輝け！明日のヒロインは君だ！応援チームＺ
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■ショートシナリオ担当：マレーア１ 対応レベル：8〜14ｌｖ 難易度：やや易 成功報酬：2 G 98 C 参加人数：10人 サポート参加人数：-人 冒険期間：03月16日〜03月19日 リプレイ公開日：2006年03月22日 |
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●オープニング
ギルドからの以来は、今度、国営で開催されるゴーレムチャリオットレースを盛り上げる、エンターティメント性に優れた美男美女を緊急に公募するものである、との事だった。指定された貴族の館には、既に何名もの応募者が集まり、案内された一室では、既に自慢の芸を披露しようと待ち構えている様子だった。
（「負けてられないわ！ 一番に目立つのはこの私よ！」）
慌てず焦らず、いつもの自分の中にあるスイッチを確実に入れて行く。そう私は今、一人の表現者！
それから数分も経たぬ内に、一風変った人物がこの部屋へ入って来た。
「やあやあ、皆さん、ご苦労様です。ようこそようこそ。俺が今回、この応援チームのディレクターをササンの公爵様に任されたチップス・アイアンハンド男爵様じゃん。宜しくな！」
陽気にステップを踏み、帽子をくるくると器用に回して見せる。
でっぷり前に腹の出た、赤ら顔なパラの中年男性。それがチップス・アイアンハンド男爵の第一印象だった。
「さ〜て、先ず俺達は、このイベントを成功させなきゃならない！ その為にやる事は、実はもう一チームあってな、役割分担がその担当者と大体決められてるのさ」
軽いウィンクと共に、懐から丁寧に畳んだ羊皮紙を取り出すと、全員の前でゆっくり開いてゆく。
「えっと、俺達はオープニングチームだ！ 当然、オープニングセレモニーを担当するって事は、今大会の正に華だ！ 大いに期待してるぜい！ いえいっ！」
どよどよっとどよめきが。
「どういったオープニングセレモニーが出来るかは、先ず誰がどんな事が出来るかって事も重要だな。という訳で後で個々に見せて貰うとするぜ。宜しくな！」
その一言に、みなぐぐっと力が入る。それによっては目立つ真ん中の位置か、端っこで引き立て役で終わるか、はっきり違って来るのだ！
にやにやとチップス男爵は羊皮紙を広げて見せた。
・オープニングセレモニー☆
・入場行進（プラカード持ち兼引率）★
・招待奏者による楽器演奏
・エーガン・フォロ王陛下による開会宣言
・退場行進（プラカード持ち兼引率）★
・競技スタート
競技中の応援☆★
・入場行進（プラカード持ち兼引率）☆
・結果発表★
優勝チームの表彰★
最下位チームの罰ゲーム★
・エーガン・フォロ王陛下による閉会宣言
・エンディングセレモニー★
・退場行進（プラカード持ち兼引率）☆
「ちなみに☆印が付いているのが、俺達のチームが担当する箇所だ。重要なのは、てゆうか重要じゃねぇーのは一切無いが、やっぱりオープニングセレモニーだよな。後は応援だ。ばっちり涌かせてくれよ。そして閉会式の誘導だ。それで、これが‥‥」
そう言って持ち出したのは、真っ赤なバニースーツとヒール、チョーカー、ほわほわの白い耳と尻尾、そして黒い網タイツだった。
「ユニフォーム‥‥男女兼用だそうだ」
「ええええっ！！？」
にやり笑うチップス男爵。
「まぁ、派手にどかんといこうや☆」
●レッスン！ オープニングセレモニーへ向けて！
パンパンパン パンパンパン
軽快なチップス男爵の手拍子に合わせ、美しくも華麗に舞い踊る。
「い〜ね〜！ い〜ね〜！」
ワンセット通し稽古が終わり、皆汗をふきふき集まった。
「男爵様、そろそろメインを踊る者を決めて戴きたいですわ」
