山賊集団を討伐せよ討伐編Ｃ【南攻撃右翼】
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■ショートシナリオ担当：マレーア１ 対応レベル：8〜14ｌｖ 難易度：やや難 成功報酬：4 G 15 C 参加人数：9人 サポート参加人数：-人 冒険期間：03月01日〜03月06日 リプレイ公開日：2006年03月07日 |
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●オープニング
「勇敢な冒険者の活躍により、ウィル北方の悩みのタネとなりつつあった山賊集団の動向がつかめましてございます」ザモエが、ウィル国王エーガンのもとに伺候する。甲冑、帯剣のままの謁見の特権を持つ一人。冒険者の偵察行動について褒めたたえる。
「つきましては現地の領主の軍勢に、戦いなれした冒険者を加え、さらに新編成した赤備を出して一気に殲滅し、禍根を絶とうと考えます」
エーガン王にしてみえば、目の前にいるこの実直な老人は怒らせさえしなければ、フォロ家のために働いてくれる御仁である。それに、エーガン王として新たに編成させたゴーレム騎士団の力を知りたいとも思っていた。
赤備とはザモエに任されたストーンゴーレムバガンをもって編成された、フォロ家初のゴーレム騎士団である。ゴーレム騎士団の運用。ゴーレムを戦場に導入するにあたってのウィルの騎士道のあり方。ザモエにそれを任せたのは、エーガンの策謀の副作用としては、もっとも利点ということだっただろう。
「討伐は、ウィルの双璧と名高いそなたに任せる。山賊にゴーレムを用いるのは、鳥を捌くのに牛刀を用いるようなものなれど、良民を困らせる非道な山賊ごときに情けは無用。存分に腕を奮ってまいれ。相手が騎士位を持つ高潔な人物ではないのだ」
「御意！」
ひさかたの謁見は、それで終わった。
山賊集団の数は多い。しかも主力は弓矢。丘の上、遮蔽物のあるところからの打ち下ろし。南からも北からも上りになる。ウォーホースの脚力を持ってしても、数回にわたる矢の洗礼を受けることになるだろう。
「幾人かを前もって潜入させて、混乱させて矢の攻撃を減らすしかない」
潜入行動の得意とする冒険者の１隊をもって山賊の拠点に攻撃をしかけて、混乱させる間に領主騎士団を南の街道から突進させる。東側に逃げることを想定して冒険者の１隊を東から侵攻。
騎士団の突進に呼応して、冒険者の２隊で街道左右を制圧。一気に攻め上って、丘の上にある山賊の拠点から山賊を追い落とす。ハン国境を目指して逃げるところを丘の北側に伏兵した冒険者の２隊によって殲滅する。
「山賊集団を偵察した冒険者の報告によれば、山賊を操った者がいるという。そいつらを捕らえるために冒険者の１隊を投入する」
「生け捕りが望ましいが、抵抗するならば殺してもかまわん。しかし、冒険たちの実力なら生け捕りを期待してもいい」
ギルドの係員は応募してきた冒険者達に念を押した。
「食料は完全自弁。ただし、戦場には儲けを当て込んだ商人が出張ることがあり、相場よりもかなり高い金額で購入することになるので注意。ただし商人がいなかった場合、所持金が足りない場合には、空腹を抱えて戦うため餓えに苦しむ事になるだろう。また戦場では戦場荒らしが出る可能性もある。戦場に携帯できない物を持っていくと盗まれることもあるので、アイテムの管理には十分に注意するように」
●今回の参加者
ea0454 アレス・メルリード（31歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国）ea0827 シャルグ・ザーン（52歳・♂・ナイト・ジャイアント・イギリス王国）
ea3173 ティルコット・ジーベンランセ（30歳・♂・レンジャー・パラ・フランク王国）
ea8583 アルフレッド・アルビオン（33歳・♂・クレリック・エルフ・イギリス王国）
ea9907 エイジス・レーヴァティン（33歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・ノルマン王国）
