Ｗカップ開催Ｂ〜チームウィエ
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■ショートシナリオ担当：マレーア１ 対応レベル：フリーｌｖ 難易度：易しい 成功報酬：5 参加人数：5人 サポート参加人数：1人 冒険期間：08月24日〜09月03日 リプレイ公開日：2006年08月30日 |
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●オープニング
首都ウィルの郊外に作られた平面。人工的に平らに整地することなど今までなかったため、要領がつかめるまでは時間がかかった。試行錯誤の結果、どうにかイレギラーバウンドしない程度のものができつつあった。さらにフィールドの片隅には、Ｗカップに使用するゴーレムの保管庫兼整備を行うための建物も完成間近であった。
「建物については、明日トルク分国より派遣されてくるゴーレムニストらに検証してもらって問題なければ、ゴーレムの輸送を行います」
「開催までの日数に余裕はない。問題点があったら、急ぎ修正するように」
会場の準備は徐々に整いつつ合った。
それに対して問題は、６つの分国がそれぞれ１チームを支援するという合意は取り付けた。しかしＷカップのチーム枠は８つ。予選は４チームづつで二組。リーグ戦を行って上位２チームが、決勝トーナメントに進出する。残り２チーム分をバックアップする人が現れていない。
「実益はあまりありませんから」
ゴーレムを使ったサッカーなるものが人気が出てくれば、また別だろうが。
「分国に近い勢力があって、内部に問題を抱えていないとなると」
「一つはセクテにお願いするとして」
「おいおい、セクテに頼んだ場合、国王陛下からクレームが出るかも知れないぞ」
「名目上ですから、どうせ味方する鎧騎士などほとんどいません。と言っておけば当面はしのげるかと、チームが集まらなかったとなれば、かなり不名誉なことです」
「（それじゃ後が怖いだろうが）しかし、もう一つは？」
「実はケルス家からの要望があってリグを混ぜてくれないかと」
「リグ？ 国外のうえ、分国じゃなく国だろう」
「グシタ・リグハリオス陛下もウィルとの親交を深めたいと」
という舞台裏の話が合って、どうにか８チームの支援者を引っ張りだすことができた。
予選対戦表は冒険者ギルドに張り出される。セトタ語と天界人の言葉で。
予選リーグ対戦表
予選Ａリーグ４チーム（フォロ、リグ、セクテ、ササン）
第１試合フォロＶＳリグ
第２試合セクテＶＳササン
第３試合フォロＶＳセクテ
第４試合リグＶＳササン
第５試合フォロＶＳササン
第６試合リグＶＳセクテ
予選Ｂリーグ４チーム（トルク、セレ、ウィエ、イムン）
第１試合トルクＶＳセレ
第２試合ウィエＶＳイムン
第３試合トルクＶＳウィエ
第４試合セレＶＳイムン
第５試合トルクＶＳイムン
第６試合セレＶＳウィエ
ゴーレムはアイアン１体、ストーン２体、ウッド３体の６体編成。キーパー、フォワード、デフェンスに振り分けることになる（キーパーは１体のみ）。
「試合中の損傷に備えて１試合に各クラス１体のゴーレムを準備できるということだ」
試合終了まで４体以上が、稼働状態になければ負け。ただし相手ゴーレムを故意に破壊した場合には、不名誉な行為となり処罰の対象となる。修理代も請求される。
「不名誉にはかなりのリスクが伴う。あえてやる奴はいないだろう」
「冒険者の所持金が足りなければ、スポンサーが賠償することになる」
それでトルクはおさまるだろうが、スポンサーは今後の冒険者を報酬から賠償金分を請求していくことだろう。冒険者にとって利益はない。
審判はチャリオット２台で地上から、グライダー２機で上から監視する。出場ゴーレムには全機に最新の風信器を取り付けて審判からの判定を即座に伝えることができるようになっている。判定を無視する場合には、即退場となる。かなり厳しいルールだが、ゴーレムとボールさらに技能があれば観客席にいる要人を暗殺することもできることを考えれば厳しくならざるを得ない。
「今回の依頼はＡリーグ，Ｂリーグともに、第１試合第２試合のみ。チームワークがうまくいかなければ、第３試合、第４試合での所属チームの変更は可能ということになっている。当初は予選突破以後のトレードを可能にしていたが、どこにもウマのあわない者がいるだろうという意見があった」