一人が口にした台詞が稽古場に、異様に響いた。その一言で緊張が走る。
「ん〜、そりゃまぁね。メインは大切だ。何しろ華の中心だ。このメンバーの中で最も華のある者こそがふさわしい」
にやにやしながらチップス男爵は赤い鼻をこする。
「だが、俺はすぐに決めてしまおうとは想わない。何故なら、朝日を浴びて開花する花がある様に、ぎりぎりまでお前さん達の美しい姿を見ておきたいからだ」
それぞれの視線が交錯する。誰もが私が一番だと、胸を張って宣言するように。
その様を眺め、チップス男爵はうんうんと頷く。
（「俺はな、待っているんだよ。俺の酒びたりの脳髄を、どかんと叩き割ってくれる様な、そんな鮮やかな華を持った、レディに出会える瞬間を‥‥くっくっく‥‥」）
演技の構成としては、得意技のある者は、ものによって交替でメインを張れる。
だが、一貫してメインを踊れる者は、果たして‥‥。
●今回の参加者
ea3747 リスフィア・マーセナル（31歳・♀・ファイター・人間・イギリス王国）eb4199 ルエラ・ファールヴァルト（29歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス）
eb4249 ルーフォン・エンフィールド（20歳・♂・天界人・人間・天界（地球））
eb4255 富嶽 源（27歳・♂・天界人・人間・天界（地球））
eb4270 ジャクリーン・ジーン・オーカー（28歳・♀・鎧騎士・エルフ・アトランティス）
eb4288 加藤 瑠璃（33歳・♀・鎧騎士・人間・天界（地球））
eb4428 エリザ・ブランケンハイム（33歳・♀・鎧騎士・人間・アトランティス）
eb4440 アヤメ・アイリス（27歳・♀・天界人・人間・天界（地球））
eb4603 紅 雪香（36歳・♀・天界人・人間・天界（地球））
eb4729 篠宮 沙華恵（27歳・♀・天界人・人間・天界（地球））
●リプレイ本文
●Ｚチーム行きます！「あと五分で開始です！」
タイムキーパーのアリアが控え室の外で叫んでいる。
「もうちょっと！ もうちょっとよ〜‥‥」
メイク道具を手に完璧なバニーガールとなった篠宮沙華恵（eb4729）は、とうとう観念した富嶽源（eb4255）の唇に最後のルージュを引く。こぼれんばかりのバストの谷間を、男の目の前にぶらさげ悩ましげに唸る。そして目線を逸らそうとする源の顔を何度も正面に向け直す。
「ちょ、ちょっと派手過ぎないかな？」
「大丈夫！ 遠目で栄える様にやや強めなの！」
笑い出しそうになるのを必死に抑え、沙華恵は逞しい男性、バニー姿をした源の細部に最後の調整を施す。
「よ〜し！ 行くわよ！」
「お、応！」
パンと源の肩を叩き、飛び出す二人。
そんな二人に真っ先に気付き、アヤメ・アイリス（eb4440）はその豊満な肉体をぷるぷると左右に振って第一声を放った。どうすれば愛らしく見えるのか、全て判った上で。
「も〜、遅い〜！」
「ゴメ〜ン！」
「す、すまない‥‥」
既に登場口にはむんむんとした熱気をまとい、フォーメーションを組んで仲間が待ち構えている。その空きに滑り込むと、顔を真っ赤にさせたアリアが、指で合図を送り出す。そんな同族に、ジャクリーン・ジーン・オーカー（eb4270）ははちきれんばかりの豊かな胸元を強調する様、獣のポーズで投げキッス。艶やかなマスカレードが普段より彼女を大胆にさせる。
自信に満ちた表情で、さっとエリザ・ブランケンハイム（eb4428）は皆の前に手を差し出した。
「さあ本番ね！ ビシッ！っと行くわよ！」
全員の手が素早く重ねられた。
五、四、三、二、一
「ＧＯ！！！！」
Ｚチームは華やかな嬌声を上げ、歓声の中へと飛び出した。
競技場は男爵の声が会場にワンワンと響き、セレモニーの開始を告げていた。