eb4129 リック・ラフカート（30歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス）
eb4381 ザナック・アレスター（33歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス）
eb4428 エリザ・ブランケンハイム（33歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス）
eb4651 オードリー・サイン（59歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス）
●リプレイ本文
●現地集合「あれが山賊の本拠地のある丘か」
ザモエは、丘に向かう各隊が作戦に入る頃に、丘から西へと伸びる道上に本陣を構えた。周囲を偽装してあるが、予定どおりならそろそろ偽装をはぎ取れる。偽装が解除されれば本陣が突然出現する。合図は黒煙。山賊が西側の道を偵察していれば、丸見えになるはずだ。積極的な戦闘の意思があるならば、山賊は戦力を結集して西へと駆け降りて来ることだろう。山賊の中には紋章官などはいないだろうが、ウィルに住む者ならば、モン家の紋章ぐらい知っていることだろう。もっとも先行潜入隊が予定どおりの行動を取っていれば、山賊たちは戦う武器を失ってそれどころではあるまい。
討伐隊はすでに配置についている。直接連絡はとれないものの、北側は昨夜のうちに罠まで設置しているはずだ。実際のところ、この陣営は囮。そしてここには、モン家の旗が風を受けてたなびいていた。偽装をはぎ取れば、敵の目に最も目立つはずだ。山賊がパニックに陥ってくれれば、南や東からの攻撃隊が丘へを登るまでの間、先行潜入隊は十分に持ちこたえることができるだろう。
「閣下の名声は、衰えておりません。冒険者たちにゴーレムを２体も預けましたが、大丈夫でしょうか」
「南からの攻撃は、こちらの主攻撃になる。まかせても良い。山賊はゴーレムを見れば、北側へ逃げてくれる。こちらに来てくれれば、その方が久しぶりに暴れることもできる」
そう言いながら、丘の方を眺めた。作戦では先行潜入隊が、山賊の主武器である弓矢を倉庫から持ち出す前に破壊し、いくつかの建物に火を付ける。それに呼応して、東から騒々しく物音を立てて侵攻。視界が悪いことを利用して大勢だと思わせる。南からは十分な戦力を投入し、山賊を北へと追いやる。ゴーレムを配置したのは、ゴーレムが侵攻できるだけの道とゴーレムが見えるという地形による。平地に出たところで、伏兵していた２隊で攻撃し、山賊の戦意を根こそぎ奪ってしまう。５００人という人数は、こちらの揃えた人数の５倍以上。もしも戦意を残したままの降伏を受け入れるとしたら？ そのことを冒険者たちがどの程度理解しているかという不安はある。山賊は騎士ではないから、彼らに騎士道のルールは通じない。降伏した後、抵抗や逃亡しないというルールは適用されない。
「身をもって体験するしかなかろう」
もちろん、北を突破された場合の最終ラインも用意せざるを得なくなったが。
●南攻撃右翼
襲撃の前日隊ごとに丘に向かっていた各攻撃隊は、丘付近の森で合流を果たした。大軍で動けば接近を察知されて逃げられてしまう。そのため各隊が配置に着くまでは、隠密行動を取る必要があった。
「国家同士、騎士同士の戦いなら、期日と戦力を事前に決めて行うからこのようなコソコソしたマネはしなくても良いものだ」
アトランティスの騎士の戦いは、地球人たちのスポーツに似ている。
「先ずはザモエにキッチリ聞いておきたい事があるわ！ 投降して来た者と女性や子供の扱いね。全員殺害しろって事なら‥‥ハッキリ言って「そんな命令、くそくらえ」だわ。戦う事の出来ない女性と子供の命は保証する事を確約してもらうわよ。これは首を跳ねられようが絶対に引かないわ。特に子供の命を奪うなんて、騎士道以前に人として屑よ。子供は「未来」そのものよ。それを平然と摘み取るような奴にも、世界にも、未来はないわ。私、無差別に虐殺なんて恥知らずな行為は許せないのよ」
作戦会議でいきなり威勢よく食ってかかったのは、エリザ・ブランケンハイム（eb4428）であった。
