第5回GCRチームGゴートメンバーズ

■ショートシナリオ


担当:マレーア1

対応レベル:8〜14lv

難易度:普通

成功報酬:2 G 49 C

参加人数:10人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月29日〜10月02日

リプレイ公開日:2006年10月09日

●オープニング

●第5回GCR開催される!
 街中の騒ぎもあり、遅れに遅れていた『第5回ゴーレムチャリオットレース大会』もいよいよ開催の日取りが決まり、吟遊詩人による宣伝を開始した。


 毎度始まりましたゴーレムチャリオットレース♪

 数えて今度は5回目さ♪

 今度はどこが優勝するのやら♪

 今回新たな障害は、攻城兵器のカタパルト♪

 ぼぼ〜んと飛ばすよ、クッションの雨♪

 インクたっぷり、クッションの雨♪

 騎士は盾で防げるかな?

 魔法使いは魔法で防げるかな?

 射手は弓矢で防げるかな?

 チャリオットの上で防げるかな?

 それはレースのお楽しみ☆

 それはレースのお楽しみさ☆


 陽気な節で歌い、練り歩く吟遊詩人達。
 この優勝を当てる賭け等も行われ、その人気の度合いにより配当金も変わって来る。
 レッドスフィンクス、ブルーゲイル、ゴートメンバーズと優勝チームが変移する事で嫌が応にも盛り上がる。この次は当ててやろうと、この次も当ててやろうと。

 そんな街の者達の思惑の外。
 貴族街の一画に設けられたGCR専用のフロートチャリオット訓練場。
 そこには8チーム総てのチャリオットが運び込まれ、共同で訓練が行われていた。
 というものの、Wカップに参加する者が抜け、このところは閑古鳥。
 それにもめげず集まっている者達が訓練場の中央に呼び集められ、各チーム混合の様を呈していた。
「では‥‥」
「ここは子爵閣下が」
「それでは失礼して‥‥」
 各チームの名代は、互いに譲り合いながらも、最終的にはベルゲリオン・ア・ハトゥーム子爵が挨拶を始めた。
「さて、ようやく第5回目のゴーレムチャリオットレースが開催される運びとなった。このところ、都は様々な問題に揺れ、更にはWカップの開催に押され、これまでの様に定期的に開催する事が困難となって来ている。何しろ、フロートチャリオットの5倍も6倍もするゴーレムをふんだんに扱い天界の競技を行うというのだ。夫々の国の思惑も交錯し、自然と力の入れ様も変わって来ている」
 唐突にこれまでの何十倍もの経費を注ぎ込み、より広大な競技場を新たに建設し、莫大な金品が動いている。当然の如く、様々な事が優先される。
 何しろ、これまでGCRに名代を送り込み、政治的に距離を置いていた各分国の王が、Wカップには豹変し遠路遥々自ら競技場に足を運んでいる事からも、その力の入れ様が窺い知れる。
 エーガン王主催のGCRには顔を出さず、その王子の主催するWカップに顔を出す各分国王。それの意味する所は、あからさまであろう。華やかな表舞台の裏で、次代への歩みが動き出しているのだ。

 ベルゲリオン子爵は、それとは別にチクリと刺す。
「今後、操手が集まらず、出場が困難となるチームが幾つか出る可能性がある。が、無理に金品を提示して人員を確保する様な事があれば、それは歯止めがかからなくなる。我々は、あくまで各家の名誉を預る者。総てを金品で解決する様になっては、拝金主義者の不名誉を受ける事になろう。今後、各チームともにその様な事が為されぬ様、ご注意願いたい」
 前回、優勝賞金より高額なゴーレムグライダーを手にし、人員を集めた輩が居る。ヤクザ者紛いの行為を、そのチームの名誉の為に公言はせぬが、注意するに止めた。
 次に同様の行為が見られれば、そのチームは不名誉の汚名と共に、競技より追放されるであろう。

