鴨の大捜査線
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■ショートシナリオ
担当:まひるしんや
対応レベル:1〜3lv
難易度:やや難
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:06月19日〜06月24日
リプレイ公開日:2004年06月23日
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●オープニング
日差しが徐々に強くなって行く、ある日。
キャメロット近くの川では、貴婦人達が色とりどりの船が浮かべやや早い舟遊びに興じていた。
優雅に川面に浮かぶ船内では、茶会や談笑などが行われる、華やいだ雰囲気での宴。
だがそんな中にも、やや例外と言うべき船もあったりする。
「今日はお呼びいただいて光栄ですわ、お姉様。こんな会を催されるなんて、流石は古くからの家柄は違いますわ。お暇な時間が多くていらっしゃいますのね。羨ましいですわ〜(訳:おう、古臭い落ちぶれモンは暇でエエのう)」
「あら、お忙しいお嬢様には心のゆとりが必要かと思ってお招きしましたのよ? 貴婦人らしい優雅さをお嬢様にお勉強して頂こうかと思いましたの。新しい家は学ばなければいけない事も多いのでしょう?(訳:物を知らんぽっと出の成り上がりに、伝統つうもんを見せとんのじゃ、コラ)」
テーブルを挟んで向かい合い、交わされる会話の裏は何ととげとげしい事か。
お互い優雅な微笑を浮かべているというのに、その周辺の空気は何か歪んで見えるほど。
実は、新興名家のこの令嬢と古参名家のこの貴婦人、かなり有名な犬猿の仲であったりする。
顔を付き合わせるたび、周囲が怯えるほど『黒い』会話が行われるので、察しているのか周囲に他の船は近づけた物ではない。
尤も周囲に飛び火する事は少ない為、近頃は遠巻きに眺めてやり取りを見るのが流行っているとの事。
恐いもの見たさも手伝ってか、今も少なからず視線が注がれていたりする。
「それはご厚意感謝しますわ、お姉様。そうだわ!今日はお姉様に見て頂きたい物があるの(訳:大きなお世話じゃ。まぁええわ、今日はこれを見せ付けに来たんじゃ)」
と、令嬢が取り出したのはかなりの大きさのサファイアである。
「最近手に入れたものなのですけど、これ、素敵なサファイアでしょう?遠くビザンチンからとりよせましたのよ?お姉様でもこれほどの物は始めて見るのではないかしら?(訳:ワシが手に入れたビザンチンの宝石じゃ。こないな値打ちモン、黴臭いババアは見たこと無かろうが?)」
見せびらかしながら、微妙に勝ち誇った笑みを浮かべる令嬢。だが、貴婦人も負けてはいない。
「あら、素敵ね。でも、カッティングが今一ね。装飾も趣味が悪いみたい。それならこっちの方が素敵だと思うわよ?(訳:ケッ、相変わらず物見る目が無いのう。本当の値打ちモン言うんは、こういうモンを言うんじゃ)」
取りさしたのは、精緻な細工が施されたブローチである。所々に配置されたルビーが全体として見事な調和を生み出していた。
「ある騎士様が奥方の誕生祝に、名だたる名工に作らせた品ですのよ。この細工とデザインの深みは、お嬢様では判らないかしら?(訳:名品言うんはこういうモンを言うんじゃ、乳臭いガキにゃ判らんかも知れんがのう)」
お互い、名品を手に微笑みあう。
一見優雅な、その実ドロドロとしたものが流れまくっている光景は、見る者の背筋を凍らせるに十分だ。
実際、興味本位で眺めていた貴婦人たちの中には、恐怖に倒れるものも出てくるほど。
誰か止めろと言いたいところだ。
と、その時。
神のイタズラか、川面に突風が吹いた。
「な、何!?」「きゃぁ!?」
大きく揺れる船、バランスを崩す令嬢と貴婦人。そして、
「「あ、あぁぁぁぁーーーーーっ!!」」
二人の手からこぼれる宝石とブローチ。
其れは弧を描いて川面に向かって、
「くわ? くわっ!?」「「えっ!?」」
二つは偶然そこに居た鴨のくちばしへ。
「くわっ(ゴクン)」「「えっ!?ええっ!?」」
さらにその中へ、喉へ、さらに奥へ。
「くわ〜〜〜〜っ!」「「え、えぇぇぇぇ〜〜〜〜〜っ!?」」
驚いた鴨は飛び去って。
