Wカップチーム〜トルク(vsウィエ)
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■ショートシナリオ
担当:マレーア1
対応レベル:フリーlv
難易度:易しい
成功報酬:5
参加人数:9人
サポート参加人数:-人
冒険期間:09月26日〜09月29日
リプレイ公開日:2006年10月02日
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●オープニング
「ジーザム陛下、決勝進出チームへのゴーレム提供の提案、お受けくださりありがとうございます」
ロッド・グロウリングがジーザム・トルク分国王のもとを訪れていた。
「本来なら全チームにゴーレムを揃えてやりたいところだが、それほど余裕もなくてな」
前回の相手であるセレはウッドゴーレムの共同開発を行った分国、友好関係にあるが、試合は試合。それで関係が悪くなるようなら、馬上試合でも同じであろう。
「次の相手のウィエが派手にゴーレムを壊したチームだったな」
「例の空中技ですね。発想は良かったのですが、空中での制御機能がないことと、鎧騎士に空中での機動訓令もないことが」
「天界には『自由落下は言葉ほど自由ではない』という言葉があるらしい」
「それはそれは、天界にもゴーレムに似たようなものがあるということでしょうか」
妙に聞きかじったことが、事実のように話されるようになる。噂とは怖いもの。
「オーブルに尋ねたところでは、アイアンクラスではとても飛行は無理だそうだ」
「飛行は無理でもジャンプ力を生かしたプレーは目玉になるでしょう」
「プレーは空中だけではない。サッカーのフォールドはこれほど広い。時に思うが、サッカーは有能な指揮官を育てられるのではないか?」
「敵味方同数で、丸見えの場所。どこに配置し、目的に向かっていく。騎士道に則るものと思慮します」
「味方の連携、作戦はおよそ、個々の能力を凌駕していることよりも大きいものだ」
「実戦では大軍が見晴らしの良いところで戦える場所はかなり限定されるでしょう。ハンのリーラ平原が古戦場として開けていますが、それでも機動力のあるチャリオットを展開するとなると、見晴らせない地区も出てきます。それに」
「戦の展開が速くなれば、総指揮官に伝令していては間に合わない」
「ルーケイではそのような展開だったと聞いています」
「優秀な前線指揮官が必要だろう」
「サッカーではそれが養えると」
「素質しだいだろう」
「その先はトルク分国王陛下のお好きなように。今は某は、主催者側にいますから」
「Wカップも良いが、自分の領地の収穫祭には顔を出すように」
「城砦に、ですね。収穫祭に間に合わせるように赴きましょう。収穫祭には馬上試合を開催するとかしましょうか」
「最近は冒険者のペットが不遇を囲っているというが」
「うちの連中だけなら問題ないんですが、村人たちは怖がるでしょう。とんでもないペットを連れてくる者たちがいるようですから。あのペットに平気なのは、ヴァンパの住民ぐらいでしょう。あそこの住民は、物心着いたころから王家のために狩場の勢子をやっていますから」
「次の試合、相手はウィエ。どんな試合になるた楽しみだ」
「チームウィエはパニーシュという商人が世話役をやっているそうです」
「世話役か。考えておこう」
●リプレイ本文
●チームトルク世話役
「わしがジーザム陛下よりチームトルクの世話役に任じられたヒコじゃ」
今回チームトルクの9人の前に現れたのは、結構いい年のご老人。もっとも、元気そのもの。
「やけにご高齢の方が命じられたものですね」
篠原美加(eb4179)ら3人の地球人からみても、高齢者。まして平均寿命が地球よりも短いアトランティス人にとってはもっとだろう。
「本当に大丈夫かしら?」
「やっぱり若い方の方が」
越野春陽(eb4578)や早坂真央(eb5637)も、もしも試合に興奮して脳卒中でも起こされたら大変だと思ってしまう。
「失礼なことをいうな」
その雰囲気をエリーシャ・メロウ(eb4333)が一喝した。
「ヒコ・オクボ様、世間知らずの天界人ゆえご容赦くださいますよう」
「ヒコ・オクボというと」
