Wカップチームセクテ(VSリグ)
|
■ショートシナリオ
担当:マレーア1
対応レベル:フリーlv
難易度:易しい
成功報酬:5
参加人数:7人
サポート参加人数:-人
冒険期間:11月27日〜12月01日
リプレイ公開日:2006年12月05日
|
●オープニング
●予選最終戦
「各地の収穫祭も終わりようやく終わりましてウィルカップも再開できます」
スタジアムを埋める人が集まらねば、出場する選手の士気に関わる。自分の領地に戻っていた領主たちも収穫祭を終えたことで観戦のためにウィルに来ることができる。その状態になるまで試合はできなかった。それ以外にも、主催者の中で重要な位置にあるロッド・グロウリングがある密命を受けて自分の領地の収穫祭はもちろん、首都ウィルにもいられなかったこともある。
「主催者がこういうことを言うのもなんだが」
エーロン王子が口を開いた。
「チームフォロが決勝トーナメントに行けるかどうかですか?」
ロッド・グロウリングが、エーロン王子の心情を察して口に出す。
「まぁ」
「チームセクテがチームリグに勝ち、チームフォロがチームササンに勝てば」
選手の成長と作戦次第では試合は分からない。あながち無理というわけではない。特に冒険者が依頼を受けなければ、本国から不慣れな鎧騎士が呼び寄せられる。サッカーの動きを実際に試合でやったことがない者が相手なら、苦戦はしても勝てる可能性は高い。
「チームが不名誉な行為を行ってしまえば、決勝進出はできませんから」
これは今まで表に出ることのなかったジャッジの頭(審判長)ウィリー卿が発言した。もちろん、試合に関する行為に限られる。試合外において試合に関係しないことなら影響しない。
第三戦の次の日程で行うことが決まった。Bリーグの試合順位を入れ換えることになった。
Aリーグ
第5試合フォロVSササン 11/17−11/20
第6試合リグVSセクテ 11/27−11/30
Bリーグ
第5試合セレVSウィエ 11/22−11/25
第6試合トルクVSイムン 12/2−12/5
「そういえば前回の件ですが」
「チーム兼務のことか。なんら問題ない。多くの試合に出れば、それだけ試合も高度になる。観客も楽しめる。もちろん、チーム内で受けいれるかどうかは、チームの問題だ」
●チームセクテ
「このような形でお会いする事があろうとは」
「まったく」
チームリグの世話役、マレス・リーリングラード卿は、相手チームの世話役ルーベン・セクテで向かい合っていた。
「リグの特使としてきた時には、ウィルと冒険者が非常に興味深いものだと思った。リグ本国では田舎ものでね。リグの首都にもあまり行ったことがないくらいだった。リグとしてもゴーレムの大々的な導入を行う用意がある。もちろん、リグでもウィルカップに似たものを開催しようという計画がある」
「いっそ、残りの国々も合わせてセトタ6国での親善試合を開催できたら良いでしょう。親善の場があれば、普通で解決できない問題が解決できるかも知れない」
「本格化しそうですか?」
「おそらく、予選終了後は忙しくなるでしょう」
「では互いの健闘に」
「すばらしい試合に」
その掛け声で酒を飲み干す。
マレス・リーリングラード卿を見送った後、竜の酒場で吟遊詩人エストゥーラを相手に酒を飲む。
「今度の試合、サーガの題材にならないか?」
「試合内容によりますね。ウィエのような空中技の方が一般には受けますから」
「おいおい。うちのチームの大事な冒険者を、危険に晒させるつもりはないぞ。少なくとも、ウィルカップの試合では」
次の試合負けても決勝トーナメント進出はできる。しかし、リグとの試合で手抜きはしたくない。誰相手であっても、決勝トーナメントにはBリーグから上がってくるはずのチームトルクもいる。
「ウィルカップの試合なら譲る必要は無いのだ」
●リプレイ本文
●始めと終わりは握手で
「エーロン殿下、提案があります」
最近ウィルカップのスタジアムの熱狂が気温に反比例するように高くなっている。入場行進につかっている曲が曲だけに、観客の状態もわからなくはない。自分が参加しているように感じているのだろう。しかし、これで暴動でも起こったら大変なことになる。それと危惧した時雨蒼威(eb4097)はエーロン王子に提案を行うために来た。
