●リプレイ本文
鉱山に住み着いたというモンスター。これを退治するため集まった冒険者達は、さっそくくだんの鉱山村へと赴いていた。
「あ、坑道に住み着いたモンスターの退治?そんなのに住み着かれちゃ仕事できないよね‥‥よーし、いっちょやってやろうじゃないの」
今は道すがら坑道にもぐる準備中。息巻いているビザンチン生まれのファイター、ユーディス・レクベル(ea0425)もその一人だ。
「さーて今回の得物はダガーにしようかナイフにしようか‥‥買ったばかりのハンマーは‥‥しまっとこ」
おニューのハンマーを使いたい所だが、ごん、とハンマーで壁を叩いて生き埋めになる様を想像したらしい。神妙な顔でバックパックの中へハンマーをしまいこんでいる。
考えてみれば、今回の相手はメタリックジェル‥‥骨や肉があるかも不明なゼリー状生物だ。ハンマーで効果的なダメージが与えられるのか、微妙といえば微妙だろう。
「とりあえずストーンウォールを作って倒してペチャンコにするのが吉かな? ‥‥でも死にませんね、きっと。潰れるだけで『ぐにょ〜』って這い出してきそう。あ〜‥‥どうしたモノでしょうか‥‥」
それに気がついているのか、ロシアから来たウィザード、ルーティ・フィルファニア(ea0340)は先ほどから頭を抱えてばかりいる。
そうかと思えば、
「あまり気にせずグラビティーキャノンで吹っ飛ばしてみましょうか。流体状でしょうから直撃すればミンチになりそう」
などと微妙に危険めいたセリフをこぼしていたりもする。
そうかと思えば
「金属に擬態する変態? かねてより探っていた闇の組織とは坑道のことか? まさか2つに繋がりが‥‥!?」
と、なにやら星空の彼方から微妙な思念でも受け取っているかのようなセリフをこぼす森里霧子(ea2889)のような人物も居たりする。
イギリスで多発する変態に慣れすぎてしまったのだろうか? もっとも、一応相手がメタリックジェルだという事はわかっているらしく、事前に相応の準備をしているあたり、中々だ。
ただ一つの間違いは、メタリックジェルが変態の変装か何かと勘違いしている点だが、これはもう、放置しておくより他になさそうである。
「大きすぎる困難に惑う者に手を差し伸べるのは必要な事よね。 依頼を受けるからには完璧にしたいわ」
その点、ノルマンのエルフ、アンジェリカ・シュエット(ea3668)の言葉は非常に理性的で安心感がある。
「坑道に出るメタルジェルを倒して欲しいという事は、坑道を使えるようにして欲しいという事でしょう? メタルジェルを倒しても坑道が使用できなくなってしまっては意味がないわよね。 くれぐれも大きな魔法などで坑道を閉ざす事のないよう気をつけましょう」
そう、村人たちとしては、坑道にモンスターが出ては、仕事にならないから困っているわけだ。
別に使用していない涸れた坑道に出た程度なら、冒険者に頼む必要もないのだから。
無論、全員そのことは理解している。
一応は大丈夫だろう。坑道が崩れてしまえば、当人たちも生き埋めになる可能性もあるわけであるし。
そんな調子で村へとたどり着いた冒険者達。待っていた村人から坑道の地図や詳しい経路、経緯などを聞くと、待つ時間も惜しいとばかりに、メタリックジェルの巣食う坑道へと潜り込むのだった。
坑道は、長い間この村を支えてきた産業だっただけは在り、かなり奥深い代物だ。
地の底の闇は限りなく深く、その不気味さは恐怖をあおるのには十分だ。
だが、そんな中。
「貴女はイギリスは詳しいのよね? イギリスやキャメロットがどんなところなの?」
柊葵(ea7075)は普段と変わらぬ様子で、冒険者の中の同性の者たちに向かって話しかけている。
ちなみに、この柊、同性が好みの刹那主義者であるらしい。
