輝け!大会運営はウィルの華!裏方チームX
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■ショートシナリオ
担当:マレーア1
対応レベル:8〜14lv
難易度:普通
成功報酬:3 G 98 C
参加人数:10人
サポート参加人数:1人
冒険期間:03月15日〜03月19日
リプレイ公開日:2006年03月20日
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●オープニング
●御用商人マーカス・テクシ
いよいよ国が運営するゴーレムチャリオットレースの準備スタートだ。
ギルドからの依頼に応じた者達が集った商館は、悪徳商人として悪名高いマーカス・テクシの店だった。
「よくもこれだけの冒険者が集まってくれたものだ。これからでっかい商売を始めるぞ。絶対、お前らに損はさせん話だ。何しろ、王家がバックについておるのだからな。こんなにやり易い仕事は無い! ひっひっひ!」
眼前の小太りの中年男は、自信たっぷりにこれからのプランを話して聞かせた。
「わしは大会の運営を一手に引き受けたのだ。そこでお前らにも、それを手伝って貰いたい。第一に会場の整備。第二に鎧騎士の登録作業。第三に試合当日の運営作業、これをへますると半殺しじゃすまんから気を付けるのだ。第四に鎧騎士の旦那方から没収したアイテムの競売、王家の特許が必要だから、これは試合の終わった後の話だな。まぁまぁ、やってもらう事は他にも一杯だ」
それからマーカスはぐるりと見渡して、頷いた。
「わし等が第一に心がけにゃならん事は、不正を決して許さん、という事だ! 何しろ、国王陛下のお手伝いをさせて戴く訳だから、不正な操作など以ての外! もしそれが出来るとしたら、天地精霊に誓って、わし等だけだ!」
にた〜っと笑むマーカス。
「そういう勝手なアルバイトをする奴は、ひとくくりにして川底で眠って貰う事になるのだよ。それが冒険者の旦那方であってもね。ひゃっひゃっひゃっひゃ!」
そう言って、マーカスは商館の奥へと皆を誘った。
「お前らには、うちの若い者を何人かと、臨時で雇った連中をまた何人か付ける事にした。そいつら、頭のからっぽな連中をうまく指揮して、今回のイベントを絶対成功に導く、簡単な事じゃないなぁ。けっけっけっけ‥‥」
そこで目付きの悪い男達と引き合わされる冒険者達。
「お前達、この方々の言う事を良く聞いて、今回の一大イベントを絶対に成功へと導くんだぞ! 判ってるんだろうなぁっ!!?」
「「「へい!! 旦那様!!」」」
どうみても一癖も二癖もある連中。どうみても、マーカスお抱えの暴力機関。はっきり言って、夜中に二人っきりにはなりたくないタイプの連中である。
●応募少なし
うーんと腕組みして唸るマーカス。蓋を開けてみると予定よりも登録者が少ない。これではテラ銭も集まらない。没収アイテムで儲ける算段も狂いまくりだ。急ぎ建白書を書き、王家の勅許を得る。募集要項を大改訂だ。
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■■ 急 遽 ル ー ル 改 正 ! ■■
・操縦者2名を除き、ゴーレム技能皆無の者の参加も認める。
・魔法の武器の持ち込み、天分強化アイテムの使用も許可。但し、それらも含めて没収対象になりうる。
・上のルール改定により、操縦不能者ばかりが集まることもあるが、その場合は不戦敗とする(自動最下位決定)。
・参加賞として、『最下位から数えて5組以上の順位」のチームに貴重なるヒーリングポーション各1本を進呈。
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●大会当日の朝
急造の会場表には、既に大勢が集まり長蛇の列を作りつつあった。
