蝶と蜂の危険な関係

■ショートシナリオ


担当:まひるしんや

対応レベル:1〜3lv

難易度:易しい

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:06月21日〜06月28日

リプレイ公開日:2004年06月28日

●オープニング

 ここはキャメロットの某所。
 日当たりの良いテラスで、その会話は続けられていた。

「この香は見事だな。アフタヌーンティーとは、何とも優雅な風習だとは思わんか?」

「左様で御座いますな。今日は月道から届いたばかりの葉をご用意いたしました」

「なるほどな。実に奥の深い香だ。所でセバスチャン。今日は蜂蜜の用意がないというのはどういうことだ?」

「先日甘党ではないと仰せでしたので、ストレートに致しましたが、何か?」

「まて、紅茶に蜂蜜を入れるのは俺のスタイルだ。甘党とは関係が無いぞ? 其れはお前も知っているだろう?」

「さて、さようで御座いましたか? 初耳で御座います。もっとも、実はもう一つ理由が御座いまして」

「なんだ?理由というのは」

「蜂蜜を買い取っていた養蜂農家の話ですと、蜜蜂を飼っている近辺にパピヨンが現れたらしく、少なからず被害が出ているそうで御座います」

「そんな事か。なら早く駆除させろ。人を雇って構わん!」

「畏まりました。所で、御主人様」

「ん?何だ?」

「私はセバスチャンという名前では御座いません」

「気にするな。様式美という奴だ」

「‥‥‥」

 そんな会話が行われた次の日、冒険者ギルドに届けられたのは、

「パピヨンから蜜蜂を守る? なんだいそりゃ?」

 そんな依頼だった。

「ああ、何でも蜜蜂が花畑にパピヨンが何匹か紛れ込んだらしい。パピヨンってのは毒の燐紛があるから蜜蜂が弱って蜂蜜が取れなくなっているらしいんだ。其れを守るって事だな」

 問題のパピヨンは10に満たない数でらしいのだが、毒の燐紛がある為一般人では駆除に危険が伴う。
 そこで冒険者の出番となったのである。

「蜜蜂は弱っている所為で巣箱から出てこないらしい。まぁ、刺される事は無いだろうな。その点じゃ安心だ。まぁ、上手く行けば蜂蜜を味わえるかもしれん。甘党なら行って見るといいかも知れんな」

 待ち受けるのは花畑と甘い香。
 そんな事を思い浮かべつつ、冒険者達は旅支度を始めるのだった。

●今回の参加者

 ea0077 ジュスティン・ブルーレトリバー(27歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea0459 ニューラ・ナハトファルター(25歳・♀・ジプシー・シフール・エジプト)
 ea0778 スタール・シギスマンド(27歳・♂・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea0980 リオーレ・アズィーズ(38歳・♀・ウィザード・人間・ビザンチン帝国)
 ea1458 リオン・ラーディナス(31歳・♂・ファイター・人間・ノルマン王国)
 ea1493 エヴァーグリーン・シーウィンド(25歳・♀・バード・人間・イギリス王国)
 ea2895 セレン・ラインハルト(22歳・♀・僧侶・シフール・インドゥーラ国)
 ea3193 グウェン・アースガイア(29歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)

●リプレイ本文

●パピヨン講座で予習しよう!
 パピヨンが現れたと言う花畑への道中。
「いいですか? もう一度おさらいします。パピヨンというのは、その燐粉が毒を含んでいて‥‥」
 冒険者たちは、ビザンチン帝国生まれのウィザード、リオーレ・アズィーズ(ea0980)の主催するパピヨン講座に耳を傾けていた。
 ちなみに、リオーレはある人物に仕えるメイドであるらしい。そのためか今もメイド服、とても冒険者のいでたちには見えなかったりするのが微妙なところだ。
 どうやら主の教育係も勤めていたらしく、人に物を教えるコツと言うものを身につけている。同時にモンスターの知識に富んで居る為、こうして仲間たちにパピヨンについての情報を教えていた。
 曰く、毒燐粉は吸い込むと危険。抵抗力が強ければ耐えられるが、そうでなければ身体に悪影響が出る事。
 曰く、蝶なのでヒラヒラと身軽。中々に攻撃を当てにくいので、直接攻撃は相応の腕が欲しい事。
 街道での休憩の度に開かれたこの講座のおかげで、参加者全員パピヨンの知識は十分。すでにそれぞれ対策を立て終えていたりする。
 それゆえ、冒険者たちの意識はパピヨンを退治した後へと向けられつつあった。
「蜂蜜‥‥持って帰ったら、ユージが喜ぶかな‥」
 双子の姉への土産に思いをはせているのはスタール・シギスマンド(ea0778)。
 神聖騎士であり、中々の剣の腕の持ち主なのだが、はっきり言ってシスコンだ。
 今も、土産の蜂蜜を受け取る姉の顔を想像してトリップしている。
 同様にトリップ中なのはグウェン・アースガイア(ea3193)。
 立派なウィザードになりたいと願う風使いなのだが、その実態は余りの甘い物好きゆえ、蜂蜜をそのまま食べても平気な超甘党である。
「甘〜い蜂蜜かぁ‥‥ふふ、楽しみ〜♪ 甘いもの大好きだから思いっきりがんばっちゃうよっ!」
 よほど依頼を成功させた際にもらえると言う蜂蜜が楽しみなのだろう。
 とりあえずは、パピヨン退治後にピクニックでもしようと胸を弾ませている。
「お料理するの好きですしぃ。甘い物だ〜い好きなんです♪」
 バードのエヴァーグリーン・シーウィンド(ea1493)も蜂蜜をもらうためにこのパピヨン退治に参加した一人。
 尤もどちらかと言うと、貰った蜂蜜で料理することを楽しみにしているようだ。
 ただ微妙に問題なのが、料理好きに反して自身が余り料理の経験が無い事。
 本人もその辺りを自覚しているのか、こっそりと今から料理を焦がさないかと心配していたりもする。
 そんな調子で冒険者たちは、のどかに街道を進むのだった。