軽やかな楽の音と大歓声の中、真っ先に飛び出したのは、障害物役だ。中心には源が、逞しい筋肉を誇張する様にくるくると舞い、その周囲を華麗で艶やかなバニーガール達がロンドを舞う。
「‥‥変な空‥‥」
冷めた表情で、一際アクロバティックに加藤瑠璃（eb4288）が、その豊かな肢体を舞わせると、観衆は興奮に湧き上がる。
それに続けと、ジャクリーン、エリザ、アヤメ、沙華恵、紅雪香（eb4603）の五人が加わり、まるで大輪の紅い花。
「凄い！ 伝わって来るよ！」
大気がびりびりと全身を打ち震わせ、心臓の鼓動とシェイクする。そこは熱いエナジーが渦巻いていた。
歓喜
羨望
情欲
熱狂
負けじとしなやかな肢体を舞わせる雪香。湧き上がる熱狂にその身を任せ、紅いトゥシューズへ羽の如き身体を添える。
何千人ものオーラが、己が一つ身に降り注ぐ。そんな倒錯めいた恐悦を、唐突に吹き飛ばした。
楽の音が変わった。
全身の血の気がサッと引き、聴衆の心が酷薄にも別のものへと移った事をはっきりと刻印する。
その刹那、七つの魂は声にならぬ悲鳴を挙げ、人の目には映らぬ涙をほたほたと滴らせる。
それは己が身を一瞬にて焦がし尽くした恋が、無情にも凍て付く大地へ打ち捨てられるに似た、その残酷な痛み。
一歩、また一歩と、聴衆の愛を一身に注がれ、その自信に満ちたオーラが天を貫く様、一本の銀色に輝く棒が高々と掲げられた。
「はぁ〜‥‥」
すらりと、黒い網タイツに包まれた量感のある柔肉が、それにまとわり付く艶やかな蛇の如く、掲げられる。
たったそれだけの仕草で、リスフィア・マーセナル（ea3747）は踊り手として、格の違いを見る者全ての魂へ刻みつけてしまう。それは当の本人が望むと望まざると。
「さぁ、イキましょう！」
愛される喜びを、その満面の笑みに浮かべ、リスフィアは木のランスを軽やかに、まるで秘め事の相手であるかの、躍動感溢れる激しいジプシーダンス。
左右に距離を置いて続くルエラ・ファールヴァルト（eb4199）もルーフォン・エンフィールド（eb4249）少年も、これまで共にしてきた練習との違いに圧倒され、本番の恐ろしさを、その甘美なまでの熱狂的なエナジーを感じずにはいられなかった。
「リスフィアさん、凄く綺麗‥‥ステキ‥‥」
「練習じゃ、こんなにも俺達のレベルに合わせてくれてたんだ‥‥すげぇ‥‥すげぇよ‥‥」
異様な興奮に、熱く、熱く、熱く全身の血がたぎる。
引きずられる。
蜜に蝶が引き寄せられる如く、無我夢中で習ったステップを踏み、二人はリスフィアの舞踏に続く。
大輪の薔薇の如く、観客席へ撒き散らされる乙女の笑顔。
試合を想わせる巧みな演舞。
リスフィアはランスを奮う騎士。
ルエラはロングクラブを薙ぐ戦士。
ルーフォンは次々と魔術を放つ魔法使い。
三人は一台のゴーレムチャリオット。
次々と弾ける色鮮やかなクス球。
競技場は興奮の坩堝。ぐるりと一周し、再びエーガン・フォロ王の御前へと。
「それ！」
「そ〜れ！！」
「それそ〜れ！！！」
艶やかに逃げ惑うターゲット。
ルエラのロングクラブに、華やいだ歓声を上げエルザがクス玉を割り、ルーフォンが卵を投げ、極彩色の線を空に描くと、ジャクリーンとアヤメ、沙華恵、瑠璃、そして雪香は満面の笑みと共に四方へ花びらを飛び散らした。
「はい！」
「はい！！」
「おお〜っ！！！」
リスフィアの雄雄しきランスの一突き、源の四肢が引き裂かれたかのダイブ。両手に抱えた特大のクス玉を四散させる。
「ＧＯ！」
「ファイナル！！」
「や〜っ！！！」
一斉に、六名の乙女はその身を一枚の花びらと化し、華やいだ真紅の薔薇を大地に描く。
その中央。リスフィアは、源の胸板を踏み台に、更に天へと舞い昇る。重力を感じさせぬしなやかな飛翔。続くルエラとルーファンを、源はその逞しい腕で高々と掲げ挙げた。