●トルク分国公爵家チーム【ゴートメンバーズ】
「この度は、名誉な事に閣下よりもう一台、合計二台のフロートチャリオットが、当チームには下賜されているのである」
 ボルゲル・ババル男爵は、そのエメラルドグリーンの瞳で、そこに立ち並ぶ一同を見渡した。
 そこは訓練場で【ゴートメンバーズ】に割り当てられた倉庫の前。その背後には、二台のフロートチャリオットが立ち並ぶ。
「今回のレースも、閣下のお心に添う様、正々堂々と戦い抜き、そして勝利を収めようぞ」
「応!」
 一同、声を合わせ吼えた。
 これに満足気に頷き、ボルゲル男爵が音頭を取る。
「ゴーゴー! ゴートメンバーズ!」
「「ゴーゴー!! ゴートメンバーズ!!」」
「ゴーゴー! ゴートメンバーズ!」
「「ゴーゴー!! ゴートメンバーズ!!」」
 力強く拳を振り上げ、互いに決意を新に見やった。

「そも、この度は、カタパルトを用いた攻撃があるのである。一度に多くのインクが染みたクッションを投じ、これに当たると当たった数だけマイナスポイントが加算されるのである」
「一人で二個も三個も当たらぬ様に、工夫をしなければなりませんね?」
「後部席は盾を持つとして、操手はどうする?」
「上手く、機体操作で回避するか?」
「バカな、後ろに何人も乗った状態で、そんなに振り回せるものか!」
 カタパルトとは攻城兵器であり、船上の戦い等にも用いられる。一斉に、数十個のクッションを放り出す事となると、タイミングとコースがよければ、全然別の方向に打ち出される場合もあるし、ばらけず一塊の直撃を食らう可能性もある。

「それと、第3カーブは捕虜救出ゾーンらしいのである。捕虜を捉えている敵兵を撃破出来るかどうか、誤って捕虜人形を撃破してしまわぬ様、良く見た上で攻撃する必要があるのである」
「ポイント的には1点なんですよね? 失敗するとマイナス10点? 大きいですね」
「だが、競技として友軍の救出を行うか行わないかで、名誉にも関わろう」
「ふむ‥‥」
 この様に熱のこもった打ち合わせが、夕刻近くまで続くのであった。

●今回の参加者

 ea0244 アシュレー・ウォルサム(33歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 ea7482 ファング・ダイモス(36歳・♂・ナイト・ジャイアント・ビザンチン帝国)
 eb0884 グレイ・ドレイク(40歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)
 eb3653 ケミカ・アクティオ(35歳・♀・ウィザード・シフール・イギリス王国)
 eb4181 フレッド・イースタン(28歳・♂・鎧騎士・エルフ・アトランティス)
 eb4286 鳳 レオン(40歳・♂・天界人・人間・天界(地球))
 eb4322 グレナム・ファルゲン(36歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4402 リール・アルシャス(44歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb4712 マサトシウス・タルテキオス(52歳・♂・鎧騎士・エルフ・アトランティス)
 eb5637 早坂 真央(40歳・♀・天界人・人間・天界(地球))

●リプレイ本文

●ゴートメンバーズ第一走
 競技場は割れんばかりの大歓声。
 前半の走りもいよいよ第七走目。【ゴートメンバーズ】【月下の黒猫】の2チームを残すのみ。

 その興奮度合いが、スタート地点へと続く廊下や、明かり取りの小窓を通じ、石組みの薄暗い選手控え室にも如実に伝わって来ていた。
 そこへ、息せき切ってタイムキーパーの係員が飛び込んで来る。
「ゴートメンバーズの第一競技者の皆様! そろそろお願い致しやす!」
 妙な刺青を入れた、マーカス商会の若衆の一人だろう。弾む様な声で、風を斬る様に頭を下げた。

「では貴殿ら、参ろうか」
 ゆっくりと息を吸い、静かに腰を上げたマサトシウス・タルテキオス(eb4712)は、居並ぶチームメイトを見渡す。
 これに、第1走目のメンバーはそれぞれに頷く。
「どうなりますやら‥‥」
 そうは言うものの、今回は血色の良いフレッド・イースタン(eb4181)。スピアと盾を手に、その言葉と裏腹に決意に満ちた眼差し。自然と、盾を持つ手に力が入った。
 そんな様にニッコリ。手にする弓をその盾に重ねたアシュレー・ウォルサム(ea0244)。
「ふむ、初参加だけどフォレストラビッツにはアリオスもいるからね、負けられないよ」
「おっ、ライバルか? い〜ね〜♪」
「う〜ん? そんなトコ、かな?」
 競技前だというのに、のっほほ〜んとした表情のアシュレーに苦笑しつつ、鳳レオン(eb4286)は己の短弓を更に重ねた。
 そこへヌッとグレイ・ドレイク(eb0884)の野太い腕が突き出された。
「ゴートメンバーズ2連覇か、想像するだにわくわくするぜ」
 不敵に唇を歪めた。
 そこで操手であるマサトシウスは、一歩戸口へ向う。
「では、参りましょう」
「「「「おおっ!」」」」
「「「「「ゴーゴー!! ゴートメンバーズ!!」」」」」
「「「「「ゴーゴー!! ゴートメンバーズ!!」」」」」
「「「「「ゴーゴー!! ゴートメンバーズ!!」」」」」
 送り出す仲間の手拍子と声援を背に、五人は一斉に廊下へと駆け抜けた。