この日も、マーカスの名調子。
「いいか! お前達! 入場料を払わずに、この一大イベントを見ようと、不正に侵入を試みるクズが大勢居る! そいつらを徹底的に排除するんだ! 入場前に忍び込んでる奴は、袋叩きにして放り出せ! それから騎士の旦那方のお相手は、目利きに自信のある奴がワシと一緒に行うぞ! 一番の金目の物をふんだくってやれ! 遠慮はするな! 魔法のアイテムで、試合に勝とうなんざケチ臭い田舎騎士のやるこった! それから応援団の女達にゃ手を出すな! 全部終わってからにしろ! 試合中の集計は命懸けでやれ! 流れ矢に当ったりする奴は、ぼけ〜っと突っ立ってんのが悪いんだ! 倒された人形は、集計が済み次第、すぐにセットしろ! ぼさぼさしてっと、てめぇがランスで一突きだ! 罰ゲーム用の仕掛けは、何度もチェック! チェック!! チェック!!! これがこけたらお前達全員が罰ゲームだ! 何が何でも盛り上げろ! 判ったな!!?」
一息でこれだけ怒鳴ると、マーカスは酸欠で立ちくらみ。
「あ、後は何か‥‥ん‥‥?」
店の荒くれ者達は、感動で目元を潤ませ首を横に振った。
「か、完璧ですぜ、旦那様‥‥」
●リプレイ本文
大半が完成した競技場の薄暗い一室。そこには、悪名高いマーカス・テクシの息のかかった者達が何十人も集まっていた。大会運営実行委員、それが彼らの肩書き。そこには殺気にも似た、暑苦しい熱気がムンムンに充満していた。
一人の逞しいエルフが、ガタリと大きな板を壁に立てかけた。一面、人の名前が記されている。
アリア・アル・アールヴ(eb4304)は軽く手の埃を払い、ちらとその切れ長の青い瞳で見やると、それを受けシャルロット・プラン(eb4219)豪奢な金髪を掻き揚げる様な仕草で、その伊達メガネをキラリと輝かせた。
「皆さん、これは各担当者毎に振り分けたチーム表です」
荒くれ者達の獣じみたざわめきが肌へびんびんと伝わる。シャルロットは、その予想通りの反応に赤い唇を満足気に微笑ませた。ピンと長い耳が揺れ、僅かに紅潮する気配が自分でも判った。
「お前達の仕事への意欲が増すよう、一ついい話をしよう」
横合いから黒革のマントを軽く肩にかけた一人の男が説明を始めた。天界人、時雨蒼威(eb4097)。要点だけを説明した。
「一人のミスは連帯責任だ、仲間が馬鹿をしないようにも注意しろ。最後に他チームの妨害に走るような阿呆は‥‥! いや、俺の口からはとても‥‥」
「‥‥応援チームのバニ男のキスだけは嫌だな」
誰かが呟いた。肩をすくめる様に苦笑を浮かべ、蒼威は話を終えた。
ここでアイコンタクト。パンパンとシャルロットは手を叩き、注目を集めた。
「さあさあ! 皆さん、自分達のチームを確認したら、各担当の者と打ち合わせを始めて下さい! 全体のタイムスケジュールは各担当にお知らせした通りです! 進捗の報告はアリアさんの作ったボードの方へどんどん反映させていきます! 遅れが目立つところへは、余裕のあるチームから手の空いている者をどんどん回してあげて下さい! 宜しいですね? では、始めて下さい!」
頷くマーカスに、打ち合わせ開始の合図。どっと男達は動き出した。
既に部屋の片隅では、大きな羽の付いた、つば広の黒い帽子を手に、一人の男が大まかな指示を出し始めた。
「さて、私のチームでは入場許可証とスタッフ証の作成です。食肉処理後に出る羽根を求め。染料で色付けし、紐をつけ、首からかけるようにします」
ルイス・マリスカル(ea3063)の周囲には、手先の器用そうな者達が集められていた。
「へぇ、じゃあ材料集めはあっしらに任せておくんなせい。心当たりがありますんで」
「針子も何人か集めやしょう」
「その辺の手配は任せよう。予算は判ってますね?」
ルイスの言葉に、強面の男は口の端を歪ませて笑う。
「旦那、うちはまがりなりにも商会ですぜ」
「曲者ぞろいですがね」
