Ｗカップチームイムン（ＶＳトルク）
 |
■ショートシナリオ担当：マレーア１ 対応レベル：フリーｌｖ 難易度：易しい 成功報酬：5 参加人数：10人 サポート参加人数：-人 冒険期間：12月02日〜12月06日 リプレイ公開日：2006年12月10日 |
|
●オープニング
●予選最終戦「各地の収穫祭も終わりようやく終わりましてウィルカップも再開できます」
スタジアムを埋める人が集まらねば、出場する選手の士気に関わる。自分の領地に戻っていた領主たちも収穫祭を終えたことで観戦のためにウィルに来ることができる。その状態になるまで試合はできなかった。それ以外にも、主催者の中で重要な位置にあるロッド・グロウリングがある密命を受けて自分の領地の収穫祭はもちろん、首都ウィルにもいられなかったこともある。
「主催者がこういうことを言うのもなんだが」
エーロン王子が口を開いた。
「チームフォロが決勝トーナメントに行けるかどうかですか？」
ロッド・グロウリングが、エーロン王子の心情を察して口に出す。
「まぁ」
「チームセクテがチームリグに勝ち、チームフォロがチームササンに勝てば」
選手の成長と作戦次第では試合は分からない。あながち無理というわけではない。特に冒険者が依頼を受けなければ、本国から不慣れな鎧騎士が呼び寄せられる。サッカーの動きを実際に試合でやったことがない者が相手なら、苦戦はしても勝てる可能性は高い。
「チームが不名誉な行為を行ってしまえば、決勝進出はできませんから」
これは今まで表に出ることのなかったジャッジの頭（審判長）ウィリー卿が発言した。もちろん、試合に関する行為に限られる。試合外において試合に関係しないことなら影響しない。
第三戦の次の日程で行うことが決まった。Ｂリーグの試合順位を入れ換えることになった。
Ａリーグ
第５試合フォロＶＳササン １１／１７−１１／２０
第６試合リグＶＳセクテ １１／２７−１１／３０
Ｂリーグ
第５試合セレＶＳウィエ １１／２２−１１／２５
第６試合トルクＶＳイムン １２／２−１２／５
「そういえば前回の件ですが」
「チーム兼務のことか。なんら問題ない。多くの試合に出れば、それだけ試合も高度になる。観客も楽しめる。もちろん、チーム内で受けいれるかどうかは、チームの問題だ」
●チームイムン
「いよいよだ」
オシム・エンフィールドは興奮していた。
「イムンの積年の願いが。打倒トルク！」
いつもの青装束と顔へのペイントは、もうウィルでもおなじみ。
「次の試合こそ！」
今の状態ではどちらのチームが勝とうとも、決勝トーナメントでの戦いが待っている。
「勝って勢いをつけて」
決勝トーナメントでも勝つ！
「冒険者たちよ。ウィルチャンピオンの座は絶対にイムンのものにしよう」
●今回の参加者
eb4077 伊藤 登志樹（32歳・♂・天界人・人間・天界（地球））eb4245 アリル・カーチルト（39歳・♂・鎧騎士・人間・天界（地球））
eb4288 加藤 瑠璃（33歳・♀・鎧騎士・人間・天界（地球））
eb4302 スクネ・ノワール（27歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス）
eb4344 天野 夏樹（26歳・♀・天界人・人間・天界（地球））
eb4381 ザナック・アレスター（33歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス）
eb4637 門見 雨霧（35歳・♂・ゴーレムニスト・人間・天界（地球））
eb4649 高岳 謠子（37歳・♀・天界人・人間・天界（地球））
eb4854 セナ・ヒューマッハ（46歳・♂・鎧騎士・エルフ・アトランティス）
eb5735 結城 絵理子（28歳・♀・天界人・人間・天界（地球））
●リプレイ本文
●３人のキーパー「３人のキーパー経験者か」
伊藤登志樹（eb4077）、アリル・カーチルト（eb4245）、ザナック・アレスター（eb4381）の３人は、偶然にもキーパーの経験者であった。相談の結果、今回はザナックが、アイアンで最初から最後までキーパーを行うことになった。２人分の経験は、サナックに伝わることになる。