「戦場でどうふるまうかは、前線にいるお前たちで判断しろ。判断の結果責任を自分や仲間の命で贖うことになるかも知れないが。生きて捕らえたとしても、その後の裁判までは保障できんぞ。少なくとも、山賊に殺された領民達の遺族が満足行くような裁判になるだろうからな」
ザモエの返事はそっけない。
「生きて捕らえたとしても、一般の山賊では身代金を払ってくれる相手もいない」
それを覚悟の上ならエリザは、自分の信念基づく行動ができる。ザモエの言った言葉の意味をエリザはもちろんのこと、行動をともにした者たちが自ら体験することになる。
「ウィルの双璧として名高いザモエ様と戦場を共にできることを光栄に思います。冒険者の立場ではありますが、ウィルの鎧騎士として必ずやお役に立ってみせましょう！」
リック・ラフカート（eb4129）は、エリザの声に少し鼻白みながらもザモエに声をかける。
「戦場ではなにが起こるか分からない。相手は山賊、騎士ではない。そのことを忘れるな」
リックに対してザモエは助言した。
「はい」
南攻撃右翼隊にはストーンゴーレムバガンが１体、貸与される。オードリー・サイン（eb4651）は奇跡の業の使い手である、アルフレッド・アルビオン（ea8583）の護衛として行動するため、取り敢えずはザナック・アレスター（eb4381）が待機する。
ティルコット・ジーベンランセ（ea3173）が、先行して罠や伏兵を警戒しつつ進むことになる。
「本当に騎乗していくのか？」
アレス・メルリード（ea0454）は、シャルグ・ザーン（ea0827）が騎乗しているのを見とがめた。
「徒歩よりは、速いのであるしな」
しかしその分目立つ。それにティルコットの速度に合わせるなら、それほど速く進むことができるわけでもない。罠を警戒しながら進むのは決して速くないのだ。しかし、シャルグがそれを覚悟の上で攻撃を引き受けてくれるならその分、他の者たちの危険は減る。ポーションも十分用意してあるらしい。騎乗して侵攻すれば、アルフレッドとの距離は離れて、彼に回復してもらうのは無理だろう。
「狂化しても投降者は切らないでよ」
エリザは、エイジス・レーヴァティン（ea9907）にも釘を指しておいた。
「狂化している最中には、分からないんだよね」
投降を受け入れたなら、投降者を守る義務も生じる。エリザの悩みの種は無くならない。
「ゴーレムは稼働時間的に、最初からというのは無理だ。ここぞという時に出せ」
ザナックは、ゴーレムニストより説明を受ける。知っていることだが、戦場ではゴーレムの視覚的効果の方が大きいだろうが。動けないとなれば、逆効果となる。
「後は合図を待てばいい」
丘の上から上がる黒煙を。
●抜け駆け？
「基本的には、道の確保だ。ゴーレムが来るとは思っていないだろうが、落とし穴で動きを封じられるのはつらい」
決め手になるだけあって、それが封じられてしまうと、山賊の士気が回復しかねない。
ティルコットはすでに、丘に向かっていた。味方が侵攻する前に少しでも罠や敵を発見しておきたい。
しかし、たいして進まないうちに道で騒ぎが起こった。
「あれは左翼隊にいた鎧騎士。たしかアリア・アル・アールヴという名前だったじゃん」
その鎧騎士は、こともあろうに丘を包囲していると叫んで降伏勧告を行いやがった。たちまち山賊たちは迎撃態勢を整えて矢を放ってきた。
「原因を作った報いはいいけど、こっちまで巻き込まれるのはいやじゃん」
異変を聞きつけたシャルグも馬を飛ばしてきたが、たちまち馬を狙った矢の攻撃を受ける。
「おのれ卑怯だ」
シールドソードでは馬までは防御仕切れない。矢にあたったサイラが棹立ちになっても、落馬しなかったが、わきにそれた。手持ちのポーションでサイラを回復させるが、瀕死の状態だった。
「なぜこうなった？」
矢で狙われるのが分かっていて馬で突っ込んだのだから仕方ない。しかし、先行潜入隊が弓矢を破壊しているはずだった。
「先行潜入隊が騒ぎを起こす前に、あそこに転がっている鎧騎士が、敵に降伏勧告しやがったらしい」
アレスもあわててマルスに乗って飛び出したが、マルスが的になるので道を逸れて隠れた。矢にあたったマルスはポーションで回復させる。