 コースに競技者が姿を現すと、会場全体が揺れんばかりの歓声と拍手、口笛、ドスンドスンと踏み鳴らす足音に、浮き上がらんばかりの勢い。
 相変わらずのアナウンスに応え、一人一人がフロートチャリオットの前に進み出、手にした武具を高々と掲げて見せた。
 そしてフロートチャリオットに乗り込むと、各自の立ち位置から、改めて貴賓席に居並ぶ各国の国王や公爵、そしてその名代達の中、満面の笑みで両腕を掲げ、拳を天に向けるボルゲル・ババル男爵に、揃って恭しく一礼した。

 マサトシウスの左後ろにはフレッド。その後ろにグレイがランスを構え。右後ろにはアシュレー。そして、その背後にはレオンが立つ。

 いよいよスタート直前。
 五人がそれぞれに身構えると、屈強な係員の手により敵兵人形が金属のフックで機体の左右側舷に2体ずつ設置される。取り付いた敵兵を叩き落しながらのスタートというシチュエーション。
 あれ程あった大歓声が、シンと静まり返る。
 スッと雑念が立ち消え、個々の感覚が不思議と拡大したかの。
 旗が振られた。
「はっ!」
 短く息を吐き、マサトシウスは機体を持ち上げる。
 と同時に、四人が動く。
「ふっ!」
 かち上げる様に突き上げたシールドに、フレッドとグレイ側の人形は二体ともガラガラと転げ落ちる。
「よしっ!」
「くはっ! こ、こいつはっ!?」
 レオンは組み付いた人形が、ガリガリと大地を削り、土煙を上げて振動し持て余す。
 そんな事はお構い無く、アシュレーは素早く矢を番えると、左右コース沿いの弓兵人形を立て続けに射倒すアシュレー。
「くっ!」
 右手にガリガリ引っ張られながらも、マサトシウスは機体をインに走らせた。

 そこそこの速度でカーブ、インコースに突入。
「アシュレー、前っ! うわわっ!?」
 そう言い放ち、スピアを逆手、その石突きでアシュレーの目の前に残る人形を打とうと、身をよじったフレッド。思わず足を滑らせ、その場に転倒。
「ちっ、くしょう!」
 そんな様を横目に、レオンは唸りながら人形と格闘するが、右側舷にがっちり喰い付いて離れない。
 その間、グレイはインコース沿いの2体を、アシュレーはアウトコース沿いの2体を撃破する。

「そろそろ捕虜人形が!」
 マサトシウスの警告。
 たちまちカーブも中央。第2カーブへと差し掛かる。フレッドとアシュレーは目を凝らす。
 機体は、相変わらず2体の敵兵人形をぶら下げたまま、地面をガリガリと削り土煙を上げて疾走。
「これは違う!」
 ガスンとコース沿いの一体をフレッドが突き崩すと、アシュレーもざっと見渡した。
「こっちには居ない」
 ひょうと射ると、スタンと当たる。
「ふんふんんふんん!! ふんぬらぁっ!!」
 意味不明の叫びでようやく目の前の一体を排除し、レオンはアシュレーの目の前にぶら下ったままの人形に組み付く。
「くそくそくそぉっ!!」
 装備過多であまり身軽に動けぬフレッドが、ようやく立ち上がった時、レオンは最後の人形を機外へと排除した。
「へ、へへ‥‥やったぜ‥‥」
「す、すまない‥‥」
 慣れぬ格闘に汗だくになってVサインするレオンに、フレッドはバツの悪い顔。
「次! 直線だ!」
「来るぞ!!」
 マサトシウスの声に、グレイが吼え、一同に戦慄が走る。
 来る!
 カタパルトの射撃が!