●予選リーグＢ第２試合〜チームウィエ
「Ｗカップが無事開催されたことは非常に喜ばしい。ウィルが平穏であり続けることこそ、ウィルに住むものたちの願い」
平穏であるからこそ、商売うまくいく。
ウィエは今回のＷカップでも商売気丸出しで各種グッズの販売を行う予定だという。
「Ｗカップを盛り上げ、チームウィエが決勝に進出し、最優秀な成績を出した場合には多大な成功報酬を約束しよう」
ウィル全土でＷカップ熱があがれば、どれほど膨大な利益がでるか。それにともなって販売ルート上の道の整備も行われて行くだろう。ウィル全体の流通を向上させるにはまたとない機会ととらえている。
ただしウィエはあまりにも無名。チとの交易で財をなしていると知っている人も少ない。ウィエは知名度を高めることが目標のようだ。
最初の対戦相手はチームイムン。
●今回の参加者
eb4056 クナード・ヴィバーチェ（33歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス）eb4099 レネウス・ロートリンゲン（33歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス）
eb4248 シャリーア・フォルテライズ（24歳・♀・鎧騎士・エルフ・アトランティス）
eb4381 ザナック・アレスター（33歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス）
eb4713 ソーク・ソーキングス（37歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス）
●サポート参加者
ポーレット・シルファン（eb4539）●リプレイ本文
●Ｗカップ開会式前日この日のために造成されたフィールドの中央に１５体のゴーレムが並んでいた。ウッド７体、ストーン５体、アイアン３体。２チーム分（６×２）＋各クラス予備の１体ずつ（３）である。
フィールドの周囲には観客席用のスタンドが準備されている。そのひときわ高い位置が国王および王族用のボックス席。その左右に分国王のボックス席が用意されている。ゴーレムのシュートによる飛距離を測定したうえで、ここまで届かないことを見越してこの場所に設置したらしいが、実際に届かないかどうかは今のところ分からない。
「ゴーレムは準備万端です」
Ｗカップでゴーレムの整備を担当するゴーレムニストの責任者が、オーブルのもとに報告に来た。予備を含めて１５体。１体に一人のゴーレムニストが担当する。戦場にもゴーレムニストが同行しない場合さえあるのに、これは特別中の特別措置だろう。整備不良が原因で負けるようなことがあってはならない。たとえ中の悪い分国のチームであっても。開催者（エーロン王子）の名誉に関わる問題となる。
「チームごとにゴーレムサイズのサーコートも紋章とナンバー付きで準備できています」
被服部門では、ウィルでも有名になったゴスロリ服を広めた空雅子が、デザインには不満を持ちながらも作り上げた。
天界のサッカーでいうゼッケンを、こちらではサーコートと解釈しているらしい。各チームごとに色を違えているから、遠くからでも違いがわかるはずだ。
「ジャッジはグライダーで上空からということだったので、赤備の鎧騎士を依頼してあります。ジャッジを乗せて滞空してもらう予定です」
さらにライン際用にチャリオットも２台用意する予定になっている。ボールの動きに合わせて至近距離から判定する。
「リグ国王グシタ・リグハリオス陛下も今夜には到着予定。各分国王も自らあるいは名代が開会式までには到着する予定です」
開会式くらいには出席してもらわないと、名目上は友好を深めることである。
「開会式終了後から試合日の前日は翌日試合する２チームが時間を分けての練習として開放する」
試合当日は、朝からフィールドの整備を行って昼からの試合となる。
もちろん、各チームの後援者が何らかの方法でゴーレムを調達してフィールド以外で練習させるのも可ということは各後援者に通達してある。そのためには、各国ともゴーレムを輸送してウィルまで持ってくるか、ウィル近くでゴーレムを所有する者たちから借り上げるか、しなければならない。