残されたのは、先刻までの黒さとは裏腹の真っ白な二人。
つまりは、切っ掛けはそういう事だった。
そんな訳で、その日のうちに冒険者ギルドに出されたのは、
「鴨!? 鴨狩りでもしろっていうのか?」
「似たような物だな。どこかのご婦人の大切なものを鴨が飲み込んで逃げたらしい。つまりはそれを捕まえろって事だな」
そういう依頼だった。
ちなみに問題の鴨は近くの沼沢地に飛び去ったのを確認されているらしい。
そこは近辺の渡り鳥が集中らしいので、そこに居るのは間違いないとの事だ。
多くの鴨の中から一匹を見つけ出し捕まえるのは少々骨が折れる作業だろう。
だが、一応、目標の鴨は目印(ブローチの金具がくちばしに引っかかっている)があるらしいので、不可能な依頼ではないはず。さらに、
「まぁ、報酬は高めだ。難しい依頼だろうが、やってみる価値はあると思うぞ?」
報酬も約束されているとなれば、受ける価値はあるだろう。
かくして、冒険者達はダックハント(鴨狩り)に出かけることになったのである。
●リプレイ本文
●鴨狩り作戦検討中
「頑張って鴨を捕獲しましょー♪」
清々しく晴れた空にエルフのウィザード、ティアイエル・エルトファーム(ea0324)(愛称はティオ)の声がこだまする。
今回の依頼は群れの中のたった一匹、ある令嬢達の『大切なもの』を飲み込んだ鴨を捕獲することだ。
だが、ここに集まった冒険者達は、事をそれだけで終わらせる気は毛頭無いらしい。
「違う鴨を仕留めたとしても、しっかりお持ち帰りしようね! あたし的には、鴨をペットに出来ないかな〜?」
そう、どうやら猟の獲物として鴨を見ているメンバーがほとんどのようだ。
その所為か捕獲作戦を練るのにも、不必要なほど熱気がこもっている。
「今晩は鴨で決まりだな♪」
第一声がそんなセリフだったりするフェシス・ラズィエリ(ea0702)も、打ち合わせに気合が入っている。
エルフのレンジャーらしく、弓の腕はかなりのもの。
無論本来捕まえるべき目標の事を忘れてはいないようだが、一通り作戦が終わった後で他の水鳥を捕獲しようともくろんでいたりする。
当然食用だ。
「‥‥できた‥‥きっと‥かんぺき‥‥‥‥がんばる‥かもなべたべたい‥‥‥」
ちなみにウィザードのエイス・カルトヘーゲル(ea1143)は、作戦が大まかに決まった辺りから微妙にトリップしているように見える。
既に全て終わった後の食事へと意識が傾いているのだろう。
レイジュ・カザミ(ea0448)と共に作った鴨用のえさをおもむろに口へ運んでいる辺り、もしかすると物凄く飢えているような気もする。
が、よくよく考えてみれば彼も保存食を持参しているので、気分の問題なのだろう。
そういえば、そのレイジュは、先ほどから道端の草をブチブチ引き抜き、まとめている。
恐らくこれも鴨捕獲の為の準備、だが一体何に使うのか?
微妙に謎である。
ともあれ、作戦を立てつつ街道を進む冒険者たち。
行き道はさほど問題もなく過ぎていくのだった。
●皆で一緒にダックハント(追い立て班)
沼沢地にたどり着いた冒険者達は、早速道中で立てた作戦に沿い、行動を開始していた。
(「問題の鴨は‥‥異物を飲み込んで苦しいでしょうから、早くなんとかしてあげたいですね」)
ひそやかに呟いたのは、神聖騎士でもあるロレッタ・カーヴィンス(ea2155)。
仲間と共に事前に用意しておいたロープを持ち、ゆっくりとかもの群れを包囲してゆく。
まだ周囲は夜明け前。薄暗い中を、大きな物音を立てぬよう、ゆっくりと慎重に歩を進める。
「‥‥‥‥」
同じようにロープを持ちながら、サリエル・ュリウス(ea0999)はその鋭敏な目で問題の鴨を探そうとして‥‥困っていた。
実は彼女が持つ鋭敏な感覚は、嗅覚の方。
視力は、特に良いわけでなく、普通だったのである。
仕方なく何とか目を凝らすが、流石にコレでは判りようが無い。
尤も他のメンバーに目の良い者が多いため、さほど深刻な問題にはなっていないようだ。
レンジャーであるヴィグ・カノス(ea0294)も目の良い者の一人。
ロレッタやサリエルと同じく鴨を追い立てているのだが、その目の端に何か感じるものがある。
微かな光だ。
それは、一匹の鴨のくちばしに、月明かりを反射して輝いている。
