第５回ＧＣＲチームＡフォレストラビッツ
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■ショートシナリオ担当：マレーア１ 対応レベル：8〜14ｌｖ 難易度：普通 成功報酬：2 G 49 C 参加人数：10人 サポート参加人数：3人 冒険期間：09月29日〜10月02日 リプレイ公開日：2006年10月09日 |
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●オープニング
●第５回ＧＣＲ開催される！街中の騒ぎもあり、遅れに遅れていた『第５回ゴーレムチャリオットレース大会』もいよいよ開催の日取りが決まり、吟遊詩人による宣伝を開始した。
毎度始まりましたゴーレムチャリオットレース♪
数えて今度は５回目さ♪
今度はどこが優勝するのやら♪
今回新たな障害は、攻城兵器のカタパルト♪
ぼぼ〜んと飛ばすよ、クッションの雨♪
インクたっぷり、クッションの雨♪
騎士は盾で防げるかな？
魔法使いは魔法で防げるかな？
射手は弓矢で防げるかな？
チャリオットの上で防げるかな？
それはレースのお楽しみ☆
それはレースのお楽しみさ☆
陽気な節で歌い、練り歩く吟遊詩人達。
この優勝を当てる賭け等も行われ、その人気の度合いにより配当金も変わって来る。
レッドスフィンクス、ブルーゲイル、ゴートメンバーズと優勝チームが変移する事で嫌が応にも盛り上がる。この次は当ててやろうと、この次も当ててやろうと。
そんな街の者達の思惑の外。
貴族街の一画に設けられたＧＣＲ専用のフロートチャリオット訓練場。
そこには８チーム総てのチャリオットが運び込まれ、共同で訓練が行われていた。
というものの、Ｗカップに参加する者が抜け、このところは閑古鳥。
それにもめげず集まっている者達が訓練場の中央に呼び集められ、各チーム混合の様を呈していた。
「では‥‥」
「ここは子爵閣下が」
「それでは失礼して‥‥」
各チームの名代は、互いに譲り合いながらも、最終的にはベルゲリオン・ア・ハトゥーム子爵が挨拶を始めた。
「さて、ようやく第５回目のゴーレムチャリオットレースが開催される運びとなった。このところ、都は様々な問題に揺れ、更にはＷカップの開催に押され、これまでの様に定期的に開催する事が困難となって来ている。何しろ、フロートチャリオットの５倍も６倍もするゴーレムをふんだんに扱い天界の競技を行うというのだ。夫々の国の思惑も交錯し、自然と力の入れ様も変わって来ている」
唐突にこれまでの何十倍もの経費を注ぎ込み、より広大な競技場を新たに建設し、莫大な金品が動いている。当然の如く、様々な事が優先される。
何しろ、これまでＧＣＲに名代を送り込み、政治的に距離を置いていた各分国の王が、Ｗカップには豹変し遠路遥々自ら競技場に足を運んでいる事からも、その力の入れ様が窺い知れる。
エーガン王主催のＧＣＲには顔を出さず、その王子の主催するＷカップに顔を出す各分国王。それの意味する所は、あからさまであろう。華やかな表舞台の裏で、次代への歩みが動き出しているのだ。
ベルゲリオン子爵は、それとは別にチクリと刺す。
「今後、操手が集まらず、出場が困難となるチームが幾つか出る可能性がある。が、無理に金品を提示して人員を確保する様な事があれば、それは歯止めがかからなくなる。我々は、あくまで各家の名誉を預る者。総てを金品で解決する様になっては、拝金主義者の不名誉を受ける事になろう。今後、各チームともにその様な事が為されぬ様、ご注意願いたい」
前回、優勝賞金より高額なゴーレムグライダーを手にし、人員を集めた輩が居る。ヤクザ者紛いの行為を、そのチームの名誉の為に公言はせぬが、注意するに止めた。
次に同様の行為が見られれば、そのチームは不名誉の汚名と共に、競技より追放されるであろう。
●セレ分国王チーム【フォレストラビッツ】
「さて、諸君」
ベルゲリオン子爵は厳しい面差しで、一同を見渡した。