げへへへと下卑た笑い。すると、その男達の足の辺りから小さな手がにゅっと伸びて、割り込む様に少女が。
「はいは〜い☆ 私のチームもそれ手伝うんだから、おぢ様達宜しくですぅ☆」
元気いっぱい、パラのガレット・ヴィルルノワ(ea5804)。くりくりと瞳を輝かせ、りんごの様に真っ赤なほっぺ。荒くれ男の一人が思わず頭を撫でたくらい愛くるしい。
「あたし達で、作業場の方の準備をすすめておくね。手伝いに子供を何人か使っても構わないよね? 心当たりあるんだ〜☆」
「人手が足りないならいいですよ。その時はシャルロットさんに話を通しておいて下さい」
「うん! じゃあ、次は細かい作業分担を決めようね☆」
こうして二つのチームが合わさり、各工程に必要な人員を挙げてゆく。
片や部屋の片隅。当のシャルロットは、マーカスと共にボードに群がる荒くれ者達の姿を眺めていた。
マーカスは目を細め、シャルロットへ囁いた。
「よう。あんた、なかなか男あしらいが上手ぇじゃねぇか?」
「マーカスさん、それはセクハラです」
さらりと返すシャルロットだが、耳の先がポッと赤くなる。
「セクパラ? 近頃ガキの間にスカート捲りを広めた悪たれのことか? かっかっかっか、まぁ固ぇ事言うなよ。宜しく頼むわ」
笑いながらマーカスがシャルロットの高い腰、その辺りをポンポンポンと叩く。
シャルロットは真っ赤になってマーカスのじっとりとした手を押さえた。
「その、手つきと目つきがセクハラです!」
「かっかっか‥‥ただの挨拶じゃよ」
「ふむ。お盛んですね、Mr.マーカス」
「おう、誰でぇ?」
そんなやり取りをニヤニヤ。一人の男が歩み寄った。
「キース・レッド(ea3475)です。お陰様で警備担当になりました」
「おう今朝の兄ちゃんか。宜しく頼むぜぇ〜。ろくでもない連中はどこにでもいるからなぁ〜」
ニヤリ。マーカスは何事も無いかの如く、飄々としていた。
「セ‥‥セクハラです!」
「存在自体がな」
「はっは〜。勉強させて戴きますよ、Mr.マーカス」
かっかっか〜と高笑いのマーカス。それから次々と誰かが質問に訪れた。
「ふふ、素敵な殿方ばかりですね‥‥今回は良いお祭りになるように頑張りましょうね。ここで私達が怠けていたらレースに出ている人達にも申し訳が立ちませんから」
「判ってますぜ、姐さん」
「まだ、あっしらもお魚さんと仲良くする気はねぇですぜ。尤も、あのお魚さんチームの女ディレクターとなら仲良くしてぇもんですが」
「へっへっへっへ‥‥違ぇ無ぇや‥‥」
にこやかに、緊迫した空気の中でニルナ・ヒュッケバイン(ea0907)は手下となる者達と顔合わせ。
そこへキースが部下を引き連れ合流する。
「はっは〜。Mr.マーカスから会場の見取り図を借りて来ましたよ!」
「流石に速いですね、キースさん。会場警備担当者は集まって〜!」
ニルナの呼びかけに、わらわらと集まって来る。
「チーム事に担当地区や昼番、夜番とかローテーションを決めましょう!」
「はいは〜い! じゃあ、あたしはあんたと同じ側ね! 決まり〜!」
屈託の無いハーフエルフのフォーリィ・クライト(eb0754)。
「フォーリィさん。仕方ないわねぇ。異論無いかしら?」
「レディの夜更かしは美貌の敵。夜番は男達に任せろ」
キースは腕を組み、帽子を目深に被った。
「じゃあ決まりですね。キースさん、ありがとう」
ぺこりと頭を下げたフォーリィは、くるりと振り返った。
「あんたら、ちゃんとあたし達の言う事聞くのよっ! 文句ある奴は今此処であたしとタイマン勝負して勝った奴は聞いてあげるけど負けた奴は大人しく指示に従うっ! いいわね!?」
「へい! 姐さん!」
「姐さんは止めて!」
「へい! 姐さん!!」
「こ、こら〜っ!!!」
そんな様をニルナやキースは暖かく見守った。
●入場口整備
とんかんとんかんと、人足達が大きな木槌で杭を打つ。それにロープを渡らせ蛇がのたくった様な入場口の準備をするのだ。