「娯楽の少ないウィルの者たちには、絶好の娯楽になったということだ。暴動は考え過ぎだろう。もちろん万が一暴動になった場合には、ウィルカップ用のゴーレムで制圧するようなことになる。確かに後味は悪いな」
「そこで、観客達がひいきにしているチーム同士のオーナーが、試合の前後に一番目立つ中心部で握手してはどうでしょう」
「互いの右手を握り会う、あれか?」
ウィルではまだ一般化していない。天界人によって広がった風習の一つ。
「武器を持つ右手を握り会うことで武器を持たない。つまり敵意がないことを知らしめます」
「天界人とのつながりの多いセクテなら取り入れているようだし、マレス・リーリングラード卿に異存なければ良かろう。ただ」
リグ国王はこちらにきていないから、代理人ということになる。
「ただ?」
「ルーベンとマレスなら問題ないだろうが、次の試合はどうするつもりだ?」
次はトルクとイムン。巷では仇敵同士とか歴史的な敵国とか言われているようだ。
「なおのこと、ウィルカップは親善のためのものですから」
「オーナーでなくとも、世話役同士でも良い事にしよう」
「本当に仲がわるいのですか?」
「仮にも分国王だ。表面には出さないが、なんらかの事情で噴出してスタジアムで争いにでもなったら、暴動よりも厄介だ」
●練習は公開で
「今までの試合をみたところ、観客を味方につけたチームが、試合を有利に進めている」
バルザー・グレイ(eb4244)は公開練習を皆の前で提案した。
「賛成」
天野夏樹(eb4344)は、即座に賛成した。チームササンで自分が考えたことでもあった。
「別に異存はないわよ。秘密にすることなんてないし、それにファンサービスにサッカー教室とか開いていけらたいいね」
エリザ・ブランケンハイム(eb4428)も素直に応じた。サッカー教室開くには、もっと上達してからの方が良いと思う。やるだけやってみる。
「負けても決勝にいけるのがセクテの強み。スパイされたところで」
冥王オリエ(eb4085)の発言は、ちょっとした誤解を生む。
「私は、負ける試合するつもりないよ」
夏樹が言い返す。
「二人とも、ヒートアップしない。別にオリエは負けると言ったわけじゃない。逆にプレッシャーを感じさせないために言ったはずだ」
篠崎孝司(eb4460)が、険悪になるのを心配して口を出した。
「勝ち負けは試合の結果。手を抜かすに全力を出す。それでいいでしょう」
オードリー・サイン(eb4651)も。
「別に全力を出さないとか」
「わかっている」
多少揉めても練習になると連携はうまくいく。
「本番でもこういけばいいけど」
試合前日まで練習はすべて公開で行われた。
●前半
夏樹が控えに残る。オリエがストーンでキーパー。ディフェンスにはストーンの時雨とウッドの孝司、アイアンのオードリー、フォワードにはいつものバルザーとエリザ。すでにフォワードの組み合わせは変わっていない連携は今ままでの試合でできている。
「まずはいつのどおり堅く守って機会を待ちましょう」
オリエの作戦は、チームリグが決勝トーナメントに出場するためにはこの試合に勝たなければならない。負けはもちろん、引き分けでも決勝トーナメントには出られない。そのため守備を堅くしていけば、必ずオフェンシブな策を取る筈。そこを狙って一気に流れをこちらのものにする。
「私が警戒するのは、ゴールまで迫ってきたショートシュートね」
アイアンのオードリーによって決定打となる攻撃をカヴァーする。
「ミドルシュートはコースが限られるから捌ける。派手なパフォーマンスは、どんどんやってもらって消耗してもらいましょう」
「こちらは人数が少ない。同じように消耗したら、後半厳しい」
「ラスト5分ね」
「サッカーは最初の5分と最後の5分が比較的点の入り易い時間帯。前半も後半も。チームリグもその時を狙ってくるかも知れない」
チームリグはクライフターンや場合によっては、マセイユルーレットを使ってくるかもしれない。しかし、そのようなパフォーマンスをさせてしまえばいいというオリエの逆転的な発想も面白いと夏樹は思った。
スタジアムの中央では、互いのチームオーナー同士の握手が行われていた。握手をすることが親善を意味するという説明がスタジアム中にながれる。