 第2直線に入ると、マサトシウスは迷わず機体を中央ややアウトに。ほぼ同時に、歓声が上がった。
 木のきしむ音を上げ、一気に幾十もの影が空を舞う派手な演出。
「く、来る!!」
 風を切って飛来する小さなクッションに、マサトシウスは操縦席で身をよじって2発を回避。
「ふん!」
 ボスン!
 グレイもすかさず盾で受け流し、レオンも首をすくめて一つを避けた。
「あ、危ねぇなっ!」
 バタバタと汁気のある重い音が、機体の全周で鳴り響き、それがあっと言う間に後ろへと遠ざかる。
「へぁっ!! いやぁっ!!」
 すかさずレオンは弓矢を構え、前方ひし形に配置された9体の槍兵人形を射るが、足元の不安定な機上での射撃に、大きく的を外すが、アシュレーは柔軟かつ素早い動作で二射し、瞬く間に6体を射倒して見せる。
 アシュレーの余りの早業に沸き立つ競技場。
 残る3体、すれ違い様に左舷からフレッドとグレイが一体ずつ撃破した。

 続き、空に打ち出される無数の影。
「第2弾か!」
 ワッと歓声が沸き立つ中、マサトシウスは全身全霊、機体をダミーバガンへとひた走らせる。
 後部に立つ4人は、重い雨足の如き音の中、四者四様にこれを避けた。
 そしてグレイは、受けた盾の四散したインクを吹き散らし、ランスを呼吸に合わせ腰だめに構えた。
「そのままっ!!」
「うむ!!」
 吼えるグレイに、マサトシウスは真正面を見据え応える。
 ドスン
 繰り出したランスの穂先。柄がしなり、真芯を捕えた手応えを、グレイは全身で受け止める。
 走り抜ける。
 ゆっくりと、ダミーバガンの巨体が傾き、皆の背後で遠く地響きを立てた。

 観客達総出で立ち上がり声を張り上げる中、機体は第3カーブへぐんと速度を上げた。
 舐める様なコーナリング。機体は自然、左に傾き、インに切り込み、遠心力を逃がしながらもアウトコース沿いのターゲットが視界にみるみる迫る。
「見えた!!」
「ああっ!!」
 操縦席のマサトシウスより少し後ろで、フレッドとアシュレーが目を丸くして見据え、静かに引き絞った矢は、吸い込まれる様に、捕虜人形に紛れた敵兵人形を。
 総立ちの観客は、更にヒートアップ。
「グレイ!! 大丈夫か!!?」
「任せろ!!」
 レオンに応え、くわわっと目力が入るグレイ。
 機体は見る間にインコースへ。迫り来る人形群。
「そこだ!!」
 素早く、小さく、巨大なランスを突き入れるグレイ。
 確かな手応え。それを証明するかに、大歓声が響き渡り、グレイは応える様に小さくランスの穂先で天を突く。だが、その目は迫り来る次のターゲットを見据える。

「来るぞ!! カタパルトだ!!」
 マサトシウスは警告と共に、機体のテールを流す様にインコースを走り抜け、飛来する気配を、身をよじって避けに避けた。
 アシュレーもすかさず避け、グレイはシールドで立て続けに受けに受ける。
「あわわ、お、俺の弓が!」
 その背後でレオンも避けるが、足元を滑らせ、手からショートボウを取り落とす。
「まっかせなさい!」
 すかさずフレッドがインコース沿いの槍兵人形を突き倒し、アシュレーは静かにアウトコース沿いのターゲットを一体ずつ撃破する。
「くそっ! 一体残した!」
「構わん!!」
 フレッドの悪態にそう言い放ち、グレイは掲げたシールドの下よりゴール前の最後のビッグターゲット、ダミーバガンを見据えた。
 最早、動かぬダミー如き、敵では無い。
 ランスの重み充分、再び大きく構えたグレイは、最後の直線を突き進むフロートチャリオットの上で、最後の一撃に備えた。
―――――――――――――――――――――
タイム 79.6秒 2位 90ポイント
撃破ポイント 44 1位 100ポイント
小計190ポイント 前半第1位☆
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●ゴートメンバーズ第2走
 いよいよ本日、最後の走り。
 わんわんと響く圧倒的な大歓声を浴び、五人は緊張の面持ちで競技場に姿を見せた。
 前回優勝チーム。既に前半で一位の成績を残し、観客達の期待と熱気が凝縮され、この競技場全体に、濃密にも蠢いていた。