大地に突き立つ銀のランス。瞬間、弓なりに傾いだそのままに真紅の花弁と化したリスフィアは、くるくる螺旋を描き、宙に踊る。
ふわりと舞い落つその一瞬、競技場は驚くべき沈黙に包まれた。
●割れんばかりの歓声の中
入場行進が開始される。楽の音が勇ましく響いた。
「それ！！」
入場口から飛び出す三人のバニーが、鮮やかにゲートを飾り立てる。
ノリノリに脚を振り上げ、その中央を夏樹バニーが煌めくバトンを手に先陣を切る。くるくる回ると黒いマントが大きく風を切る。
そして、セレ分国王の家紋が入ったプラカードには『フォレストラビット』の文字。お団子頭に兎耳。真っ赤な目をした紅蘭のバニー姿。笑顔でそれを掲げる紅蘭のその後ろ、一斉に緑の布を誇らしげに掲げ、十名の競技者達が歓声に応えるべく続く。
続き、トルク分国王の家紋が入ったプラカードには『レッドスフィンクス』の文字。背筋をピンと伸ばし、優雅に紅子が進み出る。獅子の家紋を掲げる紅子と、十名の華やかな競技者達がゆっくりと行進を開始する。
次はササン分国王チーム。その『月下の黒猫』と記された家紋入りのプラカードを、ほっそりとした麗しいエルフ、ミリアが笑顔で掲げ持つ。その後ろには博士少年を始めとする７人の競技者が奇策を引っさげ入場する。
そして続くはセレ分国公爵チーム『ブルーゲイル』。紅いロングヘアーにサングラスを差し、普段は見せぬ女性らしい柔らかな微笑みで、家紋入りのプラカードを手に、リーザは堂々と歩き出す。それに続くは正統派の十名。
更にウィエ分国公爵チーム『チームＦ』。小柄な男のバニーがよろよろと家紋入りのプラカードを手に歩き出す。その真治に続く６名は、やってやるぞとばかりの気迫を隠そうともせず、声高に勝利を叫ぶ。
最後に、トルク分国公爵チーム『ゴートメンバーズ』のプラカードを持ち、若干ひきつり気味の笑顔で大柄のフィラがゆっくりと歩み出す。異色の競技者７名がこれに続く。一人の巨漢が怪しげな衣装で、バニー姿の男達に負けじと己が肉体を誇張する。
観客は己がひいきのチーム名を絶叫する。
この熱狂は、マーカス商会の賭博によるものも大だが、純粋に己が母国を応援するものもある。
Ｙチームの先導する行進が、オープニングセレモニーを終えた、Ｚチームの待つ競技場中央のコースと少し段差のある小高い平地へと整然と進み行く。
最後にフィラと『ゴートメンバーズ』がフォロ王より眺めて右手へ並び立った。
秘密の放送席では、男爵がＺ卿と名乗り、Ｙ卿と共に余所行きの声で司会進行を勤めている。
「では、続きまして、陛下を讃える楽の音を、陛下の忠実なる臣下、ショア伯爵ご令嬢、ディアーナ・ショア・メンヤード嬢より贈らせて戴きます」
整然と居並ぶウィルの騎士達の前に、一人の若く美しい貴婦人が恭しく進み出る。若草色のドレスに、銀の長い髪を紅い飾り紐で後ろにまとめ、肘まである白い手袋に白い縦笛を手にしていた。
観客席では何が始まるのかと、雑然とした空気が支配している。
ディアーナ嬢は、フォロ王へスカートを少し摘み、微笑み、恭しく一礼。それより会場へと礼。
徐に笛を構えると、始めは静かにしっとりと、それから徐々に高く、強く瑞々しい旋律を奏する。
すると、それまでの雑然とした空気が、ピタリと止み。透明な笛の音が会場全体へ、染み入る様に響き渡る。それは王家を讃える、古くからある旋律だった。
●応援合戦
「ウィルの忠実なる臣民達よ！ ここに第一回ゴーレムチャリオットレースを開催する事を宣ずる！」
陛下より開会の言葉を賜ると、会場は割れんばかりの拍手と歓声が沸き起こった。
夏樹バニーがバトンを振り出し、真っ先に動き出す。それを追い次々とバニーの先導に退場する競技者達。それと共にＺチームも一旦退場した。