「今日もオデコは輝いている。絶好調!」
エリザはいつもどおり、自分の乗るゴーレムの額が磨かれていることを確認して制御胞に入る。
「全員体調万全。チームドクターとしての義務は果たしたぞ」
孝司も制御胞に入る。
今回も司令塔はオリエだが、キーパーから見える範囲は限られる。
「何か変化があったら合図するから」
控えに残る夏樹の位置からならもっと分かる。
前半が開始されると同時に、リグからの攻撃が始まる。リグはいつものようにアイアンによるワントップそれに今回は、ウッドが2体後方から走り込んでくる。
「いきなりか」
セクテはフォワードの二人以外のディフェンス3人態勢。数なら同数だが。
「1点とって、後は守り抜く戦術ね」
オードリーのアイアンは、ゴール近くに位置している。時雨と孝司が向かっていく。
「左右からのプレスで」
リグのアイアンも今までの試合ほとんどワントップで来ただけあって、簡単には動じない。後方から上がってくるウッドに、一旦バックパスする。
ディフェンスの二人は、ボールを持つウッドを警戒する。
ウッドは逆サイドにもう1体フリーでいるにも関わらず、そのままドリブルにはいる。
「なめたまねを」
時雨はストーンの大きさを利用して迫る。孝司も相手のウッドのドリブルを怪訝に思いながらも、時雨とともにウッドにプレッシャーをかける。
フォワードの二人は、センターライン上まで下がっている。カウンターに備えての行動と場合によってはディフェンスにも加われるように。
「通常なら、逆サイドに振ってディフェンスを散らせるはずだけど」
二人がもう少し近づけば、パスは出せなくなる。リグ側の他のゴーレムはバックパスを受け取れる位置にはいない。
「パスを出すならそろそろ」
オリエとオードリーはマークされていないウッドとアイアンを警戒する。
低弾道のパスがアイアンに向かっていく。しかし、ゴール前に走り込むことを前提にしたのか、かなりゴールより。オードリーが前に出る。このままクリアできれば良い。斜め後方からのパスをノントラップでシュートはできないだろう。その僅かな差で、クリアできる。アイアン同士の激突もありえる。
しかし、リグのアイアンの後方をボールはすり抜けて行った。その先にはノーマークのウッドが全力でボールに向かって入り込んでいた。
オリエは、ゴールから飛び出して間際に迫るパスを蹴り返す。
ボールはそのままエリザのところまで届く。エリザとバルザーはパスしながらリグのゴールめがけて攻め上っていく。後方からリグのフォワードが全速で戻っていく。前方からは2体のディフェンスが向かってくる。
「パスワークで突破するぞ」
バルザーが前に出る。ゆっくりしていると、後ろから来る。
「チームリグも交代がいるから、最初から全力ってことかしら?」
エリザは後ろを振り向いて確認した。
「あの速度なら前半で消耗するぞ」
「追いつかれる前にシュートしちゃいましょう」
エリザとバルザーは速度をあげた。
ストーンがエリザに、ウッドがバルザーに向かってくる。
バルザーがチームササンに参加して覚えた技で抜こうとしたが、動きは読まれていた。
「ウッドの乗り手は天界人か!」
しかし、簡単にクリアされるわけにはいかない。
「何やっているの、簡単に奪われて!」
エリザが脇から突っ込んできてボールを奪い取る。それをさらに、ストーンが奪う。
リグゴール前で2対2のもつれ合いが発生する。しかし、リグのフォワードがもどってきたため、ボールはリグ側に移った。
そのあとは互いに守備を固めて時間だけが経過していく。そして前半終了間際。リグに変化があった。
「来たぞ、リグが全力でくる」
夏樹がリグの様子を見て叫んだ。
これにはエリザやバルザーもディフェンスに戻る。正確には戻りながらボールを奪いとろうとしていた。
「しっかり守っていこう」
オリエからの指示が出た。
オードリーだけでなく、時雨も孝司もやや下がって守備に入る。ここに前半で消耗しつくすつもりのエリザが動き回ってリグの動きを翻弄する。そして前半は終了した。
●後半
「前半0点で折り返しか。強いね」
前半走り回ったエリザが、夏樹と交代した。バルザーは、どうにか頑張れそう。ただし、後半終了近くは厳しいだろう。交代したくとも、今回は交代要員がもういない。