「今回が、今後このＧＣＲを続けていけるかどうかの節目となっている事は、もう気付いている事だろう」
この目線に晒された者は、緊張に頬を引き締めた。
「天界のフットサルという競技を、ゴーレムで行う。王都で騒ぎが起きている間にな。その訓練の為にと、多くの鎧騎士や天界人があちらのチームに所属する事となった。長期に渡るチーム戦を繰り返す為だ。その為、定期的に開かれる催し物として、あちらの拘束力が強まる事が予測される。つまりは、これまでの様に、ＧＣＲを開催する事が物理的に難しくなる」
ざわりと空気が揺れた。
あちらのイベントはゴーレム技能を有する者しか参加出来ないが、ＧＣＲはそうではないからだ。実際、今回の日程も大きく影響を受けてしまっている。
「いやあ〜、見た目も派手ですからね」
「うむ。こればかりは、主催者同士がうまく調整を重ねて行かねばなるまい。皆も心に留めておいて欲しい」
それだけ改めて口にすると、子爵は次に競技内容について話し始めた。
「今回はカタパルトを用い多数のインクを染み込ませたクッションを射出する、という仕掛けが用意されています。これは攻城戦や船舶の海戦に用いられて来ましたが、命中精度はそれ程高く無い。逆にばら撒く事になるでしょう。それを防ぐ手立てを考えておいて欲しい」
「では、場合によっては、全員で？」
「問題は操手と、私は思う。操縦しながらの回避行動は難しいだろう。それなりの工夫が必要になるのではないだろうか？」
子爵の問い掛けに、何人かはう〜んと唸る。
前回も操手をカバーしようとして失敗している。前に突き出た形の操手席は、後部席からカバーするには、元々かなり無理があった。
今回は一斉に防御しなければならないかも知れない。
「そして第２カーブと第３カーブ、特に第３カーブの捕虜救出ゾーンが問題です。４体の捕虜人形を１体の敵兵人形が捕えているという設定で二箇所用意されている。撃破すれば１ポイント、失敗すればマイナス１０ポイントとハイリスクだが、これはある意味、挑戦的なコースと言えます」
「即ち、あえて騎士としてリスクを背負うか、それとも逃げるか‥‥」
その言葉に、皆互いの顔を見た。
「前回、芝居だてて捕虜を救出して見せるとやったら、早速取り入れた訳ですね☆ 誰の趣味でしょう？」
くすくすと笑う者。
ほんの少しずつ空気が和んで行く。
熱の入った打ち合わせが、この日も夕暮れまで行われていった。
●今回の参加者
ea0439 アリオス・エルスリード（35歳・♂・レンジャー・人間・ノルマン王国）ea0602 ローラン・グリム（31歳・♂・ナイト・人間・フランク王国）
ea1115 ラスター・トゥーゲント（23歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国）
ea2564 イリア・アドミナル（21歳・♀・ゴーレムニスト・エルフ・ビザンチン帝国）
ea5592 イフェリア・エルトランス（31歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国）
ea5929 スニア・ロランド（35歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国）
ea9907 エイジス・レーヴァティン（33歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・ノルマン王国）
eb4213 ライナス・フェンラン（45歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス）
eb4257 龍堂 光太（28歳・♂・天界人・人間・天界（地球））
eb5802 ペルシャ・シュトラザス（29歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス）
●サポート参加者
バルバロッサ・シュタインベルグ（ea4857）／ ティアナ・クレイン（ea8333）／ ソフィア・アウスレーゼ（eb5415）●リプレイ本文
