スワローラプソディー

■ショートシナリオ


担当:まひるしんや

対応レベル:1〜3lv

難易度:易しい

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:06月26日〜07月01日

リプレイ公開日:2004年06月28日

●オープニング

 段々お馴染みとなりつつある、キャメロットの某所。
 無数の書が並ぶ書斎で、この二人の会話はまったりと続けられていた。

「ふむ、この書によると、華国の人々は四足は椅子とテーブル以外なんでも食材にしてしまうようだな。かの国の料理は美味且つ奥が深いと聞くが、その源はこういった食に対する探究心なのだろう」

「ただ単に食い意地が張っているとも取れますが」

「この俺が素直に賞賛しているんだ。水を差すんじゃない。‥‥ほう、こんな物も食べるのか」

「いかがなさいました?」

「これを見ろ、燕の巣のスープとあるぞ! あんなものも食材に出来るとは驚きだな!」

「燕の素‥‥あの軒の下に作られるあれ、で御座いますか?」

「他に何がある? 素晴しいじゃないか。よし、早速俺も食べてみよう」

「燕の巣を、で、御座いますか? 私が思います所、もう少しその燕の巣の事を調べたほうが良いのではと‥‥」

「ウォルター、ジャパンのコトワザ『膳は急げ』というのを知らんのか? 料理の世界はスピード、つまり鮮度が大切なんだぞ」

「私はウォルターでは御座いません。それにそのコトワザも何かが間違っているかと思われます」

「気にするな。いいから燕の巣を手に入れろ」

「‥‥‥畏まりました」

 かくして、冒険者の店に、世にも奇妙な依頼が持ち込まれたのである。

●今回の参加者

 ea0324 ティアイエル・エルトファーム(20歳・♀・ゴーレムニスト・エルフ・ノルマン王国)
 ea0682 クロヴィス・ガルガリン(26歳・♂・ファイター・ドワーフ・フランク王国)
 ea0950 九条 響(28歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 ea1252 ガッポ・リカセーグ(49歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea2889 森里 霧子(30歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea3179 ユイス・アーヴァイン(40歳・♂・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea3475 キース・レッド(37歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea3858 久方 秋夜(32歳・♂・浪人・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●すわろーらぷそでぃ〜
 キャメロットの片隅にある料理店。
 今ここには、華国の食材だという『燕の巣』が大量に集められていた。
 方々を回って燕の巣を集めてきた冒険者達。
 その受け渡しの場として指定されたのが、この料理店だったのである。
 各自『燕の巣』と主張するものを手に、緊張の面持ち。
 その一堂の前に立つのは、初老の執事であった。
「皆様、依頼を果たして頂きありがとう御座います。わたくしめは‥‥そうですな、仮にウォルターとお呼びください」
 そう言って見事な一礼を披露する。
 白髪に長身の痩身。隙一つ無い礼服の着こなしはまさしく執事の鑑といったところか。
 だが、何故仮名なのか?
「今日は、わたくしめの御主人様のたっての希望、集められた食材を直ぐに食されたいとの事で、この料理店を一日借り受ける事と致しました。本来ならば当家に直接お呼びするのが筋なのでしょうが、今回の件は内密のものとさせて頂きたいのです。皆様の中には、直接燕の巣を調理されたい方々もいらっしゃるとの事。であれば、このような場となることも、ご理解いただけるかと思いますが」
 なるほど、依頼主は相応の家柄と見える。となれば、こんな道楽を増してや、何か勘違いしているような依頼をした事を公にしたくは無いのだろう。
 そういう意味での仮名や、店の貸切と言うわけだ。
「素材としてお集めになった燕の巣は、直ぐに買い取らせていただきます。その後は、当方の料理人が調理いたします。この際の調理法の指定は承りましょう。同時に、ご自分で調理もなさると言う方は、毒見の後に御主人様へお出しする事となりますその際、非常に美味なものがあれば追加の報酬もお約束いたしましょう」
 その声を受けて、早速一人目が老執事の前に足を運ぶ。
 かくして、世にも奇妙な料理会が幕を開けたのである。