「ここからが厳しい。消耗はリグの方がしているはずだよ」
後半の攻めは、交代した夏樹を多用していく。サッカーを知っている天界人がフォワードにいるというのも良いかも。問題は連携だけか。
「よろしくね」
「ああ、こちらこそ」
わがままお嬢ちゃんのエリザとは違うようだ。
「な〜に、鼻の下延ばしているのよ」
「私は、そんなことはしない」
エリザの突っ込みに、動揺するバルザー。
「後半は必死になるでしょう。リグは勝たない限り決勝トーナメントにはいけない」
引き分けなら、チームササンがいく事になる。
「次回はこういうの手に入らないね」
バルザーが出した資金で集めた果物を、ジュースにしてのんだ。
「後半も頑張っていこう」
後半もリグは、アイアン一体のワントップで戦いが進んだ。
「どうやら、リグのアイアンは乗り手が変わったようだ」
強引さが出てきている。しかし、技の点では粗削りになったようだ。
「天界人から鎧騎士に変わったということだろう」
時雨は見たことからそう予測した。
「しかし。強いな」
アイアンのパワーで半ば強引に押し入ってくる。
「ストーンじゃ、競り合い負けする」
どうにか、ゴールは防いでいる。さすがに1体では攻撃も限られる。
「もう1体。前半で逆サイドに走り込んできたウッドがいたら」
セーブしたボールは、フォワードの夏樹とバルザーのところに。夏樹とバルザーはチームササンでもプレーしているが、連携となるとエリザよりも劣る。
夏樹が乗っているのはエリザのピッカリヘッドのウッドゴーレムだが、エリザ以外が乗るとくすんで見えるから不思議だ。
夏樹は、ドリブルでそのまま持ち込む事が多い。
「これくらいの防御なら」
シュートははずれたものの、最後の防衛ラインまでは突破している。
「残り僅か?」
夏樹のボールをセーブしたキーパーは、ボールをセンターラインまで届くように蹴りだした。そのボールを追う様にディフェンスにいた4体のゴーレムが走り出す。
バルザーと夏樹も急いで自陣に戻る。
「やっぱり、最後にきたか。5人攻撃となると」
しかも、1体のアイアンは強引に押し入ってくる奴だ。
「オードリー?」
「あのアイアンは任せて、絶対に止めるから」
オードリーは、オリエの呼びかけに答える。
「孝司、動きの良いウッドに対抗できる?」
「やるだけやってみる」
「たぶん、その2体のいずれかがシュートをうってくるはず」
リベロの動きをしていたウッドがいたが、あいつのシュートなら大したことはない。
孝司がマークについたウッドにパスが通った。孝司が必死に防ぐ、ゴーレムを動かすのはかなりの腕だが、天界人の方がサッカーを見る機会が多い。フェイントはことごとく見破った。速度を上げてドリブルで突破を図るが、ドリブルしていない分ついていけた。しかし、僅かの差にパスを出された。パスカットしようと足を延ばしたが、どうにか軌道を変えた。
しかし変えた軌道の先には、アイアン2体がにらみ合っていた。
「元気のいいアイアンだな」
幾度かのシュートは防いだが、そろそろこちらも限界に近い。夏樹が駆け戻ってくるのが見えた。バルザーはまだ遠い。時雨はオードリーが突破された時にそなえて、ゴールの前に回り込んでいた。ストーン2体が並んでいると、どのコースでシュートしたら良いのか難しくなる。
アイアンは正面突破で来た。オードリーは阻もうとしたところで、アイアンがシュートを放った。
「え?」
ボールはオードリーの足の間を抜けて、ゴールに向かった。
「ぐわ!」
時雨は全身でボールに向かって阻んだが、ボールは跳ね返った。時雨のストーンは、シュートの衝撃で倒された。ボールはゴールのかなり前までとばされる。そこにリグのウッドが走り込んできてそのままシュート。しかし、これはオリエがセービング。
ここで後半終了。
引き分け。
●試合終了後
「良い試合でした」
「まことに、勝敗は二の次。決勝トーナメントは、チームリグの分も頑張ってください」
試合終了後、再びスタジアムの中央では、互いのチームオーナー同士の握手が行われた。
スタジアム中から、試合に対しての拍手が巻き起こった。
「さてご苦労だった。次は決勝トーナメント。相手はどこになるかは、抽選で決まるが、例え相手がチームトルクであっても全力で試合に臨んでほしい」