「いくのである!!」
 先陣を切り、操手のグレナム・ファルゲン(eb4322)がフロートチャリオットの操縦席に向う。
「うひゃぁ〜、なになになに?」
「大丈夫か?」
 ファング・ダイモス(ea7482)の大きく無骨な掌が、両耳を押えてへたり込むケミカ・アクティオ(eb3653)の緑の羽に、ちょこんと頭の上に乗るケミカにそっと触れて来た。
「あっは〜ん♪ こんな歓声初めて☆」
「ふ‥‥そうか」
 不敵な笑みで、ファングは沸き立つ観客達を涼しげに眺めた。

「これは、責任重大だな」
「わ〜、どきどきするわ!」
 跳ねる様に駆け出す早坂真央(eb5637)に、緊張で少し笑う足でリール・アルシャス(eb4402)は苦笑を浮かべた。
「ふ、自分はまだまだだな」
「ここまできたら、絶対優勝しましょ!」
 そんなリールに気付いたのか、真央はくるっと振り向くとグッと両腕を胸元で構え、にっこりと笑う。
「ああ! そうだな!」
 スッと肺に息を吸い頷くリール。
「そうよ! 私がいない時に優勝してずるーい! も〜1回優勝よっ! そうしましょっ!」
 ぽ〜んと緑の光跡を描きながら、シフールのケミカが二人の間に割って入り、手足を思いっきり伸ばした。
「ゴーゴー! ゴートメンバーズ〜っ!」
 すると、グレナムも踵を返し、フロートチャリオットを前にぐるり円陣を組む。
「では、やるか?」
 これにファングも、ケミカ、リール、真央の四人も瞳を輝かせ、言葉も無く頷き、大きさの違う互いの手に手を重ねた。
「「「「「ゴーゴー!! ゴートメンバーズ!!」」」」」
「「「「「ゴーゴー!! ゴートメンバーズ!!」」」」」
「「「「「ゴーゴー!! ゴートメンバーズ!!」」」」」
 弾む様な声は、大歓声に負ける事無く競技場に響き渡り、それは次第にさざめくような、そして大きな拍手となってゴートメンバーズの面々の五体へと降り注がれた。

 そして整列すると貴賓席へと一礼。それぞれの定位置に着いた五人は、旗が振られるのを待った。
 操手グレナムは機体より前に突き出た操縦席に。
 後部席には、すぐその後ろにファングの巨漢が、ちょこんと頭にケミカを乗せ、これまた巨大な斬馬刀とヘビーシールドを構えている。
 そしてその後ろ、左舷側には真央が、ミドルシールドを手に。右舷側にはリールがロングスピアとライトシールドを持ち、身構えた。

 サッと係員達が機体の両舷に2体ずつ、敵兵人形をその腕らしき形状に仕込んだ金属フックを引っ掛ける。そして離れるや、スタートの合図である旗が風を薙ぐ。
「行くのである!!」
 グレナムが機体を浮遊させるや、ファングと真央、リールは機体に組み付いた敵兵人形を機外に突き落とす。
 が、残った一体が、ガリガリと地面を削り走りの邪魔をする。
「ふん!」
 鼻息も荒く、ファングの野太い足がこれを蹴り上げ、排除するとほぼ同時。その頭の上から90度コーンの風雪が、左右のコース沿いに立つ弓兵人形を順繰りに襲った。
「やったぁ〜☆」
「ふ、これは涼しいな!」
 少し霜の降りたファングの頭髪。まるで白髪混じりだ。

 歓声の中、グレナムはそのまま機体をゆっくりとした速度で、カーブのアウトコースへ。
 ファングは右舷に着くや、コース沿いの槍兵人形を一体二体と撫で斬りに。
「すご‥‥」
 カバーにと構えるリールに出番は無いが、目の前で繰り広げられる達人級の剣捌きに、しばし目を奪われる。
 この間、インコースに点在する2体を、ケミカと真央が1体ずつ魔法で撃破。
 機体はカーブも半ばを過ぎて、第2カーブへ。