「ところで、これが天界流というものか？」
ザナックはイムンに参加する女性選手がチアガールの姿でファンを引き連れて応援の練習する様子を眺めて感慨深く呟いた。
「チアガールというのは、効果があるようだな」
オスムがいつもの青い民族衣装？ のような姿で現れた。これはこれで別の意味で、印象的。
「前々から聞きたかったのですが、その服装？」
「この色は天界人がサッカーをする時の色だと聞いている。この色を出すのに苦労した」
「やっぱり。誤解させておいてあげよう、とりあえず別の色でも服のデザインが変わらないのなら同じだ」
「そうだな」
登志樹とアリルは互いに頷いた。
「今回こそ、わがイムンの積年の願いである打倒トルクがかなう。頼むぞ」
「任せてください。最初から最後までゴールは死守します」
ザナックはチームウィエでの予選突破はできなかったが、チームイムンに参加して最後まで試合を盛り上げるつもりだ。
「そうだ。重大な違反をしなければ決勝トーナメントには進める。しかし、予選で勝てないものがどうして決勝トーナメントと勝てよう？」
「とりあえず、試合には万全の準備で臨みたいので」
アリルはオスムにいくつかの準備を依頼した。
「それにこれだけ多くの勝利の女神たちが居りゃ負けるワケねーって」
アリルの視線の先には、チアガール姿のスクネ・ノワール（eb4302）や結城絵理子（eb5735）、高岳謠子（eb4649）も今回は加わっている。
「チアの練習のいいけど、サッカーの練習しよう」
天野夏樹（eb4344）も先程までは手足を大きく振り回してチアガール姿で応援の練習をしていたが、今では着替えてサッカーの練習に入っている。もちろん、彼女の場合には覗かれてもいいような対策はしていたが。すでにセナ・ヒューマッハ（eb4854）を相手にエラシコのコツのようなものを教えている。
「まずはボールコントロール。見せかけの体重移動、そしてダッシュ。抜いてもドリブルで追いつかれたら次につなげられない。寝る時以外ずっとボールをドリブルしていて」
チーム用に用意されたサッカーボールの一つをセナに預ける。
「寝る時以外ずっとでござるか」
「天界にはこういう言葉があるの。ボールはともだち」
「分かったでござる」
「ああ、それと」
「なんでござるか」
「ゴーレムでこけないでね。エラシコが多分一番こけ易いから」
「うむ、気をつけるでござる」
「スルーパスの練習しよ」
加藤瑠璃（eb4288）が門見雨霧（eb4637）とアリルを誘った。
「パスの出し方が一番難しいようだ」
「そうね。普通のパスなら多少ずれても、受け取る側でその方向に動けばいいけど」
「スルーパスとなると、そんなに誤差は意味がない」
チームリグもスルーパスをコントロールで失敗している。それだけではない、最低３人はペナルティエリアまで進出しなければならない。結構大きな賭けになるだろう。
「チームトルクのキーパーって誰だろう？」
対セレ、対ウィエではグレナムがキーパーだったが、今回もそうだろうか？
「キーパーそのものよりも、ディフェンスをいかに突破するかだ」
ディフェンスのブロックを想定しての練習に入る。
「トルクのディフェンスは手堅いわよ。もっと足を使って」
夏樹が、大声でアドヴァイスする。
「そろそろ休憩と作戦会議にしよう」
アリルが全員の体調を考えて言い出した。
「第１戦は暑い最中だったが、冷えたな。スクネ、大丈夫か？」
登志樹はスクネに声をかけた。
「チアの服装、いい加減に寒いわね」
「それは問題だ。ゴテゴテ着たらチアの良さが無い」
天界（地球）のような化繊素材は到底手に入らない。寒けりゃミニは流行らない。まだまだウィルは実用重視でないと冬場には凍死者がでてもおかしくないし、天界人はともかく治安が良いとは言えない。
「それどういう意味よ」
「痴話喧嘩はそれぐらいにしてくださらない？」
落ち着き感のある謠子に言われると、二人とも口を閉じた。そして登志樹がいいわけするかのように。
「考えていることは考えているさ。前半はワントップ＋２ＭＦ＋２ＤＦ攻撃陣形。ここで点をとって、後半はツートップ＋リベロ＋２ＤＦの防御陣形で守りぬく。攻め手の中心は夏樹で司令塔も兼ねる」
「私？」
「そう。この中で一番経験がありそうだ」