●ティアイエル・エルトファーム(ea0324)の場合
 ノルマン出身のウィザード、ティアイエルが執事に差し出したのは、依頼に在ったとおりの陸燕の巣だった。
(「うーん‥‥燕の巣って‥‥食べられるんだ?街で見かけたことはあるけど『食用』になるなんて知らなかった〜」)
 そう素直に考えたティアイエルは、ごく普通にキャメロットの街を回り、壁登りや巣のある家の者に頼み窓からとるなどして今は使われていない古い巣を集めていたのだ。
 そうして集めようとしたものの中には、今も使われて雛が中にいるものもあったのだが、流石にそういったものは避けた様子。
 まぁ、当然だろう。
「なるほど、確かに受け取らせていただきます」
 執事も予想通りの物を受け取ると、約束の礼金を手渡し、すぐさま巣を厨房へ。待ち受けた料理人が巣を調理し始める。
 だが、コレは当然無謀というものだ。
 陸燕の巣は言うならば泥の塊。
 まずは煮込み料理とばかりに鍋の中に入れられたそれは、見事に土と砂へと変わってゆく。
「仕方ありませんな。コレは見なかった事に致しましょう」
 結果、老執事の一言で廃棄処分となるのだった。

●クロヴィス・ガルガリン(ea0682)の場合
「剣を振るために冒険に出たのに、結局商売の交渉をする事になりましたか」
 そう呟くのは、フランク王国出身のファイター、クロヴィスである。
 商人ではあるのだが、専門は武器。今回のような食品は専門外である。
 それでも、商人としてそういった品を専門に扱う人々は理解している様子。
 彼は食品店や市場、またジャパンとの貿易を行う商人などに聞き込みを行っていたのだ。
 だが、彼らでも本場の燕の巣に関しては、憶測の域をでない情報しか得られない。
 そこで仕方なく、陸燕の巣を用意すると、混ぜて調理できる干物、味をごまかす調味料などを用意していた。
 尤も、調理法に関して伝えようにも、クロヴィスはゲルマン語しか話せない。
「こういう事なら、きちんとイギリス語を勉強しておくのでした」
「ご安心を。わたくしめは諸国の言葉に通じております」
 嘆くクロヴィスに平然と答えるのはウォルター(仮)。
 この老執事、案外スゴイかもしれない。
 それはともかくクロヴィスの用意した燕の巣は、香辛料を多量に使った料理となって、例の主人に出される事となった。
 もっとも、暫く後に奇妙な悲鳴らしきものが聞こえてきたところを見ると、味は想像に難くないものだったようだ。

●ガッポ・リカセーグ(ea1252)の場合
 大商人を目指すレンジャー、ガッポが用意した燕の巣は実に大量だった。
 その数、実に300以上。
 実はコレ、ガッポの立てた作戦によるものだった。
 彼はスラム荷たむろする少年たちに、燕の巣を探して持ってくるように依頼したのである。
「燕の古巣を1つ1Cで買い取る。さる高貴なお方が研究にご所望でな。使われているのはダメだ。期限は3日間」
 その結果がコレだった。
 無論そのコストも大量にかかり、彼の懐は随分と寒い事になっている。
 どうも話が奇妙なほど広がったらしく、近辺の村からも巣を持ち込んでくるものが殺到したのである。
 さらにガッポは、
「料理法を知っている」
 と厨房に入ると、干物で出汁を取り、僅かに具の入った味見程度の量のスープを作り上げる
「貴重だろう? あれだけ大量の巣を集めてもこれだけしかならないのだからな」
 そう言われれば、そういう気がするから不思議だ。
 どうも主人の受けも良かったらしく、ガッポには追加報酬が出たとの事。
 もっとも、かかったコストを埋めるまでには至らず、他のメンバーよりも少なめの報酬とってしまったらしい。
 無理も無い。