キース・ファラン(eb4324)がどこかで聞いた名前を思い出すように額を抑える。
「有名な名前のはずだよね」
ティラ・アスヴォルト(eb4561)も同様。
「ここまで出かかっているのだ」
グレナム・ファルゲン(eb4322)も。
「あなたたち、本当に分からないの」
リディリア・ザハリアーシュ(eb4153)はそう言ったものの、実は分からない。
「ま、そんなものだろ。最近出番なかったからな」
「そう気を落とさないでください。皆試合のことで頭が一杯なだけだから」
リューズ・ザジ(eb4197)はいたわるように言った。
「ヒコ様は、ザモエ様と同じく、先々代の国王様の時代にウィルの双璧として名を馳せた御方だ」
「そうそれだよ」
グレナム喉に詰まった刺さった骨が抜けたようにすっきりした。
「じゃフォロとトルクはその頃からともに出陣するほど仲がよかったわけか」
「騎士は時により供に戦い、また敵として戦うこともある。別に不思議ではなかろう」
ヒコを交えてまずは今回の敵の分析に入る。
「チームウィエ、要注意なのはシャリーアとセオドルフの2名」
「前回の試合はすべて観戦させてもろうた。シャリーアというのは、ゴーレムを空中に飛ばしてシュートしようとした者だな。一つ、部外者だった者として感想を言っておきたいが良いか」
「はい、謹んで」
「チームトルクの弱点は、攻撃力の不足にあるように思える。4日前の試合でみたチームササンのサザンクロスシュートとかいうのはインパクトがあった。そして今回の対戦相手のチームウィエの」
「確かに、前回の戦いでも天界人の指導によるアドヴァンテージがありましたが」
そういつまでも、有利とは限らない。
「ではそれを考慮して練習に入りましょう」
そこに大会主催者のエーロン王子が姿を現した。
「大会主催者自ら来るとは何かあったか?」
ヒコがぶっきらぼうな口調で尋ねる。
「誰かと思えば、双璧殿。何チームトルクの激励を兼ねてきたところです」
さすがエーロン王子も相手が相手態度が恭しい。
「チームウィエに参加した冒険者でとんでもないことを言い出す者が現れまして」
リューズとティラが、原因となったことを自分から言いだした。
「昨日の試合でチームセクテに参加しました」
さらに後半得点をあげて、チームフォロを敗っている。
「訴え出た者がいうには」
『そもそもウィル杯は分国の威信をかけた、騎士の馬上試合に準ずる試合。
他チームとの兼務が望ましくない事は間違いありませぬ。
兼務は一部の者が独断で行った暴発であり、チームトルクやチームセクテには関係ないとするのが、フオロの威信も傷つけぬ解決策でしょう。
ならば兼務した者を全て平等に処罰していただくのが望ましいと考えます』
「エーロン王子、お尋ねしたい。Wカップは、全力で戦って負けたものを見下すのが目的か?」
「そのようなことは一切なく、全力で戦い健闘したものには勝ち負けに関係なく称賛が与えられるべきと考えております」
「つまり負けても威信が傷つかぬ。不愉快に思う御仁はおるにしても」
「‥‥」
「兼務を禁止する規定もないわけであろう?」
「もちろん、ありません。それに、戦い機会が増えれば、腕も上達し、より高度な試合ができましょう」
「ならば、問題なかろう」
「それを伝えるために。では試合での健闘を楽しみにしている」
それだけ言うとエーロン王子は帰っていった。リューズとティラの二人が出場停止となったら、トルクはかなり厳しい試合運びになっていただろう。
●練習
天界人の美加、春陽、真央の3人が中心になって練習を行う。
「リグ対ササンでのシュートとかターンとか、今まで無い技があったな。あれはどういうものなのだ?」
キースは準備委員会の時一緒であった美加に聞いてみた。
「クライフターンに、ノントラップシュートのこと?」
クライフは天界でそのターンを使って活躍した人の名前から命名されたターン。ノントラップシュートはパスされたボールをダイレクトでシュートする技。
「難しそうだ」
「そりゃ簡単にできたら世話ないわよ」
「その他にもいろいろな技がある。見た目球蹴りだけど」
言ってみて、ちょっと顔を赤くする。
「だけど?」
「奥が深いものなの」