裏手に回ると、そこは既に戦場だった。
「第一走は【フォレストラビット】です！ 競技者はこちらです！」
「おらぁ〜っ！！ 人形の設置、開始〜！！！」
「うぃ〜っす！！！」
アリアの叫びをかき消す様、ターゲットの木人形を両手に抱え、マクスウェルはチームを鼓舞して飛び出して行く。それに続く荒くれ者達。
「どけどけどけ〜っ！！！」
「チャリオット通りま〜す！ チャリオット通りま〜す！」
先ずは自分達の控え室へ飛び込んだ。
「ちょっと待っててね！」
リスフィアは手製のボンボンを用具入れから次々引っ張り出し、投げ飛ばす様に全員へ配る。
「応援団の皆さん〜！ あと３分です！」
タイムキーパーのアリアが呼ぶ。これに隣りのＹチームの控え室からも歓声がわきあがる。
「私達も負けてられないわ！！」
エリザの音頭に、円陣を組む。ボンボンを持つ手をサッと重ね合わせ、勇んで声を上げた。
「ファイト〜オ〜ッ！！！」
思いっきり手を跳ね上げ、それから弾ける様に、陽光の下へと勢い良く飛び出して行く。
観客席に等間隔置いて用意されている踊り場は、当日警備の者達がキープしてくれていた。
「さぁ、どうぞ。お嬢さん」
「ありがとう！」
キザに一礼するキースへ、瑠璃が自分でも驚くくらいの声。
定位置に着く。各自、それを確認しつつ、サッとポージング。左はジャクリーン、右はエリザが緊張した面持ちで頷いた。
すると、入場の音楽と共に男爵の陽気な声が響き渡る。
それを合図に、一斉にその自慢の美脚を高々と振り上げた。
「ゴー、ゴー、ファイ、ゴー、イェー！」
健康的に声を張り上げ、精一杯の応援で会場を盛り上げにかかった。
Ｚチームが担当するのは第一カーブ、第二カーブをを中心とした、貴賓席下の第一直線、そしてその向かいのチャージングゾーンがある第二直線。
貴賓席の真下にはリスフィア。そしてルエラが立ち、それにエリザ、瑠璃、ジャクリーン、源、アヤメ、ルーフォン、雪香、沙華恵とぐるっと居並ぶ。
そしていよいよ、競技の開始が告げられた。
土埃を舞い上げ、ゴーレムチャリオットが疾走する。
それを背に、可愛らしくボンボンを振るい、若い汗を飛び散らす。
喉が枯れるまで嬌声を挙げ、祭りは最高潮に達していった。
●夜会
その日の夜。
ウィル王都、貴族街の一角にて打ち上げパーティーが開催された。
それは応援団Ｙ・Ｚチーム合同のもの。
洋館の前。ふかふかの芝生。樹木の天蓋、多数の燭台に照らし出される雅な庭園。
幾つもある白いテーブルには、それぞれ肉や魚料理が温かな湯気を立てていた。
片隅では、子豚の丸焼きがくるくると調理師らしき男の手で炙られている。実に香ばしい。
従者らしき子供達が回り、銅のカップになみなみと上等のワインを注いでゆく。
その芳醇な香を楽しみつつ、共に大会を盛り上げた仲間同士微笑あった。
会話も弾む。
疲れはあった。
だが心地良かった。
「こほん！」
咳払いをし、Ｚ卿ことパラのチップス・アイアンハンド男爵の小柄な姿がカップを手に、小さな白い大理石の舞台に立つ。
注目する様にと、すまし顔。手で合図しながらぐるりと一同を見渡す。
傍らでＹ卿こと黒子姿の沙羅影が、さっさと始めろとばかりに手を振った。その後ろには、共に解説をしていたディアーナ嬢も微笑んでいる。
愛嬌たっぷり、チップス男爵は笑いかける。それだけで充分可笑しかった。
「まぁ、今日は本当にお疲れ様だ。それから、この庭園をお貸し戴いたショア伯に心から御礼申し上げよう。ここにはいねぇがな、多分この心は届くだろう。さぁ、最後におまぇらだ！ 今日のおまぇら、最高に輝いていたぜ！ おまぇらは最高だ！！ もう最高！！ だから、乾杯っ！！」
「かんぱ〜いっ！！！！」
最後に半分照れ笑い。チップス男爵は掲げられたカップを一気にあおった。
その日の宴は最高に気分が良かった。
