出没! マスクドライダー
|
■ショートシナリオ
担当:まひるしんや
対応レベル:1〜4lv
難易度:難しい
成功報酬:1 G 68 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:09月26日〜10月05日
リプレイ公開日:2004年10月18日
|
●オープニング
物の流れというのは重要だ。
農村から都市への作物の供給は当然の事、大きな都市の間では隊商が行き来し、商品や情報を交換する。
自給自足でもしない限り、いやそれでも少なからず他者とのやり取りはあるものだ。
そういった意味で、モンスターや山賊から、物の流れの主役、隊商を護衛するというのは、重要な仕事である。
ある意味、国の根底を支えているといっても良いだろう。
とまぁ、前置きはここまでにして、冒険者ギルドに新たに掲げられた依頼は、この冒険者の基本と言って良い隊商の護衛というものだった。
「‥‥それはいいんだが、なんだ? この『予想相手:変態』ってのは?」
「目安だ。気にするな」
「気にするだろ!」
まぁ、つまりはまた変態が出たのだ。
ちなみにこの変態、平地で街道を行き来する隊商を狙うのだが、馬に乗って襲い掛かってくるらしい。
馬賊とでもいうべきだろうか?
姿はジャパンから輸入された褌と仮面のみという姿。
アクセントなのか、褌の前あたりに『風車』をつけているとかいないとか言う目撃証言もあるが‥‥まぁ、気にしないほうがいいだろう。
弓の腕があるらしく、乗馬したままかなり正確に矢を放ってくるという情報もある。
変態だからといって甘く見ていると痛い目にあうだろう。
「機動力のある相手だ。不利を悟ったらすぐに逃げ出すらしいし、厄介な相手かもな」
ギルドの親父も太鼓判を押す難しい相手。
さて、冒険者たちはいかにこれを退けるのだろうか?
●リプレイ本文
「イギリスに来てみたらイキナリ褌護衛‥‥歳食ったかな、何もしてないのに疲れてる」
ぼそぼそ依頼人や仲間に聞こえぬように呟くジョージ・グレン(ea5212)。此も仕事だ、絶えねばならない。そう、例え護衛しているのが褌で、自分達は褌のお供であろうとも!
「褌の護衛‥‥何か嫌だ」
才谷鷹真(ea5562)もぼそりと本音を零す。ジョージは嬉々として表情で振り向いた。
「おぉ! 鷹真君も!」
「あなたもですか! ジョージさん」
此処で一言、名ゼリフ。
おまえもか、ブルータス。
二人はがしっと手を握りしめた。その目は新たに見つけた同士に対する喜びと、互いの哀れみに満ちていた。すでに他の人達は蚊帳の外。鉄劉生(ea3993)が首をひねる。「しっかし、褌を狙った犯行おおすぎやしねぇか?」
レイヴァント・シロウ(ea2207)は高笑いをあげた。
「はーっはっは、褌こそ男の理想、盗賊だろうと山賊だろうと褌の魔力は絶大だ!」
「そんな魔力は嫌じゃ」
レティシア・プラム(ea5529)がブツブツ呟く。
「奇妙な仲間意識が芽生えているな。今日の殲滅対象は『変態』とは。見慣れてはいるが‥‥今日はもうどうでも良いような気分だ‥‥ははは‥‥」
明後日の方向を向いて黄昏ているクラム・イルト(ea5147)。ヲーク・シン(ea5984)がそんな彼女の表情を眺めて飛び出した一言は。
「くうぅぅ、クラムさーん、そんな貴方の表情にドキドキする!」
相変わらずナンパな男である。レイヴァントはよく分からない口上をあげていた。
「この私の前で。MOONRISEの。邪笑倶楽部の。ハートのAの仮面騎乗兵の前でマスクドライダーを名乗るとは! どこからでも出てくるがいいマスクドライダー!」
呼ばれて飛び出てジャジャジャ(以下略)。
奴らはあっさりやってきた。これでもか、ってくらいパターン的にいらっしゃった。
壁の存在を感知した冒険者達は、相手が変態であろうとも騎乗して矢を放ってくる者に気を抜いていられない。すぐさま鉄劉生(ea3993)、クラム、鷹真、ヲークの四人が相手に見つからないように隠れる。
対してレイヴァント、ジョージ、レティシア、ソニア・グレンテ(ea7073)はある程度抗戦することに決めたらしい。褌を積んだ褌荷車、此も一応商品だ。捨てたくなって護衛対象だ。つまり褌護衛。みんな耐えろ、耐えるんだ!
ある者は騎乗し、ある者は矢を手にマスクドライダーを狙う。ドドド、と押し掛けてくる馬に乗った変態五名。雄叫びあげながらやってくるのはいいけれど、褌の前にさしたチャームポイント風車が嫌な雰囲気を醸し出していた。
マスクドライダー、実は結構強かった。褌と仮面だけで防御力がめちゃくちゃ低いにも関わらず、噂に違わぬ正確な矢の腕。馬に騎乗した状態でソニアが放ってきた矢を矢で打ち落とす。すでに神業だ。
「く、撤退するぞ!」
「ウェーイ」
計画通り撤退を装う。ジョージの言葉にレイヴァントが捨てゼリフなるものを残し、彼らは颯爽と姿を消した。マスクドライダー達は馬から下りると、どこか恍惚とした気配を振りまきながら褌荷車に向かう。はぁはぁと怪しい息づかいと共に箱を開けようと手を伸ばしたが、なんと箱の蓋は吹っ飛んだ!
中から漏れ出す強烈な刺激臭。だかしかし、現れたのはそれだけではない!