そう、鴨が飲み込んだというブローチの金具だ。
隣で、同じくゆっくりとロープを狭めていたウィザードのユキネ・アムスティル(ea0119)も頷いている。
どうやら、捕まえるべき標的を見つけたらしい。
それでも、焦る気持ちを抑え、ロープを手にしたメンバーは、捕獲班のいる辺りへ、ゆっくりとゆっくりと鴨を追い込んでいった。
●皆で一緒にダックハント(捕獲班)
鴨を追い詰めるその先で、レイジュは長い間我慢の時を過ごしていた。
ちなみに彼の今現在のいでたちはというと‥‥上半身裸及び下半身下着一枚。
さらにその上から道中でつんだ草をペタペタ張り付け、全身をカモフラージュしている。
何気に微妙な位置に輝くワンポイントのお花があまりにキュート。
その姿は後年まで語り継ぎたいほど。
ただ、鴨をおびき寄せる為のえさをこし回りに身につけている所為か、先ほどから魚が集まって仕方が無い。
えさと勘違いしているのか、微妙なポイントをつつかれさえしてしまう。
とはいえ、ここで物音を立てようものなら全ては無に返してしまうだろう。
ひたすら我慢するその姿は、ある意味崇高だった。
だが、その苦労も報われようとしていた。
鴨たちはゆっくりと彼の周囲に集められ、そして‥‥
合図と共に、一斉に冒険者たちは動き出した。
目星をつけておいた鴨に向けて、フェシスが狙い済ました矢を放つと同時に、周囲の鴨達を捕獲にかかる。
だが、水場という慣れない足場は思った以上に急な動きを妨げる。
そのせいか、フェシスの放った矢は問題の鴨に命中したが、仕留めるには至らなかったのだ。
慌てて逃げ出そうとする群れ。
慌ててエイクがえさをばら撒き、気を引こうとするが、一度動き出した群れは止まらない。
混乱の中、問題の鴨を見失いそうになる冒険者たち。
だが丁度その時、朝日が沼沢地に差込み、眩い光が煌めいた。
「あそこ! あそこにいるよ!」
朝日の反射を予測していたティアイエルの声に反応して、とっさにはなったヴィグのダーツが問題の鴨の羽の付け根を貫き、動きを鈍らせる。
さらに
「アイスブリザード!」
ユキネの放った氷の嵐が水面と鴨達を凍てつかせる。
ここまでされては、しょせんは鴨、何もすることは出来ない。
こうして、冒険者たちは問題の鴨とその他多くの鴨を多数捕獲するのに成功したのだった。
●嬢ちゃん、ええ根性しとるのう
結局、問題の鴨は真っ先に皆の夕食になっていた。
元々妙な物を食べた所為で体調を崩していたのだろう。
宝石とブローチを吐き戻させることは出来たが、それが原因なのか直ぐに動かなくなってしまったのだ。
残念だが、仕方が無い事だろう。
もっとも、そのお肉は非常に美味だったとか。
また、同時に捕まえた鴨は道中の食料、さらに干し肉として皆の保存食になっていた。
そして、キャメロットである。
無事帰り着いた冒険者達を依頼人である令嬢と貴婦人が待ちわびたように出迎えていた。
「皆さん、ありがとう御座います。本当に感謝の言葉もありませんわ」
「皆様確かな実力をお持ちなのですわね。もし機会があれば、またお仕事をお願いしたいほどですわ」
にこやかな令嬢達。だが、冒険者達の表情はやや微妙だ。
その表情に怪訝な顔をする令嬢たちへ、ロレッタが言い難そうにこう告げる。
「それなのですが‥‥この宝石とブローチ、偽物ですわ」
ピシと凍りつく令嬢たち。
そう、どちらも良く出来た偽物で、価値は1Gも無い物だったのだ。
余りの事実に凍りついたままの二人。
そこへ、
「口止め料」
サリエルが二人の耳元へ呟く。
だが、コレは少々やぶへびだった。
二人はギラリと目を光らせると、サリエルを睨みつけたのだ。
「オウ、ワシらを強請るつもりか? 嬢ちゃん、ええ根性しとるのう!」
「自分の身の程っつぅもん知らん言うんは、大したもんじゃのう!」
気がつくと、冒険者達の後ろには、令嬢お付の戦士達がズラリと並んでいる。
実に危険だ。
思わず首を横に振る冒険者達。
その様子に、令嬢二人は微笑を取り戻す。
「おほほ、素直がよろしくてよ。安心なさいな、追加の報酬は弾みますからね」
「そうですわ。皆様とは、これからも良い関係で居たいものですもの」
優しげに微笑む令嬢たちに、冒険者たちは思わずため息をつきそうになるのだった。