「各国の力が見られるようです。トルクと友好関係にあれば調達は容易でしょう」
「トルクか。これでゴーレムの人気も高まり、トルクは儲ける」
「そのトルクの上に立つ、国王の威厳も高まることとなりましょう。ひいてはこの開会を主催するエーロン殿下のことも」
「ということにしておくか。あとはカーロンが勝ってくれれば良いが」
「勝負は水物。サッカーなるものを知っている天界人が優位かと、特に初戦は」
「水物か。それにしても暑い。ゴーレムの中はもっとひどいだろうな」
「それも過酷な条件の一つ。暑さ対策を行ってコンディションを維持できるかどうかも、勝敗に重要な要素となるでしょう」
「戦場においてもしかりか」
季節は夏、目の前の季節を無視する者たちはいないだろう。
●開会式
８チームがフィールド上に整列していた。その左右には試合用のゴーレムが並んでいる。いずれは、それぞれのチームでゴーレムを揃えるような大会が開かれるようになるだろう。しかし最初の大会にしては仕方ない。見る側にとっては馬上試合以上の娯楽になるだろう。庶民の不満をこういうお祭り騒ぎで発散させることも必要なのだ。そして活躍する者たちは、庶民たちからも高い評価を受ける。しかしこれだけの数のゴーレムが整列することは今までに無い。開放された観客席にはウィルの住民たちだけでなく、周辺地域からも大勢の民衆が訪れていた。ウィルに滞在している貴族や騎士には、一般席よりも上の席が用意されている。試合開催日には席に応じた入場料がかかる。
ここで冒険者たちが活躍すれば、庶民からの反感も減るだろう。
主催者であるエーロン王子が、Ｗカップの開催を宣言すると絶大な拍手が巻き起こる。宣言の後にルールについての説明が行われる。全てのチームから騎士の名誉にかけて不正を行わないと誓いがなされる。
続いて開催準備委員会に参加していた鎧騎士や天界人たちによるサッカーの基本プレーが行われる。開催準備委員会参加者も各チームの選手として参加するため、デモンストレーション的なところもある。経験があるだけに一つのチームに集中していれば、かなり有利だろう。ゴーレムから繰り出すシュートやディフェンスを抜くドリブルの華麗な動きがあると、ルールを生飲み込みの観客も喝采を送る。難しい言葉よりも目の前の現実こそが重要なのだ。
日程は次のとおり
１日目開会式
２日目練習午前フォロ、午後リグ
３日目フォロＶＳリグ
４日目練習午前セクテ、午後ササン
５日目セクテＶＳササン
６日目練習午前トルク、午後セレ
７日目トルクＶＳセレ
８日目練習午前ウィエ、午後イムン
９日目ウィエＶＳイムン
１０日目予備日
●やっと成立
「一番きついチームかも」
クナード・ヴィバーチェ（eb4056）は周囲を見渡した。サッカー経験者の天界人が一人もいない。しかも人数は定数よりも少ない５人。ルール上４人（体）いれば試合はできる。その分個々の負担は大きくなる。
「ウィエの責任者はどなただろうか？」
「私です」
騎士や貴族ではなく商人。
「ウィルでエルート陛下の取引のほんの僅かに任されているパニーシャと申します」
ウィエが商売熱心だと聞いていたが、流石に商人が任されるとは。
「商人を侮ってはいけません。流通を阻止されればウィルにような首都でも混乱します。それはサッカーにも言えることでしょう」
「もし勝ったら選手グッズなど作って売り出してはもらえまいか？ほら、このちま人形などはいかがであろうか？」
シャリーア・フォルテライズ（eb4248）は２頭身の人形を取り出して見せつつ言ってみた。
「勝ってもらえればありがたいところですが、グッズはもともと予定していました。できるだけウィエの名前をあげるようにしてください」
「乱を好む者はおりません。平和を守り、民を守る事こそ騎士の義務。民は税を納め、その金で我等は剣を購い民を守る。これが世の理でありましょう。平和と商を重んじるウィエの為に戦える事を嬉しく思います」
ザナック・アレスター（eb4381）は自分の考えを素直にのべた。
「それは我がウィエも同意。平和であればこそ」
部屋の片隅から声がした。