「天が呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ! イロモノを倒せと俺を呼ぶっ! 天下無敵のグラップラー鉄劉生、ここに見参! いくぜ、真空回し蹴りぃぃぃっ、ふぉあちゃぁ!」
劉生の口上と共に回し蹴りがマスクドライダーの顎に命中。めりっ、という嫌な音と共に一撃で一人ケーオー。どよめくマスクドライダー。撤退に見せかけた者たちも戻ってきた。ひるむマスクドライダーにスマッシュをたたき込むクラム。レイヴァントは声高らかに言い放つ。
「いいか諸君。ここが射手の腕の見せ所だ! 魔弾の射手に成りたいだけ成るがいい!」
しゃべってないで早く戦え。
「ふん、あたしをなめんじゃないよ! 馬から下りればこっちのもんさ!」
クラムと共にソニアも矢を放つ。真面目に戦っている者もいれば、よくわからない行動をとっている者も確実にいる。ヲークは木箱から現れた際にばっと服を脱ぎ捨てた!
あらわれたるは嬉し恥ずかしレースの褌と真紅のマフラー!
「ライダーはパンチとキックで戦う者だ! 貴様等の様な偽物に私は負けん!」
といいながらモノを振り回した! しかしモノはモノ。回転させたところで究極の威力が発生するわけでもない。防御を自らかなぐり捨てたヲーク! 当たれば重傷確実のギャンブル行為だ! ヲークは間一髪で辛うじて回避した。弓の腕は幸い悪かったらしい。
あ、お子さまの目には悪いから見ちゃだめだゾ☆
「お前だって武器を持ってるだろう!」
至極正論を指摘するマスクドライダーその三。
「武器は卑怯だ? 最新はソードだと言う事も知らんとは、ふ! 笑止な!」
つまりお前のモノは俺のモノ的発想で理論展開しているヲーク。都合のいいように言葉を発しながらマスクドライダーを倒すべく立ち向かっていく。
一方、ジョージは唐草模様の蒼いマントを付け、無地のマスカレードに「HYOTTOKO」と書いた仮面をつけてた。しかも合流した鷹真と同じポーズ。鷹真も唐草模様の紅いマントを付け、無地のマスカレードに筆字で「ひょっとこ」と書いた仮面をつけた。
「元祖ひょっとこ仮面参上!」
「初代ひょっとこ仮面参上!」
一体のマスクドライダーに狙いを定め。
「一撃、ひょっとこ撃ち!」
「喰らえ、ひょっとこ斬り!」
お前らひょっとこしかないのか。
やってることは連携がとれているが、言ってることはバラバラだ。さてマスクドライダーその五はというと、皆の目をかいくぐって馬に乗っていた。馬に乗れば合体完了。いざ反撃を! と走り出した刹那。
「おいそこのお主、ライダー殿。決めポーズは?」
レティシアの言葉にマスクドライダーその五は固まった。
「貴殿らポーズ一つないのか。さっきから見ていてもの足らぬと思っていたのだ。そうだな、ならば一つ教授しよう『白・黒つけるぜ!』こんな感じじゃ。ふむ、よろしいか」
なんとレティシアはポーズ講座を始めた。マスクドライダーその五は戸惑いつつも。
「し、しろ‥‥」
「声が小さい。りぴーどあふたみー!」
「「白黒つけるぜ!」」
ノリノリポーズをした刹那。ドガンと一発馬の腹にたたき込む。勿論ポーズ中のライダー落馬。しかも落馬したライダーをレティシアは自分の馬で轢いた。‥‥むごい。
「ふむ安定性の問題があったか改善の余地ありと」
さて、馬から落ちた変態盗賊。冒険者達の異質ぶりに気圧されていたぶられるままとなる。あまりにも可哀想なので後は筆を置くことにする。一番の大問題シーンは次の通り。
(以下、お子さまに良くない衝撃的な場面のため音声だけでお楽しみください)
「どりゃああ! 見るがいい」
「おおおお!」
「うわー! うわー! 何やってるんだソニア君! 破廉恥な!」
「あっはっはっは! こんなんで反応するとはなぁ。まだまだ甘ちゃんだなぁ!」
「う、鼻血が!」
「からかってないで服を着なさい!」
「うっさいジョージ!」
「いかんぞソニア君。乙女の柔肌は神の領域! それ以上は禁断の花園だ!」
「うわーうわー! ていうか言葉通じてないし!」
「げ、おまえなにやってんだよ! は! 俺は何も見てない! 見てないぞ!」
(音声オンリーレポート終了)
「おらーおらー 俺たちを潰そうなんぞ一億年早いわ!」
捕まえた後でマスクドライダー達は簀巻きにされてクラムにいたぶられていた。クラムはさらに褌を脱がすと、なにやらサインの書かれた葉っぱを渡す。
「コイツはとある都合で来れんかった知人からの餞別だ。有難く受け取っておけ!」
それは温情というなの愛情にして暴力。
「私の前でライダーを名乗ったその罪、その素顔を衆目に晒し風車をアホ毛っぽく頭につけ笑い物になるがいい! 更にはこの魔法少女の枝を持ち、褌のまま市民の前でそれっぽい可愛い呪文を唱えつつ踊らせる! 喜ぶがいい!」
マスクドライダー達の不幸は、この冒険者達に出会ったことかも知れない。
「キャメロットにゃ、冒険者も盗賊も、アイテムも‥‥皆そろってイロモノかよ」
「ふっ、これからもナンパ成功率0%確定だな‥‥悲しくなんかないぞ!」
劉生とヲークは背中で泣いた。男は強い、強いのだ!
涙で前が見えなくても、例えナンパが成功しなくても。キミにはキミの売りがある!
変態を倒して手に入れたのは、報酬と人としての何かであったようだ。
ぐっばーい、マスクドライダーっ!
こうして五人の盗賊はギルドに引き渡され、褌の平和は守られた。たぶん。