「今回も私は外様だから、まずはチームイムンの戦術に馴染む所から。パスの練習をして、息を合わせられる様にすることからって思っていたけど」
すでに練習には、できるかぎり協力している。
「キーパーはザナックだ」
「ああ任せてくれ。ウィエは予選突破できなかったけど、」
これはキーパー経験者３人で相談した結果だと告げる。
「チームイムンが、チームトルクに確実に勝っている点がある」
オスムが自信をもって言った。
「サッカーを熟知した天界人が多いことだ」
言われれば、イムンは今まで天界人のサッカー経験で勝ってきている。
「第３戦でもまだ天界人のサッカー経験はまだまだ強力だ」
ザナックもセナも頷く。今回の配置は、今回チームイムンに応援にきているザナックと夏樹の二人に、最初から重要なポストを任せる。
「なかなかできないことだ」
オスムは思い切りの良さを褒めた。
「ディフェンスは二人もいるから、前に出過ぎないにする」
ザナックは言い切った。
「ディフェンスは任せて」
謠子とスクネが声を揃える。
「後半は私もディフェンスに出るわよ」
絵理子も存在をアピールする。頷くザナック。
「フォワードはスルーパスを使ってゴールを狙う」
セナはこの試合こそと、思って張り切る。
「俺と、夏樹の二人でミッドフィールダー」
ゲーム展開がかなり広がりそうだ。今回は人数も多いから、思いっきり広げて消耗しても交代がいる。
「それじゃ公開練習でもっとファンを増やそう。決勝トーナメントも見据えて」
「それから、チームイムンのテーマ曲というか入場曲というか。提案があるんだ」
この効果はチームササンで実証済み。アリルの発言に全員が集中する。
「Wild Thingだ」
「え？」
と思ったのは、やはり天界人たち。
「これってメジャーリーグの」
「そうだ」
「う〜ん」
「そう悩むな。アトランティス人はメジャーリーグなんて映画見た事はないって」
「でもさ。この曲、前奏エレキギターなしじゃサマにならないじゃないの？」
「メジャーリーグ？ エレキギター？」
アトランティス人には、分からない言葉が多い。
「まあこんな曲さ」
とアリルがいきなり歌いだした。
「ササンといい、今度といい。天界人の音楽は違うものだな」
オスムが感慨ふかげに言う。
「照れるな」
「たぶん褒めていないと思う」
「ところで、あれはなんだ？」
上空を大きな鳥が舞っている。
「あれは若いロック鳥だ。急降下した。おっと足に何か捕まえている。牛か馬か」
雨霧が実況中継する。
「‥‥誰のペットだ？」
オスムが睨んだ。
「俺のだぜ、ヤッべェー」
アリルはうめいた。
「早くしまってこい。厄介なことにならなければいいが」
ジャッジがロック鳥発見の報告を聞きつけて確認に来たのは、アリルがしまった後だった。
●前半
イムンの選手入場ではアリルの提案したWild Thingが流れていた。イムンファンが歌っていた。それだけでなく、既存の弦楽器を無理やり掻き鳴らすような前奏も行われていた。しかしエレキほどの迫力はない。チームイムンの選手が入場してくると歓声が巻き起こる。
イムンとトルクのゴーレムがセンターラインを挟んで立ち並ぶ。
その中央で二人の男がにらみ合っていた。チームイムンの世話役とチームトルクの世話役であった。
二人が握手するとスタジアム全体から歓声があがる。
「オスムが戻ってきたぞ」
「どうだった。仇敵と握手した感想は」
「相手が相手だ」
双璧の片割れでは、経験に差がある。
「俺たちは負けないぜ。行くぞ」
登志樹は仲間たちに向かって叫んだ。
試合開始直後から、チームイムンは激しい攻撃に見舞われた。トルクはウッドのフォワード２体に１対のアイアンが混じる形で攻めかかってきた。
「ウッドのうち１体は動きが良い。気をつけて」
「任せて」
夏樹の指示に、謠子が相手のウッドをマークする。しかし。
「速い。それに実戦なれしています」
パスを出せなくなるギリギリまで謠子を引きつけてからパスを出す。近づかなければ、ドリブルで前に出る。登志樹はアイアンを、スクネはもう１体のウッドをマークしているが、あまり分は良くない。
「さすがにトルク強い！」
さすがに状況が不利なため、夏樹もディフェンスよりに動く。
「このままではトルクのディフェンスを切り崩すどころではないでござる」