まぁ、本来ならばこんな場所で口説くのもどうかと思うが、底知れぬ闇に気後れするよりはよほどいいだろう。
そんな一団の先頭に立っているのはデュノン・ヴォルフガリオ(ea5352)。
鉱夫達が残して行ったらしいつるはしやスコップなどの金属製品を見つけては、それに石を投げて様子を見ている。
メタリックジェルはこういった金属製品に擬態してのち、不意打ちを仕掛けくる習性がある。この対応は、理にかなっているといえるだろう。
その隣では、セドリック・ナルセス(ea5278)が魔法で作りだした分身がやや先行して地面などをペタペタ触れつつ進んでいる。
鉱山だけのことは在り、岩肌などに擬態されても不思議ではない為、その対策なのだろう。
それが功を奏したのか、先ほど一体目のメタリックジェルの擬態を見破るのに非常に役に立ったのだ。
そんなことが会っただけに今分身は2体目。
その二人と余り変わらない程度に前に出ているのはアルアルア・マイセン(ea3073)とサヤ・シェルナーグ(ea1894)。今回代表してランタンを持つ係りに任命されていたりする。
目もいいため、これは適任だろう。奥深い暗闇を見通すかのような目は、先ほど物陰に潜んでいたメタリックジェルを見つけ出しても居るわけなのだが。
ちなみにこのメタリックジェルは逃げようとした際、サヤの機転で投げつけられた植物性染料(来る途中で作っておいた)で印がつけられ、次に現れた際にあっさりと偽装が見破られていた。
最後部では、ルーシェ・アトレリア(ea0749)がにらみを利かせている。
「もしでたら、シャドウバインディングで束縛して動きを封じたほうがいいですね、スリープはあまり意味がないでしょうし」
後方から、いざという時の何時でも支援できるようにとの考えだろう。
だが、今のところ最も信頼が置けるのは、クリスティア・アイゼット(ea1720)のディティクトライフフォースだろう。
かなり小さい虫等の生命反応まで感知するこの魔法は、金属に化けているメタリックジェルを見分けるのにこの上も無いものだ。
惜しむらくは、効果範囲がさほど広くないのが悔やまれるが、それは坑道に転がっている掘削道具などを発見してからかければいいこと。
そのおかげでつるはしやスコップの表面で擬態していたモノを容易く見つける事が出来ていた。
そして、残す所後一匹。
事前に聞いていたメタリックジェルはほとんど片付けている。
と、先頭のデュノンが何かに気付いた。
「壁の掘った跡が新しい。そろそろ最深部か」
「残る花も褌も着けぬ、汁だく新種変態はいづこ?」
そして不意に途切れる坑道。
目の前には、貴金属と思われる光沢を持った岩石の壁が遮っている。
周囲には、真新しい金属製の支柱を立てようと準備していたような跡もある。
と、不意にその支柱の一つがグニャリと曲がり、冒険者たちに襲い掛かってきた!
柱の容積から考えるとかなりの大物のメタリックジェルである。
とっさに前衛に戦士たちが走っていき、魔法使いや軽装の者を守り、そのメタリックジェルの攻撃を受け止めると、返す刀でメタリックジェルを切り裂く。
魔法使いもこれに加わり協力して大物メタリックジェルを相手し続ける冒険者達。
そして‥‥
最後、セドリックの援護で炎に包まれた剣とハンマーが大物メタリックジェルを引き裂くと、既に原形をとどめぬほどに引き裂かれたジェルは、そのまま、力なく自弁に広がる粘液となるのだった。
依頼が終わって、地上に戻ってきた冒険者達は安堵の息をついていた。
流石に光一片差さない地下は、精神の消耗が激しいのだろう。
太陽の明かりを心地よく感じている様子。
暫くの後、クレイジェルのはびこっていた鉱山も無事処理が終わったと聞いた冒険者達は、最後に村人に教えられた『坑道の中での炎の恐ろしさ』に背筋を凍らせながら、帰路に着いたとの事である。