「領主騎士団はでかいシールド構えて歩いてくる。何とか呼応して動きたいが」
エイジスも遅ればせながら登ってきた。こちらは徒歩。
「エリザはゴーレムを出してもらえるように走った」
アルフレッドとオードリーも到着した。
「怪我をした人はいませんか？」
アルフレッドの進出がこんなに早いとは思わなかったので、手持ちのポーションで回復させていた。
●ゴーレム突入
「左翼隊はもうゴーレムを出すらしい」
まだ黒煙は上がっていない。
ザナックがゴーレムの制御胞に入った。
「急いでゴーレム出して」
エリザとリックが戻ってきた。
「矢の攻撃が激しい。ゴーレムで突破して」
「手筈と違うじゃないか！」
ザナックが左翼隊のゴーレムが走っていく後ろ姿を見ながら、ゴーレムを起動する。
「動くか？」
起動に失敗すれば、どちらかと代わることになるだろう。
制御胞の周囲が外の景色を映し出す。
「足元の確認は頼む」
落とし穴の調査は完了していない。
「その代わり矢は頼む」
ゴーレムの到着によって戦況はひっくり返った。逃げていく山賊を追いかける。リックはサンソードを持ち替えると峰打ちをはじめた。山賊は弓矢以外の武器は持っていないようだ。
エリザが投降を呼びかける。幾人かが弓を投げ捨てて手を挙げる。
「このあたりはこれで終わりね」
エリザがそう言って気を抜いた瞬間、近づいた山賊が素手で飛び掛かってきた。レイピアを構える余裕もなく押し倒される。
「降伏したんじゃなかったの？」
山賊の指が首を絞める。周囲を見るとアレスやシャルグにも２、３人が組み付いて武器が使えない状態で山賊が隠し持っていた短刀が、防具の隙間から差し込まれているのが見えた。
リックはあわてて３人ほど峰打ちしたが、サンソードはもともと峰側強度は強くない。峰打ちの多用によってぽっきりと折れてしまった。
「これが」
エリザの意識が遠のいた時、突然呼吸できるようになった。咳き込んで目を開けるとゴーレムが山賊を殴り飛ばしていた。エイジスは、狂化して他の山賊どもをめった斬りにしていた。
「アルフレッド、回復を」
その間にもアレスとシャルグは、手持ちのポーションで回復を図る。
「相手は山賊、騎士ではない。そういう意味だったのか」
リックは、ザモエの言った言葉の意味を理解した。相手が騎士で降伏すれば、拘束しなくても抵抗も逃亡もしない。しかし山賊にはそのようなルールはない。逃亡ならまだ可愛げもあるが油断すればこれだ。
血まみれになりながらも右翼隊は戦力を残しつつ、山賊の本拠地に向かって進軍した。クレリックの存在は大きい。
左翼隊のゴーレムによってある程度の攻撃は行われていた。右翼隊のゴーレムはそれを支援するような形で動く。左翼隊はゴーレム以外の戦力は、ほとんど途中で消耗したようだ。クリレックの存在は大きい。
東からの攻撃隊も、どうにか到着して目的は達成された。
「あとは北に向かって行く。そろそろ限界だ。交代してくれ」
ザナックはオードリーに声をかけた。他の鎧騎士の精神状態を考えて決めた。
●戦いは終わった。
「こちらに死者はいませんが、危ないところでした」
各隊の奮戦により、どうにか山賊を一掃できたが、意図はともかく、結果として作戦を無視した行動によって少なからず被害が出ていた。騎士道を持ち得ない山賊に、騎士道をもって戦うことはない。その点を理解していなかった冒険者も、今回のことで分かったはずだ。
ゴーレムの視覚効果は、絶大だったようだ。攻め登って来るゴーレムを見ただけで戦況は一変した。
「冒険者からは、生きて捕らえた山賊のことでいろいろ意見があるようですが」
「裁判までは責任もてん。しかし、被害にあった領主や領民を納得させ、しかも命を奪わない方法があるかどうか。セクテ殿にでも知恵を借りるとしよう。わしは民のことには疎いからな」
総大将の弁である。
山賊は戦闘での死者は５０人程度。生きて捕らえた者は４５２人。数的には合う。黒幕らしき人物は捕らえたが、そいつはどうやら、雇われただけらしい。今後の拷問でどこまで明らかになるかまだ分からない。黒幕らしき人物を護衛していた数名は、遺体の中にも、捕らえた者の中にもいなかった。戦った冒険者の話では山賊ではないらしい。