そんな作業が、入場口の表で行われている中、鎧騎士のマクスウェル・ロウ(eb4447)は汗だくになっていた。
「ぷはぁっ! こいつはきついぜ!」
「旦那ぁ〜、ホントに当日はこれ、着なきゃならねぇんですかい!?」
「当ったり前だ! お祭り騒ぎを盛り立てるにゃ、こういうのが必要なんだよ!」
全身気ぐるみの『まるごとばがん』を半分脱いだ状態で、全身からほかほかと湯気を立て、むさくるしい荒くれ者達はへろへろになっていた。
「ぐっ!?」
「だ、旦那!? どうしたんですかい?」
突然マクスウェルは青ざめて跪く。脂汗がだらだらとこぼれ、目の前がくらくらした。
「だ、大丈夫だ! っ〜か、気合だよ、気合! 気合と勢いで何とかする! 何とかしろ、俺!」
「旦那、どっか加減でも悪いんじゃ。医者に診て貰ったらどうですかい?」
暫く堪えていると、急に苦しくなくなった。負けてたまるか! そう想うと絶叫していた。
「平気平気! 気合だ! 気合だ! 気合だ! 気合だぁ〜っ!! じゃあ、当日は交替でな! 頼むぜ! 良い働きすりゃ、酒でもおごってやる!」
「まぁ、酒は良いんですが、ホントに大丈夫なんですか?」
「はっはっはっは! 当の本人が大丈夫だって言ってんだから大丈夫なんだよ!」
そう笑いとばしながらも、マクスウェルは先程の違和感を感じた場所を、そっと撫でさすってみるのであった。
●掲示板建築中
貴賓席のまん前になるゴール前とは反対側、そこに掲示板を建築すべく、アリアは大勢の人足達に指示を出す。先ずは柱となる建材を観客席の裏に立てなければならない。
深さ1m程に掘り下げた竪穴に、長さ10mは軽くある木材を立てるのだ。
コーナーには20人程が二本のロープを手に待機している。穴の傍には、木の大きなハンマーや、途中で支えにかます木材を持った男達が5名ほど待ち構えている。
「さぁ! 最初はゆっくり! 引っ張って下さい! ゆっくりです!」
柱となる建材に巻きつけられた太い綱がピンと伸び、それからゆっくりと少しずつ持ち上げられる。
「良い感じですよ! そのまま! そのまま!」
柱の先が、穴に入ってゆくのを確認しながら、アリアは支持を出す。
「はい、そっちでも柱に棒をかまして! もっと! ストップ! ハンマー!! ハンマーで叩いて!!」
穴から半分ずれるのを、慌てて止めさせる。宙ぶらりんになった柱の端を、巨漢が恐ろしく大きな木のハンマーでガンガン叩き、穴に押し込む。
「よ〜し!! 上手いですよ!! じゃあ、こっちは引っ張ってみて!! 引っ張って!!」
一挙一動に熱がこもる。いつしかアリアは土埃と汗だくになって、作業に没頭していく。
コースの脇では競技用の木製の兵士像が何体も作られていく。
あまり出来の良いものでは無いが、炎の魔法も使うらしいとの事もあり、壊れる事も考え、コースでは50体必要なのだが、念の為にその倍を用意する事となる。
その横では、板を何枚も打ち付けて一枚の大きなボードを作っていた。これに淡い色の塗料を塗り、当日の記録を書き込む掲示板を作ろうというのだ。
●薄暗い部屋の中で
マーカスの指示で、数枚の羊皮紙をシャルロットが丁寧にテーブルの上へ広げてみせる。
「これが?」
「ああ、大体の買取基準て奴かな。かっかっかっか‥‥」
マーカスがじろりと見る前で、うろんな目でそれらに目を通すシン・ウィンドフェザー(ea1819)は口元を歪ませた。
「まぁ、最初にお前さんがどれほど目利きか試させて貰うがね」
「へぇ〜、そうですか? ええ?」
「何を驚いてやがる? 供託品がどれ程のものか、クズを掴まされる訳にゃいかないんだよ!」
「シンさんには、後で商会の方にある本物を幾つか見て貰います」
マーカスの横にすらりと立つシャルロットは、伊達メガネをキラリと輝かせる。
「その中に幾つ偽物が混じっているか、目利きのテストですね‥‥」