引いたそれに示されていた数字は６。待つ時間がもどかしかった。
座している時間‥‥、選手達は皆、その鼓動の高まりが実感出来た。
●フォレストラビッツ第一走
‥‥‥‥３
各々が、心の中でその数字を唱える。
‥‥２
係員が既に、敵兵人形の設置を終えている。
‥１
「よし」
スタートフラグが、今――
ゼロ
「‥‥行くか！！」
振り下ろされたそれと、操手、龍堂光太（eb4257）の叫びを合図に、フォレストラビッツ第一走は動き出した。
「ああ、行くぞ。勝ちにな」
「ええ、そのためにも気合入れていきま‥‥しょ！」
ランスを振るその雄々しい姿、ローラン・グリム（ea0602）。
素行上品に見える貴婦人、スニア・ロランド（ea5929）が伸ばす脚。
スタート時の初速では比較的ハッキリ乗車員が見られるため、敵兵人形を落とすそのシーンから、観客は大いに沸いた。
第一ストレートでスピードを乗せる。疾風に当たり、シンボルである緑の布が慌しくはためいていた。
風を切る事に対する、一種の陶酔感にさえ浸りつつも、光太は先に見えるカーブに十分な備えをしていた。
コース中央を走行、第一カーブに入る。
「あれか‥‥補足した」
減速のために傾く機体の上、アリオス・エルスリード（ea0439）は既に矢を番えていた。鋭きその青眼と鏃の先にあるのは、槍を構えし人型――撃破。
右手アウトコース沿いの人形を撃破して機体が通り、光太はチャリオットを第二カーブのインへと向ける。
「よし、次‥‥、！ あれは」
番えた矢を放つ前に、アリオスの目はそれを正しく捉えていた。
「っと、捕虜人形だったか」
この速度の世界でも、ライナス・フェンラン（eb4213）は落ち着いた口調で言う。
横では、スニアがランスで人形を貫いていた。
「無機物のターゲットのランスというのは効率が悪いですけど、これはあくまで実際の戦場を想定しているだけですからこれはこれで良いのでしょうね」
機体は長い直線のはじまり、第二直線に躍り出た。
「見るのではなく、感じる‥‥よし！」
自分にも言い聞かせるように声かけをする光太。
「今までワリと順調、チャリオットとの一体感も十分。さぁ、突き抜けようか」
光太は、今回の新障害、カタパルトに一切の警戒をしていない。走行へ集中、そして何より‥‥仲間を信頼しているのだ。
「ライナスさん、余裕があればですが、空から飛来する敵弾について声を出して教えて頂ければありがたいです」
「了解。まぁ余裕があれば、な」
スニアに頷くライナスの言葉は、弱気とも取れる。そのワリには、今現在も落ち着き払っているのだが。
「減点幅が大きいですから、こちらに注意を裂かざるを得ないのですよね。それでは、お願いしますね」
黒髪淑女の面に一瞬目を奪われつつも、ライナスはすぐに、競技へと意識を向け直した。そして、見上げる。
直線を少し進むと、それはあった。
「っと。こいつは出鱈目だな。無駄に多いったら‥‥ないな」
カタパルトから乱れ撃ちされる、インククッション。
ライナスが守り、盾にインクがこびり付く。もし彼が、盾の扱いに対するスキルがなければ、インクはその礼服に付いていたところだ。
「大丈夫か？」
「ああ、どうも。次も宜しく」
操手と守り手はコンパクトに言葉を交わすと、またすぐに、レースに集中力を向けた。
クッションを避けながら、アリオスは思う。
（「デタラメ砲撃とはいえ、これらクッションを射落とす事が、どれだけ冒険か‥‥」）
小さい的ではあるが、彼の腕なら当たるかもしれない。しかし、矢が突き抜けた先に、何も無いわけではない。風もある。もし間違ってカタパルトに当たったら‥‥。
「それならッ」
思考の間に矢は番えている。弦から指を離す――煌きが、疾風を突き抜け前方に伸びた。
ダブルシューティングが槍人形を貫いたその時、ライナスに同じくスニアも盾を構えていた。小さな盾にはインク跡が付いる。
しかし――
「おぉわ！？」
防御に漏れが生じ、光太の不覚を付いた。コントロールを失ってしまったチャリオットは擱座してしまう。