「あの、その、私は、その、ソーク・ソーキングスといいます
あの、その、よろしくお願いします・・・
あの、その、乗機はウッドゴーレムにします
あの、その、機動力を生かしてがんばりたいところです
あの、その、ポジションはフォワードです」
誰かと思えば、ソーク・ソーキングス（eb4713）。
「はぁ。大丈夫ですか。十分に期待していますから」
●前半戦
全員天界人によるチームイムン。それに対して、全員鎧騎士のチームウィエ両者ここまでチーム編成に違いがあるのは初めて。
ウィエは５人編成
キーパーにストーンのザナック。
ディフェンスにストーンとクナードとアイアンのレネウス・ロートリンゲン（eb4099）。
フォワードはウッドのシャリーアとソーク。
一人足りない分、負担は大きくなる。
ウィエのキックオフで前半戦が始まる。
シャリーアとソークがドリブルとパスをつなぎながら攻め上っていく。謠子が高校時代のディフェンスの知識を総動員して二人に挑む。ゴーレムそのものの動きはシャリーアの方が良いが、サッカーの技能は謠子の方が高そうだ。パスを出そうとすればパスカットの動きを見せるし、ドリブルに入ろうとすれば進行方向をふさぐ。シャリーアは一旦、上がってきたディフェンスのレネウスにバックパス。シャリーアは謠子のマークを予想して右翼方向に回り込む。ソークは左翼に進む。
「ふはははは（お約束の高笑い）。こちらに回せ。ゴールにたたき込んでくれる」
制御胞に入った途端に、極度の躁状態になったソークは聞いている方が耳が痛くなるような高笑いをあげ続けていた。
「いい加減しないと、声が聞こえないぞ」
「ふはははは」
「誰でもいい、奴を制御胞から引きずり出せ」
ザナックは自分の出した指示が全く伝わっていないことに気づいた。思わずゴーレムを無人にしてでもと前に出た。
「落ち着けって」
クナードがザナックを止める。
レネウスはそのソークにパスを送る。マークがきつくてシャリーアへのパスは通りそうになかった。ソークはパスを受けてゴールに向かってドリブル。立ちふさがる登志樹を大きく回避。
登志樹がシュート態勢に入ったソークの前に出た。ストーンのパワーでシュート直後のボールを弾道を読んで蹴り返す。・・・はずだったが、ソークの蹴ったのはぼてぼて。ちっとはましなシュートを予想していた登志樹はあてがはずれたようだ。
キーパーのアリルが着実にキャッチする。
そしてカウンター。アリルが大きくディフェンスの頭超えてフォワードの絵理子にロングパス。さらにゴール前の雨霧へとパスをつなぐ。
雨霧がクナードに阻まれる。瑠璃が逆サイドに走り込んでいる。ドリブルで突破するように見せかけて瑠璃にパス。前に出ていたレネウスも自陣に戻ってきた。レネウスを引きつけて再びボールを絵理子に回す。
「パスカットしろ、パスに翻弄されると消耗するぞ」
試合の途中で二人倒れたら？ チームウィエの全員に、一瞬不安がよぎった。そんな不名誉なことができない。ましてウィエはグッズ販売に燃えている。点差で負けるならまだしも。人数割れで負けたくない。
ウィエのディフェンスはマークからゴール前に集中し、防御を固める。フォワード二人はセンターラインあたりまで後退していた。ボールを奪えればそのまま速攻をしかける。不利なら守備に加わる。
イムンの３人のパス回しは消耗という点では作戦は成功したが、ゴール前を固められてしまった。
「こぼれ球を頼む」
雨霧がドリブルしながらの突破を無理と判断して、ミドルシュートを放つ。最初から弾かれることは覚悟のコース。右のポストギリギリ。ザナックもとれずに蹴り飛ばすのがやっと。そのこぼれ球をめぐって、絵理子とクナードが肩をぶつけながら、ボールを追いかけて走る。
しかし、激しい機動は極端な消耗につながる。瑠璃がサポートに入ってどうにかボールを確保。再攻撃に入る。レネウスがボールを持った瑠璃に接近する。
「サッカーは天界人のゲームだけに、いろいろな技を知っている。こっちに一人でも天界人がいれば」
レネウスが残念そうにつぶやきながら、ボールの動きを見る。サッカーに対する基本的な知識の差がこれほど大きくでたゲームはなかった。しかし次の試合にはその差はほとんどなくなるだろう。
天界人が有利に進めるサッカーのテクニックも使えばつかうほど、ウィル人の鎧騎士に記憶されていく。練習さえこなしていけば対応できるようになるだろう。