天界人3人が残り6人を指導する形で練習を始める。パスワークから初めてドリブルやシュート練習。キーパーは、グレナムだが、ディフェンスのリディリアもシュートをさせてみる。
「ディフェンスなのにシュート練習?」
そのときは美加がゴール前に立つ。
「いいから、シュートしてみて!」
「受ける練習をした方がいいのに」
と言いながらもも、シュートみてみる。どこを狙えばいいのか。篠原は左寄りに立っている。右の方が入りやすい。右下に蹴ろうとした瞬間、篠原が右寄りになった。
「え!」
リディリアのシュートは篠原に、簡単にキャッチされた。
「もう一回やらせて」
しかし結果は同じ。今度はキーパのグレナムがシュートしてみるが結果は同じだった。
「シュートがどこに来るか分かるの?」
「う〜んとね、わざと隙を作って誘っているって気づいた? 蹴る方向が思ったとおりにいかないと無理だけどそこまで、ボールコントロールできないわけじゃないでしょ」
「それもキーパーの技術ってわけか」
「そいうこと。キーパーだからキーパーの練習だけじゃなく、相手のフォワードがどんなことするかも考えると守りやすくなるでしょ。ディフェンスも同じ。それは相手のフォワードには難しい敵になるってこと」
当然その逆も。ディフェンスのティラも加わる。
「シュートは近づいて確実に入れていこう。ドリブルと早いパスワークでウィエのディフェンスを翻弄していけば、シュート力の弱さはフォローできるよ」
春陽と真央が入って鎧騎士の3人のフォワードとともに5人でドリブルをパスワークの練習をしていく。
ウィルのフォーメーションはウッド2体をフォワード、1体をディフェンス、アイアンをリベロ。ストーンをキーパーとディフェンスに配置した。
「チームウィエも攻撃重視のチームでしょう。こちらよりも人数が少ないから攻撃パターンは限られるけど」
「例の空中技ね。前回は失敗したけど、今度はもっと練習しているでしょう。落下に失敗すればゴーレム壊すからそれなりに自制するでしょうけど」
壊した場合の損害は、かなり高額らしい。
「こちらも同じ。壊れるような無理はしないで勝つ方法を考えないといけないでしょう」
ウィエを攻撃をディフェンスなりキーパーなりが防げれば、カウンターで一気に決められるだろう。
「エリーシャの消耗が一番心配だ」
リベロの消耗は並ではない。
「ウッドの交代を希望しておくが、アイアンの交代でもいい」
キースは今回は先発ではない。
「交代しても風信器はベンチにもあるから、司令塔としての役割は継続できるな」
感覚は多少変わるが。
生身とゴーレムでの練習を終えて試合日を迎える。
●試合
チームトルクの編成は、
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先発
ウッド:フォワード:美加
ウッド:フォワード:リューズ
ウッド:ディフェンス:ティラ
ストーン:ディフェンス:リディリア
ストーン:キーパー:グレナム
アイアン:リベロ:エリーシャ
控え
キース、春陽、真央
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「ウィエのキックオフで始まる。まずは、フォワードが行きがけの駄賃にボールを奪いに行く」
パスを出されたら、ディフェンスとリベロに任せてそのまま先に行く。エリーシャの指示でボールをもってアイアンにティラが襲いかかる。しかし、ティラが届く前にボールはパスされた。
「なんだ、こいつ」
ウィエのサイドに入ったリューズは、ウッドのマークを受けた。ボールをもっていないうちから完全にマークしている。
「天界でいうストーカーか? これでは連携できない」
その間にもトルク陣地ではリベロのエリーシャがボールを持ったウッドにプレッシャーを与えていた。そのウッドは早々に別のウッドにパスを出す。リディリアが向かうが、リディリアが到着する前にいきなりロングシュートを放った。しかし、キーパーのグレナムから見れば問題なくさばけるもの。すぐにカウンターに移る。
リューズがマークにつかれているため、美加とエリーシャの連携で上がっていく。
「1体でも完全マークされると攻撃の幅が減るな」
3体攻撃を前提にしていたため、予定していたパス回しはできないが、1体をリューズが引き受けてくれると考えれば、ウィエのディフェンスはあと一人のみ。