しかし、ゆっりとした進みではあるものの、すぐに機体を立ち上げられたのは、彼の能力の証明だろう。
その合間にもインククッション受けてしまい、結局黒を三つ作ってしまう。
「守り手に、人が欲しい」
ライナスの声が、ローランの耳に入った。
「スニア、残りの槍兵人形は俺に任せてくれ。キミは――」
「龍堂さん防御の手伝いね。わかったわ」
「ああ」
ローエンが言い終える前に、意図を理解したスニア。
そしてローエンは槍兵人形に構える。
「必殺の意味‥‥教えてやる！」
振りかざしたランスは、道を遮る人形達を一気になぎ倒した。
「お見事」
短めに賛辞を送りながら、アリオスは弦に矢を乗せる。
しかも、冷めた顔でクッションを避けながら。
「そちらもな」
現在第三直線に入っている。
「く‥‥、しまった！」
「光太は操縦に集中している。俺達で守るぞ」
ライナスは、再度仲間に声かけをする。
二度目の擱座と、クッションのヒット。駆け寄った盾持ちが彼を守り、お陰で今度は一発で済んだ。
「すまない、これで合わせて４ポイントのマイナスが――」
「気に病むな、取り返せばいいだけの話」
光太の言葉を、ローエンは遮った。しっかりと命綱を結んだ体を乗り出す‥‥眼前に迫る的を破壊するために。
その豪腕が握るランスが、風を切る。先にある、標的を目指して一気に！
それはバガンと同じ材質の物。
破砕音が、思った以上に派手だった。
「これで‥‥むしろ釣りがきた」
「スマッシュとか、チャージとか言ったっけ。凄い技なんだな」
ダミーバガンの破壊に会場も沸き、またチームの士気も上がる。
第三カーブ、ここにおいて必要なのは‥‥目！
「俺の目からは――」
長弓から、今まさに矢が放たれる！
「――逃れられん‥‥！」
アリオスがアウトコース沿いの一体撃破した。そして捕虜の救出成功！
続いてスニアもインコース沿いの一体を破壊する‥‥が、これは捕虜。
会場は一瞬盛り上がるが、誤認破壊がわかるとすぐに盛り下る。
捕虜救出の時に一時停止状態となる。ここから再起動に失敗し、再度、機体の擱座。
「ここにきて‥‥不運が続くな」
アリオスの呟き。
「不運‥‥」
噛み締める様に言う、光太。
「だったら、実力で乗り越えられるって事だ！」
再起動、成功！ 龍堂光太、その黒の双眸に宿るものは、不運などでは揺るがない。
実力なら確かにある。擱座から再起動するのに、もし初級の操縦技術だとこれ以上に手を焼き、とうとう時間切れと言うケースもある。
「実力で‥‥そうね！」
第四カーブ、インコース側にいるスニアの鉄槍が槍兵人形を一体、また一体と撃破する。
アリオスの矢も、アウトの一体を屠っている。
「さて‥‥と、最後の砲撃だ」
「今度こそ、守りきるわ」
ライナスとスニアの盾が掲げ上げられる。今度は一つのクッションも、光太に届かない。スニアの盾など、もう真っ黒だ。
インコースそのまま、チャリオットはカーブを抜け、最後の直線へ。
「見えてきたな。あれが‥‥最後の標的！」
アリオスが指すものは、先に見えるダミーバガン。
「さて、締めくくりだ」
巨躯が再び、ランスを持って構える。筋骨隆々としたそれから放たれる一撃に、チームのみならず、観客からも期待の目線が集まった。
チャリオットとダミーバガンのシルエットが、重なる。
「おおおおおおおおおおおおおおおおッ！！」
湧き上がる声は、もう誰のものか分からない。
「今度も無事、破壊したようね。お疲れ様」
ダミーバガンを破壊した音の後、スニアの声が聞こえてくる。
ローランの一撃が、チームのゴールを華々しく飾ったのだった。
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タイム １０９．６秒 ８位 −５０ポイント
撃破ポイント ３２ 同率３位 ７５ポイント
小計２５ポイント 前半 ７位
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●フォレストラビッツ第二走