セナも単身敵陣にいてもやることはない。センターラインまで下がってボールがつながるのを待つ。
チームイムンのディフェンスは幾度も突破され、都合４回のシュートを放たれた。
「今回は大活躍だ。そんなに見せ場、作らなくてもいいですよ」
ザナックは、すべてのシュートを防ぎきった。
「さすがに」
ザナックはボールをセンターラインあたりにいるセナに向かって蹴る。
「やっと通った！」
今度はセナまでボールが届いた。本来ならミッドフィールダーがつなぐはずだったが、そのミッドフィールダーまでディフェンスに回ってしまっていた。トルクのアイアンのために今までボールがトルク側にまで入っていなかったが、今回は通った。
「頼む！」
セナはザナックからのボールを胸で受けて、ドリブルに入る。一緒に進むはずの登志樹と夏樹はやっとり始めたばかり。そしてトルクのアイアンも戻ってくる。
「トルクのディフェンスは２体でござるな」
セナはゴールめがけて走る。
２体のディフェンスが迫ってくる。１体はウッド、もう１体はストーン。ストーンの方は動きがぎこちない。
「抜くならストーンでござるが」
それは向こうも分かっているのか、ウッドが向かってきた。こちらの動きはいい。
「今こそ鍛えたエラシコで」
セナは見せかけの体重移動で相手の目を欺いて、突破する。キーパーはゴール前から動かない。
「思い切り詰めてシュートして」
セナに指示が飛ぶ。指示どおりに接近してシュート。セナから見て右側、キーパーの左手の先を通るかと思ったが、弾かれた。しかし、ボールは生きている。ボールをキープしたが、目の前にはアイアンが迫っていた。上がってきた夏樹にパスする。今度はトルクゴール前でイムン３体、トルク３体の混戦になる。登志樹が外に大きくボールを蹴る。夏樹がそれをキープした。アイアンが向かってきたが、それをどうにかかわず。次にはストーンがいたが、動きが急に鈍くなっていく。
「稼働限界のようね」
逆サイドには、登志樹が、ゴール前にはセナがいる。セナもヘディングシュートの練習をしていたが、ウッドが１体マークしている。ここは、低いが、速い速度のパスを出す。セナが合わせるように前に出る。マークしていたウッドはセナのシュートコースを塞ぐように動く。しかし、ボールはセナを素通りして逆サイドから走り込んだ登志樹に渡る。登志樹はそのまま、走り込むようにボールをゴールに叩き込んだ。
「ゴール」
チームイムンは１点先取して前半を終了した。
●後半
「チームトルクのディフェンスの１体が限界に達してくれたから、点が取れたようなものか」
「後半は頼むよ」
後半は瑠璃と雨霧のウッドがフォワード、アリルがウッドでリベロ、絵理子のウッドでディフェンス、スクネのストーンとザナックのアイアンはそのまま継続。
「トルクは絶対に猛攻をかけてくる。守り抜くぞ」
アリルが叫ぶ。
「応援は任せろ。ってスクネ、交代しなかったらチアガール姿見られないじゃないか」
登志樹はスネアが後半も出ると聞いて、チアガール姿が見られないことに気づいた。
「どうどう」
後半の応援のためにチアガール姿になった、夏樹と謠子がなだめる。って、それじゃ馬だろ。
「うがぁー」
「スクネ、登志樹って面白いわね」
瑠璃が笑いながら言った。
「恥ずかしいだけよ」
アリルが言ったとおり、先取点を取られたチームトルクは猛攻をかけてきた。かなりの強引なせめ。ゴール前のせめぎ合い。
「あのアイアン、やるな」
絵理子は強引に攻撃してくるアイアンのシュートコースを塞いだり、スライディングタックルを使ったりと、消耗しつくすつもりで守った。
「今度はこちらの番だ」
猛攻を耐えたイムンの反撃が始まる。アリルが、ボールをフォワードにつなぐ。瑠璃、雨霧、アリルの３人がトルク陣営に攻め上って行く。
互いに猛攻を加え続けた。雨霧と絵理子が途中で限界を迎える。トルクも２体が動かなくなっていた。
そして互いに点を取れないまま試合終了。
「勝者、チームイムン！」
世話役同士は握手して、暴動も起こらなかった。
「応援ありがとうございました。次の試合の応援もよろしくお願いしますね♪」
絵理子は観客に向かってお礼を言った。
「次は決勝トーナメントだ。狙うは優勝！」
オスムは、ファン達に向かって叫んだ。