美加が積極的に攻めに行く。エリーシャは戻ってきたウィエのアイアンにマークされつつあった。
「勝手に消耗してくれる」
美加が、サイドからシュートを放つ。
「天界では消極的なプレイに涙してた。もう涙したくない」
ウィエのキーパーは、美加のシュートをかろうじて弾いた。
「入ると思ったのに」
しかし、まだボールは取られた訳ではない。そのまま走ってキーパーがボールを取る前にボールをゴールに押し込んだ。
「向こうのディフェンスが少なければできる」
1点とって、自陣に戻る。
「リューズ、好かれているようだな」
ティラがリューズに声をかけた。
「しつこいの。あんなにマークされたら、ボールに触れない。冗談じゃない」
リューズは、栄養ドリンクを飲む。
ウィエのウッドが、ライン際をドリブルで上がっていく。ティラが追いかける。ウィエも確実にシュートするために、できるだけゴールに近づくつもりのようだ。ティラが追っていく。かなり激しく、ボールを取りにいく。限界を感じたのか、バックパス。もう一体のウッドへのパスルートはリディリアが完全に塞いでいた。背後にはウィエのアイアンが迫っている。その背後にはエリーシャがいた。
ウィエのアイアンは自らドリブルであがらずに、エリーシャが近づきつつあると、もう一度同じウッドにパスを送った。
ティラの位置からでは、シュートまでに追いつかない。
「グレナム、任せる」
「ああ」
練習で4対4でやった時にも同じような場面はあった。シュートしづらい位置としやすい位置をウィエのウッドのシュート予想位置からこちらの位置を考える。
「この位置に立てば、右にシュートしてくる」
わざと左寄りに立って右に隙を作る。もっともグレナムが要注意としているもう一体のウッドは、その左側を上がってきている。もしパスされた場合にも、この位置からなら好都合。パスを出してくれたら、その間にティラが間に合う。
しかしウッドはそのままシュート態勢に入る。ボールをける寸前に位置を右よりに動いた。僅かだが、シュート態勢のウッドの動揺を感じられる。無理に今から方向を変えれば大きくはずれる。やはり、最初のコースどおりにきた。グレナムがボールをチャッチした。
ボールはエリーシャを経由して待ち構えている2人のフォワードに届く。リューズはまた完全にマークされている。美加のウッドは早いドリブルで上がっていく。リベロのエリーシャがおいつく。
2体のパスワークでディフェンスの1体を翻弄してゴールにシュート。しかし、今度は完全に取られた。
●後半
チームトルクは前半で消耗しきった美加に代えて春陽を、エリーシャに代えてキースを投入した。真央は今後の状態次第で出す。
「切り札はとっておくってことね」
試合中も水分を補給できた他の4人は、交代した二人ほど消耗していなかったこともあってそのまま問題なく試合継続。エリーシャの用意したタオルとかは、好評だった。
後半開始早々、チームウィエは空中技で1点を返して同点に持ち込む。
しかし、チームウィエ反撃はそこでとまった。交代要員がいない状態でゴーレムを走り回らせたアイアンが、行動不能状態に陥った。さらにリューズをマークし続けたウッドも。しかし、その頃にはリューズも疲れ切って真央が交代する。
ウィエはフォワードを一人下げてディフェンスを強化したが、それでどうにかなるものでもない。
天界人のツートップで防御力の落ちたウィエから2点をもぎ取って試合終了を迎えた。春陽は缶ジュースを空けて飲んだ。点は取ったが、こちらも疲労困憊といって良い。
「全員怪我がなくてよかった」
リディリアは終了後に一言もらした。
「チームウィエの健闘を称える」
キースは試合終了時に、ウィエを称える為に言った。交代要員がいれば最後まで苦戦を強いられたはずだ。特にあの空中技があったら。
試合終了後春陽は、ゴーレムが整備されるところを見せてもらった。
「見ていくのはかまわないが、暗くなる前に城門に入らないと締め出されるぞ」
と注意を受けた。ゴーレムの整備は深夜までかかりそうだ。
「キース、海草って1、2回食べても意味ないわよ。ずっと食べるようにしないと」
「そうか。じゃずっと食べてもらうか」
「‥‥」
チームトルク、勝ち点6得失点差+3。