「マジかよ」
●抜け穴発見
フォーリィとニルナは二人して怪訝そうに顔を見合わせた。
「ニルナ、この樽って何?」
「さぁ? 確か矢避けに樽が使われると聞いてましたけど、間違えて置いたのかしら?」
競技場から少し離れた野原に、競技場から運び出された土が盛り土となって積み重ねられていた。その端に、何故か樽が一個置かれていたのだ。
知らせてきた荒くれ者の一人が、樽に手を掛ける。
「みてくだせぇ、姐さん達」
「姐さん言うなっつうの!」
フォーリィが真っ赤になって怒る。
「へえ、すいやせん姐さん!」
「駄目だこりゃ」
苦笑して樽をどかさせてみると、ぽっかり直径1m程の竪穴が2m程の深さに掘られており、ご丁寧にも梯子が。底は競技場に向かって真っ直ぐ堀り進められ、既に5mは横穴が続いている。
「タダで観戦しようって腹かしら?」
「話は聞かせて貰ったぜぇ〜」
ニルナの言葉に、背後から怒りに満ちた声が響いた。
振り向くと、シャルロットを引き連れ頭を真っ赤にしたマーカスが。
「金をとって客を裏から入場させようってぇ〜陰謀に違ぇ〜無ぇ〜! か〜っかっかっかっか、こういう輩が出ようって事は判ってたがなぁ〜。随分大胆にやってくれるじゃねぇか!?」
「とっちめるんですか?」
パンとフォーリィが拳を鳴らす。
「あったりめぇよぉ〜! 全員魚と仲良しになってもらわにゃぁなぁ〜。なぁ?」
「ですから、セクハラです!」
「パラじゃね〜よ」
マーカスはポンと傍らのシャルロットの尻を叩く。真っ赤になってシャルロットが怒り出す。よくみかける光景である。
マーカスは不敵な笑いを浮かべた。
「おいっ、目端の利く奴を集めときな!」
●入場券作り
「は〜い、お弁当だよ〜☆」
「わ〜い! おやぶん!」
お昼休みともなると、染料で指先が変色したディーノ達がガレットの周りに集まって来る。紐と鳥の羽が舞い、大変な騒ぎだ。
「お弁当は一人一つ! 一人一つだよ!」
「判ってらい!」
「もう〜☆」
「大変な騒ぎだな。だが、よくやってくれている」
苦笑を浮かべながら歩み寄るルイスの言葉に、ガレットもにっこり満面の笑み。
「あとちょっとで、予定分は終わりそうだよね☆」
「ああ。何とか間に合ったな」
「うん☆」
二人は頷き、賑わう作業場を満足気に眺めるのだった。
●ブラック××(ぺけぺけ)団参上!
盛り土の上。宵闇に黒い影が浮び上がる。
捕り手は十重二十重。キースを始めとする天界人の勇者も加わっていた。
「ちっ! なめてくれる! 誰だ!?」
激高するキースに、謎の黒い影は高らかな笑いを響かせた。
「は〜っはっはっはっはっは! 悪徳商人の飼い犬の諸君! 今回は、君達の働きに免じて、引き下がるとしよう! だがな! 次こそは『ブラック××団』が黒く汚れた銭を世の為人の為に役立ててくれよう! それまで暫しのお別れだ!」
「待て〜っ!」
襲い掛かる荒くれ者達。それらを黒い影はひらりとかわし、レイピアが鞘走る。
「うわぁ〜っ!?」
キースの目の前に転がり落ちる男達の胸元は、××と鮮やかな刀捌きで切り裂かれている。
「キザな野郎だ! うりゃーっ!!」
盛り土を駆け上がるキースの目の前。黒い影はまるで霞の様に消えてしまった。
●試合当日
「転倒だ!」
「応急手当〜!」
「確保〜!!」
華やかな表舞台に比べ、裏方は大忙し!
入場の管理、供託品の選定と管理、不法入場者の阻止と、あぶり出し、そしてタイムと撃破数のチェック、人形の再セット、壊れた人形の修理、観客の避難誘導、様々な仕事があったが、事前の準備がほぼ万全だった為に、ライトニングボルト騒動以外は、特に大きな混乱は無かった。
●打ち上げ万歳!
「おめぇら良くやった! 大会の成功を祝って! かんぱ〜い!!」
「カンパ〜イ!!!」
マーカスの音頭。その日の夜、競技場のゴール前で盛大な内輪パーティーが開かれた。