●お花畑でひ〜らひら
「いい天気だなぁ。絶好の冒険日和だね〜♪」
 花畑に到着した冒険者達。その目の前には、ファイターのジュスティン・ブルーレトリバー(ea0077)が思わず呟いてしまったほど平和な光景が広がっていた。
 一面に広がった色とりどりの花々。
 初夏の風に揺れる花からは、濃厚な甘い香りが漂い、何とも幸せな気分にさせてくれる。
 花の合間には、模様の美しい蝶が飛び回り、いっそうメルヘンな世界を引き立たせる。
「ん〜、パピさえいなければ、今から昼寝でもしたいね」
 全員が全員トリップしそうになる中、ノルマンのファイター、リオン・ラーディナス(ea1458)の一言で皆我にかえった。
 そう、あの花の間で飛んでいるのが問題のパピヨンだ。
 よくよく見れば、パピヨン以外の虫などが見当たらない。恐らくその毒の燐粉から逃げているのだろう。
 なるほど、コレでは蜜蜂も溜まったものではないだろう。
 となれば、さっさとパピヨンを駆除するに限る。冒険者たちは、早速退治に取り掛かるのだった。

 パピヨンの危険な点は燐粉のみ。となれば、風上から近寄れば問題ない。
「みんな、風上、こっち」
 その点で、風読みの知識があるエジプト生まれのジプシー、ニューラ・ナハトファルター(ea0459)が共に参加していたのは僥倖だった。
 おかげで大きく迂回しつつも、パピヨンの燐粉を避けその傍へと歩を進めることが出来る。
 ちなみに、ニューラがやや片言なのは、イギリス語を現代語全般に対する幅広い知識だけで補っている所為。
 とくに、その経験もまだ浅いとなると、どうしても複雑な会話をし難くなってしまうのだ。
 冒険者各位は気をつけるべきだろう。

 まぁ、それはともかくとして、無事にパピヨン傍まで近づけた冒険者達。
 後は退治するだけである。
 まずは、マントで口元を覆ったジュスティンとリオンが前に出ると、道中で拾ってきた看板(ストーンマーテン村まで5キロ等と書かれていたりする)を担いで扇ぎ、燐粉を吹き飛ばし始めた。
「僕達はパピヨンの鱗粉をなんとかするよ〜」
「ファイターってのは、あらゆる武器を使いこなすんだゼ!」
 看板が武器に含まれるかはさておき、その効果は確かなものだ。
 至近距離に近寄っても燐粉は冒険者たちに届かない。
 ただ、パピヨンも風にあおられて狙いが一層定めにくくなったのはご愛嬌と言ったところか。
 エヴァーグリーンがナイフを投げつけパピヨンに当てようとするが、おかげで掠りもしない。
 接近戦が得意なスタールほどとなると、これ位の難度でも易々と命中させることが出来るのだが、それを全員に要求するのは無茶だろう。
 尤も、魔法ならば多少狙いが定まらなくとも問題はない。
 リオーレが放つのはグラビティーキャノン。その力にパピヨン達は地面へと次々叩き落され、狙いが定めやすくなる。
 グウェンも同様に魔法を放つが、こちらはより効果的。何とパピヨンの周囲を真空の空間にしてしまったのだ。
 コレならば燐粉が飛ぶことも、ましてやパピヨンが飛ぶことすらも不可能だ。
 後は静かに倒れるのを待つだけでいい。
 こうして無数に居たパピヨン達は駆除され、花畑に平穏が取り戻されたのだった。

●お茶会もお花畑で
 冒険者たちは、パピヨン退治の報を花畑の直ぐ傍に住む養蜂農家の元に届けていた。
 そのほうに安堵する農家。巣箱の中の蜜蜂を、ようやく外に出せると安心ひとしきりである。
 そしてせめてもの礼にと、蜂蜜をかなりの量分けてくれたのである。コレはメンバー全員で分けても十分な量。さらにこれとは別に、今から食べる量を用意してくれても居たのである。
 さらに厚意で台所も貸してもらえた為、冒険者たちは希望通り花畑の中でお茶会を開く事としたのだった。
「皆でお花畑でお茶会だね〜。楽しみ楽しみ〜♪」
 大食なジュスティンは目の前に並べられる紅茶やお菓子に目を輝かせている。
 リオンの持ってきたパンの耳やニューラの作ったラスク、やや焦げ目があるもののエヴァーグリーンの作ったホットケーキも味は中々。
 そこへタップリと蜂蜜がかけられ、
「ウマー!」
「甘くてオイシ〜♪」
「蜂蜜だけでも美味しいよっ」
 冒険者たちはその甘さにうっとりと目を細める。
 ふと花畑に視線を移すと、パピヨンから逃げていた普通の蝶等がゆっくりと姿を現し始めていた。
 そのメルヘンな光景に心躍らせたのか、ニューラも蝶達に混ざり、ジプシーの華麗な踊りを舞い始める。
 くるくると風に舞うシフールの姿。
「シフールの女性が花畑を飛び舞う姿、う〜ん萌‥‥い、いや、ウツクシイね!」
 微妙な表現も混ざったが、その意見に異論があるものなど居るはずも無い。
 自分たちも、と花畑に歩みだす冒険者達。
 こうして日が暮れるまでピクニックに興じた彼らは、それぞれ土産の蜂蜜を手にしてキャメロットへの帰路につくのだった。
 満足感と、甘い香を漂わせながら。