「任せて!」
 向かい風に目を凝らすケミカは、一際高いファングの頭上からコースを見渡す。
「あれね!! インの3番目よ!!」
 指差すと同時に、インコースの一体にアイスブリザードを詠唱。
 真央もインコースの2体目にウィンドスラッシュ!
 この頃にはようやく速度ものり、機体はアウトコースをするすると直線へ!
「来るのである!!」
 皆の視界の隅、カタパルトが大きくうなり、巨大な籠から無数の固まりが天に放られた。それが機体の進行方向へ。身構える一同に、雨あられと降り注いだ。
「むう!」
 グレナムは無防備な操縦席で、機体を巧みに操作し回避。
「きゃぁっ!?」
「おおっ!」
 真央もリールも盾で防備。ドンドンと鈍い音を立て受け流す。
 ファングは4発を回避するも、1発を避け損ね、飛び散るインクに顔を歪める。
「むぅ〜、しくじった!」
 そう吐き捨てるや、斬馬刀を迫る槍兵人形群に叩き込む。
 ドンと大気を震わせ総てをなぎ倒すファング。
「大丈夫〜?」
 目の前にヌッと現れるケミカの顔。

「次が来るのである!!」
 続き打ち上げられる無数の影。
 グレナムは速度を上げるが、ばら撒かれたインクの染みた重みのあるクッションが、数個が無軌道に襲い掛かる。
「ファング殿はダミーバガンを!」
「です!」
 リールと真央は、それぞれの盾で飛来するクッションを打ち払う。
 ファングはその声を背に、体を開き、斬馬刀を大きく構えた。そして、機体がダミーバガンの巨体の脇をすり抜ける瞬間、思いっきり袈裟懸けに振り下ろす。
 ギャインと火花を散らし走り抜けるチャリオット。その後、巨体はゆっくりと横転した。

 歓声を背に、グレナムは再度カーブへと突入させる。
「ファング! あの真ん中をっ!」
「おう!」
 頭の上からの指示に、的確にコース沿いの一体を撃破するファング。
 捕虜救出成功に、ワッと歓声が大気を震わす。
「真央! 奥から2番目よっ!」
「ええっ!」
 続くケミカの指示に、真央の放った大気の刃。スカンと乾いた音を発て、インコース沿いに居並ぶ5体の内、1体が転がる。
 すると捕虜救出成功の旗が振られ、観客はドッと盛り上がった。

「やったぁ〜♪」
 飛び上がって喜ぶケミカは、吹き飛ばされそうになって慌ててファングの頭髪にしがみつく。
「く、来る!!」
 グレナムはアウトコースを、そこそこの速度で走らせる。
 そこへ三度目の正直とばかりに、ガタンと最後のカタパルトが唸り、ばら撒かれる大小のクッション。
「ぶあはっ!?」
 避けたと思った瞬間、その影から。グレナムは肺の空気を一気に吐いた。
 それでも機体のコントロールを失わぬ。
「グレナム殿!?」
 思わず声をかけるリール。目の前で、ファングも一発肩に受けるが微動だにせず、斬馬刀を振るう。
 ガラガラと砕ける槍兵人形。
「やんっ!」
 ケミカは飛び散るインクに目を細めるが、お返しとばかりに冷気の嵐を放ち、インコースの一体を撃破して見せた。
「負けらんない!」
 真央も続けて、風の刃を。
「だな!!」
 ニヤリ。引きつる笑みで、リールもロングスピアを突き出し、コース沿いの一体を突き崩す。

 そして一気に最後の直線へ。
「がはっ! ごほっ!」
 咳き込みながらもこれが最後とばかりに速度を上げるグレナム。
 ファングは視界に迫るダミーバガンの巨体に、無言で斬馬刀を構えた。
 リールと真央は邪魔せぬ様に、僅かに身を屈め、最後の疾走に目を細めた。
 ケミカはくしゃみを我慢する。
 来る。
 来る。
 来た!

 総ての人が見守る中、最後のダミーバガンは機体がゴールを切ると同時に、大地に伏した。
 大気が唸り、音が意味を為さない。
 グレナムが、ファングが、ケミカが、真央もリールもそれぞれ思いっきり叫ぶ。いや、吼えた。
 走り抜けるチャリオットを追って、マサトシウスやフレッド、アシュレーにグレイ、レオンも転がる様に飛び出す。
 もう誰もが確信していた。
 どのチームが一番かを。 
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タイム 83.3秒 1位 100ポイント
撃破ポイント 43 2位 90ポイント
小計190ポイント
総計380ポイント 総合第1位
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