「わー、まってました!」
わいわい賑やかな冒険者ご一行。
坑道の化け物は、こうして退治されたそうである。