●ユイス・アーヴァイン(ea3179)と久方秋夜(ea3858)の場合
「燕の巣‥‥ですか? 何に使うのかは知りませんけれど‥‥頼まれたからには頑張ってきますよ〜」
 そう意気込むウィザードのユイスとジャパンの浪人、久方は、参加者の一人、華国出身の九条響(ea0950)が『海燕の巣』に言及していたのを思い出していた。
 何でも海燕の巣は海草でできていると言う。となると、泥や土で出来た陸燕の巣よりよほど食材に向いているように思える。
 そこでジャパンの交易品などを見て回る2人。そこであるものの存在を知る。
「海藻で出来たゼリー‥‥ところてん‥‥おいしそう‥‥‥」
「天草か。巣の形に加工すればいいな」
 何か、某主人並に明後日の方向に走り出したようである。
 結果、ウォルター(仮)に差し出されたものも
「ところてん‥‥」
「巣だ」
 なのであった。ご丁寧に素手に調理までされている。
 陸燕の巣も用意されていたのだが、どちらが主かは意気込みでわかろうというもの。
 一瞬あっけに取られた老執事も手馴れたもので、そのところてんと天草で出来た巣を平然と主人に出したりする。
 これまた主人に好評だったようだが、その場に居た皆が、何となく微妙な気分になった事は言うまでも無いのであった。
(「もしかして、何出されても、喜ぶのではないか?」)
 と。

●そして、気合が入りすぎた人たちの場合(何)
 で、残る3人である。
 彼らは先ほどこの料理店にたどり着いたばかりだった。
 全身の擦り傷や疲労を見ると、かなりの強行軍をこなしてきたのだろう。
 その彼らが老執事に差し出したのは‥‥
「こ、これは!」
 そう、燦然と輝く海燕の巣である。
 彼ら‥‥華国出身の武道家、九条、ジャパンの忍者、森里霧子(ea2889)、そしてレンジャーのキース・レッド(ea3475)の3人。
 当初、キースを中心にこの依頼について話し合った一同は、キャメロットにて陸燕やの巣や代替品を探すもの達と、何かもっと本物らしいものを探す者達にと分かれていた。
 この3人はその後者。
「海鮮珍味で出来た巣と聞く‥」
 という森里の言葉(ジャパン語しか話せなかったのでこのときはユイスが片言で通訳)や、昔働いていた料理店で余り物を食べた事があるという九条の言を元に、その正体を突き止めた彼らは、この少ない日数の間に海沿いへ旅し、断崖にある燕の巣を手に入れ戻ってくると言う離れ業を演じたのだ。
 特に、断崖絶壁をロープを使い上がり降りするのはかなりの危険が伴ったのだが、食材を求める執念と言うべきか見事やり遂げたのだ。
 また、その他に、岸辺付近で海草や貝や小魚や水母や海鼠等を手に入れ、食材の充実も図っている。実に見事なものだ。
 この熱意には、老執事も感極まったのか
「実にお見事で御座います。感謝の極みでございますな」
 ピシ! と姿勢を正され一礼されるほど。
 さらにさらに、調理法も本場を知る九条の指示(燕の巣に似せた料理や太平燕の似た料理法も混ざっていたが)で見事な料理が出来上がると、コレも某主人に好評、追加報酬を約束されたのである。
 遠く離れた部屋から、
「パーフェクトだ、ウォルター(仮)」
「光栄の極み」
 主人と執事の声らしきやり取りが聞こえ至り、冒険者の苦労は報われたのである。

●後日談
「ところで、ウォルター」
「仮名は終わりで御座います。お屋敷で素性を隠す必要は御座いませんので」
「話の腰を折るな‥‥まあいい。また燕の巣を食べたいのだが」
「お気に召されましたか? 流石は高給食材、本物は違いますからな」
「いや、海燕のほうじゃない。陸燕の方だ」
「‥‥本気で御座いますか?」
「俺はいつだって本気だ。土に味があるとは知らなかった。知っているか? 深みのある味わいがするんだ」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
 なんともはや。