瑠璃がレネウスを押さえながら、コーナーポスト付近までドリブルで上がる。
雨霧が、ディフェンスの隙をついてゴール前に走り込む。
瑠璃のセンタリングに雨霧が合わせる。 クナードが絵理子のマークを解いて、ゴール前に走り込む。ゴーレムそのものでシュートを阻むつもりだが、雨霧はそのまま蹴らずに、ボールをスルー。クナードのマークから離れた絵理子がシュート。
クナードともども逆を突かれたザナック。かろうじて飛び掛かるが、無情にもゴーレムの指先をボールが通過。
「ゴール！」
イムン得点。前半終了。
●インターバルウィエ
「まぁ、気を落とさずに」
ウィエ分国王の代理人パニーシュが、にこやかにチームウィエを出迎えた。
「観客の反応は今までの試合の中で一番良かったと思いますよ」
それも勝っているイムン側んテクニックによるところが大きいだろうが。
「シャリーアの提案した『ちま人形』を含めて、グッズの生産を指示しました。できれば華麗な技とか披露していただけるとグッズの販売にも良い影響があると思いますよ」
簡単に言ってくれるが、チームウィエはかなり疲労が大きい。披露するのも一回が限界だろう。
「シャリーア、例の技やってみるか」
「！」
「やろう」
クナードとレネウスが同意してくれた。
●後半戦
１点を取り返すべくウィエのキックオフから後半の攻勢が始まる。イムンのフォワードは３人ともセンターラインから多少後退しただけで動かない。先取点を取ったことで堅守に切り換えたようだ。一人分の違いは大きい。ウィエのフォワードは二人のみ。ディフェンスは下手に上げられない。それ以上にディフェンスも疲労が大きい。
シャリーアとソークの連携で進む。ソークは相変わらず高笑いが風信器の働きを完全に遮ってしまっている。シャリーアがソークに合わせる形になっている。
シャリーアには謠子がマークにつく。ソークはシャリーアにパスする隙を見つけられず、登志樹とアリルの２体が守るゴールにシュートチャンスを見つけようとしたが、見つからずそのまま正面からシュート。
アリルが難なくボールをキャッチ。そのままフォワードにロングパス。
雨霧がボールを確保。その直後ディフェンスのクナードとレネウスが突進、前半でみた動きをまねして雨霧からボールを半ば強引に奪い取る。そのままドリブルで上がっていく。
「キーパー以外の全員攻撃？」
イムン側を圧倒するにはそれしかないが、キーパーだけで守りきれるものではない。瑠璃がディフェンスに加わる。ドリブルで攪乱する相手がいなくては。
絵理子と雨霧のみがカウンターに備える。
４人攻撃でやっとイムンのディフェンスを数で上回ったウィエ、ディフェンスからシャリーアにパスをつなぐ。シャリーアからソークに。ソークがタイミングを見計らって、大きく蹴りあげる。
クナードとレネウスが手を組み合う。高さの違いがあるからレウネスが腰を落とす。そこにシャリーアが飛び上がって着地。着地直後に、クナードとレネウスのゴーレムで大きくシャリーアを上空に向かって投げあげる。
「うわー」
初速は予想以上に速い。しかし、ゴーレムの制御胞の中ではＧをほとんど感じない。ただ周囲がおびただしく動くのみ。
「ボールは？」
目の前に上がっていたが、こんなことが最初から成功するはずはない。空振りしてそのまま地上へと戻る。盛大な音を立ててフィールドに大きな穴を作って。
シャリーアのゴーレム破損のため試合の一時中断。
上がった時は歓声も上がったが、落ちた時には土煙だけでなくブーイングもあがった。
結局シャリーアは予備のウッドゴーレムで復帰したが、二度目は行えず。そのままタイムアウトとなった。
●破損ゴーレム
「これは困りましたね」
パニーシュは試合終了と同時に突きつけられた請求書を見て、あまりにも呑気そうな声を出していた。
「どのくらい？」
全員が覗き込むと、思わず息を呑む。
「こんなに？」
「ゴーレムはそんなものですよ」
今回はパニーシュが今度のグッズの売り上げを見越してそこから上がるであろう利益から充当することを条件に立て替えることにした。
「次の試合こそ、勝ってくださいね」
言葉こそ丁寧だが、逆にそれが怖い。
「次までには空中サーカスを完成させるから」