ペルシャ・シュトラザス（eb5802）、先程まで見ていたメモを、脳内で反芻する。
‥‥‥‥３
まるごとばがんくん装着のエイジス・レーヴァティン（ea9907）、ダミーバガンも真っ青（？）だ。
‥‥２
イフェリア・エルトランス（ea5592）、チーム共通の緑布を再度見つめ、凱旋を誓う。
‥１
初参加のイリア・アドミナル（ea2564）も胸中同じく、緑のスカーフを見つめる。
ゼロ
「ぅおああぁあぁあ！ なんだぁーー！？」
スタートフラグが落ちると同時に期待が、大きく揺れる機体。原因不明の停止に、狼狽するラスター・トゥーゲント（ea1115）。
「く、冒険者の事をとやかく言うくらい前に‥‥ッ」
苦々しく言うペルシャ。機体の前にいるのは、客席から飛び出てきた一匹の猫。毛並みの整ったそれは、貴族のものだろうか。
観客席や解説からはとうとう、「フォレストラビッツには、不運の女神が微笑んでいるのではないか？」とさえ囁かれる。
「好き勝手な事を言っ――」
「でもまぁ、よく止まれたよね、ペルシャさん」
ネガティブになっても始まらない。エイジスはペルシャにそう言いながら、取り付いている人形をはぎ落とす。
同じくイフェリアも人形を相手にしているが、どうやら苦戦中。
「く――！ あ、ありがとう、エイジスさん」
伸ばしたランスを引っ込めながら、エイジスはイフェリアの言葉に微笑で応じる。
「人形は全て落ちました」
「出発！ はっしーん！ ゴー・ゴー！」
丁度イリアとラスターの声のタイミングで、チャリオット再駆動。機体は、一陣の風になるべく加速する。
「アウトコース、行くぞ！」
「ＯッＫーェ！ さてさて、オイラの腕の、見せどこ‥‥ろ！」
語尾と同時に放たれたラスターの矢が、人形を貫く。
「やった！ どう？ どう？ オイラの矢の腕前！」
「凄い‥‥！ やりますね」
無邪気に子供らしさを出すラスターに、魔法でインコースの標的を吹き飛ばしたイリアのやんわりとした声。綺麗なお姐さんの撫で撫では、これからの活躍次第だろう。
チャリオットはアウトコースのまま第一コーナーへ。
「よーーっし、やる気出てきちゃったぞー！」
喜々としてライトロングボウの弦を引く。図ってかは定かではないが、イリアの声が効いているものと思われる。
「私も皆のために‥‥負けていられないわね」
番えたイフェリアも矢を放ち、ラスターの射撃と合わせて、アウトコースの槍兵人形が二対貫かれる。
「こちらも、終わりました」
高速詠唱を用いて放たれたウォーターボム２連射が、既にインの人形を二体撃破していた。
加速していく風景の中、第一カーブの標的を全て撃破！ ラスターが、凄く分かりやすく喜んでいた。
「よ〜っしよーっし♪ この調子、この調――」
「この調子で、油断せずに行きましょう」
第二カーブ突入。イリアの目が、インコースに捕虜人形がいない事を見定める。
「捕虜人形はアウトコースの、一番‥‥奥」
目が利くのはイフェリアも同じ。イリアは標的を目視せずとも、沸きあがる歓声によって、イフェリアが観客席下の弓兵人形を撃破した事を知る。
印無しで呼び出した水球、見舞われた人形を吹き飛ばした。
「さすがイリアさん、凄ーい！」
ラスター、彼もまた、アウトの標的を一体落としている。
「絶好調！ 怖いモノ無し！ もう、何でもこーい！」
「第二直線‥‥来たぞ！」
「どわー！ 何個飛ばしているんだアレはー！？」
インククッションを撃ち出すカタパルトは、まるでつつかれた蜂の巣の如く。
風が、強くなった。
この直線、アウトコースにて速度を上げていくペルシャ。０．１秒前に彼女がいた位置に、インククッションが落ちる。
アウト寄りならいくらばかりか、砲撃に対して身構えられる。
「さて、ここから忙しくなるね」
疾風に金髪を揺らすエイジス。その盾には早くも黒が付いている。
「助かったわ、エイジスさん」
「いえいえ、お安い御用だよ」
「お返しは、この弓による成績で――」
エイジスにカバーされながらも矢を番えたイフェリア、標的に目を向けようとした時‥‥その事態に気が付いた。
「イリアさん！？」
ラスターも気付き、叫ぶ。
アイスブリザードの成就に失敗したイリア。動じずにすぐ魔法を行使するが、それは槍兵人形を一体撃破するに終わった。
槍兵設置ゾーンの横を、今まさに通過しようとしている。
ギャラリーの言う通り、もしや本当に、フォレストラビッツには不運の女神が微笑んでいるのだろうか？
「女神はッ」
ラスター、既に矢を載せている。
「ここにいるお姉さん達だけでッ」
それは、一本ではない。
「十分なんだッッ！」
弓を構えるは、イフェリアも同じ。
「シューーット！！」
振り向き様に放たれた、二人による矢。その数六本！ しかも二人とも、馬上射撃の心得有り。でたらめ矢ではない。
矢は、コース上から六体の人形を‥‥そしてギャラリーから『不運の女神』を吹き飛ばした！
歓声がまるで原動力かと言わんばかりのスピード。機体はそのまま第三ストレートを疾走する。
「砲撃！ まただ！」
ばら撒かれるそれを、ラスターは紙一重で回避。
「あれが、ダミーバガン。‥‥おまえ、行けるか？」
問われ、クッションを盾で弾きながらエイジスはペルシャに言葉を返す。
「うん、いつでも。あ、でもあまり急激な停止はしないでね」
「案ずるな。私は、安全運転だ」
横顔のペルシャ。それが一瞬微笑に見えたのは、速度の世界によって起きた、エイジスの目の錯覚か。
「‥‥ここッ」
減速Ｇが、前めりへと体を誘う。顔の横をクッションが流れ、そこで踏ん張るエイジス。
チャリオット、ダミーバガンの横を抜けた――
――ダミーバガンを、破壊して！
「そう。不運の女神なんていない。ここにいるのは‥‥」
「‥‥なんだ？」
「い、いや。なんでもないよ〜」
機体は、第三カーブへ。
「救うべき捕虜、は‥‥そこよ！」
冴えている。
「そして、倒すべき敵兵は、そこ！」
ここにきて集中力が増してきたか、イフェリアの目は冴えている。彼女はアウトコースの捕虜救出と、敵兵人形の撃破、両方を成し得ている。
もう、このチームに、不運の女神がいるなんて言わせない。
ラスター、彼もまた、撃破と救出に成功。
「よっしゃーーあ！ このノリのまま、ゴールへゴー！ 第四カーブゥゥ！！」
「これさえ凌げば、あとは‥‥」
勿論、最後まで気が抜けない事は誰もが己に言い聞かせている。
クッションを避けながら、言うイフェリア。
当たったと錯覚さえする、毛ほどの間合いでイフェリアがクッションを避ける。
高速詠唱は二回連続で、魔法を成す。イリアから、ウィーターボム二連射が放たれる。
このスピードの中でも矢はへたれない。ラスターの矢が、アウト方向の的を貫く。
飛び交うクッションは、吸い込まれるようにエイジスの盾へ。
第四直線に入ろうとしているこのチームには今、確実にツキが回っている。
「これが、最後の直線‥‥」
しゃがみこむイフェリア。後、待ち構えているのは、ダミーバガンのみ。
「これが、最後の――」
風、そして減速Ｇ。エイジスの語尾が擦れた。
強く握られた、柄。その先にある鉄のそれは、疾風に負けぬ鋭さを以って‥‥放たれた。
チャリオットが、ダミーバガンの横を抜ける。
あの時の‥‥あの第三直線で響いた様な破砕音が、聞こえない。
（「‥‥‥‥」）
脇目も振らず、機体をゴールへ向けて加速させるペルシャ。
（「‥‥駄目だった、か」）
後方から‥‥音が聞こえた。
破砕音が響いた！ あの時の、ダミーガバンの破砕音が！
「うわーー！ 攻撃の衝撃で、横転させるなんて〜〜！」
心底驚いたような、ラスターの声。
「どうやら、チームには幸運の女神がいたみたいだね」
『タイニースレイヤー』は、微笑を携えたままゴールを迎えた。
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タイム １００．４秒 ５位 ６０ポイント
撃破ポイント ４６ １位 １００ポイント
小計１６０ポイント
総計１８５ポイント 総合５位
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